こんな記事を見て、その金額だけが目に入り一瞬「防衛予算」かと思ってしまった。
「物価高騰の緊急対策を決定 総額6兆2000億円 首相『経済活動の回復妨げ防ぐ』」
うちのオバサンは買い物から帰ってくるたびに「〇〇がまた50円も上がっていた」とか「昨日はいつもの商品が倍近くになっていた」等々、4月からの食料品の値上げラッシュは近年にないほどの凄まじいものがある。
当然ながら、というのか夏の参院選を控えて国民の怒りが政府・自民党に向けられないように「物価高騰の緊急対策を決定」したこと自体には異論がない。
問題は総額6兆円以上の金額の中身である。
「ガソリン補助5円→25円→35円 激変緩和のはずが値下げ政策に 6兆2000億円の物価対策 出口見えず…」
【東京新聞より】
政府が 26日公表した物価対策で最多の1兆5000億円を投じるのが、ガソリン価格を抑える補助金の拡充だ。「激変緩和」が当初の目的だったが、価格目標の引き下げと期間延長で事実上の値下げ政策に。需要と供給で決まる市場に、国が介入する異例の措置は出口の見えない状況に陥っている。 補助金は1月27日に始まった。当初は1リットル当たり最大5円を石油元売り各社に支給し、3月10日からは25円に引き上げた。その結果、全国のガソリン価格は1リットル当たり172円程度を維持している。 今回の拡充で補助金を35円に増やし、価格目標を172円から168円へ引き下げる。期間も4月末から9月末に延長する。 ただ、恩恵には格差がある。総務省家計調査では、ガソリンへの年間支出額が最多の山口市(約9万1000円)と最少の東京都区部(約1万9600円)では、4倍以上の開きがある。原油高で値上がりする電気代などはほとんど支援されず、電力・ガスの業界関係者は「不公平だ」と漏らす。 政府の価格介入は、市場機能をゆがめるとの批判も根強い。25日の経産省審議会では「激変緩和のはずが価格維持政策になっている。出口設定が必要だ」(京大大学院の中西寛教授)などの指摘が相次いだ。 政府の当初案では、7月以降に価格目標を引き上げて補助を段階的に縮小する考えだったが、最終的に「一定期間後に見直しを検討する」と表現は後退。今後も原油価格の高騰が続けば、補助金から抜け出せなくなる可能性もある。ガソリン車の利用を助長する補助金は、政府の脱炭素目標とも矛盾しかねない。 石油流通に詳しい桃山学院大の小嶌正稔教授は「原油が高止まりする中、補助金が膨らむ悪循環に陥っている。市場原理を働かせ、エネルギー源の多様化や省エネ、脱炭素をどうするのかなど、今後を見据えた議論が必要だ」と指摘した。 ◆国会審議経ずに予備費1兆5000億円、使途も拡大 物価対策には、国会審議を経ずに政府が使途を決められる予備費から1兆5000億円が充てられる。それに伴い、5月中にまとめる2022年度補正予算案で、政府は今回の使用分と同額を計上することで補填する考え。5兆5000億円の巨額予備費が維持されるほか、その大部分では使途も広がる。予算執行での政府の裁量は大きくなり、国会軽視の姿勢が強まった形だ。(坂田奈央) 「新型コロナと原油価格・物価高騰対策に使途を限定した。丁寧に説明したい」。岸田首相は26日の会見で、予備費について理解を求めた。これから国会に提出する補正予算案で予備費を穴埋めするほか、コロナ対策に使途を限定していた5兆円分では物価高対策にも使えるようにする。 コロナ禍以前の予備費は毎年3500億~5000億円程度で推移。それが、20年6月に成立した同年度第2次補正予算で「コロナ予備費」が新たに設けられ、一気に約10兆円の増額となった。その後は減少したものの、政府の裁量で使えるお金は依然、巨額だ。 巨額予備費の必要性の理由として不測の事態を挙げるのは、岸田政権も安倍・菅政権と同様だ。だが、法政大学の小黒一正教授は新型コロナに比べれば、今回の物価高は先行きが見通しやすいと指摘。「そのための補正予算を編成して国会で堂々と議論するべきだ」と話している。 |
ガソリン価格が上げればマイカー利用者は不要不急の外出を控えれば済むのだが、業務用の商用車や公共交通機関や流通業者らには直接的な影響が大きい。
問題なのは正規の予算以外の予備費の使い方なのだが、すでに、「コロナ予備費12兆円、使途9割追えず 透明性課題」という記事で政府の予備費の使い方の透明性が問題となっており、国会での議論がなければ政府の恣意的な使用が野放図となってしまう。
さて、話変わって、江戸時代に町場で火事が起きると町火消が消火活動にあたるのだが、ある大手商家では、先に「火付盗賊改」が現場におりその指示で裏から蔵の千両箱が盗まれた、という時代劇ドラマがあったが、もちろん悪い「火盗改方」あり、そんな輩の行為は「火事場ドロボー」と呼ばれた。
21世紀の日本でも、文字通りの 「【速報】警察官が火事場泥棒 現場検証中に現金35万8千円盗む 鑑識課の巡査部長 八千代署、容疑で逮捕」 という事件が起きているがこれはまさに論外の話。
問題なのは、コロナ禍による「緊急事態宣言」が発令されたが、憲法上の制約から政府は思い切った対策が打てないとばかりに、憲法に「緊急事態条項を追加しろ」という自民党の改憲派議員が喚いていたが、こんな言動が「火事場ドロボー」的な行動だと批判されていた。
そして今度はロシア・プーチンによるウクライナ侵攻を奇禍とした「防衛費増額」問題である。
日本経済新聞が、自民党の意を酌んだかのような世論調査を行い、「防衛費増額『GDP比2%以上』 賛成55%、反対33% 本社世論調査」とあたかも国民の過半数が賛成かのような発表の仕方であった。
もっとも55%の賛成者の内訳は、「自民党支持層の賛成が64%だった一方、公明党は6割弱だった。立憲民主党は3割強、日本維新の会は7割弱」ということでアンケート調査の方法等は不明なのだが、支持政党から見れば改憲派の連中の回答者が多かったのだろう。
このような傾向を危惧してなのか、「戦争に備えを! 脅威を煽る大メディアが刷り込む戦時思想」という記事があった。
驚いた。日経新聞が22~24日に実施した世論調査だ。自民党が政府へ提言しようとしている「防衛費のGDP比2%以上への増額」について聞いたところ、賛成が55%と半数を超えたという。反対は33%だった。18~39歳の若い世代の賛成が65%と高いものの、60歳以上でも50%が賛成だった。 今年度予算の防衛費は5.4兆円だが、同時期に編成された補正予算を含めると初の6兆円を突破し、GDP比で1.09%だ。2%なら12兆円近い額になる。安倍政権時代に一気に防衛費が膨張し、補正を含めて1%超えが当たり前になってきたとはいえ、当初予算は1%以内にとどめてきている。先の不幸な大戦を反省したうえで、1%枠を閣議決定してまで防衛費を抑制してきた歴史を、政治も国民も共有してきたはずだ。それが、ロシアによるウクライナ侵攻で、空気が一変してしまったようだ。 もっとも、連日のメディアの刷り込みにさらされれば、「他国がいつ攻め込んでくるかわからない」という恐怖心を抱く人が増えるのは当然だろう。NHKのニュースでは毎日のように詳細な戦況解説が繰り返される。ロシア軍が集中攻撃する南東部マリウポリのアゾフスタリ製鉄所に避難する子どもたちの映像を見れば心が痛む。泣き叫ぶ女性の映像を何度も見せられ、「かわいそう」という気持ちとともに、同じことが日本で起きたら、と不安になる。 新聞は24日で侵攻から2カ月となるのを契機にこの戦争を検証する連載を始めた。読売は「ウクライナショック」と題し、侵攻が各国の安全保障にどう影響を与えているかを報告。米国が早々に軍事介入しない方針を明言していたことについて、<軍事力を手放した外交の結果、ロシアの非道な侵略の抑止に失敗した>と外交の限界を説く。そして、ドイツが今後の防衛費をGDP2%以上へと大転換したことなどを伝えている。 ■防衛費増額を求めるムードに自民ニンマリ 「ニッポンの統治」と題した日経の連載はもっと直接的だ。<ロシアのウクライナ侵攻は自分の国が突然、戦場になる現実を国際社会に突き付けた。中国や北朝鮮の脅威に直面する日本も例外ではない。最悪の事態を想定する危機意識を欠いてきた日本は安全保障の備えに穴がある>というのが連載の趣旨。ウクライナの首都キーウで地下鉄がシェルターとなったことを一例に、<日本の地下鉄は浅い場所を走っている場合が多くシェルターとして使いにくい>と対策を促す。<北朝鮮のミサイル飛来を想定した住民の避難訓練も今は実施していない><台湾有事に対処する法整備には不安があり、万全とはいえない>などと危機感を高めるのである。 別のコラムでは<台湾有事はもはや「想定外」ではない>とも書いていた。危機管理は、想定外を含めて最悪の事態に事前に備えるのが要諦ではある。だが、侵略されないための、戦争にならないための外交努力がセットでなければおかしい。そこに触れずに、ただただ「明日にも戦時下」と言わんばかりの報道があふれる異様。タカ派が勢力を増した自民党内の議論を後押しするメディアの論調は、ウクライナ戦争に乗じて戦争準備を急がせようとする国民洗脳の動きに加担しているも同然だ。 立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言う。 「防衛費を増やさなければならない、というムードが広がることは自民党はニンマリでしょう。しかし、実は日本の防衛費はすでに米国、中国に次いで世界3位の規模ですよ。日本の換算ではNATOが含めている海上保安庁費と旧軍人恩給費が含まれておらず、NATO換算なら今の1.5倍になる。かつて米国から防衛費増額を要求された際、日本自身が米国にそう申し入れています。それに、増額するなら財源はどうするのか。社会保障費や文教費を削るのか。本当に日本の防衛費が少ないのかどうか、国民に考える材料を提供するのが本来のメディアの役割でしょう」 ■戦後積み上げてきたものが、一瞬にして崩れた 戦争を前にして外交は無力なのか。 20日開かれたG20の財務相・中央銀行総裁会議で、ロシア代表の発言時に米英カナダの代表らが退席した。ウクライナ侵攻に対する非難の姿勢を表したということだが、中国など新興国側が排除に反対し、参加国は分断され、共同声明の採択は見送られた。悪魔のような独裁者とは話もできない、外交努力など無駄といわんばかりだった。 だが、本当にそうなのか。半世紀以上もロシアと関わってきた元外交官の東郷和彦氏(77=静岡県立大グローバル地域センター客員教授)が、毎日新聞(22日)のインタビューに次のように話していたのが印象的だ。 同氏の祖父・東郷茂徳は1941年の日米開戦時と45年のポツダム宣言受諾時の外相。平和主義者として知られた祖父は、外交交渉について「51を相手に譲り、49をこちらに残す」「つまるところ、自国の利益だけでなく、相手の立場を理解するということです」と述べていたという。 そして、これは東郷氏自身の経験からだろう、「相手が最低限守りたい部分を渡すことで折り合う。実現可能な施策を立案し具申するのが外交官の役目です」と話していた。 ウクライナ戦争の現状については、「敵を知らずして戦争を終わらせることはできない。まずは歴史を直視せねばなりません」「日本は米国と話し合い、『頭を冷やせ』と言うべき」と言い、「日本は同盟国たる米国に対して責任を果たしているでしょうか」と疑問を投げかけていた。 ただ米国に追随ではなく、日本こそ外交で汗をかくべきということなのではないのか。 ■1億総理性を失う時代 太平洋戦争で「侵略国家」となった日本は、戦後、憲法9条を規定し、国際紛争を解決する手段としての戦争を永久に放棄、専守防衛を誓った。国際紛争は外交的手段で解決する、ということである。 日本にプーチンのような独裁者が現れても、戦争はできない。そうした平和国家・日本を長い時間をかけて世界に浸透させ、近隣のアジア諸国の信頼を醸成してきた。ところが、「かつてなく厳しい安全保障環境」だと訴え、政権は武装強化に一気に舵を切ろうとしている。防衛費の倍増、「反撃能力」と言い換えようが先制攻撃の恐れが強い「敵基地攻撃能力」の保有、核抑止力を議論すべしなど、専守防衛すら取っ払ってしまえ、という勢いである。 日本の安全保障政策の歴史的大転換は近隣諸国の警戒を確実に高め、とめどない軍拡競争へと向かうことになる。 自民党はウクライナ戦争を奇貨として、日本を戦争のできる国につくりかえたいのだ。暴走に歯止めをかけるのがメディアの役割ではないのか。大本営発表のプロパガンダのお先棒担ぎを、再び繰り返すのか。 政治評論家の森田実氏が言う。 「戦後積み上げてきたものが、こんなに一瞬にして崩れ去るとは……。政治はもちろんのこと、あまりのメディアの惨状に戦中を知る世代として怒りが込み上げます。軍事力でもって物事を解決してはいけない、という反省の下、平和外交を行うことを皆が誓ってきた。アジア諸国に対しては、上から目線の支配を反省し、友好関係を築くことが日本の未来のためであるとしてきた。これが血みどろの経験の中から導き出した結論だったはずです。いま政治家は理性を失い、狂気に走っている。メディアまで理性を失ってどうするんですか」 恐ろしい時代になってきた。それは「戦争」が想定外ではなくなった、ということではない。1億総理性を失う時代。今こそ、冷静さを取り戻したい。 |
実は日本の防衛費はすでに米国、中国に次いで世界3位の規模!
— ray2020(C) 2022参院選を最後の選挙にさせないために選挙に行こう (@ray202019) April 26, 2022
なのに大メディアは危機感を煽って改憲や軍備倍増を後押ししている😠
翼賛報道に用心しなくては🙄🧐#マスコミに騙されるな#日刊ゲンダイ頑張れ
戦争に備えを! 脅威を煽る大メディアが刷り込む戦時思想 https://t.co/pY1Y6w2y9D
このような風潮を、「在野のアナリスト」氏は冷静に分析していた。
情報、という点で考えると、米国のトランプ前大統領、露国のプーチン大統領、中国共産党、それぞれに共通する点があります。誰にでも分かる嘘をつく、責められると強く抗弁する、都市伝説でも語られるようなトンデモ論を真顔で語る。例えばプーチン氏の語る「アゾフ大隊はナチス」などですが、要するにそれを9割が信じなくてもいい。1割に満たずとも、数%でもそれを強く信じ、拡散効果をもつことが大切。共産主義圏が、情報統制という形をとりにくくなった現在、ネットの裏技を駆使すれば正しい情報にアクセスできる現状、このトンデモ論で国民の数%を熱狂的な支持者と為し、その先導…扇動により国民を統治する。これが現代版、社会統治の在り方として機能している、ということでもあります。 日本でも安倍政権時代、同じことが行われましたが、逆に強烈なアンチを生みました。それはあくまでトンデモ論なので、理解力のある、ごく一般的な国民には到底受け入れがたいものだからです。なので、強烈な安倍信者がそれを制しようと暗躍しましたが、賛否両論もあった。結局、メディアが安倍政権に協力し、長期政権を担った。今のプーチン大統領、中国共産党もそうであるように、国民の支持をうけている、という形をとるために、そうした熱狂的な支持者、それに流される層、そして権力にすり寄って甘い汁を吸いたい層などが協力し、国が形作られている。その統治を外部からみると異常、と映ります。 露国や中国をみて、異常と感じるのは正常です。でも、それを内にいたとき、本当にそう感じられるのか? それは日本の戦前も同様、本当に日本を『神の国』だと信じている者はそれこそ少数だったでしょう。でも流される層、権力にすり寄る層が加わると、それなりの数になる。トランプ前大統領の支持者が、未だにそうであるように、一度でも毒されると中々そこから脱却もできません。自己正当化、という人間が本来もつ力により、自分がトンデモ論を吹聴している、などという考えさえ否定しているからです。 ただ、そういう人物らが主張することは、大半が自分に当てはまること。プーチン氏が他者をナチスなどというのも、自らがナチス的であるから。トランプ氏の支持者が、米民主党を幼児誘拐に携わっている、などと吹聴したのも、国境の検閲を厳しくしたため、中米、南米でそうした事件を増やしたことを逆手にとっている。中国や北朝鮮が、日米韓が軍事演習をすると強く反発するように、それが有効な対策で自分たちがそれをしたい、それを相手がするのが口惜しいから。結局、写し鏡として相手をみているのです。 安倍元首相が3月にマレーシアを訪問しましたが、何の成果もなかった。外交の安倍、なんて喧伝されていましたが、以前から指摘するようにプーチン氏とも、インドのモディ氏とも何の交流もなく、重要な外交の局面で、かつて訴えていたことが嘘だとバレました。しかしその統治の間、数%がそれを信じ、それを喧伝し、それを信じた一部の層が流された結果が、長期政権だった。今この段階で、あえてそれを取り上げるのは、露国や中国をおかしい、と感じる正常な人ならば、日本も少し前には同じようなおかしなことが、繰り広げられていた、という認識をもつことが大切だからで、これは人が根源的にもつ性質です。 だから今、露国内でその異常性に気づけないのか? などという人もいますが、気づいている人はいても、その声をかき消せるだけの力をその手法はもちうる、ということなのです。他人のふりみて…とは言いませんが、メディアがその危険性、政治家がそれをしたときに「危険だ」と指摘できるのか? 安倍政権のときにはできなかった。では今後、同じような統治者が現れたときにそれができるのか? それはこの日本でも試されている、ということでもありますが、現状の態度を見る限り、その反省もない点を踏まえても、まだまだ未熟という点は残念なのでしょう。 |
残念ながら「まだまだ未熟」な日本のメディアには危険な統治者に対しては正面から「危険だ」と指摘することは無理なのかもしれないので、一人一人がメディアを主体的に読み解くメディアリテラシーを身に着けるしかない、とオジサンは思う。