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経済学界という病~事例1

2010年06月21日 13時13分14秒 | 経済関連
前にも触れたが、多分岩本教授は自分の意見の何が問題とされているのかさえ、理解できないのではないかと思う。それは、実務的な考え方を理解しようとしないからだろうと推測している。
(※18時頃:銀行券残高及び日銀当座預金残高を追加しています、載せるのを忘れていました)


続々・岩本東大教授の論を信じると、こう騙される


岩本教授は、供給オペでマネタリーベースが膨らむ、と決めつけていたわけである。
だが現実は、そう単純ではないだろう。


「オペ」でマネーを供給するものといえば、一般的なオペとして現在の「国債買現先」のことだ。日銀のバランスシートの資産サイドには、この「国債買現先勘定」があるが、その残高が増減するのは確かである。ただし、ここにはいくつかの落とし穴がある。

日銀のいう「オペ」というのは、通常の場合であると「長期国債買入償却」を含むものという前提にはないだろう(あくまで推測ですが)。供給オペという名の下に、買現先が積まれても、他の資産項目の変化があれば、現実の「マネタリーベース」が増加するとは限らない。極端な例でいえば、保有する長期国債の持ち高が減少するだけで、買現先残高の増加分をひねり出すことは可能である。


マネタリーベースというのは、拙ブログ記事にも書いたように、発行銀行券+流通貨幣+日銀当座預金残高の合計なのだから、「負債および純資産」サイドの銀行券残高や当座預金残高に変化がなければ、現実のマネタリーベース増加とはなっていない、ということだ。
マネタリーベースの増加をもたらさないように、「買現先」増加を実行できないわけではない、ということ。

だから、岩本教授なんかが単純に考える「供給オペでマネタリーベースは膨らむ」ということには、前提条件というものがある、ってことだ。

それは何か?
他の資産項目に変化がない、とか、他の資産が一定である時、ということである。

この状況で買いオペ(買現先)を実行すると、バランスシート総額が必然的に増大することになり、その増大分は純資産項目(資本とか引当金等)以外の、基本的には発行銀行券や当座預金残高を増やすということをもたらすはず、ということである。つまり、これこそがバランスシートの拡大、ということの意味である。
もしもバランスシートの負債サイドを全く変化させない、ということなら、買現先の額を増やしたとしても他の資産項目を減らして、マネタリーベースを変えないことはできてしまう、ということである。


日銀がやってきた方法というのは、このマネタリーベースを増やさない、むしろ純粋に減らすか相対的に減らすということだったのだ。
(参考記事:日銀の自慢? 、88~89兆円程度の狭いレンジという話)


実際の例で見てみよう。

◎05年12月

・買現先勘定 4兆1560億円
・マネタリーベース 113兆466億円
・銀行券 76兆7144億円
・当座預金 33兆5463億円


◎06年9月

・買現先勘定 7兆1969億円
・マネタリーベース 86兆9660億円
・銀行券 74兆1389億円
・当座預金 11兆7944億円


◎06年12月

・買現先勘定 5兆3284億円
・マネタリーベース 90兆4664億円
・銀行券 76兆8297億円
・当座預金 12兆9662億円


◎10年5月

・買現先勘定 2兆4167億円
・マネタリーベース 97兆4795億円
・銀行券 76兆68億円
・当座預金 14兆1756億円


05年は日銀当座が30兆円超という、所謂「日銀式量的緩和」だったので113兆円以上のマネタリーベースだった。その後に量的緩和解除となった06年には、9月時点で約87兆円まで急激な減量をした(当時にも拙ブログでは批判した)ということ。岩本教授の言う、供給オペであるところの、買現先は残高がマネタリーベースを反映しているというわけではないことは、数字を見ると明らかであろう。

(ついでに追加ですが:銀行券残高と当座預金残高は量的緩和解除後の推移がほぼ安定しており、それは日銀がマネーサプライを絞ってワザと反リフレ的政策に固執し続けたことを物語っているのである。典型的な天邪鬼的思想傾向が日銀にはあるのであり、その誤魔化しの為だけに自己正当化を繰り返してきたのである。姑息な政策―30兆円の新オペとか、3兆円の成長分野融資オペなど―を採用してきたのは、そういう理由であろう)


結局、オペの量とかだけではなくて、定義されているところのマネー量(主に銀行券と当座預金残高、硬貨なんかは数字が5兆円程度で変動が小さく流通量自体が減る傾向)を見なければ分からないだろう、ということだ。


日銀がいくら買現先オペを打っても、札割れとかだし供給しても意味ないよ、とかほざくわけだが、それはマネタリーベースを増大させるような国債買いを行っているわけではないから、だ。バランスシートを拡張するに当たり、最も基本的なことをやるのであれば、資産サイドに利付の長期国債を買い、負債サイドでは発行銀行券残高を増大させること、なのである。


しかし、日銀には絶対に認めなくない、という事実があるのだ。
それは、自らが失敗したということ、だ。
多くのリフレ派たちが、極端に言うと「札を刷れ、そして国債を買入しろ」と主張していて、それをそのまま実行してしまうと、完璧な敗北を認めることになってしまう、だから、日銀批判派が主張していたような手法をそのまま「やるわけにはいかない」という根性のねじ曲がった、外道のような信念というのがあるのだ。

バランスシートを拡張するのに、銀行券は増やしたくない、当座預金残高もかつての「やりたくなかった量的緩和」を再現することになるのでやりたくない、ということで、他の方法なんて残ってないのさ。

そうすると、例えばやらなくてもよいような「個別企業への資金供給」みたいな30兆円オペを打つとかをやって、他方、紙幣と当座以外の項目で数字を水増ししているだけなのだ。今回の成長分野への3兆円融資とかいう、ロクでもない提案というのも「日銀はやる姿勢を見せております」という為だけのものだ。


因みに、負債サイドの何が増大したかというと、売現先オペだ。これが20兆円以上もある。

岩本教授あたりだと、この売りオペが何をするものなのかは理解が困難かもしれない。
買現先の10倍もの残高なのだ、ってことを、よく考えてみよ。


日銀は、緩和なんかしてないんだよ(笑)。
そういうことを真剣に考え、研究をやっているのか?
東大教授とかでも、こうも簡単にペテンに引っ掛かるというのは、どうしてなのかな。


全く、机上の空論をもてあそぶだけの学者さまってのは、役に立たないってことだな。
考える能力に劣るとか、思考力が欠如しているとか、そういうことなのですか?

大学教育というのは、一体何だ?
経済学教育というのは、どうなっているのか?


白川総裁が講演で挙げた「実務」というのは、それなりの意味が込められているってことさ。「理論バカ」の存在のお陰で、大助かりってことなんですわ。

正しく理解できてない、知識もない、だけど、中途半端に偉そうで経済学の理屈をこねる技術だけは持っている、という手合いがいることで、まんまとハマるということですわ。