いい国作ろう!「怒りのぶろぐ」

オール人力狙撃システム試作機

テポドンを追尾せよ!(3)

2006年07月08日 16時29分36秒 | 俺のそれ
・北朝鮮―5月11日午前1時過ぎ

北朝鮮の最高幹部の1人に、中国から緊急の電話連絡があった。これまで北朝鮮とのパイプを作ってきた外相クラスの人物であった。極めて重大なメッセージを伝えられた。それは「アメリカは今夜中に、発射可能な弾道ミサイル発射台を極秘裏に攻撃する」というものであった。ただ、現在は攻撃待機ということで、北朝鮮が「発射不能な状態」にはっきりと変えるならば攻撃は猶予する、と付け加えた。

「発射のことは全く聞いていません。それに発射計画はもっと先ですよ」
「いや、アメリカには見えているらしい。発射可能な発射台が何処かにあるはずだ」
「幹部の知らないところで、発射しようとしている連中がいると?」
「そういうことかもしれない。後は、そちらの対応次第だ。我々ができることはこれだけだ」
「わかりました。今夜中に何とかします」


軍部の連中だな、クソ!
幹部には思い当たる節があった。
パクの奴だ。きっとそうだ。独断で発射しようとしてるんだ。だが、・・・これは奴を陥れるチャンスかもしれない。軍部のヤツラをギャフンと言わせる絶好の機会になるかもしれない・・・。うまくやるんだ、チャンスを活かすんだ・・・


軍の参謀本部と司令部の指揮官たちに、緊急連絡が届けられた。
「ミサイル発射の兆候がどこかにある。それを直ちに封鎖・解除せよ」というものであった。
初めのうちは、軍部は「どうせアメリカのこけ脅しに決まってる。そんな要求に応える必要なんかない」と抵抗していた。しかし、アメリカが本気らしい、というのは中国筋からの情報で確度が高いと判断されたのだった。
ヤンキーは、本気モードになると、躊躇わずに実弾を撃てる人種だと知っていた。しかも、他に被害が及ぼうとも、お構いなしに撃ってくる。ショットガンが好まれるのは、威力もそうだが、「敵を倒す」ことを何より最優先する人種だということを示しているのだ。

パク中将は司令部に呼ばれていた。
中将は、「私はそのような命令を出した覚えはない」との一点張りであった。これを確かめる術はなかったが、今はそんなことにかまけている時間などなかった。アメリカに攻撃されるかもしれないのだ。ともかく全てのミサイル部隊に連絡して、発射を疑われるような部分は全て隠させることとなった。



チョ中佐も参謀本部に現れた。
隠蔽サイロの開口部を開けさせたのは、彼だった。これには目的があった。

一つはアメリカの探査能力を知る、ということだった。
判別のやや難しいノドンの隠蔽サイロを発見できるとなれば、実際の使用時には必ず攻撃されるだろう。問題は発射可能地点を如何に増やすか、だ。半分は攻撃を受けたとしても、半分発射できれば攻撃は可能だ。彼らが全部を破壊できるとは限らない。「ノドンの数」というのは、そうした脅威を与えるのに役立つのだ。アメリカの攻撃成功率が90%であっても、100発あれば10発は発射できる。200発ならば20発の核ミサイル攻撃が可能、ということだ。日本を壊滅させるには、十分な数だ。主要都市圏―東京圏、大阪圏、名古屋圏、九州北部―が核に汚染されれば、もう終わりだ。4発着弾するだけでいいのだ。つまり生き残った20発のうち、4発あればいいのだ。20%の成功率でも、大都市圏に着弾したら終わり、なのだ。核ミサイルの脅威とは、そういうものだ。

もう一つはミサイル発射に対する耐性だ。3月の短射程のミサイル―スカッド改良型―の時は、発射が実行できた。事後に不快表明が少しあったが、国際社会の反応は鈍かった。この程度ならば許容される、ということでもある。もう少し長距離のミサイルならばどうだろうか?イランやパキスタンでは発射可能であった。ならば、我々が発射しても許されるはずだ。いや、邪魔されるべきではないのだ。


チョ中佐は以前にパク中将に、次のように話したのだった。

この前のミサイル発射は成功しました。今度の新型ミサイル発射を成功させるには、事前に一つのステップが必要になります。そのステップとは、発射準備段階で阻止の動きが強まるかどうかを調べることです。いきなり新型の発射準備を開始して、その段階で介入されれば、最終的に発射できなくなる恐れがあります。阻止の介入がなければ、実戦での使用可能性が高まります。それは、「得体の知れないミサイル」の発射準備というだけでは攻撃してこない、ということを意味すると思われます。もしもそうであるなら、実戦においてもその確率は高まるでしょう。3月の発射では、射程の短いミサイルであったため介入してこなかった可能性が濃厚です。従いまして、旧型(ノドン)の発射兆候でまず反応を見るのがよろしいのではないかと。実際に燃料注入はしないとしても、サイロの擬装を外して、開口部を露出させます。それでアメリカの出方を窺います。別な見方では、童話にある「オオカミ少年」の話を御存知かと思いますが、それと同じことが起こるかもしれません。何度か実験発射という「ハズレ」を見せることで、本物の発射であることが信じられなくなるかもしれません。将来「また実験なんじゃないか」という慢心を生むかもしれない、ということです。
いかがでしょうか?


パク中将は中佐の意見を受け入れた。ただし、責任はお前が取れ、とも言った。もしも失敗した時には、関知しないということを意味していた。


今は、どこの発射基地がアメリカの攻撃目標となっているのか、司令部内では分っていなかった。一体、どこのことを言っているのだ?可能性のある基地すら誰も思い当たらなかった。チョ中佐は当然厳しく詰問された。

「必ず何処かのミサイル部隊が疑われているんだ。君はわからんのか」
「新型はまだ運んでもいません。他は今までと変わりない状況です」
「しかし、アメリカは攻撃する気だ、と言ってるんだぞ」
「私にもどこが問題にされてるかわかりません」

時間は刻々と過ぎていった。何かのアクションをせねばなるまい。困った軍部は外交部にしぶしぶお伺いを立てた。「どうしたらよいか?」

夜明けまで残された時間は少なかった。外交部でも緊急に討議された。何か方法はないか?
国連大使に、「発射の意図はない」と言わせるか?
だが、そんなことをすれば、こちらが謝ったことになってしまい、アメリカの脅しにひれ伏し、屈したことになってしまう。次からも必ずその言い分を受け入れることになってしまう。それは絶対にダメだ。
ならばどうする?仮に攻撃を敢えて受けて、アメリカが攻撃したという証拠を掴んで公表できればよいが、アメリカが「足のつく」ような攻撃をするとも思えない。
中国に頼んでみるか?しかし、例の要人はこれしかできない、と言って一方通行のメッセージを伝えてきた。これは極秘裏の非公式メッセージであって、アメリカは逆からのメッセージを認めないだろう。
どうする?どうしたらいい?


・日本―5月11日午前2時過ぎ

危機管理センターでは新たな情報を待っていたが、米軍からは何も連絡が入ってこなかった。
緊迫感だけがその場を支配していた。


米軍の攻撃部隊は、既に沖縄から岩国に到着しており、厚木でも予備の飛行隊が待機中とのことだった。攻撃命令が下れば、すぐにでも出撃となる予定だった。

「米軍からは、連絡がまだ来ないのか」
「はい」
「自衛隊機はどうなった?」
「イーグルは交代で警戒飛行を行っています」
「プラウラーも到達してるのか?」
「はい。予定空域で待機中です」
「北朝鮮のミサイルは本物なのだろうか?」
「わかりませんね・・・ですが、万が一ということはありますから」
「待ってる時間は長いね・・・」
「いっそ北の基地をぶっ潰してもらった方が有り難いのですけどね」
「便乗かね?君は中々エグイね(笑)」
「ええ、貧乏性なもので、タダなら何でも」
「タダは高くつくよ?君も今に分る。歳を重ねればな」


・米国―同時刻

「大統領、北朝鮮にはメッセージが伝わっているそうです」
「そうか。で、何か変化はあったのか?」
「いいえ。暗視衛星で見ても、特に変化はないそうです」
「彼らは単なる脅しだと思ってるのではないか?」
「それは何とも。夜明けまであと2時間ほどです。日が昇れば・・・」
「うむ。わかっている。日の出前にはケリをつけよう」
「出撃命令は発令しますか?」
「そうしてくれ」
「わかりました。予定通り日本時間の午前3時に出撃させます」


・北朝鮮―午前3時

チョ中佐は今までわざと開かせていたノドンの隠蔽サイロの開口部を、大至急閉じるよう密かに命令を出していた。しかし、部隊の連中は集合が遅く、夜間であることもあって作業は捗っていなかった。精鋭とは呼べないような、鈍い部下が多かったのかもしれなかった。上官はノロノロ動くな、急げ、と怒号を発していた。彼らはこのサイロに、「アメリカ製のミサイル」がぶち込まれるなどとは想像もしていなかった。もしも分っていたら、もっと早く作業ができたかもしれない―いや、全員逃げ出していただろう。

ミサイル発射口の天蓋部分は全て動力による開閉ではなく、大方が人力であった。しかも、高い場所までハシゴをひたすら登らねばならず、そのハシゴも1人ずつ順番に登るしかなかった。これでは時間がかかるのも当然であった。