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統合情報会議

2005年01月10日 16時21分55秒 | 政治って?
今日の読売新聞朝刊に『緊急事態「統合情報会議」設置』の記事がありました。
以下に一部抜粋を記します。




自民、公明、民主の3党は9日、大規模テロや大災害などに対処する政府の基本方針を定める「緊急事態基本法案」の概要を固めた。

3党がまとめた概要によると、大量破壊兵器によるテロや大規模な災害など国家的な緊急事態が発生した場合、閣議の手続きなどを簡略化し、首相が機動的に自衛隊や警察、各省庁を指揮できるようにする規定を法案に明記する。

 また、緊急事態に備えた政府の情報分析・評価体制について、3党は「各省庁がばらばらに情報の評価などを行う現状を改め、政府として統一した対応をすべきだ」との見方で一致。〈1〉官房長官を議長とし、外相、防衛長官ら関係閣僚が加わる統合情報会議を新たに設ける〈2〉統合情報会議が定期的に、政府が集めた情報を分析・評価し、政府の対応を決定する――との規定を盛り込むことにした。統合情報会議は、特定の情報を優先的に収集するよう関係省庁に指示したり、警察や自衛隊の出動を首相に進言したりできるようにする。

 また、同会議の下に統合情報本部を設け、情報担当の専門家らが警察庁や外務省、防衛庁などの集めた情報を一括して分析・評価する体制を整える。内閣情報調査室の陣容を拡大し、同本部に再編する案が浮上している。これに伴い、官房長官を議長とする既存の「内閣情報会議」、各省庁情報担当幹部らによる「合同情報会議」は新組織に再編・吸収されることになる。



以前私は民主党が掲げた情報相の批判(情報担当相って?)をしたことがありましたが、今回は3党合意を図り法整備をしていくようです。

その記事でも触れましたが、安全保障会議設置法によって安全保障会議と事態対処専門委員会の存在が法的に規定されています。これらと、上の「統合情報会議及び同本部」とがどのような関係になるのかは不明です。以下に安全保障会議設置法の一部を抜粋します。



第一条  国防に関する重要事項及び重大緊急事態への対処に関する重要事項を審議する機関として、内閣に、安全保障会議(以下「会議」という。)を置く。

注:このように「重大緊急事態」について言及されているため、既にその機能を有していると考えられます。


第二条  内閣総理大臣は、次の事項については、会議に諮らなければならない。
一  国防の基本方針
二  防衛計画の大綱
三  前号の計画に関連する産業等の調整計画の大綱
四  武力攻撃事態等(武力攻撃事態及び武力攻撃予測事態をいう。以下同じ。)への対処に関する基本的な方針
五  内閣総理大臣が必要と認める武力攻撃事態等への対処に関する重要事項
六  その他内閣総理大臣が必要と認める国防に関する重要事項
七  内閣総理大臣が必要と認める重大緊急事態(武力攻撃事態等及び前号の規定により国防に関する重要事項としてその対処措置につき諮るべき事態以外の緊急事態であつて、我が国の安全に重大な影響を及ぼすおそれがあるもののうち、通常の緊急事態対処体制によつては適切に対処することが困難な事態をいう。以下同じ。)への対処に関する重要事項

注:この第4、5、7号の規定で既に武力攻撃(予測でも可)、テロ攻撃や他の国家的緊急事態(大規模災害等)についての規定がなされているように思います。


第五条  議員は、次に掲げる者をもつて充てる。
一  内閣法 (昭和二十二年法律第五号)第九条 の規定によりあらかじめ指定された国務大臣
二  総務大臣
三  外務大臣
四  財務大臣
五  経済産業大臣
六  国土交通大臣
七  内閣官房長官
八  国家公安委員会委員長
九  防衛庁長官

2  議長は、必要があると認めるときは、前項に掲げる者のほか、同項に掲げる国務大臣以外の国務大臣を、議案を限つて、議員として、臨時に会議に参加させることができる。

3  議長は、前二項の規定にかかわらず、第二条第一項第四号から第七号までに掲げる事項(同項第六号に掲げる事項については、その対処措置につき諮るべき事態に係るものに限る。第八条第二項において同じ。)に関し、事態の分析及び評価について特に集中して審議する必要があると認める場合は、第一項第一号、第三号及び第六号から第九号までに掲げる議員によつて事案について審議を行うことができる。ただし、その他の同項又は前項に規定する議員を審議に参加させるべき特別の必要があると認めるときは、これらの議員を、臨時に当該審議に参加させることを妨げない。

注:総務・財務・経産以外の閣僚で、第2条に規定されている事項(第4~7号)に関して集中的に審議(主に早急に決めるべき事態ですね)することが出来ます。議長は総理大臣です。死んだり欠けた場合は、第1号の国務大臣です(副総理?かな)。


第七条  議長は、必要があると認めるときは、統合幕僚会議議長その他の関係者を会議に出席させ、意見を述べさせることができる。

注:必要があるときは、防衛庁からの意見を述べることができることになっています。


(事態対処専門委員会)
第八条  会議に、事態対処専門委員会(以下「委員会」という。)を置く。
2  委員会は、第二条第一項第四号から第七号までに掲げる事項の審議及びこれらの事項に係る同条第二項の意見具申を迅速かつ的確に実施するため、必要な事項に関する調査及び分析を行い、その結果に基づき、会議に進言する。
3  委員会は、委員長及び委員をもつて組織する。
4  委員長は、内閣官房長官をもつて充てる。
5  委員は、内閣官房及び関係行政機関の職員のうちから、内閣総理大臣が任命する。

注:この委員会がほとんどの緊急事態に対して対処する機能を持っていると考えられます。ただし、常設組織ではないのかもしれません。法的には会議が存在する限り、設置が可能と思われます。また、安全保障会議の議長・議員は非常勤と規定されています(総理とか閣僚が交代するからでしょう)。官房長官を委員長とする専門的な委員(行政機関職員)から構成されており、調査・分析・意見を進言することになっています。


第十条  会議に関する事務は、内閣官房において処理し、命を受けて内閣官房副長官補が掌理する。

注:これは、この通りですね。内閣官房副長官補がこんな重要任務があるのですね(こんな役職も知りませんでしたが)。



この他に内閣情報調査室(ハードボイルドとか漫画とかでお馴染みですね)、官房長官が議長の「内閣情報会議」、各省庁情報担当幹部等による「合同情報会議」があり、今後吸収再編予定とのことです。結構色々な組織が存在していますから、法制面でも組織面でも運用効率の高い組織に再編していくことは賛同できます。「外交とインテリジェンス」が重視されますから、それを支える組織は最重要部門でしょう。

また、緊急事態での対応は勿論大切ですが、テロ対策でも述べたように、危機を「未然に防ぐ」という視点から平時における情報管理・分析評価を軽視するべきではないと思います。「9.11」においては事前情報はあったとされており、また国内においては「地下鉄サリン事件」が起こったとき警察(公安)当局が掴んでいた情報はあったと思う。これら事例では、情報をどのように処理したか、どのように重大な事態に陥るかが示されているかもしれない。完全に防ぐことが難しいとしても、それに近づけられる体制作りが必要です。

在外公館からは定期的にレポートや重要情報の連絡が入っているとは思いますが、政府関係者以外にも、現地軍事関係者や諜報機関関係者の情報、現地日本企業関係者からの情報等、集められるところはあらゆるツテを使って収集に当たるべきでしょう。




これを機会に、「安全保障会議」の確認・位置づけと、通常国会で成立予定の「緊急事態基本法」について整理して、組織作りを考えてほしいと思います。


ジャーナリストの方のブログ

2005年01月09日 11時43分59秒 | 俺のそれ
地方紙(北海道新聞)の記者をされている高田氏のブログに私の拙文を御紹介頂きました。高田氏は道警裏金問題に取り組んでこられた方です。

札幌から ニュースの現場で考えること




非常に精力的にこの問題に取り組まれてきたことがわかりました。また、ジャーナリストとしての考え方や、どうあるべきか、ということについても記事にされております。

これからも注目していきたいブログです。



警察裏金問題は、道警への切り込みがなければ、警察庁を含め大量の処分はなかったと思っております。地方発の新聞が非常に大きな「一石を投じる」結果につながったと思います。

これに端を発して、全国の警察組織の厳密な調査が行われ、組織改革に取り組んでくれることを切に願います。

でも、未だ上層部には「正直に」改める姿勢が見られませんし、都道府県警の「自首」も見られないようですから、まだ「心から反省」はしていないようです。情状酌量の余地はないと言わざるを得ないでしょうね。


公営住宅の改革提案

2005年01月09日 11時37分57秒 | 経済関連
以前から思っていたのですが、自治体がもつ公営住宅は効率的なのかという疑問です。昔の時代とは変わってきましたから、住宅供給を公的に行わなければならないほど、住居に困る事はなくなってきているのではないでしょうか。もちろん、過疎地とか地域によっては特別な事情があるとは思うのですが、自治体が大きな不動産を取得して建設・維持をすることは無駄が多くなるし、リスクも当然発生します。これからの時代には、そのような手法はそぐわなくなったと感じます。



民間のマンション等がある程度整備されていたり、充足しているならばそれを活用した方がよいと思います(あまり民間の賃貸マンションとかが無いような地域では、別な考えが必要かもしれません)。


まず自治体に民間業者が所有するマンション等を申請してもらい、基準に適合する物件かどうか判定します(条例等で基準の作成が必要ですね)。自治体側が適合と認めたら、公認住宅(変な名前ですが、仮にこう呼ぶことにします)として登録しておきます。入居希望者は、希望の住所地から探すことができ、選択の自由度が増えます。例えば家賃が7万円としたら、公費で1万円を助成するという具合です。他は通常の賃貸契約と同じようなもので、管理費とか駐車場費とかは入居者が払います。所得水準や家族構成などに応じて助成額を変えることにします(簡単な計算式から算出できるような仕組みでよいでしょう。ほぼ所得比例と考えます)。低所得の人には多く助成するとかですね。この手法は生活保護の人にも使えます。生活保護については別な記事で検討します。

所得が増加して助成が適切でなくなれば、助成額をゼロにするだけで済みます。敢えて転居してもらう必要がありませんね。その分を他の人の助成に回すことができます(新たな入居希望者募集ということですね)。富の社会的再配分には役立つでしょう。今よりも公平性が保たれると思います。現状は抽選に外れると延々と待たねばならなかったり、一度入居してしまうと入居者の所得が上がっても出ていってもらうのは困難ですね。他に低所得で入れない人達がたくさんいるのに、です。
転居については、単にそこの助成を打ち切れば済むのです。空室になることで自治体の不利益はありません。現状回復は入居者と民間業者の間でやって頂きます。


自治体は登録先を確保するようにしておけばよく、どうしてもそれが困難な場合には、公認住宅建設に税制上の優遇措置をつけるとか、建設費用の一部補助をすれば促進効果は期待できるかもしれません。また、民間業者は公認住宅の基準に合格するような住居を建設しようと努力しますから、よい物件が増える効果があると思います。民間業者は、よい物件を多く登録でき希望者が多ければ、不動産業者を通すことなく優先的に入居者が来てくれるのですから、願ったりかなったりでしょう。

それに、物件のバリエーションも豊富になるでしょう。立地とか規模とか、あらゆる面で希望者の選択余地が増えます。空室であっても、自治体にはリスクが発生しません。民間業者は公認住宅としても貸せるし、給与水準の高い人には普通の物件としても貸せるのです。埋まれば登録からはずれるだけで済みます。また公認住宅の適合物件ならば、借り手も安心して借り易くなるでしょう。


自治体は自ら不動産を取得する必要もなく、バカ高い建設費をふっかけられることもなく、談合も発生しないので、非常に有利です。建替え問題もないし(民間業者は競争のために自然と建替えが進んでいますね、ボロければ借り手がつかないので)、維持管理はその民間業者が通常通り行ってくれます。自治体側は単に家賃助成費用だけで済むのですから、楽です。滞納や不払いも生じません。入居者は民間業者との契約になりますから、そんなことは当然出来ませんね。


自治体の公営住宅が営利事業ならばプラスに作用しますが、普通は違うでしょう。続ければ続けるほど負担が多くなるだけだと思います。もしも、公営住宅がなくなれば、不動産業界は活性化へと向かうと思うのですが。自治体所有の広大な土地とたくさんの建物は、売却したり転用したりして、新たな価値を生み出すものへと転換してもらえるかもしれません。結構いい場所に建っている公営住宅はたくさんあると思います。民間に売れたら、固定資産税も増えますね。

ただ、一気に整理はできないでしょうから、古い物件から順次入居者の転居を促進するような政策(例えば土地の転売先を探して、それが見つかれば、公営住宅住民の転居費用を出してあげて他の公認住宅へ移ってもらうとか)を考えてみる必要があるでしょう。
条件のよい土地は、有効活用してもらうように考えて、転売が無理でも借地料を取るとかでもいいですし。うまく考えたら自治体の利益に繋がる可能性があります。複合施設を民間と共同で建設して、営利事業を積極的に行う(合法ならばですが)とか、何か考えた方がいいです。


いずれ建物は必ず老朽化するので、その時に建替え問題が発生するのは目に見えてますから、安易に公金を投入するのではなく、有効な不動産活用を考えるべきですね。旧国鉄用地がいい例です。随分と用地の有効利用が進みましたし、複合施設等の効果がかなりありましたから。


高齢者の増加は、独居老人の増加も考慮する必要がありますが、現在民間業者の高級な高齢者向け物件が多くなっていますが、賃貸物件はそれほど多くはありません。資産のあまり多くない高齢者でも入居できるような、公認住宅を増やす方向で行けば、いずれ公営住宅はなくせると思うのです。

全ての物件が適合住宅として申請してきたらどうするか、という問題があるかもしれませんね。その場合には、別な抽選とかが必要になるかもしれません。例えば「築5年以内」という選考基準で募集し、当選2百戸を登録し、予備登録として2百戸とする、のようなものでしょうか。

公営住宅の空き待ちは減らせるようになるかもしれません。入居者の所得水準によって決まるので、所得の低い人から助成を割り当てていきますから、不公平感は少なくなると思いますし、自治体は予定財源が尽きそうなら新たな入居者募集を停止すれば大幅な赤字はなくせるでしょう。

如何でしょうか?



憲法改正への道標

2005年01月08日 23時43分49秒 | 政治って?
私がブックマークに入れさせて頂いている「ぷち総研」さんのブログに、憲法改正についての興味深い記事が出ています。



今の日本と改憲論、これは多くの国民にとって、非常に重要な問題です。政府は通常国会で国民投票法案を成立させ、改憲に向けて準備する腹積もりのようです。

自民党は新憲法の草案を作ってはみたものの、内部分裂のような様相を呈してしまい、意思統一までには紆余曲折がありそうです。また、民主党を含めた野党の動きにも気を配らねばなりません。改正案が出来上がり、合意にこぎつけるには、政治的に多くの問題を解決しなければならないでしょう。

国民にとって、現憲法はどのような意味があるでしょうか。日本人の多くは学校で習い、前文を暗記させられたりしたこともあるかもしれませんし、試験勉強の為に覚えたりしたこともあるかもしれませんね。しかしながら、実質的な憲法論議は多くの国民には未経験のことであるかもしれません。


多くの国民は改正を望んでいるのか?という根本的な疑問の答えは、私にはよくわかりません。しかしながら、日本の進むべき道を考える時、例えば国連での活動をどのようにするか、日米関係のあり方、アジアでの日本の役割、中国、北朝鮮や韓国との関係、等々国民が真剣に考えるべきかと思います。その上で、改憲論について議論されるべきなのでしょう。

国民にとっては、結局のところ「誰かが与える」憲法という性質には違いがないのかもしれません。与えられるものならば、出来るだけ自分達の主張とか意思表示をした上で、いわゆる「民意」を反映したものを作り上げていきたいとも思うのです。私自身は現憲法で特に困ったことはありませんでした。せいぜい暗記が面倒で、少し苦しめられたことぐらいです(笑)。それ故、それほど改憲論に拘ってはいません。

政治の手法や政策決定のあり方について考える方が、先のような気がするのも事実です。改憲以前に、日本の将来像も国際関係の展望も不明確なことの方が心配です。「プチ総研」のpriestkさんが仰っているように、「憲法は万能ではない」のです。「国民の側に、政府の不当な行為に声を上げるだけの意思があるかどうか」、また「政府の具体的行動」が重要なのであって、条文が全てを規定してくれるわけではないのです。


「熱ト」甲子園―告訴編

2005年01月07日 21時25分42秒 | 社会全般
切込隊長氏が再び木村氏を取り上げております。何と刑事告訴だそうです。

木村氏は先日、日本振興銀行の社長に就任したばかりであり、今月に予定されている株主総会へ向けて経営陣の体制を固めるというような報道がありました。その株主総会を睨んでの、このタイミングで刑事告訴だそうです。

因みに検察の受理は1月4日ですから、仕事初めの日にあまり嬉しくない告訴を受理ということかもしれませんね。告訴は半年以内と決まっていたように思いますから、7月以降の公表された内容に「名誉毀損」に該当する事実があったということなのでしょう。何についてのことなのかな?私にはよくわかりませんが、ZAKZAKの記事によると「取締役会の議事録等(?)の内部資料持ち出し」が虚構であったということのようですが・・・。新聞発表のように公表されてしまったのでしょうか・・・?
落合氏の解雇事由が「守秘義務」違反ならば、事実に基づかない不当解雇ということにもなります(落合氏が正しければ)。

古いですが、「一体どうなってしまうのか!?」という感じですね。

切込隊長氏は「このままいくと本件は不起訴相当でしょう」と予測を述べておられますが、落合氏側がそれで納得するとも思えません。下手すりゃ、「検察審査会」に申し立てということにもなるかもしれません。そうなれば、起訴か不起訴かの結論が出るのは、まだまだ先の話になるかも。また、木村氏は以前の記事で、「落合氏が風説の流布」をしていることの証拠として切込隊長氏の記事について「ありがとう」と書いておられたので、ひょっとして告訴には「告訴返し」とかに発展するのかな?すごいことになってしまいますね。

今の状況は、木村氏vs落合氏の明確な構図となっており、切込隊長氏は当事者から離れて傍観者の立場となっていますが、もし木村氏が「告訴返し」をすると検察側証人として切込隊長氏が出廷せねばならないかもしれませんね。

「こくそがえし」はひらがなで書くとちょっと危険かも。関係ないですが。


おそらく株主総会に向けての陽動作戦でしょうか。前の記事(「熱ト」甲子園―沈黙編2)に書いたように銀行法第4条第2項第2号規定を木村氏にぶつける作戦を立てたのかもしれない。この解釈は認可後にもそれほど重要な意味があるとは思いませんが、「検察の事情聴取」を代表者の不適格事由に挙げると考えるならば、株主総会の席上でそれに該当する可能性のある代表者を解任するに足る理由の根拠となすことができると考えても不思議はありません。

通常銀行免許の取り消しはありませんが、銀行が法令・定款・処分に違反した時には、業務停止命令や役員の解任、最悪取り消し処分を課すことが出来ます(銀行法第27条)。通常定款では、刑事処分を受けた者は解雇とか役員解任となっていることが多いでしょうから(当該銀行の定款がどうなっているかは定かではありませんから、私個人の意見です)、たとえ「名誉毀損」と言えども刑事処分に変わりはありませんので、その役員は解任されるでしょう。もししないと銀行法第27条規定の適用となってしまうからです。

このシナリオは私の個人的意見ですから、落合氏がそこまで考えて告訴したのかどうかは分りません。でも、大変なことになってしまったと思います。

今後の展開を見ていくしかありません。

戦場はついに法廷へと移って行きそうです。





緊急首脳会議

2005年01月07日 17時56分03秒 | 外交問題
小泉首相は町村外相とともに復興会議に参加した。国連中心の体制を作るように相当「骨をおった」ようである。


今まで新春特別企画(笑)に記事を割いてきたので、話がかなり進んでしまいました。


日本の尽力はアジア地域の人々にとって意味のあるものとなったでしょう。外務省をはじめ、官邸や防衛庁の動きは、随分と良くなったと思いました。日本の首脳が緊急会議に2人も参加したことも、大きなプラスになったと思います。日本の真剣さはアピールされたでしょう。

報道では、日本の支援金額がオーストラリアやドイツなどに抜かれてしまったと言われていますが、金額の多寡ではなく、米国の説得工作をし、欧州各国の不満をそらし、国連を中心とした体制を作り出したことは、高く評価できると思います。中核グループに固執しなかったことが外交上非常に意味があったと思っています。インドだって、国連中心ならば、ということで受け入れ易くなったでしょう。


真の功労者は、表舞台に必ず立たなければならないというものではありません。人のために、そっと汗をかいて、困っている時に手を差し延べ、その手柄を自分のものとしなくとも、心ある人々は感謝の気持ちを忘れないでしょう。また、国連内部での日本の評価も高いと思います。

何より、米国を中心から外して、国連に花を持たせた最大の功労者は日本であったとアナン事務総長も感じていることであろう。彼が日本の常任理事国入り問題の時に、中国への働きかけや拒否権発動への牽制をどれくらいしてくれるかは未知数ではあるが、アナンさんは国連がうまく機能するには日本の後ろ盾が必要であることを実感しているはずだから、今回の日本の働きを評価していると思う。


日本の国際貢献における自衛隊の運用についても、イラク派遣なんかよりはるかに意義があると思う。今回の自衛隊派遣は、今後の海外活動の際のいい教訓になるであろうし、ノウハウの蓄積にも繋がるであろう。

外交の正しい考え方ができてさえいれば、自衛隊は必要とされる場面が出てくることを防衛庁も認識したであろう。防衛庁自身、外務省が「余計なこと」をするという認識ではなくて、外務省と防衛庁は切っても切れない関係にあることを、今回の一件で十分理解するであろう。同時に外務省は、現地で自衛隊をいかに有効に運用させられるかは国際交渉・調整が重要であると分ったであろうし、現地の情報収集に彼らが役立つことを知るであろう。反目ではなく、相補の関係を目指せば互いによい仕事ができるし、そのことが日本の国益に直結するのだという認識に立って、省庁の壁を越えて相互理解・協力するべきであろう。


全体としては、よく頑張っていると思うし、政府の対応も悪くはなかったと思う。あとは、不明邦人についての情報や調査がどの位進展が見られるか、でしょう。混乱は続いていますから、なかなか難しいとは思いますが、1人でも多くの方が助かるように祈っています。


市立札幌病院事件8

2005年01月06日 22時28分47秒 | 法と医療
新春特別企画の最終回です(長くて辟易されていると思いますが、ごめんなさい)。
一応、テレビの時代劇スペシャル10時間ものなみに、超長いシリーズで押してみました。本当は別な記事も入れたかったのですが、挟まると皆さんこの記事を読んでくれないのではないかと思って・・・

では、最後いってみます。



判決については、求刑通り「罰金6万円」でした。以下に要旨を記載してみます。

1 本件各行為が医師法17条に違反すること、違法性が阻却されないことについて
・本件各行為は、いずれも医師法17条が禁止する医行為に該当
・指導医の指導監督を受けていたとしても、その行為は本件歯科医師ら自身の行為
・歯科医師が歯科に属さない疾病に関わる患者に対してそのような手技を行うことは、歯科医師がその手技にどんなに熟達していても、明らかに医師法17条に違反する。
・そこで行われる個々の具体的行為の実質的危険性の有無及び程度にかかわらず、医科と歯科の資格を峻別する法体系の下では、許されない。

私の疑問:
ここで示されたことは、非常に重要です。例え研修目的であっても、具体的行為は全て違法となるということです。指導医の指導監督があっても違法です。これについては、「医行為」として明確に判示されています。このことは、全ての研修について適用されますから、厚生労働省が通知した研修ガイドラインは違法ということになります。なぜ裁判所判決が出た後、法務省(担当なのか知りませんが、ここなのかな?と思いましたので)とかが厚労省に「ガイドライン」は違法ですから、医科学生の研修や看護師の点滴・注射行為や歯科医師の医科研修等での行為について、「全て違法行為なので、取りやめるように」勧告したりしないのでしょう?それらのガイドラインを全廃するように改めさせなければならないのでは?違法行為との司法判断がされているのですから。ガイドラインや指針等の通知は法的には通常効力はないので(実質的には拘束されていることが多い、例えば「旅客機乗務員の除細動」ですね)、司法判断の方が優先されるべきでしょう。よって、前に出した通知を取り消す、新たな通知を出させなければおかしいでしょう。

麻酔科研修においても医行為を伴っているわけであり、そのことについて何の解釈もないし、全国的に行われてきたような研修を被告が認めたというだけで、刑事罰が与えられるという判断なのはなぜでしょう?


2 被告人が共同正犯の責任を負うことについて
被告人は、本件歯科医師らが行った本件各行為について個別に認識していたとは認められないが、センターの責任者として、研修内容について上記のような指示をし、その指示に従って研修が行われ、その結果本件歯科医師らが本件各行為を行ったのであるから、本件歯科医師らが研修医として本件各行為を行うについて、欠くことのできない決定的な役割を果たしたものと認められる。したがって、被告人は、本件歯科医師らが本件各行為を業として行ったことについて、単にその機会を与えこれを容易にしたというにとどまらず、同人らを直接指導監督する立場にあった上級医らと共に、共同正犯としての責任を負う。

私の疑問:
「決定的な役割」を担っていたことから、上級医らと共に共同正犯としての責任がある、ということです。ですが、上級医は法的責任を問われてはいませんね(送検さえされていません)。何故なのでしょう?「上級医は共同正犯」とはっきり述べているのですから、罰する必要があるのではないでしょうか?上級医らに指示する権限を有していたことから、その責任が重いということなのでしょう。ならば、センター長である松原医師の指導監督の責を負っている病院上層部や厚労省をはじめとする行政機関の人間は、なぜ長年にわたり違法状態を放置してきた責任を問われないのか?「知らなかった、報告がなかった」と言えば許されるのか。「医行為」について医師たちはどこからも報告されたり教えられたりすることなど絶対にない。それでも、刑事責任を問われなければならないのである。全国的に行われていた麻酔科研修での医行為は、なぜ放置されてきたのか?行政にその責任がないとでもいうのか?

松原医師は麻酔科出身だそうだ。そこで、歯科医師が研修していたことを、救急でも同じように考えたとしても不思議ではないように思う。救急での基本的行為の多くは、麻酔科と共通するものが多くある。端的な例が、気管内挿管である。呼吸管理に必要な基本的な手技だからだ。そうした感覚が、救急の現場に存在していたとしても、おかしくはないと思うが。


3 その他
・歯科医師らによる本件各行為自体の犯情は、悪質とは言えず、歯科医師らについて処罰が求められていないことは、十分理由がある。
・公衆衛生の向上及び増進に寄与し、国民の健康な生活を確保することにつながるというべきであり、歯科医師らに私利私欲をはかる目的がなかったことは明らかである。しかも、本件各行為を行った歯科医師らは、いずれも歯科口腔外科という医科と重なる領域の専門分野で相応の経験を積んでおり、本件各行為を実施するについて、医師の資格を持つ研修医と比較して能力的に劣るところはなかったと認められる。
・検察官の主張するようにセンターの人材確保のために本件犯行に及んだとまで認めることはできず、もっぱら歯科医師側の強い要望に応えて、歯科医師らをセンターに受け入れたと認められることを考慮しても、被告人に対しては相応の処罰を持って臨む必要がある。

私の疑問:
行為者は歯科医師であり、その違法性についても司法判断があるにもかかわらず、歯科医師は「悪質ではなく、私利私欲を目的としていない」ために処罰されない十分な理由がある、という判断のようだ。なるほど、もっともな解釈であると思う。であるがゆえに、なぜ直接の指導監督する立場にあった上級医らも責任を問わないのに、センター責任者であった松原医師だけの法的責任を問うのか理解できない。決定権があったから、という理由だけで?


以前書いた救急救命士事件の方が、もっと明確に違法であると言えるし、法的責任を問うべきということになりかねないと思うが、かたや刑事責任は問われず、一方は罰を与えるということが、本当の正義なのか?

救急救命士の場合
・研修は5年以上前から行われていた
(長期にわたる組織的体制で継続させていたことは同じ)
・病院内での研修であり、麻酔科や救急センター等での医行為は全て違法
(救急車内でしか行為を認められていない)
・歯科医業のような曖昧な規定ではなく、救急救命士の「業」は法律で厳密に規定されている
(業務範囲は三つしかない)
・気管内挿管は厚生省告示に器具指定がなく明確に違法
(歯科医師は歯科医業で全く同様の行為を行っている)

このように違法性ははるかに明確な状況であったのに、起訴されずに済むのは、社会的正義や公共の利益に照らして、可罰的違法性が阻却されたからと推測する。不起訴は納得できうるものである。なのに、歯科医師の研修は違法で、起訴されてしまう。


本当に法は公平で、何人に対しても平等なのか?


警察の裏金事件では、某県警本部長曰く「私的流用ではないから、刑事責任はない」と。バカ言え。それなら、松原医師に何の私利私欲があるというのだ?また、同本部長は領収書偽造に関して有印私文書偽造に該当するのではないかと報道関係者から指摘され「会計担当者が法の規定をよく熟知していなかったから」と。そんな法的解釈があるのか。あまりに愚かだ。「法を熟知していなかった」で済むならば、「医業」の定義について熟知していない一般人は全員法の責任などありえないだろう!こんな発言を平気でする人間が司法の一翼を担う司法警察の長たる輝かしき『本部長』殿で、たいそう立派な法解釈を国民に披露して、その誤りについて全員「口を閉ざす」検察や裁判所や法学関係者たちばかりで構成されている日本の「法の世界」の、掟に従って国民は生きるしかないのである。


司法制度が公正なわけでも、法が平等なわけでもない。法を適用する権利を持つ人間の、本当の心があるかないかでしかない。それに期待するのは、本部長の例を見ても判るように、非常に困難であるということだ。


刑法に従って容疑者を逮捕したり取り調べしたりする人種であるはずの警察官が「刑法を熟知していない」ことを理由にして文書偽造は刑事責任を問われないが、「医師法を熟知していない」医師が人のために役立つと思って研修をさせたことは刑事責任を問われ刑事罰を与えるというのが、日本のすばらしい正義に満ちた司法制度なのである。

真に「悪質な確信犯的犯行で、常習性があり、再犯を繰り返し、反省の情がない」のは、松原医師なのか警察組織なのか考えてみるといい。検察や裁判所は、何と思っているのか是非聞いてみたい。


証言した厚生労働省の課長も同じだ。「知らなかった」「報告がなかった」「想定外であった」と答弁し、知らぬ存ぜぬを通せば、行政の責任は逃れられるというのであるから、いいよね。違法と思うなら、それを改める指導をしてこなかったことに大きな問題があることにも考えが及ばないし、国民に向かって「実情を調査する必要がない、ガイドラインは必要がない、見学だけしていたら十分」と公に発言しても、彼は何の責任も負わなくてよいのである。「歯科医業についてはよく知らない」と法廷で証言するような人間が、医業と歯科医業についての領域や法的解釈に係わる『医政医発第87号』のような公式文書を作成してもよい、というのが公式の「厚生労働省見解」のようである。


裁判はまだ続く。2審ではどうなるのか、見守っていきたい。裁判官の「心」に微かな期待をするしかない。


市立札幌病院事件7

2005年01月05日 23時46分34秒 | 法と医療
2002年9月には、厚生労働省医政局医事課長が証人として出廷しました。

絶対的医行為であるとされた気管内挿管、静脈路確保、カテーテル抜去や腹部触診等は「高度な医学的知識が必要で、医師法違反にあたる」と証言する一方、口腔外科に関わる治療の一部であれば「歯科医行為でもありうる」と明言した。「歯科医師は口腔を診ればよい」との意見や、同様の研修が全国的に行われていたことについては「報告もなかったし、想定していなかった」との見解を示した。

また、歯科の患者の容態が急変した場合などについては「歯科医師は救急処置をすることは義務ではない」と断言したとされる(裁判長は「本当に義務ではないのですか」と聞き返したそうだ)。以前の判例とは明らかに矛盾する証言を述べている(義務がないなら、以前の判例のごとく歯科医師が法的責任を負うことはなかったはずである)。

課長は東大医学部卒の医師であるらしいが、松原医師の起訴後には先の判例を指摘されて知っていたはずだ。それにもかかわらず、「自説を曲げない」頑強な態度を変えようとはしていない。また、法的解釈はいわゆる「彼の専門外」のことであろうと思う。

弁護側から歯科医師が行ってきた「医科での麻酔科研修と救急研修に差がない」ことについて質問されると、「質問の意味がわからない」と単なる逃げの答弁をしたようだ。彼の説では、どこで研修するかに関係なく、行為を伴えば違法である。しかも研修範囲については「見学だけでよい」との証言をしている。

医師の答弁とは到底考えられないものである。「見て」出来るようになるのであれば、医師の救急や麻酔科での研修など必要ない。医学生は全員が見てきていることなのだから。バカな答弁としか言いようがない。すべての手術も同様だ。見るだけで誰でも手術が出来ると考えているようだ(課長は外科が専門だったらしいが)。

ある医師は、「見ただけで気管内挿管やカテーテル留置が出来るなんて妄想だ。国家試験に合格したばかりの医師は、採血や点滴すらまともに出来ないし、一般的な看護師以下の実力しかない。実技は見ているだけではいつまでたっても上手くならない。」と言っていました(伝聞ですから、絶対的な評価ではありませんので)。


現実には、この課長証言の約1年後には前に書いた救急研修のガイドラインが通知された。結局のところ、行政の態度はこのような安易な責任のないものであるということが、はっきりと示されたと思う。


裁判での重要点は、
・研修を目的とした医療行為は「医業」に該当するか
・直接歯科医師に指示等をしていない松原医師が共同正犯となるか
・可罰的違法性は阻却されるか
などである。


検察側の「人員不足を補う目的でレジデント受け入れを独断で決定した」という主張は、ほぼ否定的で立証されませんでした。また「共謀して」歯科医師に医行為を行わせたという点についても明確に証明されなかったようです。唯一明らかとなったのは、「歯科医師が医療行為を行った」ことだけでしょう。検察側主張はほとんどが立証されたとは言えないような裁判だったと思います。検察官が描いた「絵」は誤りだらけであったと言えるでしょう(検察側の起訴についての判断が杜撰であったとしかいいようがないように思います)。


また、論告求刑では、「悪質な確信犯的犯行で常習性が顕著、反省の情がなく再犯のおそれも高い、医療現場を政治的プロパガンダの場としている」などの意図的な被告人への非難を述べています。

普通に考えて、医科麻酔科での研修と大差ない実技を伴う救急研修目的の歯科医師を受け入れ、彼らに知識や手技を教える機会と場を設けたことが違法行為であったと起訴されたのですが、そのことが「悪質な確信犯で常習性顕著」とか「政治的プロパガンダ」などと非難されるのは如何なものでしょう。「悪質」「常習性」「プロパガンダ」は、裁判のどこから立証されたのでしょう。単に検察官がそう思っているということであって、論理的に証明された内容とは思えません。言葉の操作や悪口作文を裁判に期待しているわけではないのです。ネット上の「悪質な書き込み」と大差ありませんね(個人的な印象ですが)。

これらを勘案して求刑は「罰金6万円」が相当と考えたのでしょう。これほどの「悪人」ならばもっと重い刑を求刑するんでは?「悪質」で「再犯の可能性」が高く、「反省の情」も見られないのに?一般人の感想としては、検察官の言っていることは一貫性がないように思う。「罰金2万円」を持ちかけた挙句、「大悪人」なみの修辞を並べ立て、その結果が「罰金6万円」の求刑とは?プロパガンダに仕立てたのは、厚生労働省と検察官自身なのでは?との疑念さえ生じる。交通違反の罰金なみに安いし、酒気帯び運転の罰金よりは安いでしょ?専門外なのでよくわかりませんが、形式的作文を裁判で披露する必要もないし、「大悪人」のイメージを裁判官や傍聴人に広める必要もないでしょ?裁判ってこのようなことが普通なのでしょうか。


ガイドラインが通知される約半年前に、札幌地裁から判決が出されました。果たして判決はどのようなものであったのか。この判決が研修における医療行為の範囲についての司法判断になりますから、非常に重要な意味を持つのです。次に書いてみます。


市立札幌病院事件6

2005年01月04日 16時20分13秒 | 法と医療
前の記事を読んでみて下さい。続きです。

日本には司法取引が存在しているのかどうかは分かりません。松原医師は起訴前に医師法違反を認めるならば、「罰金2万円でよい」と言われ(略式起訴?)たようです。起訴後の記者会見で、そのような発言を被告は行っていました。しかし、この申し出を受けると、救急研修が法的に大きな制約を受けることになってしまうため、拒否したそうです。



検察側の冒頭陳述は次のようなものでした。

松原医師が
・独断で歯科医師のレジデントを救命救急センターに入れた(慢性的な人員不足を補うため)
・歯科医師3人と共謀し、気管内挿管等をはじめとする絶対的医行為を医師法違反であることを知りながら行わせた
というもので、松原医師の経歴や立場などに言及し、その立場(センターの責任者であり、厚生省の委員会委員などでもあった)を利用して慢性的な人員不足を補うことを目的として歯科医師を利用したという「絵」を描いたようです。冒頭陳述としては珍しく、30分弱に及ぶ検察官の長い「演説」であったようです。

共謀事実について、弁護側から日時やどのような内容か質問したがありましたが、公判で明らかにしていくという回答だったようです。



私は「共謀」の法的定義がよくわかりません。しかし、証人の証言では、センター長であった松原医師が個々に歯科医師に医行為の内容について指示したりしたことはなく、基本的に指導的立場にあった上級医師がそれぞれ指示をしていたことは明らかでした(どこの大学病院や大きな病院でもそうですが、研修医に教授や責任者がいちいち細かな指示を与えることは少なく、直属の上級医師が教育することが多いようです。長となる者が、末端の人間に全ての指示を与えることが少ないのは会社とかでも同じようなものですね)。このような間接的な関与でも、共謀事実があったと言えるものなのでしょうか。


また、「人員不足を補う目的で」歯科医師の受け入れを決定したことについても、普通の感覚ではあり得ないと思われます。前に書いた医療制度改革5の記事でも述べましたが、若手医師に教育することは足手まといや面倒なことはあっても、戦力としては数に入れることなど到底考えられないし、新人なんてはっきり言って役立たずの存在でしかないでしょう。効率を第一に考えると、ベテランばかりで構成されている方が有利に決まっているのです。検察官はこんな簡単なことに何故気づかなかったのでしょう?

裁判に検察官と一緒に来ていた司法修習生が居眠りしていたことがあったそうですが(検察官の証人尋問があまりに的外れで、弁護側主張を崩せるものではなかったらしく、傍聴に来ていた記者がそのように述べたようである)、そういう研修の立場の人間の面倒を見ることが大変なのは司法の世界に限ったことでもないと思いますが。居眠りした司法修習生は何も教えなくても一人で何でも出来て、手がかからない人だったのかもしれませんけれども。


検察官は検察側証人(センター副部長の医師)に尋問した時に、弁護側主張とほぼ近い証言(歯科医師受け入れは個人的判断ではなく病院の会議を経て決定されたとの認識、歯科医師が行った絶対的医行為が医学的に不適切ではなかったこと、歯科医師の研修が公的に認められるべきであること、など)をしたため、苛立ちから(事前の取調である検面調書と)「随分違う発言をしますね」とか「被告の前では発言しにくいのか」「弁護側から圧力がかかったのではないか」「弁護側が検察側証人に面会しあれこれ聞き出すのは問題がある」などと発言したとされる。裁判において、検察官がこのような発言をすることは非常に問題があるのではないか。証人は自分の考える事実を話しており、検察官が考える「絵」にそぐわないからといって、証人を揶揄するかのような発言や単なる推量で「弁護側の圧力説」を公判中に発言するなど、不適切なのは検察官側と思うのです。

市立札幌病院事件5

2005年01月02日 16時54分56秒 | 法と医療
研鑽義務について判例をみてみます。以前の記事も読んで下さい。

市立札幌病院事件1
市立札幌病院事件2
市立札幌病院事件3
市立札幌病院事件4



研鑽義務について判示された福岡地裁判決(1994年12月26日)、概要は次の通り。

一般的に広く用いられていた(医科のほとんどの診療科や歯科など)消炎鎮痛剤を歯科医師が処方したところ、喘息発作を誘発し、その激しい発作によって気管支狭窄を生じ窒息死した。その薬剤を服用した患者は、元来喘息の既往を有していたが、歯科医師は投与する前に十分な確認をしていなかった。また、多くの非ステロイド性酸性消炎鎮痛剤(一般的な多くのものがこれに該当する)が、喘息発作を誘発する可能性がある(アスピリン喘息と呼ばれる)ことについて、この歯科医師は知らなかった。

この事件においては、歯科医師の注意義務違反が認定された。また、判示された研鑽義務については、次の通りである。
「なるほど、上記医師に課せられる義務のうち、研鑽義務については、医療の高度化に伴って医師が極度に専門化しているがために、薬剤の知識について医学の全専門分野でその最先端の知識を修得することが容易なことではなくなっていることは想像に難くないが、いやしくも人の生命および健康を管理するという医師の業務の特殊性と薬剤が人体に与える副作用等の危険性に鑑みれば、上記のような医師の専門化を理由として前記のような研鑽義務が軽減されることはないというべきである。」
また、この研鑽義務は「(筆者注・アスピリン喘息の知識について)福岡市内の開業歯科医師の間では一般的に定着するに至っていたとはいえないなどの事情は当該医師に課せられていた研鑽義務をなんら軽減するものではないことは明らかである」となっている。

以上のように、医師の業務の特殊性と薬剤の人体への危険性を鑑み、また、(多くの歯科医師)一般に定着するに至っていないとしても研鑽義務が軽減されるものではないと判示されているのである。


医学文献や薬剤添付文書等に記載があれば、たとえ他の歯科医師が修得していなくとも、それらについて修得しておくことが歯科医師の義務であると示されたのであるから、薬剤全般に見られる重篤なショック(アナフィラキシーショック等)についても、研鑽義務が課せられていると考えられるのです。この重篤なショックは急速に気道閉塞等を生じ呼吸困難に陥ったり、急激な血圧低下などをきたす可能性があり、早期の救急処置が必要となります。この病態を予見することは非常に困難であるとされています。


このような研鑽義務について、どのように行うべきかということについては、当時まで何も施策はありませんでした。


起訴後、厚生労働省はこれら判例等から矛盾点を指摘され尚且つ歯科関係者からの意見聴取、また参議院予算委員会での民主党今井・桜井両議員からの質問等を受けて、再考することになったようです。国会質問から約1ヵ月後、新たな通知が出されます。



 「歯科医師による救急救命処置及びそのための研修の取り扱いについて」
(2002年4月23日付)
各都道府県衛生担当部(局)長 殿
厚生労働省医政局医事課長 /厚生労働省医政局歯科保健課長 通知
(一部省略)

これらのショック状態が医科の疾患に起因する者と考えられる場合においては、直ちに医師による対応を求める必要があるが、当該歯科医師が、医師が到着するまでの間又は当該患者が救急用自動車で搬出されるまでの間に救急救命処置を行うことは、それが人工呼吸等の一般的な救急救命処置の範囲のものにとどまる限り、医師法に違反するものではない。
また、こうした場合において、気管内挿管や特定の薬剤投与等の高度な救急救命処置を行うことについては、個別の事情に応じ、緊急避難として認められる場合があり得る。
なお、歯科医師が救急救命士に対して指示を行うことは、救急救命士法上想定していないことから認められず、救急救命士が救急救命処置を行うにあたっては、救急救命センター等の医師の指示を受ける必要がある。

2 歯科医師による救急救命処置に関する研修について
歯科医師が、救急救命処置に関する対応能力の向上を図るために医科の診療分野において研修することは、一般的に医師法に違反するものではない。
ただし、当該研修が診療行為を伴う場合においては、診療範囲等に関する法律上の制限が遵守される必要がある。



少し内容が変わってきました。しかしながら、医行為についての解釈は、緊急避難における違法性阻却を根拠としていることは変わりありません。医事課長は「見学で十分」とする考え方の持ち主であり、また医科での麻酔科研修における医行為の法的解釈については説明がつきません。


2002(平成14)年に厚生労働科学特別研究事業で救命救急研修についてのガイドライン策定へと行政側が動き出しました(麻酔科研修に関しては平成13年の厚生科学特別研究により策定し、2003年7月10日にガイドライン通知)。そして、2003年には次のガイドラインが通知されました。この中では、医科における研修方法や、具体的医行為の内容についても規定されるようになりました(問題が表面化した頃からガイドライン策定に向けて動いており、また起訴後には、実質的に救命救急研修の必要性について検討を開始し始め、ガイドライン策定が行われたとみられます)。



「歯科医師の救命救急研修のガイドラインについて」  
(2003年9月19日付)
(医政医発第919001号/医政歯発第919001号)
(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医政局医事課長・厚生労働省医政局歯科保健課長 通知)
(一部抜粋)

Ⅲ 救命救急臨床研修
歯科口腔外科や歯科麻酔科等の歯科医師で、より高度の救命救急研修を望む者が受ける臨床における救命救急の研修をいう。歯科医師免許取得者が一定期間の臨床経験を積んだ後に、救命救急センター等の医科救命救急部門で救命救急分野に関連するより高度な研修を受ける。

(中略)

4 研修方法
1) 研修歯科医師が、歯科及び歯科口腔外科疾患以外の症例に関する医療行為に関与する場合については、別紙1に定める基準に従い、研修指導医又は研修指導補助医が必要な指導・監督を行うことにより、適正を期すこと。
2) 研修実施に当たっては、5に定める事前の知識・技能の評価結果に基づき、必要に応じて別紙1に定める基準よりも厳格な指導・監督を行うなど、患者の安全に万全を期すこと。



このような流れは、本来行政が行うべきことが今まで放置されてきた(所謂不作為と思います)ことが、ようやく制度的に整備されたといえると思います。しかしながら、刑事裁判として起訴された松原医師はどうなったのか?というと、2003年3月に一審判決が出ており、このような流れとは全く違ったものでした。検察側求刑は「罰金6万円」でしたが、これが認められ判決も「罰金6万円」というものでした。この判決後、上記ガイドラインが通知されたことは皮肉でした。行政の壁とは別に、司法の壁が立ちはだかっていました。

現在、松原医師は控訴しており、裁判は継続中です。

次は、一審の裁判について見ていきたいと思います。



市立札幌病院事件4

2005年01月02日 16時47分16秒 | 法と医療
前の続きです。前から読んでみて下さい。

市立札幌病院事件1
市立札幌病院事件2
市立札幌病院事件3



古い事件になりますが、東京地裁判決(昭和47年5月2日)がありました。事件の概要は、次の通り。

全身麻酔薬の一種である麻酔剤を使用して、小児の歯科治療を行いました(おとなしくさせておくためと思われます)。終了後帰宅させましたが、次第に小児の容態に変化を生じ、親は歯科医師に連絡しましたが、歯科医師は来院させたり往診したりすることなく、適切な処置もしないまま放置していました。その後その子は死亡してしまいました。麻酔剤の副作用による呼吸抑制によって、呼吸が弱まりもしくは停止したための窒息死と考えられました。歯科治療時に使用した全身麻酔薬の副作用による死亡事件となってしまいました。裁判では刑法211条に規定される歯科医師の刑事責任が認定されました。

この裁判においては、検察側は適切な救急措置を歯科医師がとらなかったことは重大な過失であり、注意義務違反であると主張しています。
「麻酔剤の施用にともなう急速な血圧降下、体温低下、心停止、呼吸停止等のショックないし呼吸中枢の抑制・舌根沈下や喉頭痙攣による気道閉塞等の副作用の発現を予想し、…中略…異状を認めたときは、ただちに所用の救急措置(人口呼吸、心臓マッサージ、酸素吸入器による吸入、下顎の前方持ち上げ、人工気道の挿入など)をとるべく、…中略…帰宅させた後に異状を認めた時は、…要請の有無にかかわらず、すみやかにみずから往診または来診させて前示救急措置を講じ」とも述べている。

判決においても、「患者の異状を訴えられたときは、その症状を積極的に聞きだし、症状により、ただちに往診し、または来診させたうえ、気道の確保、酸素吸入等適切な応急処置を講ずべく」と判示されている。

これらは、麻酔剤施用にともなう副作用の出現によって生じた、さまざまな全身的病態に対しては、適切な処置を講じなければならないということです。誰もがこれら病態が、歯科に属する疾病とは考えにくいのではないかと思います。その症状の出現によって、歯科を受診しようとする患者はほとんどいないでしょう(この事件では、薬剤を施用した歯科医師がいたのでそこで処置を受けることは不思議ではありませんが)。

文中に出てくる「人工気道の挿入」や「気道の確保」という記述は、解釈が分かれる可能性はありますが、通常マスクやエアウェイ等で十分な呼吸が確保されない場合や喉頭痙攣等で上気道の閉塞があるような場合などでは、気管内挿管が最も普通の処置と考えられ、確実性が高く呼吸確保には適していると考えられています(気管内挿管ができないような人は、重篤な呼吸抑制を来たすような薬剤を使用することなど許されないということなのでしょう)。



検察も裁判所も、これらの救急処置を行うことは当然であって、医行為としての違法性など全く論じてはいないように思います。今から30年以上前にもかかわらず、です。当時の救急医学の水準が今よりも高かったなどということはありえませんし、歯科医師の救急に関する実力が高かったということもありえません。救急処置を行わなかったり、ましてや出来ないなどということは、患者の生命や健康に携わる者としては、許されるものではないということです。当然刑事責任を負わねばならないという判断であると思います。


このような注意義務を負っている歯科医師は、どのように責任を果たすべきでしょうか。勿論薬剤の使用にあたっては、十分な技量や知識が求められますが、不幸にも緊急事態に遭遇したら適切な処置を求められます。そのような手技、知識や経験は、どこで研鑽すべきなのでしょう。歯科を受診する人達は、そうした特別な事態に陥ることは稀です。通常の歯科医療の場では、十分達成されるとは言えないかもしれないのです。


厚生労働省は、疑義照会にあった「歯科に属さない疾病」という言葉を用いて回答していますが、本来は公文書で用いる以上言葉を正しく定義して用いるべきなのです。「歯科に属する疾病」は歯科特有の疾病をさして使われていると判断されますが、治療時または治療後に因果関係をもってもしくは因果関係がなくとも発生する病態については、どのように扱うべきかという視点が全く抜け落ちています。これは実情を知らないか、または知ろうともしないことによって生じる、「自分の常識範囲で考えた」安易な法的解釈と言えるでしょう。この回答によってどのような影響をもたらすかについて熟慮することもなく、自分の作成した公文書に何の法的責任も負うこともないので「事件が与える影響はない」などと断言できるのです。


この判例で見る限り、「歯科に属さない疾病」に関しての医行為が必ずしも違法とは考えられていませんから、厚生労働省見解と矛盾が生じています。無理な解釈をすると、歯科治療中または治療後に生じた因果関係があると思われる全身的疾病については「歯科に属する疾病」と考えるという解釈です。しかしながら、「歯科に属さない疾病」という文から、この曲解とも思えるような解釈を読み取れということは、一般常識的には無理であると思います。

少なくとも、回答作成にあたった役人は、医療の実情についてよく理解していないばかりか、判例についても知らなかったしよく検討もしていないと考えられます。判断の誤りを犯している点においては、起訴された医師と本質的になんら違いがないように思います。法令解釈の誤りによって起訴されてしまう、という現実がある一方で、役人が考える法令解釈の誤りは何の法的責任も負わされないのです。


次に歯科医師の研鑽義務についての判例を見てみます。


市立札幌病院事件3

2005年01月02日 16時40分52秒 | 法と医療
またまた続きです。前から読んで下さいませ(長くてすみません)。

市立札幌病院事件1
市立札幌病院事件2



歯科医療では歯科麻酔という分野があります。これは40年前ころから芽生えはじめ、次第に確立されていったようです。口腔外科手術の複雑化や高度化に伴って、麻酔の要請が高まったためと考えられています。


日本麻酔科学会と日本歯科麻酔学会という2つの学会があり、後者に属している歯科医師は日本麻酔科学会が指定する病院においては研修が許されていたようです。これは日本麻酔科学会指導医が指導するならば、麻酔に関する医行為を伴ってもよいという判断になっていたようです。かなり昔に厚生省にその慣例を認めてもらったという経緯があったらしく、一度も医師法違反には問われませんでした。この状態が何十年も続いていたようです。


これによって、市立札幌病院における麻酔科研修は(問題となった歯科医師たちは救命救急研修の前に、カリキュラム通り麻酔科研修を行っていた)指導した医師が起訴されることにはならなかったのかもしれません。

歯科医師による気管内挿管や全身麻酔は、歯科大学などの病院において毎年数千例規模で行われており、歯科医療の中ではそれほど珍しいことではないようです。ほぼ日常的に行われている「歯科医業」と言えるでしょう。ところが、厚労省の官僚や検察官は、全くの無知による誤解によって、気管内挿管は「絶対的医行為」という珍奇な定義を示してしまいました。このような過った解釈は、出してしまうと引っ込みがつかない上に、自ら訂正しようとはしません。自らの無知を肯定することになってしまうからです。



当時の毎日新聞(2002年2月28日付)には、『厚生労働省医事課は「(研修の)ガイドライン作成の必要性は今のところなく、研修の実情調査を行うつもりはない。見学などの常識の範囲内で行えば十分」とし、「医師の資格を定めた現行法の枠を明らかに逸脱している。事件が与える影響はない。」』との記事が掲載されたと思います(私のメモなので、完全一致ではないと思いますが、答弁はほぼ正確と思います)。

行政側の対応としては、疑義照会に対して回答した以上、それを守り抜こうとする姿勢は明らかでした。「客観的に歯科に属さない疾病に関わる医行為に及んでいるのであれば、医師の指示の有無を問わず、医師法第17条に違反する」という一文が、非常に重くのしかかってきます。全国で行われていた医科での歯科医師の研修は中止となったり、暫く自粛したりという事態に発展していきました。

一般的に考えられる「歯科に属さない疾病」とは、普通患者が歯科受診の動機となるような疾病や、歯科医学的に文献等に記述される内容のもの以外を指すと思います。多くの人は「狭心発作」とか「気道浮腫」というような疾病・病態を、「歯科に属する疾病」とは考えないでしょう。普通はそうですね。では、これらの病態が歯科治療中や治療後に発生したと仮定したら、どのように対処すべきとお考えになるでしょう?厚生労働省の見解によれば、あらゆる医行為が医師法違反であり、診察も点滴も薬剤投与も勿論全て許されません。唯一の考え方としては、緊急避難における違法性の阻却ということだけです。違法だが、その法的責任は免れるという考え方のみですね。役人は自分が想像で思いつく程度か、「自分の常識」の範囲内のことしか思いつかず、現実がどうなのかとは思いを巡らせることが出来ないのかもしれません。


実際の判例ではどのように解釈されているか、検討してみたいと思います。


市立札幌病院事件2

2005年01月02日 16時33分47秒 | 法と医療
前の記事の続きです。

市立札幌病院事件1



検察側主張では、松原医師が歯科医師らと共謀し、医師法違反であることを知りながら、医行為をさせていたとするものでした。これは慢性的な人員不足を補う目的であったというものです。また、歯科医師が行ったとされる気管内挿管等については、「絶対的医行為」として医師以外の人間が行うことは医師法第17条に違反する行為であると断じているのです。この「絶対的医行為」の判断は厚生労働省の見解に基づくものと思われ、これに基づき検察側がこの定義を持ち出してきたと思われます。


この事件が、救急救命士の気管内挿管問題へと波及していきました。厚生労働省通知が大きな意味を持っていることは間違いないのです。今まで述べてきた「医行為」とは何か、という問題が2つの問題に大きく影響を与えているのです。しかも新たに「絶対的医行為」なる法的概念(おそらく官僚達や検察当局が作り出した、これまでいかなる判決や公文書にも存在しなかった法的解釈と言えるでしょう)が、正式に示されることになりました。これが正当な解釈ということになれば、医療関係や救急の現場においては、非常に大きな影響が出ることは必至となったのです。


医師法第17条の解釈については、法学上の結論があるのかどうかわかりません。しかしながら、現実的には、現場にいる医療従事者や救命救急士に法的責任が存在することは確かであり、法令違反を問われてしまうことが個人レベルで起こってしまうということです。法学的知識が豊富なわけでもなく、その指導が行政から行われるわけではないのに、個人はその責任をとらなければならないのです。法的解釈を個人が正しく行うことを厳密に要求している、また行政側との判断の食い違いは、個人レベルにおいては、法的に許されるものではないということです。法の専門家や行政の専門家の立場とは、そういうものであって、個人がどのような責任を負うかということについてまで関知しない、判断を過った個人が悪いのだということを肯定していると思います。



歯科医師研修問題の複雑さは、医業とは何か、歯科医業とは何かという問題があるのと、研修という目的において、現場で指導する医師の個人的裁量・判断について法的解釈を厳密に求めていることなのです。
本来行政側の施策の問題、または研修を行う施設の教育システムについての問題であるはずが、研修目的とした医行為について、たった一人の医師の法的判断の誤りを問うという性格の裁判となってしまっているのです。


前に書いた救急救命士の問題では、指導的立場にあった医師たちが起訴された事実はなかったと思います。救急救命士の研修は病院で実際に行われており、厚生省告示が明示されていたことから法令違反は明らかでした。しかしながら、救急の現場においては時代的背景や社会的要請もあり、気管内挿管をさせていたとしても可罰的違法性の阻却によって不起訴となったと思われるのです。

ところが、その少し前に問題となった市立札幌病院事件では、たった一人の医師の起訴に踏み切ったわけです。検察側主張は明らかな誤りがありました。厚生労働省の官僚の法的解釈についても同様です。「絶対的医行為」なる判断をするならば、救急救命士に気管内挿管を認めることなど「絶対的」にできないはずです。


次に歯科医師が行う医行為、気管内挿管について検討してみたいと思います。

市立札幌病院事件1

2005年01月02日 16時25分48秒 | 法と医療
前に書いた救急救命士の気管内挿管問題(救急救命士の気管内挿管事件)の発端となった出来事がありました。それについて書いてみたいと思います。


それは市立札幌病院における歯科医師研修問題でした。
事件経過についてお話しましょう。

2001年夏頃、国公立病院勤務の医師の不正規業務(民間病院でのアルバイトですね)について、問題が表面化したことがきっかけでした(公務員は届け出しない副業は禁じられている)。地方紙はその問題について追及するため報道していたようです。その時に、市立札幌病院の救命救急センターで研修をしていた歯科医師3人が医師法違反を犯しているのではないかという嫌疑を生じました。


彼らは同病院の歯科口腔外科所属で病院の正式なレジデント(研修する立場の医師ということ)として勤務しており、病院の運営に関する会議で通常のレジデントと同様の研修システムに則り研修をするということが認められていたようでした(元々は国立大学の口腔外科所属で、そこで2~3年程度の経験を積み、同病院へ勤務したようです)。レジデントの受け入れについては、地元の(当時)国立大学の口腔外科教授や市立札幌病院の歯科口腔外科部長の歯科医師らが同病院あてに正式に申し入れを行い、受け入れられたようです。歯科口腔外科レジデントは麻酔科で3~4ヶ月程度の研修を行った後に、救命救急センターの研修が8ヶ月程度、次に歯科口腔外科で1年という研修予定であったようです。


このような麻酔科や救命救急部門での歯科医師の臨床研修は当時珍しいものではなく、全国的に行われていたようです。大手新聞社が行ったアンケート調査でも、数十の大学病院や大きな基幹病院で行われていました。これは、歯科医師が単に「口腔」のみの治療を考えるのもではなく、患者の安全を確保するべく、救命救急技術の修得を図るという目的によるものでした。歯科医療の現場においても、重大事故や死亡事故が現に発生していることから、当然と言えるのかもしれません。また、小児、重い病気を持つ高齢者や種々のハンディキャップを持つ患者の治療にあたっては、非常に高いリスクを伴う場合も予想されるため、治療時の安全性を高めるためには専門的なトレーニングが必要と考えられていたのでしょう。主に大学や病院歯科等に所属する歯科医師側の自発的努力によって30~40年くらい前から医科での麻酔科研修が行われるようになり、救急医学の体系的確立や施設整備が進むとその分野でも同様な研修が行われてきたようです。研修内容やレベルは施設ごとに決められていたようで、行政側からの施策はありませんでした。


嫌疑についての調査のため、道と札幌市保健所が市立札幌病院への立入検査等を実施、その後、札幌市保健福祉局長名で厚生労働省へ疑義照会が行われたようです。以下に記載します。



『救命救急センターにおいて歯科医師が歯科口腔外科の研修の一環として、歯科に属さない疾病に関わる診察、点滴、採血、処置および注射等の医行為を次のように行う場合の是非について;①医師の指示の下において歯科医師自らが行う場合、②歯科医師自らが行わず看護婦に指示して行わせる場合』
以下略



「厚生労働省医政局医事課長回答」は以下の通り
(2001年9月10日付)。
(医政医発第87号)
『一般に、歯科医師が、歯科に属さない疾病に関わる医行為を業として行うことは医師法第17条に違反する。従って、歯科医師による行為が、単純な補助的行為(診療の補助に至らない程度のものに限る)とみなし得る程度を超えており、かつ、当該行為が、客観的に歯科に属さない疾病に関わる医行為に及んでいるのであれば、医師の指示の有無を問わず、医師法第17条に違反する。』
以下略



この回答を受けて、札幌市保健福祉局が被疑者を特定しないまま警察に通報し、その後、札幌市は同センター部長であった松原医師と歯科医師3名を刑事告発しました。

歯科医師3人は従属的立場であったことから不起訴とされ、指導に当たっていた上級医師らも事情聴取を受けましたが、告発を受けていなかったこともあり不起訴となったようです。しかし、同センターの責任者であった松原医師だけを起訴(2002年2月頃)し、刑事事件となったのです。


あけましておめでとうございます

2005年01月01日 02時46分34秒 | 俺のそれ
皆様今年も宜しくお願い致します。



新年を迎えることが出来ました。新たな気分で頑張りたいです。

昨日、今日と家の掃除や所用などで、大したこともしてないのですが、バタバタ過ごしました。
私は普段家事はあまり出来ないんですが、掃除の手伝いは床のワックスがけだけでした(笑)。他の手伝いはあまり役に立たない感じで、妻や子供が頑張ってくれました。


大勢が集まったので騒がしく、特に子供達ははしゃいでいました。

お年玉の用意がそれなりに大変です。あまりたくさんあげませんけれども(笑)。

うちの子は小6ですから、3千円を予定しています。少なすぎと言われますが、ウチの方針なので悪しからず。普通は一万円くらい貰えるとか聞きますが、お金の管理が出来るようになっていないし、有効な遣い方ができるようにもなっていませんし。まあ、もうちょっと成長を見守りたいと思っています。



初詣に出かけたら、外は凄く寒い!死にました。

車の運転だけ頑張りました。凍り付いていまして、泣きました。

何はともあれ、皆様もよい一年であることを祈念いたしております。また、日本にとっても…