5年ほど前の2016年1月22日に、「2020年東京大会 新聞4社がオフィシャルパートナーに決定」という報道を電通が発表していた。
その新聞4社とは、「読売新聞東京本社」、「朝日新聞社」、「日本経済新聞社」、「毎日新聞社」の在京大手紙である。
当然ながら、その後発生した2020年東京大会関連の不祥事や不都合なニュースは掲載されていない。
そして、COVID-19が100年に一度といわれているパンデミックに指定されながらも、欧米諸国やインド、ブラジル等の国々に比べれば感染者数や死亡者数が圧倒的に少なく、「日本モデル」など自画自賛する輩もいたし、メディアも追随していた。
しかしさすがに2度目の緊急事態宣言が発せられる前後から、「日本モデル」も怪しくなり、菅義偉政権になった以降は、感染者数の拡大は「人災」とまで指摘されてきた。
1年延期された五輪開催まで半年を切り、五輪開催の唯一の頼みにしていたワクチンの供給も五輪までには全国民には間に合わないという事実も明らかにされてきた。
昨日の「内憂外患から失地回復できるのか菅義偉」の冒頭では、「英紙タイムズが『日本政府は非公式ながら東京五輪を中止せざるを得ないと結論づけた』というスクープにより国内の五輪亡者から中止否定の声が上がっていた。」と図星を突かれた関係者らのアタフタ振りを紹介した。
しかしオフィシャルスポンサーの在京大手紙は沈黙を保っていた。
地方紙のこのメディアは五輪開催の可否について社説で論じていた。
「五輪まで半年 開催の可否問い直せ」
東京五輪の開会式まで半年となった。新型コロナウイルス感染症が拡大する中、開催に反対する世論が強まっている。政府や東京都、大会組織委員会は開催の可否を根本的に問い直すべきだ。 1月に共同通信が行った世論調査では「開催するべき」は約14%で、昨年12月から半減した。「再延期」と「中止」は計8割で、今夏の開催を否定している。 11都府県が2度目の緊急事態下にある。全国の1日の死者が100人超に達する日もあり、1年延期を決めた昨年3月より状況は悪い。一般市民へのワクチン接種開始も5月ごろとされ、国民の大会不安は当然である。 海外でも感染状況が深刻な国は多く、大会参加選手を決める予選が行えるかどうか見通せない。不参加を唱える国が出ることも予想される。 これまで政府や都、組織委は「人類がウイルスに打ち勝った証しに」と言い続けてきた。「満員の競技場で全競技を行い、多くの観光客を入国させる」という最善プランに固執したことが、不安を招いた一因ではないか。 遅まきながら、感染状況に応じた縮小案や中止案について検討し、準備状況や影響予測なども含めて公表する。その上で、どの案を選ぶか丁寧に説明するべきだ。 開催する場合は、感染防止対策に相当の困難を伴う。現行の対策は大ざっぱな中間整理にすぎない。パラリンピックと合わせて1万人超の選手、約8万人のボランティア、多くの観衆らが計30間、複雑に行動する全シーンに対応しているとは言い難い。 また1年延期とコロナ禍が重なり、ボランティアと医療スタッフを確保できるか判然としない。 観客の入場制限の有無も今春まで結論を先送りしている。限定的な規模の大会となり、チケット収入が減れば大会収支は悪化する。観光客が来日しなければ、経済効果も乏しい。 どんな形であれ開催するための大前提は、感染拡大を抑え緊急事態を早期に解消することだ。 一方、中止する場合は約3000億円の追加支出は抑えられるが、支出済みと考えられる約1兆3000億円の開催経費、新設施設が意義を失う。チケット収入はゼロで、特需を当て込む観光や警備業界なども打撃を受ける。 聖火リレーの開始は3月25五日。それに間に合うよう方針を国内外に説明し、理解を得ようとするなら、残り時間は少ない。 |
五輪は大会関係者やアスリートたちだけでは成り立たず、ボランティアという影の支援者が必須である。
そのボランティアたちから1年の延期による理由なのかはともかく辞退者が出ているという。
「東京五輪・パラのボランティア 辞退者相次ぐ 「国民が歓迎するイベントなのか』」
【東京新聞より】
まったくの正論だと思います。
— 仲俣暁生(『失われた「文学」を求めて|文芸時評編|』発売中) (@solar1964) January 23, 2021
>「キャンパスに行けないのに、五輪会場に集まれというのはおかしい」 https://t.co/Ly4QXMxkLM
五輪は「アスリートファースト」なのかもしれないが、今の時期にこんなことを言えば「アスリートエゴ」と批判される可能性もある。
文脈からすれば「東京五輪がなくなったら、運があるかった」と思うこともできそうなんだけどね。アスリートは命かけて練習してるかもしれないけれど、そのオリンピック開くために日本がおかしな対策に終始したために本当に命を落とした人が多くいることも理解すべき。https://t.co/i9gVpq4ZYG
— ono hiroshi (@hiroshimilano) January 23, 2021
皆無だから「選手としては絶対やりたい」ばかり主張しても賛同しずらい。アスリートは定期検査とかできる特別な存在だったわけで、検査受ける前に死んじゃった人や検査受けても自宅で入院待ち待ってる間に死んじゃった人なんかも同じ日本人であることに想像力働かせればこういう発言にはならない。
— ono hiroshi (@hiroshimilano) January 23, 2021
ところで、施政方針演説で「グリーンとデジタルが次の成長の原動力」とぶち上げて、デジタル庁創設して「国全体のデジタル化を主導する」と意気込んでいた本人のデジタルに関するスキルがこの程度なのか、という記事が出ていた。
「菅首相、SNS活用を学ぶ 「曲解して伝わる仕組み」に強い関心」
記事では、「首相は『なるほど、こういうふうな形では確かに誤解されて伝わったりもするな』と関心を持った」らしいのだが、そもそも国民は「誤解」したわけではなく、菅義偉の貧困なボキャブラリーと表現力おかげで、意味不明になっているだけということを自覚していないことが問題なのだろう。
さて、1週間ほど前に、「政権の寄生虫の御用学者でしかない感染研チームを解体一掃しろ!」の中で、「役に立たない、PCR大量検査にどこまでも後ろ向きな、政権の寄生虫の御用学者でしかない、尾身茂・脇田隆宇・押谷仁・岡部信彦の無能なWHO人脈・感染研チームを馘首し、解体一掃することだ」という少々過激なことを言っていたブログを紹介したのだが、サンデー毎日 2021年1月24日号では上昌広・医療ガバナンス研究所理事長が同じような怒りの告発をしていた。
「感染爆発の戦犯 尾身茂・分科会会長を退場させよ」
◇尾身氏は世界水準からあまりに遠い 緊急事態宣言発令だ。 「来るところまで来てしまった感が強いが、予想通りの展開だ。誰が考えてもおかしいことを誰も何も言わずに突き進んできたからだ。ただ、宣言については4都県知事に言わせたのが見え見えだ。ロックダウンしたがるのは尾身茂(感染症対策分科会会長)氏ら厚労省、感染研を軸とした『感染症ムラ』の人たちだ。宣言を神風に、自分たちの失敗を糊塗(こと)しようとしている」 「発熱者と濃厚接触者だけをPCR検査対象とするクラスター戦略にしがみつき、感染を爆発的に広げる無症状感染者を市中に野放しにした。無症状感染者たちがノーマークで、つまり本人たちも知らないまま、飲食の場、職場、家庭でひたすら経路不明の感染者を増やしていく可能性を黙殺してきた。そういう人たちはいないことにしてきたのだ。航空戦の時代に戦艦大和頼りの愚を繰り返した」 まさに「失敗の本質」。 「であるにもかかわらず、失敗した張本人がそれを認めることもなく、英雄気取りでロックダウンしろと言っている。その張本人をメディアも叩(たた)かない。可哀想なのは失政の被害者たる飲食店主たちだ。ロックダウンのやり方も雑だ。4都県全域対象なんて合理的ではないし、世界的にもあり得ない。なぜ房総半島突端や箱根を新宿と一緒にするのか。PCR検査を網の目のように徹底的に行い、危険な地域だけを早く、集中的に規制すべきだった」 |
昨年の第3波の気配が色濃くなったころ、こんな発言をあるテレビのコメンテーターが言っていたことを思い出す。
「政府は感染者数の拡大を放置し自らではなく、各自治体の首長から緊急事態宣言を発してほしいということを待っているようだ」
「政権の寄生虫の御用学者でしかない、尾身茂」とか、「尾身茂・分科会会長を退場させよ」と特定の個人を批判するのもいいが、実はもっと最悪の張本人を批判しなければならない。
「誰も言わないから敢えて言う。大感染の責任は「医務技監」だ!」
新年早々の緊急事態宣言。各地で事実上「医療崩壊」が起こっている。 原因の一つは「未だにPCR検査が足りない」ことだ。中国と違い、政府は検査体制強化に一貫して消極的だった。 コロナ対策のトップ、初代「医務技監」鈴木康裕氏の言い分に異論がある。 「陽性と結果が出たからといって、本当に感染しているかを意味しない。ウイルスの死骸が残って、それに反応する場合もある。ウイルスを吸い込んでも陽性にならなかった人もいる。PCR検査は完全ではない」 と言い続けた。 確かに「完全」ではないだろう。しかし、彼が指摘する「偽陽性」の頻度は低い。この分析は偏ってはいないか? ここで「医務技監」というポストについて、説明しなければならない。 安倍政権は2017年6月(英国の「チーフ・メディカル・オフィサー」制度を念頭に)「政治状況に影響されず、保健医療分野の重要施策を一元的に推進し首相をサポートするポスト」を新設。わざわざ「事務次官級」と明記した。 初代の鈴木氏は1984年に慶應大医学部卒、旧厚生省に入省した医系キャリア官僚。コロナ対策では、安倍前首相が棒読みする「資料」は全て鈴木氏が書いた(天皇、皇后両陛下に対する説明も鈴木氏が行った)。 ひょっとして「事務次官よりも強い権力を持つ存在」が〝PCR検査は信用できない!〟と言ったことが混乱を起こしたのではないのか? 誰も言わないから、敢えて言う! 大感染の責任は鈴木「医務技監」ではないのか? 昨年8月7日、鈴木氏は医務技監を退任。現在は厚労省顧問である。 一部には、治療薬候補「アビガン」の承認などをめぐって首相官邸側と意見が分かれたから外された?というウワサもある。それはともかく、一人の〝思い込み〟で、国家が取るべき「道」を誤ったとしたら......。敢えて言う。コレは「医療独裁の悲劇」である。 |
医務技監」鈴木康裕についてはすでにこんな指摘があった。
2年以上も前に、「医務技監はパンデミック対策で司令塔の役割を期待されるのに、感染症対策の経験がないことは致命的」とか書かれてるけど..大丈夫なのか???https://t.co/FkNLwSExVc
— fusion (@__fusion) April 25, 2020
「《罪深きはこの官僚》鈴木康裕(厚生労働省医務技監)」(参照)
内閣人事局を設置して以来、官僚の人事権を握り意のままに官僚使っていた菅義偉が、今後厚生労働省医務技監を制御しながらCOVID-19の感染拡大防止対策を進めることができるのか否かが今後の菅義偉の命運を決めることになり、失敗すれば「菅政権 4月自爆退陣のシナリオ」が現実味を帯びるのではないだろうか、とオジサンは思う。