昨日の朝の情報番組で熊本県の球磨川の氾濫の一報が報じられていた。
そして上流のあるダムが放流を始めるというその番組の司会者が伝えていた。
しかし午前中に上流の市房ダムの緊急放流(異常洪水時防災操作)が見合わせとなったらしい。
球磨川は、熊本県南部の人吉盆地を貫流し川辺川をはじめとする支流を併せながら八代平野に至り八代海(不知火海)に注ぐ一級河川で、熊本県内最大の川であり、最上川・富士川と並ぶ日本三大急流の一つでもある。
急流であるがゆえに「暴れ川」の異名を持ち舟下りやラフティングの名所として親しまれてきたが過去にはたびたび洪水被害をもたらしてきた。
球磨川の主な氾濫被害と出来事 1965年7月 梅雨の大雨 1281戸が損壊・流失 1971年8月 台風19号 209戸が損壊 1972年7月 梅雨の大雨 64戸が損壊 1982年7月 梅雨の大雨 47戸が損壊 2004年8月 台風16号 49戸が浸水 2005年9月 台風14号 119戸が浸水 2006年7月 梅雨の大雨 80戸が浸水 2008年6月 梅雨の大雨 33戸が浸水 2008年9月 蒲島郁夫・熊本県知事がダム計画反対を表明 2009年1月 国、県、流域市町村のダムなし治水協議始まる 2009年9月 前原誠司・国土交通相がダム計画中止を表明 2011年6月 梅雨の大雨 8戸が浸水 |
球磨川の治水は流域市町村にとって長年の課題であり、国は1966年、球磨川水系川辺川の川辺川ダム計画を発表した。
しかしダム建設に伴うどこにでも起こるダム水没地の同県五木村など流域で反対運動が起こり、2008年9月、蒲島郁夫知事が計画反対を表明し、2009年9月には政権交代してまもない民主党政権の前原誠司・国土交通相が計画中止を表明した。
国交省と熊本県、流域市町村は09年1月、ダムに代わる治水策の協議を開始。19年6月の会合では国と県が治水策10案を提示したが、完成までの費用が最も安いものでも約2800億円で最高は約1兆2000億円に上り、景観を損ねる恐れのある案や工期が50年以上かかる案もあった。
このころは「ダムはムダ」という言葉通り、ダムが「ムダの象徴」とされる国民感情も醸成されていた。
流域市町村はかねて国に「スピード感」を求めていたが10年以上たっても現実的な治水策は出てこず、一部の首長は「自民党政権に戻った国は本心ではダムを造りたいのではないか」と不満を募らせていた。
九州大の島谷幸宏教授(河川工学)は「球磨川は下流域が山に囲まれて狭く、水位が上がって氾濫しやすい構造がある。特に今回は線状降水帯が川の南側に重なったため流量が急激に増え、多くの地点で越水したのではないか」と治水の難しさを指摘していたが、今回の雨量をみるとやはり「想定外」という言葉も聞こえてきた。
熊本・人吉市で橋流失 球磨川が氾濫し広範囲が浸水(20/07/04)
台風の上陸時などは在京メディアの地方支局の若手記者たちが、現地レポートを送っているが、近年はスマートフォンのカメラと動画機能の向上により、メディアより臨場感あふれた映像が送られてくるのが特徴で、テレビメディアでは「視聴者からの投稿」が花盛りで、多くのアマチュアカメラマンがテレビ局の専用アプリで簡単に投稿できる仕組みになっている。
今から満潮を迎えます!
— 山田はるか(*´ω`*)はるぴん (@Harupin_0804) July 3, 2020
外には出ずに高いところに避難
とにかく命を最優先に
街中が水没しています#大雨#熊本#芦北#避難 #災害#佐敷川#球磨川#氾濫 pic.twitter.com/qmM4rLLfxh
地元の親友が送ってくれました。
— るなつ@猫飼い (@runaru_ny) July 3, 2020
無事を祈るしか出来ないのが悔しいです。
ダム緊急放流まで30分
早めの避難お願いします。
#人吉市#球磨川氾濫#市房ダム放流 pic.twitter.com/UJTRJENmXU
現在の熊本県球磨川の様子。
— ふぃん (@gmlikes) July 3, 2020
家は1Fが完全に浸かりました。
車が流されていきます。
8時半から市房ダム緊急放水。。。
人吉市大丈夫ですか…。 pic.twitter.com/y1lTsctsG6
現在の人吉市内#球磨川#人吉#熊本#熊本大雨 pic.twitter.com/CaqBUT3mXb
— おだまり男爵 (@LUdLfzu0dRQ3EV5) July 3, 2020
明日から熊本帰省を予定してたけど、朝起きたら球磨川が氾濫してた。いつもはきれいな球磨川なのに、同級生の家も道も全部浸水してる。みんな無事でいてほしい。 pic.twitter.com/hYd3Ec6ZO2
— りょう (@PlusUltra35) July 3, 2020
くま鉄の線路が水没している。
— 濵田喜幸 (@bueryh) July 3, 2020
奥が球磨川
これでダム放流は非常にマズイ#大雨特別警報 #大雨 #大雨情報 #球磨川 #氾濫 pic.twitter.com/9kKEHfaaB9
床上浸水どころか多くの球磨川の近くの家は「屋根下浸水」とでも呼ばれる、2階も安全ではなくなっており、事前に家を離れて(捨てて)避難所にたどり着いた住民も多い。
当然、そこには最低限の居住環境が求められている。
さっそく政府は動いたらしい。
「避難所の感染症対策で熊本に段ボールベッドなど輸送 内閣府」
【NHKニュースより】
少なくともこの段ボールベッドは、板張りの体育館にシート敷いて横になるよりは少しはましであろう。
しかし、コロナが蔓延している状況で、体育館に段ボールベッド並べて生活させるには、かなりのリスクが高い。
当然、こんな声が上がってくる。
冗談ぬきに、今、コロナ禍でホテルとか空いてるはずだから、被災者のみなさん。熊本周辺か人吉温泉のホテル、旅館に泊めた方がいいかと。
— たぬきさん大当たり (@1voo344VXFpw4oV) July 4, 2020
コロナ治まっていないので、感染症対策としてもホテルへの避難が妥当だと思います。
— ケイノ(日本在住)通知オフ (@8kno8) July 4, 2020
ただ、ホテルが水没していたりするので、今後の大雨の状況によっては被害拡大し被災人数の増大や使えるホテルの縮小、長期化などする可能性もあるので、むやみにそれを選択出来ないのが難しいところですね
昨年の大型台風上陸のころには、こんなことを言っている人がいた。
【スフィア基準】
— yumi ゆみ (@ygjumi) September 13, 2019
海外の避難所の多くで使われている。
2年前、大地震が起きたときのイタリアの避難所。
発生から72時間以内に、家族ごとにテントやベッドが支給され、
衛生的なトイレも整備された。 pic.twitter.com/3Zv6KyJGHP
球磨川の氾濫水害はすでに半世紀前から続いている。
ダムでの治水はもはや現実的ではない。
地球温暖化の影響で温度が上昇した海面から海水が雲となって雨を降らすのでその雨量の予測は難しいと専門家は言っていた。
ましてや、球磨川の全域に高い堤防を作ることは、公共事業でうまい汁を吸ってきた連中には大喜びだろうが、もはやそんな時代でもない。
といって、危険地帯に住んでいる人たちを全員高台に移住させれば解決するという対策は、コミュニティや伝統文化を破壊することになってしまう。
それならば、どのような対策が必要なのか。
平常時にはただの無駄とよばれるものを、緊急時に使える「使用しない資源」としてストックするという発想が必要である。
洪水災害の場合は、当然快適な避難所である。
ところで、新自由主義の発想の企業は「JustInTime」という生産方式を採用してきた。
全工程において、必要なものを、必要な時に、必要な量だけ供給することで在庫コストを限りなくゼロに近づける生産技術であった。
日本では有名な「トヨタのかんばん方式」というのがあるが、その功罪はここでは省く。
幸か不幸かコロナ禍により改めて明らかになったことがあった。
感染症のための病床や人工呼吸器や防護服や検査キットは感染症が起きていない時にはただの無駄であり、「在庫はゼロにしておいて、必要になったら、必要な量だけ調達すればいい」と多くの医療機関は考えていたかもしれない。
しかし、パンデミックになり世界同時に医療資源の需要が高まった時に、「JustInTime」社会ではすぐに医療崩壊が起きてしまった。
その典型的な例が米国であり、感染者数と死者数が世界一であるのは、まさに米国の政策決定者たちが、エコノミストがスラック(需給の緩み/遊び、余裕)と呼んでいるものを嫌う連中であったからであるという。
米国に比べれば日本の医療現場はまだましだったかもしれない。
これからは、医療資源に余裕を持ち、他国に医療支援できる国がグローバル・ステージで影響力を増してゆくだろうと、国際政治の専門家たちは口をそろえているらしい。
それにしても、避難所の感染症対策で熊本に段ボールベッドなど輸送した、という日本の政府がグローバル・ステージで影響力を増すには100年早いのだろう、とオジサンは思う。