6月19日以降、都会には以前のような人波が押し寄せていたが、とくに繁華街に大挙して繰り出していた若者等を見ていると、「大丈夫かね?」と危惧していた高齢者は決して少なくはなかった。
そんな杞憂が6月の下旬から的中してしまい、7月に入り都内の新規感染者数が100人台が続いてしまった。
実は一か月ほど前に、「【独自】流行前の生活に戻すと「都内の感染1日100人」…西浦教授ら試算」という記事がすでに出ていた。
その記事の2週間後には、「“8割おじさん”西浦教授またも扇動? 感染1日100人超、99%大流行…本人に聞く」という否定的な記事が出ていた。
西浦教授の緊急事態宣言後も、接触減が不十分だとの指摘を受けて京都大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授にこんな風に言わせていた。
「専門家会議で示された資料を見ると、3月28日には感染状況がピークアウトしていたのがわかります。緊急事態宣言前の自粛で十分だったということで、宣言は過剰防衛だった」
「42万人が亡くなる、という西浦教授の試算も現実的な数字ではない。現に8割削減は達成できなかったのに、感染拡大は抑えられました。そもそも数理モデルには、いくつか問題点があります。42万人が亡くなるのは、なにも対策をしなかった場合ですが、現実にはあり得ない設定です。たとえば毎日の手洗いの回数も、一人一人の対策や生活習慣でまったく異なるのに、多くの条件を設定すると式が複雑化して計算できず、接触8割減という単純化した変数でしか測れないのです。人間は心をもった存在なのに、その動きを物理学のように物体の運動量で推し量ることに、どれだけ有効性があるのでしょうか」
「緊急事態宣言が解除され、各業界が知恵を絞り、予防策を講じて経済活動を再開しようと頑張っているとき、接触そのものを減らせと言えば、外に出ないのが一番いいとなって、解除後の努力を無にしかねません。そもそも困窮者や自殺者を増やさないために、経済活動の再開を後押しするのが国や都の役割のはずが、知事が西浦教授の試算を受けて気をつけるように呼びかけるなど、本来の役目と逆のことをしている」
それに対して、西浦教授は「当方の分析はあくまで感染症数理モデルの検討結果で、経済学の問題は別途検討されるべきものです。また、政策の最終意思決定は政府にあります」と当たり前のことを言っていたが、さらに「都内の1日の感染者数が100人を超える」という試算については、
「これまで日本国内で確認された感染者の多くは、接触歴がすでに判明していますが、その入国する10人は、接触の確認がされていない感染者が一挙に生じることを意味する。それが3カ月くらい継続すれば、流行が起こると思います。私が行ったのは、パンデミック中の人の移動が包含するリスクについての検討、発表ですが、それと政治がカバーすべきリスク管理は、一定の距離をもって理解していただきたい。感染症の制御は人権や自由といった概念と相性が悪く、個別の事例で観光業や交通業に影響が及びやすいと思う。しかし、分析を踏まえて国際移動の程度について決断するのは、政治の役割です」
さらに、「感染症疫学(特に数理モデル)と経済学の問題を混在した状態で、議論は感情的に行うべきではない」と強調していた。
まさに数値などはあくまでも専門家目線であり、最終的には政治が判断すべきと強調していた。
しかしこの週刊誌は最後に、「新型コロナへの過剰な恐怖心を煽られた人たちは、彼の数理モデルに恐れをなして経済を止めてしまうし、その不安心理は政治の決断に影響を及ぼす。そのことを踏まえず、人間を物体のように扱った試算を出し続けても、感情的な議論がどこまでも繰り返されることにしかならないだろう」と結んでいた。
これはかなり曲解した悪質な煽り記事と批判されてもしかたがない内容であった。
この記事は都道府県をまたぐ移動が完全に自由になるという「6月19日」の直前であった。
世の中は「自粛生活から完全に解放」されるという安堵感に満ちていた頃であった。
あたかもあらゆる経済活動が解除されるかのような気分に浸り始めたのも無理はないが、現実にはCOVID-19の威力は全く衰えてはおらずむしろ無症状の感染者が増え始めていたころでもあった。
そして7月2日、3日と都内感染者数が100名を超えて、「西浦教授、予測的中トレンド入り「7月東京100人超」…提言実行されず現実に」という事態になった。
週刊新潮が「またも扇動、恐怖を煽ってきた8割おじさん」と揶揄した西浦教授は6月17日時点で「流行前のような生活を続ければ、東京都内の感染者数は7月中に1日100人以上になる」と予想されまさにその通りになってしまいました。旧専門家会議による再度の対策を強く求めます?? https://t.co/OYrBDtivPQ
— sekkai (@sekkai) July 2, 2020
西浦先生はさすがだな……(6月3日)/【独自】流行前の生活に戻すと「都内の感染1日100人」…西浦教授ら試算 : 社会 : ニュース : 読売新聞オンライン https://t.co/KoaE2R4mUO
— ぱれあな (@pollyanna_y) July 2, 2020
1ヶ月後の報告数が100人を超えるだろうと予言してきちんと的中させているのだから、西浦さんのモデルの汎化性能と(おそらく専門知識から来る緻密な)チューニングは素晴らしいなと思った https://t.co/k5GDfto5Jg
— TJO (@TJO_datasci) July 2, 2020
残念ながら、予測が的中したことは喜ばしいことではないが、専門家の警告を無視した政治家の不作為が明らかになったともいえるであろう。
COVID-19に関してなにもしないと「無策」と批判され、何かやると「後手後手」と叩かれてきた安倍晋三のこの5か月余りの体たらく。
特に連日のように感染者数が上昇している頃は、感染者数をいたずらに増やさないように「医療崩壊を防ぐ」という口実でPCR検査を厚労省が縛りをかけて、症状が悪化するまでたらい回しにされた人々が多く存在した。
とりわけ連日2人の専門家を呼んで精力的に問題点を指摘続けた民放の朝の情報番組に対する攻撃は凄まじいものがあった。
特に3月に入り、こんな2本の記事が連発されていた。
「安倍政権がコロナ対応よりも言論弾圧に必死!『モーニングショー』や岡田晴恵教授を標的、デマと詐術を駆使して批判を封じ込め」
「官製デマによる『モーニングショー』一斉攻撃はやはり安倍官邸の命令だった! コロナ対応批判封じ込めで官邸幹部が指示」
そして、番組に連日ゲスト出演していた池袋大谷クリニックの大谷義夫院長が、ある日を境に突然番組から姿を消してしまった。
そしてようやく最近になって、「モーニングショー』などでPCR拡大を訴えてきた大谷医師がネトウヨの電凸攻撃について明かす!「反日」と怒鳴り込まれたことも」と事の真相が明らかになった。
NHKニュース 2020年7月3日 おはよう日本 西日本大雨警戒 都内感染100人超 午前7:00~午前8:00
NHKの今朝のニュース。PCR検査の必要性を語ると「反日」「反政府」と攻撃される現状を伝えています。これは実際に起きています。 pic.twitter.com/KphpR7yvjH
— 立岩陽一郎 (@YoiTateiwa) July 2, 2020
これはひどいね。PCR検査は「検査と隔離」が基本のコロナ対策第一歩。世界の常識だが日本ではまだこんなこと言ってる。大体科学や医学に「反日」「反政府」なんて関係ないだろう。安倍政権がダラダラ続くうちに変なこと言う人間が本当に増えた。安倍は日本の知的水準を劇的に落としたね。早く消えろ。 https://t.co/fhP9yYi3cc
— 佐藤 章 (@bSM2TC2coIKWrlM) July 3, 2020
「大谷医師は安倍応援団やネトウヨ、さらには“検査不要派”から、激しい抗議や嫌がらせを受けていた」と。
— kakko (@kurarakirakira) July 3, 2020
上念司氏の3月5日のデマ”ツイートが原因で“電凸”抗議がエスカレート、診療の妨げに。
大谷先生、すごく丁寧で良心的な先生が、こんなひどい目に遭うなんて許せない。https://t.co/50WUECZmnl
ネット掲示板にはこんな見方もあった、
コロナ禍の対応の不備を指摘した程度のことで攻撃されるのなら、攻撃対象はまだまだ多数居る。 大谷医師が『アビガンを広めたい内外の勢力から』攻撃されたのは、シクレソニド(オルベスコ)がアビガンと違い、中等症?重症のコロナ肺炎患者を救命できる可能性の高いことをモーニングショウ内で紹介したからである。 それで外(安倍シンパ)から攻撃されたのみならず、内(番組)からも干されてしまった。 その経緯で、モーニングショウではなくNHKが取り上げたのだろう。 |
悪いのは、凸して粘着しているネトウヨ。 悪いのは、デマを流したネトウヨの教祖こと上念司。 でも、一番悪いのは、これを放置しているテレ朝モーニングショーだよね。 この状況、フジテレビのテラスハウスで起きた木村花さん自殺の時と同じだぞ。 大谷医師に出演させて番組のテーマにそっての発言で起きている現状なんだから、今起きている大谷医師の現状を放送すればいい。 この件は、メディアがネトウヨを放置しているから起きた事件で、番組に関係したものがその被害にあっているのに、それを放置しているモーニングショーが、一番悪いぞ。 |
安倍官邸執拗な監視と攻撃に屈したテレビの民放の情報番組の多くは、政府批判をしないコメンテーターで占められていることは周知の事実である。
しかし「言論」という立派な「武器」を持っているメディアは、権力側の攻撃にはその武器で対抗しなければならない。
まさにコロナ禍を奇貨とした、「コロナ対策 税収増やす施策検討を首相に要望 自民 石原氏ら」という国民を全く無視した動きにも敢然と立ち向かって行くべきであろう、オジサンは思う。