日経新聞の当該記事を読んだわけではないので、あまり踏み込んだ話はできないのですが、一応、昨日の記事に追加しておきたいと思いますね。
参考になったのはこちらの記事。
さるさる日記 - 泥酔論説委員の日経の読み方
この6月15日付記事には次のように記されています。
大阪大学教授 筒井義郎
社会問題化した消費者金融はまだ解決すべき課題がある。借り入れ制限は是認できるというのが新しい行動経済学に基づく政策の含意だ。昨年末の法改正で上限金利が引き下げられたが、借り手の情報を貸し手が十分把握できていない場合、上限金利規制は有効かどうか疑問である。
グレーゾーンと呼ばれた上限金利が20%に引き下げられるなど、昨年暮れに改正貸金業法が成立しましたが、これで本当に多重債務問題が解決するのかという問いに対し、筒井教授は行動経済学からみて有効性が疑わしいとしています。
筒井教授は、サラ金で債務整理・自己破産した経験者と借り入れたことがある経験者、そして利用未経験者とのアンケート調査(下図)を行います。
「双曲線割引度」というのは、「直近の借り入れなら高い金利でよいと考えるが、遠い将来の借り入れについては低い金利でも借りたくない」と考えることであり、「アリとキリギリス」で例えれば「キリギリス」な人と言えましょう。
調査と分析の結果、双曲線割引度が高く自信過剰な人ほどサラ金からの借り入れで債務整理に陥る可能性が高いことが示されており、こういう人に対していくら金利を低くしても、借金が雪だるま式に増えていくことは回避できない可能性を示唆しています。
一方、サラ金側も借り手のリスクがよく分からないまま低金利で貸すと、貸し倒れが続出して経営が悪化するので、採るべき選択は貸し渋るという以外になく、消費者金融業は縮小均衡になりましょう。
しかし、キリギリスな人々はいくら高金利でも今日のお金が借りたいわけですから、サラ金が貸してくれなければ暴力団が支配するヤミ金に走ることは自明です。
もし消費者金融がなくなったらどうなるのか、筒井教授らの試算によると、キリギリスな人は国民の約2~3割、サラ金利用者では約3~4割と見られ、残り約6~7割の人は担保なしでお金を借りたくても行き場を失うということになります。
この記事から、私なりの理解として書きますと、次のようなことです。
①借り手側に問題行動の人(便宜的に「キリギリス」と呼びます)が存在する
②貸し手側は、キリギリスの見分けがついてなかった(情報の非対称ということ)
③キリギリスは金利に関係なく借金を重ねて雪だるまになる
④キリギリスだと金利規制は有効性に疑問がある
⑤キリギリスは高金利でもヤミ金でも借りてしまう
⑥キリギリスは国民の2~3割、借り手の3~4割存在する
<参考までに憲法学者である小林節慶大教授は、「多重債務者の多くは性格や生活態度に問題がある」旨、述べている。「ライフイベントなんだ」説は規制反対派から取り下げられたのであろうか?ギャンブルや浪費のような典型例ということが言いたいのだろうか。>
なるほど、行動経済学には上記①~⑥があるので、上限金利規制は効果的ではなく疑問である、ということですね。
ハイ、判りやすいですね。では、少し書いてみたいと思います。
対策としては、貸し手はキリギリスをうまく見分けて、キリギリス以外の人に貸しなさい、ということなわけです。つまり
「貸金市場からはキリギリスを排除する方法こそ、求められる対策である」
というふうに思ったわけですが、違いますか?
キリギリスに上限金利規制が無効だから、ですよね。
キリギリスは金利水準に関係なく雪だるまになってしまうから、ですよね。
このキリギリス理論が正確ならば、ヤミ金は相当儲かるな。対象者がごっそりいるわけで。
しかも、多重債務を背負っている者の名簿を元にカモを探しているヤミ金たちは、まさしく理論通り実践しているということだね。
昨日の記事でも少し触れたのだが、仮に、貸金市場が1500万人市場(1400万人でもいいんですが、切がいい数字なので一応こうしました)ということなら、この3~4割が「キリギリス」なんだ、ということですな。ならば、450~600万人が「キリギリス」の疑いが濃いので、このキリギリス層には「貸してはいけない」ということなんですかね。この層を貸金市場から排除しなけりゃいけないよ、ってことなんですよね。貸金市場が崩壊したら従来の借り手の6~7割くらいが不利益を蒙る、ということらしいので、「本来キリギリスは一切借りられなくていい」という前提でそう述べているように思われますからね。
キリギリス対策としては、誰か厳格なカウンセラーみたいな管理者を置いて、この管理者に許可を受けて借入を行うとか、借金がどれほど危険なのか思い知らせたり、性格や生活態度について説教したり、ということなんですかね。それをクリアしたら、借りてもいいですよ、とか。でも、キリギリスに貸さないとヤミ金に直行されるんだそうで(笑)。高金利でも何でも借りてしまうので、金利を低くしても意味がない、ということらしいですからね。どうせ雪だるまになるから450~600万人程度のキリギリスに貸してはいけない、しかし貸さなければヤミ金に直行。ならばどうしますか?貸せってことでしょうか?「借りられなければヤミ金に走る、ヤミ金被害が増える」とか反対派はよく主張していて、なおかつ「キリギリスは雪だるまになるから貸すな」と?それとも、昨日の記事にも書いた、借り手の免許制にしてみるとか?
キリギリス判別試験を義務化して、キリギリスと分類された人々については借りる前に行動や性格の矯正を行って、矯正措置がうまくいって再試験に合格した人たちだけに貸し出す、とか、そういった対策を取れってことですか?(笑)すると、試験逃れの為に余計にヤミ金に走ったりして。即ち自動車などの無免許運転者が存在するのと同じく、矯正失敗とか試験逃れのキリギリスが出る、というだけになってしまうとか。
要するに、キリギリスの判別水準程度の精度では、大した「役に立たない」というのが結論になりそうな気がしますが、もしも、いい政策があるならば是非ともご教示願います。>筒井阪大教授
貸金市場からキリギリスを完全排除しますか?ヤミ金直行らしいですけど。
キリギリスに貸すけど、別な管理者とか保証人を立てますか?で、一緒に雪だるまになれ、とか(笑)。
キリギリスの矯正措置をやってみて、合格者にだけ貸しますか?どの道ヤミ金が儲かるけど。
でも、それなら、問題と目される230万人をしらみつぶしに、追加貸付を行う際に「カウンセリング」とかを全員義務化した方が早くないですかね。それよりも、450~600万人くらい存在しているであろうキリギリスを正確に判別し、ターゲットを絞りこんで適切な対応、すなわち行動とか性格とかを矯正すべし、ということなのかもしれませんが。どちらの方が経済学的に得なのか知りたいところです。
参考になったのはこちらの記事。
さるさる日記 - 泥酔論説委員の日経の読み方
この6月15日付記事には次のように記されています。
大阪大学教授 筒井義郎
社会問題化した消費者金融はまだ解決すべき課題がある。借り入れ制限は是認できるというのが新しい行動経済学に基づく政策の含意だ。昨年末の法改正で上限金利が引き下げられたが、借り手の情報を貸し手が十分把握できていない場合、上限金利規制は有効かどうか疑問である。
グレーゾーンと呼ばれた上限金利が20%に引き下げられるなど、昨年暮れに改正貸金業法が成立しましたが、これで本当に多重債務問題が解決するのかという問いに対し、筒井教授は行動経済学からみて有効性が疑わしいとしています。
筒井教授は、サラ金で債務整理・自己破産した経験者と借り入れたことがある経験者、そして利用未経験者とのアンケート調査(下図)を行います。
「双曲線割引度」というのは、「直近の借り入れなら高い金利でよいと考えるが、遠い将来の借り入れについては低い金利でも借りたくない」と考えることであり、「アリとキリギリス」で例えれば「キリギリス」な人と言えましょう。
調査と分析の結果、双曲線割引度が高く自信過剰な人ほどサラ金からの借り入れで債務整理に陥る可能性が高いことが示されており、こういう人に対していくら金利を低くしても、借金が雪だるま式に増えていくことは回避できない可能性を示唆しています。
一方、サラ金側も借り手のリスクがよく分からないまま低金利で貸すと、貸し倒れが続出して経営が悪化するので、採るべき選択は貸し渋るという以外になく、消費者金融業は縮小均衡になりましょう。
しかし、キリギリスな人々はいくら高金利でも今日のお金が借りたいわけですから、サラ金が貸してくれなければ暴力団が支配するヤミ金に走ることは自明です。
もし消費者金融がなくなったらどうなるのか、筒井教授らの試算によると、キリギリスな人は国民の約2~3割、サラ金利用者では約3~4割と見られ、残り約6~7割の人は担保なしでお金を借りたくても行き場を失うということになります。
この記事から、私なりの理解として書きますと、次のようなことです。
①借り手側に問題行動の人(便宜的に「キリギリス」と呼びます)が存在する
②貸し手側は、キリギリスの見分けがついてなかった(情報の非対称ということ)
③キリギリスは金利に関係なく借金を重ねて雪だるまになる
④キリギリスだと金利規制は有効性に疑問がある
⑤キリギリスは高金利でもヤミ金でも借りてしまう
⑥キリギリスは国民の2~3割、借り手の3~4割存在する
<参考までに憲法学者である小林節慶大教授は、「多重債務者の多くは性格や生活態度に問題がある」旨、述べている。「ライフイベントなんだ」説は規制反対派から取り下げられたのであろうか?ギャンブルや浪費のような典型例ということが言いたいのだろうか。>
なるほど、行動経済学には上記①~⑥があるので、上限金利規制は効果的ではなく疑問である、ということですね。
ハイ、判りやすいですね。では、少し書いてみたいと思います。
対策としては、貸し手はキリギリスをうまく見分けて、キリギリス以外の人に貸しなさい、ということなわけです。つまり
「貸金市場からはキリギリスを排除する方法こそ、求められる対策である」
というふうに思ったわけですが、違いますか?
キリギリスに上限金利規制が無効だから、ですよね。
キリギリスは金利水準に関係なく雪だるまになってしまうから、ですよね。
このキリギリス理論が正確ならば、ヤミ金は相当儲かるな。対象者がごっそりいるわけで。
しかも、多重債務を背負っている者の名簿を元にカモを探しているヤミ金たちは、まさしく理論通り実践しているということだね。
昨日の記事でも少し触れたのだが、仮に、貸金市場が1500万人市場(1400万人でもいいんですが、切がいい数字なので一応こうしました)ということなら、この3~4割が「キリギリス」なんだ、ということですな。ならば、450~600万人が「キリギリス」の疑いが濃いので、このキリギリス層には「貸してはいけない」ということなんですかね。この層を貸金市場から排除しなけりゃいけないよ、ってことなんですよね。貸金市場が崩壊したら従来の借り手の6~7割くらいが不利益を蒙る、ということらしいので、「本来キリギリスは一切借りられなくていい」という前提でそう述べているように思われますからね。
キリギリス対策としては、誰か厳格なカウンセラーみたいな管理者を置いて、この管理者に許可を受けて借入を行うとか、借金がどれほど危険なのか思い知らせたり、性格や生活態度について説教したり、ということなんですかね。それをクリアしたら、借りてもいいですよ、とか。でも、キリギリスに貸さないとヤミ金に直行されるんだそうで(笑)。高金利でも何でも借りてしまうので、金利を低くしても意味がない、ということらしいですからね。どうせ雪だるまになるから450~600万人程度のキリギリスに貸してはいけない、しかし貸さなければヤミ金に直行。ならばどうしますか?貸せってことでしょうか?「借りられなければヤミ金に走る、ヤミ金被害が増える」とか反対派はよく主張していて、なおかつ「キリギリスは雪だるまになるから貸すな」と?それとも、昨日の記事にも書いた、借り手の免許制にしてみるとか?
キリギリス判別試験を義務化して、キリギリスと分類された人々については借りる前に行動や性格の矯正を行って、矯正措置がうまくいって再試験に合格した人たちだけに貸し出す、とか、そういった対策を取れってことですか?(笑)すると、試験逃れの為に余計にヤミ金に走ったりして。即ち自動車などの無免許運転者が存在するのと同じく、矯正失敗とか試験逃れのキリギリスが出る、というだけになってしまうとか。
要するに、キリギリスの判別水準程度の精度では、大した「役に立たない」というのが結論になりそうな気がしますが、もしも、いい政策があるならば是非ともご教示願います。>筒井阪大教授
貸金市場からキリギリスを完全排除しますか?ヤミ金直行らしいですけど。
キリギリスに貸すけど、別な管理者とか保証人を立てますか?で、一緒に雪だるまになれ、とか(笑)。
キリギリスの矯正措置をやってみて、合格者にだけ貸しますか?どの道ヤミ金が儲かるけど。
でも、それなら、問題と目される230万人をしらみつぶしに、追加貸付を行う際に「カウンセリング」とかを全員義務化した方が早くないですかね。それよりも、450~600万人くらい存在しているであろうキリギリスを正確に判別し、ターゲットを絞りこんで適切な対応、すなわち行動とか性格とかを矯正すべし、ということなのかもしれませんが。どちらの方が経済学的に得なのか知りたいところです。