新・定年オジサンのつぶやき

残された日々をこの世の矛盾に対して勝手につぶやきます。
孫たちの将来に禍根を残さないよう、よき日本を「取り戻したい」。

ジャーナリストの神髄は「弱い者の嘆きに従う」

2019年01月07日 10時21分08秒 | マスメディア

世の中には「似た者同士」と言われる夫婦がいる。
 
趣味や考え方が同じである男女が付き合い結婚に至るという例はよく見かける。
 
しかし、少なくともオジサン夫婦は全く逆である。
 
アルコール大好きオジサンに対してオバサンは全くの下戸。
 
蕎麦大好き人間のオバサンに対してオジサンは「ソバアレルギー」。
 
テレビ番組でも「お笑い系」と「アクション系」とはっきり分かれる。
 
しかしテレビ番組で唯一共に長年欠かさず見ている番組がテレビ朝日のドル箱番組の「相棒」である。
 
新しい「season」の初回と最終回、そして年始に放映されるスペシャル版などは、他の番組の追随を許さないほどの内容がたまらない魅力でもある。
 
特にオジサンの最もお気に入りは、2000年から2016年まで監督を務めた和泉聖冶と、その間のメインライター輿水泰弘の脚本のコンビによる作品であった。
 
そして最近は若い太田愛の脚本が注目を集めている。
 
憲法学者・水島朝穂との対談「介入と忖度」で、「太田さんの作品は、企業や国家と、個人の関係、すなわち巨大な組織と翻弄される個人の関係が描かれていて、とても注目している」と水島に語らせた脚本家の太田愛
 
その太田愛がまさに「平成の時事ネタ」を思う存分含んだ脚本が元旦に見事に花開いた。 
 

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<元日ドラマ『相棒』が今年も安倍政権批判! オトモダチ企業優遇、官僚支配の本質にも踏み込む快作> 2019.01.05 リテラ 
 元日に放送された『相棒』(テレビ朝日)がまたしてもやってくれた。
 昨年の元日スペシャルには、“官邸のアイヒマン”こと北村滋内閣情報調査官がモデルと思しき人物が登場。政府要人を情報で恐喝し、従わせるという安倍政権の官僚支配を彷彿とさせるストーリーを展開して話題になったが、今年の『相棒season17 元日スペシャル ディーバ』も、安倍政権の暗部を彷彿とさせるようなシークエンスが随所にちりばめられていたのだ。
 ドラマは大物シャンソン歌手・神崎瞳子(大地真央)がパリから凱旋帰国するシーンから始まる。神崎はパリで30年間活躍する歌手であると同時に、積極的に政治活動に参加、労働デモで市民と一緒に逮捕されたこともある女性だった。
 その神崎が記者から「海外からみた日本」について質問され、こう答える。
日本のみなさんは政治に興味がないんじゃありませんか。国政を担う方々がとんでもない失言をしても、お友だちに便宜をはかってもたいして問題にならないんですから
 冒頭からいきなり安倍首相の森友・加計疑惑や麻生太郎財務相らの暴言を想起させるセリフ。しかも、興味深いのはこの後だった。神崎の様子をテレビで観ていた特別捜査官の青木年男(浅利陽介)が、乾いた笑いを浮かべしながら「何か言い方が挑発的だな。好感度低いですよね、これ」と吐き捨てるのだ。
 さらに、青木は神崎の信条が「私は法に従わない。弱い者の嘆きに従う」というものだと知ると、こうつぶやく。
「いいんじゃないですか、勝手に従ってれば」
 これもおそらく、日本の言論状況を表現したものだろう。辺野古新基地反対をめぐる署名を呼びかけたローラのケースをみてもわかるように、タレントや芸能人が少しでも権力批判、とくにいまの政治・政権を批判するような発言をすれば、バカにされ、嘲笑され、御用マスコミや安倍応援団、ネトウヨ、冷笑系などから攻撃される。わざわざ青木のリアクションを入れたのは、そうした同調圧力的な状況を皮肉ったとしか思えない。
 その後も、安倍政権の問題点を描くようなシーンがいくつも登場する。杉下右京(水谷豊)や冠城亘(反町隆史)が今回、直面する事件は、年末の朝、16歳の少女・槙が殴られ、その幼い息子・樹が誘拐されたというもの。だが、誘拐された樹は日本政界の重鎮である衆議院議員・敦盛劉造(西岡德馬)のひ孫で、事件の背景には敦盛と自殺者続出のブラック企業・三雲生命会長との癒着があった。
 三雲生命では、密かに行われていた自己啓発セミナーが原因で複数の自殺者が出ていたのだが、敦盛が官僚を動かして、三雲生命のこの疑惑を隠蔽していた。そのことを追及する右京と敦盛の間で、こんな会話が交わされる。
敦盛「私が財界人や省庁の役人と会食することが何か法に触れたりするものなのですか」
右京「いいえ。ところであなたは党大会でこのような発言をされていますね。社員が組織のために全力を尽くすことで企業の体力が向上し、国際競争力が増す。そのことが国家を繁栄させる。一つの目標のもと、国民が一丸となるのが、この国の伝統」
敦盛「はい、私はそう考えておりますが」
右京「三雲会長もよく似た考えをお持ちのようです。仮にあなたが厚生労働省の幹部に三雲会長を引き合わせて、『三雲生命の急成長は社員の精神教育に基づいて取り組んできた成果であり、今後も期待している』と言えばどうでしょう。あなたの意向を汲んだ幹部の指示で査察を求める三雲生命社員の訴えが握りつぶされる事態があり得るのではないでしょうか」
『相棒』が「内閣人事局」を使った官僚コントロールの手口にも言及
 これはまさに、安倍首相によるオトモダチ企業の優遇の本質を言い当てるようなやりとりではないか。『相棒』では大物政治家・敦盛と癒着する三雲生命会長が国家主義、全体主義思想の持ち主であるという設定だが、安倍首相の取り巻き経営者も森友・加計、APAホテル、JR東海会長など、歴史修正や排外主義の持ち主が多く、そうしたお友だちと会食などを通じて密接な関係を持ち、様々な便宜や優遇をしてきた。
 しかも、敦盛は直接、優遇を指示していないが、官僚の前で三雲生命をほめることで巧妙に官僚の忖度を引き出していると右京は追及している。これこそまさに、安倍首相の手口そのものだろう。
 さらに、右京と敦盛のやり取りはこう続く。
敦盛「それは面白い仮説ですね。しかしそんな目配せ程度のことで官僚が動きますか?」
右京「あなたは内閣人事局に影響力をお持ちですよね」
亘「厚生労働省では部長から局長に昇級すれば、俸給は3段階上がります。年収は300万以上アップ。在任期間によっては退職金はなんとプラス1000万以上」
右京「しかしその俸給は国民の税金で支払われています。つまりあなた自身は法に触れず、末端の人間に不正を強いているとも言えますねぇ」
敦盛「それはなんの証拠もない。ただの仮説だ」
 そう、右京が「内閣人事局」のことを持ち出しているのだ。ドラマでは内閣人事局に影響を持つ敦盛が官僚と財界人の懇親会を開催。官僚たちの忖度で、三雲生命のブラックぶりが放置されるという展開なのだが、現実社会においても、安倍政権下で内閣人事局が発足、官邸が各省庁の幹部人事を握ったことで官僚が官邸に忖度する構造がさらに強まっている。『相棒』はその問題をクローズアップしたのだ。
がんばっている『相棒』に比べて、報道やワイドショーは忖度だらけ
 このように、安倍政権の問題点や暗部を随所に盛り込み、見事に作品に昇華させた『相棒season17 元日スペシャル』。しかも、今回の作品がすごいのは、たんに現政権の不正を風刺するというだけでなく、メディアが追及しないその構造的問題にまで踏み込み、官僚の忖度が生まれる状況を再現させていたことだ。
 脚本は昨年同様、太田愛氏。太田氏はこれまでにも共謀罪、特定秘密保護法、警察内部の抗争、公安の暗躍などの現実の警察が抱える問題を作品に投影することで定評のある脚本家だが、今回もさすがといっていいだろう。
 ただし、テレビ朝日でもこうした気骨を見せているのは、ドラマ部門だけだ。『報道ステーション』や『羽鳥慎一モーニングショー』などニュースやワイドショーでは、忖度官僚と同様、政権を忖度し、批判報道がどんどん抑えられているのが現状だ。
 物語の最後、右京と神崎がこんな会話を交わしている。
右京「ことを起こせば、あなたはキャリアすべてを失うとわかっていたはずです。何があなたにそこまでさせたのでしょう」
神崎「私は路上でも刑務所でも歌ってきました。私は法には従わない」
右京「弱い者の嘆きに従う。ええ、あなたはそういう人です」
「弱い者の嘆きに従う」というのはジャーナリストにこそもっとも必要な姿勢だと思うが、いまのマスコミにはもはやそんな人間はいないということだろう。
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「日本のみなさんは政治に興味がないんじゃありませんか。国政を担う方々がとんでもない失言をしても、お友だちに便宜をはかってもたいして問題にならないんですから」と、お笑いタレントや芸人たちがテレビで発言すればネット上でネトウヨ連中から総叩きされてしまい、その後の職を失うかも知れない。
 
しかし「ペンの力」で、間接的に大物女優に言わせるという芸当はまさに、憲法で保障された「表現の自由」を如何なく発揮したということであろう。
 
脚本家にできることが、マスメディアのジャーナリストにできないことはない、とオジサンは思う。    


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