新・定年オジサンのつぶやき

残された日々をこの世の矛盾に対して勝手につぶやきます。
孫たちの将来に禍根を残さないよう、よき日本を「取り戻したい」。

海洋放棄は福島のクライシス数を増大してしまい、中国に反論はできない

2023年08月29日 10時56分17秒 | 環境破壊

 もう2年半前のこんな記事が話題を呼んでいた。
  
 「原発汚染水にトリチウム以外の核種…自民原発推進派が指摘
 

国民の反対を押し切って、東京電力福島第1原発の敷地内に貯蔵されている「汚染水」が、海に捨てられることになった。
 海洋放出する汚染水について、麻生財務相は「飲んでもなんてことはないそうだ」などと安心安全を強調しているが、放射性物質に汚染された水を捨てて本当に大丈夫なのか。
■「通常の原発でも海に流している」も誤解を招く恐れ
 専門家が危惧しているのは、トリチウムだけがクローズアップされていることだ。大新聞テレビは、汚染水を多核種除去設備「ALPS」で浄化しても、トリチウムだけは除去できないと報じ、原子力ムラは「トリチウムが放出する放射線は弱い」「自然界にも存在する」「通常の原発でも発生し、基準を満たせば海に流している」と、海洋放出は問題ないと訴えている。
 しかし、大手メディアはほとんど問題にしていないが、「ALPS」で取り除けないのは、トリチウムだけではないという。トリチウム以外にもヨウ素129、セシウム135、セシウム137など、12の核種は除去できないという。
 自民党の「処理水等政策勉強会」の代表世話人・山本拓衆院議員がこう言う。
「断っておきますが、自分は原発推進派です。菅首相も支持しています。ただ、原発処理水に関する報道は、事実と異なることが多いので、国民に事実を伝えるべきだと思っています。東京電力が2020年12月24日に公表した資料によると、処理水を2次処理してもトリチウム以外に12の核種を除去できないことがわかっています。2次処理後も残る核種には、半減期が長いものも多く、ヨウ素129は約1570万年、セシウム135は約230万年、炭素14は約5700年です」
 さらに「通常の原発でも海に流している」という報道も、誤解を招くという。
「ALPS処理水と、通常の原発排水は、まったく違うものです。ALPSでも処理できない核種のうち、11核種は通常の原発排水には含まれない核種です。通常の原発は、燃料棒は被膜に覆われ、冷却水が直接、燃料棒に触れることはありません。でも、福島第1原発は、むき出しの燃料棒に直接触れた水が発生している。処理水に含まれるのは、“事故由来の核種”です」(山本拓議員)
 一度、海に捨てたら取り返しがつかない。

 
今読んでも、言っていることは間違っていない。
 

そして、またもやこんなパフォーマンスをしている輩がいた。
    
 
それにしても日本国内への中国からの「迷惑電話」や「いやがらせ電話」が止まらず、中には10代の高校生から20代の女性も少なくはない。
 
最初のインフルエンサーが仕掛けたのだろうが、そのやり口は段々と巧妙になってきているという。
 
そして残念ながら中国政府は黙認らしく、ますます若者の行為が増長している。
2009年から2012年まで、講談社(北京)文化有限公司副社長を務めた中国通の『現代ビジネス』編集次長の近藤 大介が、中国政府の異常な反応について、中国の複雑な国内事情から主だった理由を解説していた。
 
「中国はなぜ「日本叩き」にここまで必死なのか…? ALPS処理水放出に“過剰反応”する『5つの理由』」
 
中国の「日本叩き」が喧(かまびす)しい。福島第一原子力発電所のALPS処理水(トリチウム以外を取り除いた冷却水)を、8月24日午後1時から、太平洋に放水している問題だ。
たしかに、まだ記憶に新しい12年前、福島第一原子力発電所の事故を起こした東京電力という会社は、大問題である。東電がその責任を、半永久的に免れないことは、論をまたない。とはいえ、先週からの中国の反応は、日本から見ると、いささか過剰だ。経済産業省の資料によれば、中国の原発では、もっと濃度の高い処理水を、平然と海中に放出しているのだから。
なぜ中国は、かくもヒステリックなのか? 縷々思い連ねるに、そこから浮かび上がってくるのは、「5つの理由」である。以下、詳細に見ていきたい。
■【1】中国の「正義」をアピール
日本で今回の処置を決めたのは、いまの岸田文雄政権ではなく、前任の菅義偉政権である。2021年4月13日、菅首相が「海洋放出を2年程度の後に開始します」と宣言したことがきっかけだ。
実は中国は、この日から一貫して反対してきた。同日の外交部定例会見では、「戦狼外交官」と呼ばれた趙立堅報道官(現在は左遷されて外交部国境海洋事務局副司長)が、早くも怒りをあらわにしている。
「日本の福島の原発事故の核廃水処理問題は、国際的な海洋環境と食品の安全、人類の健康に関わることだ。国際的な権威ある機関や専門家は、福島原発のトリチウムを含む廃水を海洋に排出することは、周辺国の海洋環境と公衆の健康に影響を与えると、明確に指摘している!」
この時点では、「ただ反対を唱えている状態」だった。かつ隣国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は、中国以上に声高に、怒りの声を上げていた。
それから2年あまり経って、日本では東京電力の「処理水保管タンク」の水量が98%を超え、岸田政権が8月後半に放出を始めると決めた。7月4日には、来日したIAEA(国際原子力機関)のラファエル・グロッシ事務局長が、岸田首相に対して、安全にお墨付きを与える「包括報告書」を手渡した。
すると中国は、7月18日に李強首相が主催して、北京で全国生態環境保護大会を開いた。共産党のトップ7(党中央政治局常務委員)が全員出席する重要な大会と位置づけ、習近平主席が重要講話を述べた。
「今後5年は、麗しい中国を建設するのに重要な時期だ。(習近平)新時代の中国の特色ある社会主義生態文明思想を、深く貫徹していくのだ。人民が中心であることを堅持し、『緑水と青山はまさに金山銀山』(2005年8月に当時の習近平浙江省党委書記が同省湖州を視察した際に唱えた言葉で、現在は習政権の生態保護のスローガン)の理念を固く樹立、実践していくのだ。
麗しい中国の建設を、強国建設と民族復興の突出した位置に置き、都市と農村の住居環境の明瞭な改善を推進し、麗しい中国建設に明確な成果を作り出していくのだ。ハイレベルの生態環境をハイレベルの発展の支えとし、人と自然の和諧共生の現代化を、いち早く推進していくのだ……」
こうして、「習近平新時代の中国の特色ある社会主義生態文明思想」を、改めて採択。その中で「藍天・碧水・浄土」を、「三大保衛戦」として、強く推進していくと定めたのだった。
「碧水」とは、中国の自然な碧(あお)い海洋や河川を保持していくということだ。そしてそこに、福島原発の処理水が中国の海域に流入してくるということが、引っ掛かってくるのだ。
そのため、中国では連日、福島の処理水の問題を報じているが、「悪の日本」を報じる前に、必ず「正義の中国」をアピールしている。
例えば、「習近平主席は南アフリカで行われているBRICS(新興5ヵ国)首脳会議に出席して、『人類運命共同体』を唱え、世界の称賛を浴びた」というニュースが先に来て、その後に「一方、日本では福島の核汚染水が……」となるのだ。さらにその後には、「アメリカではハワイの山火事の後処理が進まず……」と、「悪のアメリカ」が続くので、「3点セット」とも言える。
ちなみに、先週24日の午後1時に、日本が海洋放出を開始するや、日本と1時間の時差がある中国では、CCTV(中国中央広播電視総台)で放映中のニュース番組『新聞30分』(12時~12時半)が、「緊急ニュース」として伝えた。
中国のテレビ番組は、それがニュースだろうが、ドラマ、バラエティ番組だろうが、すべて国家広播電視総局の検閲を受けないと放映できない。そのため、基本的に「生放送」「生中継」はない。
その習慣を破ったのは、2011年3月11日に日本で起こった東日本大震災である。この時、100人を超える中国のマスコミが現地に入り、ほとんど初めて「生中継」を開始した。当時、北京に住んでいた私は、中国のテレビもようやく生中継、生放送の時代を迎えたと、感慨深げに観ていたものだ。
ところが、2013年に「習近平新時代」に入ると、「新鮮な空気窓」は閉じられ、再びもとに戻っていった。それどころか、CCTVのナンバー2以下、幹部や看板記者らが次々にひっ捕らえられ、CCTVは習近平主席の「偉大さ」を延々と宣伝する「習近平礼賛テレビ」と化していった。
そんなCCTVが、福島の件に関して「生放送」「生中継」したということは、よほどのビッグニュースと捉えているということだ。しかも福島にわざわざ「特別取材チーム」を送り込み、ヘリコプターからの映像もふんだんに使っていたから、おそらくチャーターまでしたのだろう。
そういうことは、前述の国家広播電視総局と、さらにその上部組織である中国共産党中央宣伝部の指示がないと行われない。
現在の国家広播電視総局長は、中国信息通信研究院長を務めていた通信技術者出身の曹淑敏(女性)で、党中央宣伝部副部長を兼務している。また中央宣伝部長は、習近平主席が共産党の中央党校校長時代(2008年~2012年)に副校長として仕え、覚えめでたくなった李書磊である。
つまり、習近平主席の意向か、もしくは「トップの意向を忖度した」李書磊部長か曹淑敏局長から、CCTVに「特に強調して報道するように」という指示が出たことが推測できる。それは、「正義の中国」と「悪の日本」を対比させるということに他ならない。
■【2】日本社会の「分断」を図る
これは中国の「アメリカ批判報道」でよく見られるパターンだが、北京のテレビスタジオからではなく、アメリカ人にマイクを向けて、自国政府の批判をさせるのだ。例えば、ドナルド・トランプ政権時代には、「反トランプ」の人々に、いかにトランプ大統領が悪辣な政策を行っているかを言わせていた。
昨年からは、バイデン政権下の高インフレで、いかに庶民が生活で苦しんでいるかを、アメリカ人に語らせている。今月のハワイの山火事の時も、ハワイの住民に当局の批判をさせていた。
同様に、今回の福島の一件では、CCTVが日本で日本人にマイクを向けて、岸田文雄政権批判をさせるということが、連日行われている。放水に反対する地元の漁業関係者はもちろん、例えば「日本環境保護組織代表・山崎久隆」という日本人が登場し、処理水の海洋放水がいかに危険に満ちたものであるかを説いている。
そうやって、「善意の市民と圧制を強いる岸田政権」という日本人同士の対立構図にしているのだ。日本の分断を図る高等戦術とも言える。
後述する日本産の水産物の輸入を禁止する措置も、同様だ。これによって、日本の水産物関連業者たちに「岸田政権に対する怒りの声」を挙げさせ、日本社会の分断を図っていく。そうした声に野党も加わってくれば、中国としては望ましい限りだ。
■【3】中国国内の混乱を恐れている
現在、中国のSNSやネット上で流布している一篇の論文がある。2021年11月26日、英オックスフォード大学が発行する『ナショナル・サイエンス・レビュー』誌に、中国人の5人の専門家(劉毅・郭雪卿・李孫偉・張建民・胡振中の各氏)が、連名で寄稿したものだ。
タイトルは、「福島原発事故で処理された汚染水の放出:巨視的・微視的なシミュレーション」。そこでは、以下のような論を展開している。
〈 マクロシミュレーションの結果、汚染物質排出の初期段階では、汚染地域は急速に増加し、30日以内に緯度40°×経度120°に達することが明らかになった。海流の影響で、汚染物質の拡散速度は、経度方向よりも緯度方向の方がかなり速くなる。
放出から1200日後、汚染物質は東方と南方に拡大し、北米とオーストラリアの海岸に到着。北太平洋地域のほぼ全体を覆う。その後、これらの汚染物質は、赤道海流に沿ってパナマ運河に移動し、南太平洋に急速に広がる。2400日以内に、太平洋への拡散とともに、汚染物質のごく一部が、オーストラリアの北の海域を通ってインド洋に広がる。
3600日後、汚染物質は太平洋のほぼ全体を占めるようになる。日本列島付近では汚染物質の排出が起こるが、時間の経過とともに、汚染物質濃度の高い海水が、北緯35度に沿って東に移動する…… 〉
この論文に添付された資料によって、「放水から240日(8ヵ月)後に、中国に核汚染水が押し寄せる」としているのだ。つまり、「日本の核汚染によって中国の海も汚される」という主張だ。

そのため、中国はまず、日本産の水産物を水際でストップするという挙に出た。日本が放水を開始した8月24日、中国海関(税関)総署が、「2023年第103号公告」を発令した。
〈 日本の福島の核汚染水の海洋放出が食品の安全にもたらす放射能汚染の危険を全面的に防止し、中国の消費者の健康を保護し、輸入食品の安全を確保するため、「中華人民共和国食品安全法」及びその実施条例、「中華人民共和国輸出入食品安全管理弁法」の関係規定、及びWTO(世界貿易機関)の「衛生と植物衛生措置の実施協定」の関係規定に基づき、税関総署は決定した。2023年8月24日(この日を含む)から、一時的に日本産の水産品(食用水産動物を含む)の輸入を、全面的に禁止する 〉
日本はこうした動きを「過剰反応」と捉える。だが中国では、「北朝鮮の核実験」という前例がある。
いまから10年前の2013年2月12日、北朝鮮が3回目の、かつ金正恩(キム・ジョンウン)政権になって初めての核実験を行った。この時、中国環境保護部は、「東北地方の核汚染による大気汚染は逐一発表する」という緊急声明を発表した。
北朝鮮の核実験は、中朝国境から約100kmしか離れていない豊渓里(プンゲリ)という実験場で行われる。実際、核実験が行われた時、中国吉林省の国境付近では地震が発生し、中国側の住民たちが青ざめた。さらに、「大気が核汚染されていく」という風評被害が広まった。
そのため、国境沿いの吉林省や遼寧省ばかりか、北京の北朝鮮大使館前や、南部の広州などでも、「朝鮮の核実験を許さない!」「朝鮮への援助を停止せよ!」といったプラカードを掲げたデモが起こった。当時の中国政府は、こうしたデモを抑えるのに四苦八苦した経験があるのだ。
今回も、「日本からの核汚染水がやって来る」という風評被害が発生。食塩の買い占めや、放射能計測器の買い占めまで起こっている。
このまま放っておいては、いずれ市民の「怒りの矛先」が、日本政府から中国政府に転化するかもしれない。何せ周知のように、現在の中国経済は最悪で、街には失業者が溢れているのだ。中国政府は、そのことを一番恐れている。
■【4】市民の怒りの矛先を日本に向けさせる
前述【3】と表裏一体のことだが、中国政府には、いまの大不況の状態を、日本に転嫁したいという思惑も、チラリとあるのではないか。
8月24日に山東省の日本人学校に中国人男性が投石、25日に江蘇省の日本人学校に卵が投げ込まれる……。
北京の日本大使館は24日、10万2066人(昨年10月1日時点での外務省発表)の中国在留邦人に向けて注意喚起を出した。
〈 8月22日、日本政府は、ALPS処理水の具体的な放出時期を8月24日と発表し、24日から放出が開始されました。現時点では、当館において、ALPS処理水の海洋放出に起因して日本人が何らかのトラブルに巻き込まれた事例は確認されておりませんが、不測の事態が発生する可能性は排除できないため、注意していただきますようお願いします 〉
さらに翌25日にも、注意喚起が追加された。
〈 昨日(24日)、不測の事態が発生する可能性は排除できないため注意していただくようお願いしましたが、以下の点について留意していただきますよう改めてお願いいたします。
(1)外出する際には、不必要に日本語を大きな声で話さないなど、慎重な言動を心がける。(2)大使館を訪問する必要がある場合は、大使館周囲の様子に細心の注意を払う 〉
これはかなり異常事態だ。さらに、中国のレストランなどでは、「食材産地調整公告」が入口に立てられ始めた。これは、日本を原産地とする食材は一切使っていないという意味だ。
こうした状況は、2012年9月11日に、日本政府(野田佳彦民主党政権)が尖閣諸島を国有化した時に似てきた。当時ほどインパクトは大きくないが、中国の経済状況は、当時とは比べ物にならないほど悪い。
■【5】日本を使った「中南海」の権力闘争
現在の中国外交トップは、かつて駐日大使を務めた王毅党中央外交工作委員会弁公室主任で、7月25日からは、秦剛外相を失脚させて、再び自ら外相に返り咲いた。
いまや中国外交部は、「王毅部」と揶揄されるほど、王毅部長(外相)の力が強い。王毅部長は、対外強硬派として知られ、「戦狼(せんろう)外交」(狼のように吠える外交)の旗振り役を務めてきた。今回の処理水問題についても、日本に対して極めて強硬だ。
王毅部長率いる外交部は、8月24日、日本が海洋放出を始めた時間に合わせて、わざわざ「日本政府が福島の核汚染水の海洋放出を始動させたことについての外交部報道官談話」を準備し、発表した。
「8月24日、日本政府は国際社会の強烈な疑念と反対を無視して、一方的に福島の原発事故の汚染水の海洋放出の始動を強行した。これに対し、中国は決然たる反対と強烈な譴責を示す。すでに日本に対して、厳正な申し入れを行い、日本にこの誤った行為の停止を要求した。
日本の福島の核汚染水の処置は、重大な核安全の問題であり、国を越えて世界に影響を与えるもので、絶対に日本一国の私事ではない。人類が原発を平和利用して以降、人為的な核事故汚染水の海洋放出は前例がない。かつ公認された処置の基準もない。
12年前に発生した福島の核事故は、すでに厳重な災難をもたらしたというのに、大量の放射性物質を海洋放出したのだ。日本は私利私欲に走ってはならず、現地の住民及び世界の人々に二次災害を与えてはならない……」
続いて、アメリカ東部時間の25日には、国連安保理で突然、王毅外相の忠臣として知られる耿爽中国国連次席代表が、この問題で吠えた。
「日本は、いまだ国際社会が、未解決な核汚染水の浄化装置の長期信頼性、核汚染水のデータの真の正確性、海洋放出観測の方法の的確な有効性について、重大な懸念を示している中で、放出を開始した。
中国など関係各方は、何度も指摘してきた。もしも核汚染水が安全だというのなら、そもそも海洋放出する必要はない。安全でないなら、なおさら海洋放出すべきでない。
私は皆さんに提起せざるを得ない。IAEA(国際原子力機関)の報告は、必ずしも日本が核汚染水を海洋放出する『通行証』にはならないと。報告は日本に、海洋放出の正当性と合法性を与えるものではないと。
また日本に、責任の負担、道義的責任、国際法の義務を免除するものでもない。誤った決定を正し、核汚染水の海洋放出を即刻停止することを求める!」
このように、王毅外交部を挙げて、対日批判キャンペーンを張っている。
それに対して、おそらくこうした強硬姿勢に異を唱えていると思われるのが、経済外交を重視する李強首相だ。
李首相は、「北戴河会議」(中国共産党の非公式重要会議)が明けた8月16日、国務院(中央政府)第2回全体会議を招集した。テーマは、「ハイレベルの発展の揺るぎなき推進」。その中で、国務院の幹部たちを前に力説した。
「国内の需要を拡大し、引き続き消費を拡大して投資の政策余地を促すのだ。一般商品の消費を振興し、民間の積極的な投資を引き出し、重要項目の早い時期の研究と準備をしっかり実行していくのだ。
現代化の産業システムの構築に着手し、新たな技術と業態を使って急ぎ、伝統産業を改変し、引き上げていくのだ。戦略的かつ思い切り新興産業グループの発展を推進し、製造業のデジタル化の転化の歩みを全面的に加速させるのだ。
改革の深化と開放の拡大に着手し、新たな国有企業改革の行動を深く引き上げて実施するのだ。民営企業の発展環境を整え、外国との貿易を安定した規模でしっかりした構造で推進し、さらに大きく外資を吸引し、利用するのだ……」
李強首相は、悲壮感に満ちた表情で、幹部たちに訴えた。おそらくは、「戦狼外交なんかやっている場合ではなく、西側諸国を味方につけないと中国経済が崩壊してしまう」と言いたかったのだ。CCTVの映像で見ると、幹部たちもこの上なく暗い表情をしていて、中国経済の悪化ぶりを想起させた。
李強首相の中国共産党での序列は、習近平総書記に次ぐ2位で、党中央政治局常務委員(トップ7)。王毅外相は、その下の党中央政治局委員(トップ24)の一人。すなわち力関係で言うなら、「李強>王毅」だ。
実際、日本が放水を開始した24日のCCTVの大仰な報道は前述の通りだが、翌25日夜のメインニュース『新聞聯播』では、おしまいから2番目の「外国ニュース速報」のコーナーに下がった。以後も同様である。CCTVは国務院傘下のテレビ局なので、李強首相の意向が働いた可能性がある。
だが、李強首相の弱点もある。多勢(強硬派)に無勢(穏健派)なことだ。いまから10年前にも、李克強首相が、現在の李強首相と同じ立場にあったが、その後の権力闘争で敗れ去っていった。

「李強vs.王毅」の綱引きは、これからも続いていくだろう。処理水の問題で言えば、今後のポイントは、9月5日から7日までインドネシアで開かれるASEAN(東南アジア諸国連合)関連の首脳会議で、岸田首相と李首相の会談が実現するかだ。
会談が開かれれば、日本側の何らかの譲歩と引き換えに、中国側が福島の処理水問題に関して、こぶしを振り下げる可能性がある。逆に開かれなければ、「王毅戦狼外交」が続いていくと見るべきだろう。
いずれにしても、この問題で決定を下せるのは、経済失速とともに、このところやや存在感が薄れてきている「皇帝様」(習近平主席)だけである。


 
中国の過剰反応を批判する前に、この動画を見てほしい。
 
 
 
明らかな政府の海洋投棄は最悪の選択であり、国際環境問題にしてしまい、はたして日本政府はまともな対応を中国政府にできないであろう、とオジサンは思う。   
  

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