COVID-19の感染拡大防止策の「日本モデル」と一時は称賛(自画自賛?)されたのが、クラスター対策だった。
感染者の感染経路や濃厚接触者を追跡する「積極的疫学調査」なのだが、担当するのは保健所の職員。
感染者数が少ない地方ではかなり効果があったらしいのだが、東京都のように桁違いの感染者が連日発生すれば、担当者の負荷が高まり、感染ルート不明者数が増加したため、逼迫する保健所の負担を軽減させ、効率的な入院や療養先の調整につなげる狙いから、先月の22日に「積極的疫学調査」の規模を縮小する方針を都内の各保健所に通知していた。
「発症日別による陽性者数の推移」によると、保健所に規模縮小を通知した以降、確実に感染者数が減少している。
感染者の定義はPCR検査をして陽性と判断されることなのだが、濃厚接触者の調査をしなければ「無症状」の感染者が野放しになる危険性が高まる。
したがって、「新型コロナウイルス 首都圏の感染者数と最新情報」を見ると「感染経路不明者数」は横這いで、感染者数減少だけで、緊急事態宣言の効果が現れたと喜ぶのは早計であろう。
そして1月7日の緊急事態宣言発令時に、よせばいいのに強いリーダーを強調するあまり、菅義偉は「1カ月後には必ず事態を改善させる」と明言し、確かに新規感染者数は減少傾向にあるが、解除には至らなかった。
この間、政権内では宣言解除の基準を巡って見解の相違や修正が表面化し、与党議員が深夜の街に繰り出していたことも発覚し、協力する国民の側に政治不信が広がっており、感染対策の旗を振る首相らの呼び掛けがかき消されかねない状況となっている。
「『必ず改善させる』と明言した1ヵ月 高まったのは政権不信<緊急事態宣言延長>
【東京新聞より】
◆1周と思ったら「もう1周走って」 首相は2日午後、衆参両院の議院運営委員会で、それぞれ緊急事態宣言の延長方針を報告。1カ月で解除できなかったことを「大変申し訳ない」と陳謝しつつ「もうひと踏ん張りして、国民の協力をいただきたい」と訴えた。 宣言発令を決めた1月7日時点で、7500人余りだった全国の一日の新規感染者数は、今月1日には約1800人まで減少。首相は2日夜の記者会見で「これまでの対策で、はっきりと効果が見られ始めている」と強調したが、政府高官は「1周だと思って頑張って走って来た国民に『もう1周回って』と言うことになった」と語る。 ◆解除の目安にぶれ 各種世論調査でも明らかなように、政権のコロナ対策が国民の支持を得ているとは言えない。経済活動を重視し、対応が後手に回った印象が強いのに加え、宣言解除を巡る目安や基準もぶれが目立っているためだ。 政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長が、宣言発令が濃厚になった年明けに「今の感染状況を考えると、1カ月未満は至難の業だ」との見解を示したのが1月5日。だが、首相は発令を表明した7日の記者会見で「1カ月後には改善」に言及した。 宣言解除の基準についても、西村康稔経済再生担当相は当初、東京は「新規感染者数が1日当たり500人」を下回るのが目安と説明したが、後に「500人を下回っても直ちに解除するということではない。病床の状況などを総合的に判断する」と軌道修正。東京の直近の新規感染者数が今月1日は393人、2日は556人と推移する中で、政権は延長方針を決定した。首相は2日の会見で医療体制の逼迫を挙げ「入院者、重症者を減少させる必要がある」と説明した。 ◆「これでは国民がついてこない」 厳しい国民生活が続く中、発覚したのが与党議員の軽率な行動だ。 松本純・元国家公安委員長ら自民党議員3人は連れ立って、公明党幹事長代理だった遠山清彦氏は知人とともに、宣言中の深夜に東京・銀座のクラブで飲食していた。松本氏は発覚時に「1人で行った」と、うその説明をしていたことも認め、自民党の3氏は離党、遠山氏は議員辞職に追い込まれた。 首相は議運委で「誠に残念で、国民に心からおわび申し上げる」と謝罪。野党から、ステーキ店で大人数の会食に参加した昨年12月の自身の行動も追及され「大いに反省している。その際は緊急事態宣言はなく(飲食店の営業は)午後10時まで許されていた」と釈明に追われた。自民党内からも「一致団結をお願いしている与党が信頼を失墜させている。これでは国民はついてこない」(中堅)と批判の声が出ている。 |
昨年の4月の安倍晋三による緊急事態宣言の延長と同様、「小出しの対策」かえってその後に禍根を残すという、同じ過ちを繰り返したに過ぎない。
そもそも、緊急事態宣言を1ケ月延長した裏には、なにがなんでも「五輪開催」のために日本は頑張っているという目論見がが見え透いており3月にはIOC総会が開かれバッハ会長は五輪中止ならば会長再選は困難となるだろうからそのためにはなんとか感染者数減少という体裁だけは整えたいのであろう。
そのために「積極的疫学調査の規模を縮小」するという検査方法変更をしたのではないかという下衆の勘繰りをしてしまう。
さて、国民に訴える能力不足と指摘され、原稿を読むために下を向くのではなく国民に向かって話せ、とさんざん批判され、その対策をひそかに準備して昨夜の菅義偉の会見では初めてプロンプターが登場した。
緊急事態宣言」10都府県で延長 菅首相「いま一度みなさまのご協力を」
しかしこの演説を聞いたネット民はその陳腐な内容と補償の乏しさには批判の声と同時に評価の声もある。
●記者に訴えかけてどうすんだよ。 カメラ目線で、真剣に訴えかけないと何の説得力もない。 党内の不祥事は罰則しないで国民は罰則とか何考えてんだ。 ●国民への一律定額給付金は絶対に出す必要があります。 お願いばかりでは生活苦もあるし、聞く気にならない方も増えるでしょう。 飲食店への協力金は一律ではダメです。 店舗の規模により基準を変えるべきです。 最初からその位分からないのでしょうか!? ●高齢者が晒されてやつれてしまった。イタイタしい姿に同情を禁じ得ない。あまり無理なさらぬようくれぐれもご自愛を。この国、あなたレベルの代わりはどこにもいます。ご心配なきよう。 ● ◎でもここ最近、新規陽性者数が緊急事態宣言下の地域では減っている。政府の操作なんて言う人もいるがそれならそもそも緊急事態宣言を発出するようなとこまで増えていないだろう。考えればわかる話。それに濃厚接触者の追跡を打ち切ったからと言う人もいるが確かにそうやけど検査数全体としては1月7日あたりと比べても大して減っていないし感染が抑えれてきたから検査数が減るのは当たり前。仮に未だに感染が拡大しているなら陽性率も上昇するはず。しかし実際はピーク時の半分まで下がってきた。感染爆発は抑え込んだと言えます。尾身会長の言う通り、急所を突いた対策で功を奏したと思う。飲食店への8時までの時短要請。一日一店舗一律で6万円は儲かりすぎるところもあるから不平等と言う人も多いがそれで実際に東京は95%の飲食店が要請に従ってくれている。福岡は99%だ。政府には色々言いたいことあるがとりあえず今回も抑えてきた感じなので一定の評価はあげてもいいと思う。 |
しかし会見の体裁自体は従来とは変わってはおらず、官邸記者クラブ連中への批判の声も多い。
菅首相会見、「一人一問ずつ質問」「質問が終わったら自席に戻る」「自席からの追加質問はなし」のアナウンスは今日も変わらず。つまり、答える側がいくらでもはぐらかしたまま逃げきれてしまう。
— 安田菜津紀 Dialogue for People (@NatsukiYasuda) February 2, 2021
菅首相の記者会見:記者の質問のレベルがあまりにもひどい。国民が聞きたいことをきちんと聞いていない。官邸記者クラブは飼い慣らされているのか?
— 舛添要一 (@MasuzoeYoichi) February 2, 2021
菅首相の会見。質問を当ててもらうために事前に質問を教えている官邸の大手社キャップたちに、人々の代表として丁々発止で質問し、首相の見解を質す、という記者の矜持はないのでしょうか。WHを含む主要国の首脳会見では全く考えられないことで、総理番の記者の手本にも全くなっておらず恥ずかしいです pic.twitter.com/lhnYPc46Ij
— Toshi Ogata (尾形 聡彦) (@ToshihikoOgata) February 2, 2021
こんな記者もいたらしい。
今日の首相会見。
— Tad (@TadTwi2011) February 2, 2021
最後にイギリスの記者から厳しい質問が出た。
「なぜ日本はこんなにワクチン接種が遅いのか。検査も人口比138位で少ない。オリンピックを強行していいのか」
菅「現実的に遅れている。ただ確保は早かった。日本の組織力で接種する」
? pic.twitter.com/BCXz2enMMN
菅首相会見。幹事社以外で質問した毎日、NHK、北海道、産経、TBSの大手メディアのキャップはすべて事前に質問を教えているように見え、菅氏はメモを読むばかり。前日に総理番記者が懸命に追加質問をしたのと対照的に、官邸キャップこそが記者の役割を果たしていないことが露呈した会見だったと思います pic.twitter.com/J0of662cAL
— Toshi Ogata (尾形 聡彦) (@ToshihikoOgata) February 2, 2021
それにしても、首相記者会見で記者たちが菅義偉に質問しているのに、こんな振り方は無責任であろう。
なぜ尾身氏に振るのか理解不能。逃げずに自分の責任で答えるべきだろう。
— 望月衣塑子 (@ISOKO_MOCHIZUKI) February 2, 2021
東京五輪は無観客?
菅首相は、尾身茂会長に「これも会長からお願いできますでしょうか」と水を向け、尾身氏は「オリンピックは私は特に答える立場にはないと思うので」と戸惑った。 https://t.co/az3o6L9twJ
さて、大規模買収事件で1月21日に有罪判決を受けた河井案里参院議員はそれまでキチンと議員歳費を受け取っていた「税金ドロボー」と言われていたがようやくこんな事態になったらしい。
【LIVE4】
— 東京新聞編集局 (@tokyonewsroom) February 2, 2021
菅首相は、1審で有罪判決を受けた河井案里議員が、今も議員の職にとどまっていることについて「(河井氏)本人は離党して無所属であり、出処進退は自ら考えてほしいという思いだ」と繰り返した。
https://t.co/nrq6gKeVYe
【速報】#公職選挙法違反 事件で有罪判決を受けた参議院議員の #河井案里 被告が、議員を辞職する検討に入ったことがわかりました。 pic.twitter.com/okAsqMDX1w
— TBS NEWS (@tbs_news) February 2, 2021
案里議員が辞職すれば、参議院広島選挙区では補欠選挙が行われることになり、吉川元農林水産大臣の辞職に伴う衆議院北海道2区や、立憲民主党の羽田雄一郎氏の死去に伴う参議院長野選挙区と同じく4月25日となる見通しらしい。
自民党としては、衆議院北海道2区は不戦敗で参議院長野選挙区では「弔い選挙」となり勝てる見込みが無い。
そうなればせめて、広島選挙区補欠で勝ちたいということになり、自民党本部内で早期の辞職が濃厚との見方が強まっているのが背景にあるのだろう。
「本人は離党して無所属であり、出処進退は自ら考えてほしい」と菅義偉はとぼけたことを言っていたが、離党してもおそらくは相当自民から本人に圧力がかかったのであろう。
こんな記事が以前あった。
「『私はおもちゃ』河井案里氏有罪……長い判決文にあった“気になる一文”」
「私はおもちゃ」河井案里氏有罪……長い判決文にあった“気になる一文” #河井案里 #週刊文春 #文春オンラインhttps://t.co/HvNruXWtHr
— 文春オンライン (@bunshun_online) January 28, 2021
まさに自民党内の権力闘争の玩具であったのだが、これを積極的に支援した安倍晋三と菅義偉の責任は重い、とオジサンは思う。