あるパン屋がある。
ここに、たった一つだけ、激辛わざび入りのクリームパンが売られているとしよう。パンを買いに来る普通の人たちには、全く見分けがつけられず、ただのクリームパンにしか見えないのだ。これは店主がわざと紛れ込ませていたものだ。
そういう時、たまたまパン屋に買いにきたお客が、他のパンには目もくれずに、一つしかないわさび入りパンを取り上げて、「このパンは少し変じゃないか?何かおかしいですよ」と店の人に言ったとしよう。
このわさび入りパンの存在を知っているのは、店主とパン焼き職人だけだとすると、どうしてその客がたった一つのわさび入りパンを見分けることができたのか、ということを疑問に思うであろう。いくつも他にパンがあるのに、何故正確にそのパンを取り上げることができたのか?種類も数も豊富に置いてあったのに、どうやって特定のパンだけを見分けられたのか?
店主は、「きっとパン焼き職人が、こっそり情報を漏らしたのではないか、あの客に裏で教えておいたのではないか」というふうに疑うのではないだろうか?
普通の思考力の人間ならば、そういうことを考えるだろう、ということさ。
あてずっぽうに取り上げたって、こんな偶然などあり得ない、と。そういうことなのだよ。大体、何故「このパンをください」じゃなく、「パンがおかしい」などということを言ったのか、というのが気になるわけだ(笑)。
これまでに、わさび入りパンを見破られたことなどなかったのに、どうやってあのわさび入りパンを見分けることができたのだろうか?
これこそが、店主にとっては底知れぬ恐怖、ということになりうるのである。
そうして、泡食った店主は、うっかりパン焼き職人にこう問い詰めるだろう。
「まさか、お前がバラしたんじゃないのか?」と。
その姿がまんまと「実はわさび入りパンを紛れ込ませていました」という悪巧みを炙り出す結果をもたらすわけである。本当はパン焼き職人は漏らしてなんかいないんだよ。だが、店主がパン焼き職人を疑って激怒して、店から叩き出していたりする姿を見れば、わさび入りかどうかを確かめる術がない客であっても、「ああやっぱりな」と確認できる、ということなのさ。本当にクリームパンじゃないかどうかを、自分で食べて確かめられるわけじゃないんだから(笑)。店主の慌てた対応と職人を叩き出す姿は、「あのパンはクリームじゃない別なものが入っていた」という確信を持つに至らせる、ということさ。
店主が焦って問い詰めたりしなければ、確信を持つまでには至らせることなどなかったのさ。だけど、普通の人にとっては別にどうってことないのに、わさび入りの秘密を知っている人間にとっては、まさにギクリとするってことなんだよ(笑)。
そのさまこそが、意味のあるものということ。
じゃあ、どうやってその客がパンの異常を見分けることができたのかって?
特殊能力が備わっていて、透視でもできたんじゃないのかな(笑)。
ほら、昔から千里眼っていうじゃない。
理由が判らないからこそ、向こうには恐怖ということになるわけで。
これまでは、気を遣って「情け」をかけるべき、と考えたりもしたけれども、そういう甘い顔をしていると、増長するだけの傲慢な連中ばかりだということを思い知らされたよ。
情けを逆用し裏切るような相手には、お仕置きじゃなければ効果がない、ということがわかったんですよ。そういう相手なのだ、と。
だから、手厳しく追及してゆく、そういう方針に変更しておきました。
妥協も許すまじ、と。
あらゆる場面で、敵対的対応ということを助長してゆくことになるでしょう。
愚策を弄した代償というのは高くつく、ということを身をもって知っていただきとうございます。
ここに、たった一つだけ、激辛わざび入りのクリームパンが売られているとしよう。パンを買いに来る普通の人たちには、全く見分けがつけられず、ただのクリームパンにしか見えないのだ。これは店主がわざと紛れ込ませていたものだ。
そういう時、たまたまパン屋に買いにきたお客が、他のパンには目もくれずに、一つしかないわさび入りパンを取り上げて、「このパンは少し変じゃないか?何かおかしいですよ」と店の人に言ったとしよう。
このわさび入りパンの存在を知っているのは、店主とパン焼き職人だけだとすると、どうしてその客がたった一つのわさび入りパンを見分けることができたのか、ということを疑問に思うであろう。いくつも他にパンがあるのに、何故正確にそのパンを取り上げることができたのか?種類も数も豊富に置いてあったのに、どうやって特定のパンだけを見分けられたのか?
店主は、「きっとパン焼き職人が、こっそり情報を漏らしたのではないか、あの客に裏で教えておいたのではないか」というふうに疑うのではないだろうか?
普通の思考力の人間ならば、そういうことを考えるだろう、ということさ。
あてずっぽうに取り上げたって、こんな偶然などあり得ない、と。そういうことなのだよ。大体、何故「このパンをください」じゃなく、「パンがおかしい」などということを言ったのか、というのが気になるわけだ(笑)。
これまでに、わさび入りパンを見破られたことなどなかったのに、どうやってあのわさび入りパンを見分けることができたのだろうか?
これこそが、店主にとっては底知れぬ恐怖、ということになりうるのである。
そうして、泡食った店主は、うっかりパン焼き職人にこう問い詰めるだろう。
「まさか、お前がバラしたんじゃないのか?」と。
その姿がまんまと「実はわさび入りパンを紛れ込ませていました」という悪巧みを炙り出す結果をもたらすわけである。本当はパン焼き職人は漏らしてなんかいないんだよ。だが、店主がパン焼き職人を疑って激怒して、店から叩き出していたりする姿を見れば、わさび入りかどうかを確かめる術がない客であっても、「ああやっぱりな」と確認できる、ということなのさ。本当にクリームパンじゃないかどうかを、自分で食べて確かめられるわけじゃないんだから(笑)。店主の慌てた対応と職人を叩き出す姿は、「あのパンはクリームじゃない別なものが入っていた」という確信を持つに至らせる、ということさ。
店主が焦って問い詰めたりしなければ、確信を持つまでには至らせることなどなかったのさ。だけど、普通の人にとっては別にどうってことないのに、わさび入りの秘密を知っている人間にとっては、まさにギクリとするってことなんだよ(笑)。
そのさまこそが、意味のあるものということ。
じゃあ、どうやってその客がパンの異常を見分けることができたのかって?
特殊能力が備わっていて、透視でもできたんじゃないのかな(笑)。
ほら、昔から千里眼っていうじゃない。
理由が判らないからこそ、向こうには恐怖ということになるわけで。
これまでは、気を遣って「情け」をかけるべき、と考えたりもしたけれども、そういう甘い顔をしていると、増長するだけの傲慢な連中ばかりだということを思い知らされたよ。
情けを逆用し裏切るような相手には、お仕置きじゃなければ効果がない、ということがわかったんですよ。そういう相手なのだ、と。
だから、手厳しく追及してゆく、そういう方針に変更しておきました。
妥協も許すまじ、と。
あらゆる場面で、敵対的対応ということを助長してゆくことになるでしょう。
愚策を弄した代償というのは高くつく、ということを身をもって知っていただきとうございます。