岸田文雄は世論の反対が強まり、「安倍国葬」を「国葬儀」と姑息な言葉遊びをした。
そして「国葬儀」の意義として「民主主義」を強調し「国として葬儀を執り行うことで、我が国は民主主義を断固として守り抜くことを示していく」とまで言い切ってしまった。
改めていうまでもないが、子供にわかりやすくいうならば、民主主義とは簡単な言葉で説明すると「ものごとをみんなで決めましょう」という考え方のことなのだが、少数派の意見も、多数派の意見にも耳を傾ける。「聞くこと」を自分の強みとしていた岸田文雄の耳はいったいどこに行ってしまったのか。
結局は、「国葬でわかった自民党の限界 安倍政治を否定できない岸田内閣」ということが明らかになったわけである。
【巻頭特集】黒を白という説明などできっこない、今後も国会で詭弁を続けるであろう岸田政権。同じようにアベノミクスの亡国金融緩和を続け、次の総裁もお気に入りを選ぶのだろう。政権交代以外に政治と経済をまともに戻す手だてなし。 https://t.co/3JNB62eNNu #日刊ゲンダイDIGITAL
— 日刊ゲンダイDIGITAL (@nikkan_gendai) September 29, 2022
いやはや、予想通りと言えばいいのか。 27日、東京・千代田区の日本武道館で強行された安倍晋三元首相の国葬のテレビ中継を見ていて、正直、日本人であることを恥ずかしいと感じた国民も少なからずいただろう。 国全体が悲しみに包まれ、厳粛な雰囲気の中で行われた故エリザベス女王の国葬と比べて、あまりにもグダグダで、ショボかったからだ。 エリザベス女王の国葬では、参列者はもちろん、棺を乗せた車を沿道で見送る人々も静かに弔意を表していた。ところが、安倍の国葬の参列者の中には、祭壇に掲げられた安倍の遺影をバックにスマホで自撮りしてSNSに投稿したり、自席で居眠りしたり……。しまいには、献花を終えたとみられる人の怒声や、「儀仗動かして!」「(バスを)出して!」などと進行にテンヤワンヤになっているスタッフの金切り声がそのまま中継で流れる場面もあった。 もはやドタバタ劇と言っても過言ではなかった国葬。日本政府の熱烈ラブコールに応じて参列した海外の要人たちも、「これがG7の国葬なのか」と呆れ、疑問を抱いたに違いない。 安倍国葬とは議会制民主主義の葬式 もっとも、こういうみっともない事態になったのも当然の流れと言っていい。新聞、テレビは「賛否割れる国葬」などと報じているが、各メディアの世論調査では6~7割が反対。つまり、「割れる」なんてレベルじゃなかった。 野球の試合に例えれば、どう見ても「コールドゲーム」なのに「拮抗したゲーム」などと報じられているようなもの。ついでに言えば、ルール無視の八百長試合で大惨敗しているチームのくせに、まるで勝っているかのごとく試合を続けているのだから、球場全体が怒りに包まれるのも当たり前。そんなパチモン国葬が厳粛な雰囲気になるはずがない。 岸田首相は安倍の国葬について、「敬意と弔意を国全体として表す国の公式行事」と説明してきたが、「国の公式行事」であるならば、当然、国会の同意や主権者である国民の理解は不可欠だろう。「閣議決定で決めちゃったから」などと強行していいわけがない。 自民党の萩生田政調会長は27日の国葬後、「閣議決定の手続きに間違いはなかった」「国民に国葬に取り組む政府の思いが上手に伝わらなかった」と釈明していたが、そうじゃない。そもそも一内閣の閣議決定で何事も強行する強引な政治手法そのものが大間違いなのだ。 国会を開かず、やっと開いたと思ったら、少数野党の意見には全く耳を傾けず、議論を軽視し、歴代内閣が築き上げてきた憲法や法律の解釈を「閣議決定」の名のもとにあっさりと変える。「世紀の愚行」とも言うべき今回の安倍国葬で分かったことは、醜悪な「安倍(アベ)政治」が、安倍亡き後の今もなお続いているということだ。 衆院事務局に30年余り勤め、55年前の吉田茂元首相の「国葬」に関わった経験を持つ元参院議員の平野貞夫氏がこう言う。 「反対世論を無視し、野党の意見も聞かない。法的な根拠もない。国会の同意もない。そんな状況で強行された葬儀のどこが国葬と言えるのか。安倍氏の国葬とは、日本の議会制民主主義の葬式。もっと踏み込むのであれば、自民党の生前葬と言っていいかもしれません」 臨時国会の追及材料は国葬、旧統一教会、物価高、東京五輪汚職 「石が流れて木の葉が沈む」「無理が通れば道理が引っ込む」──。 第2次安倍政権以降、うんざりするほど見せつけられてきた民主主義破壊の「アベ政治」。黒を白という説明など、できっこないのに無理筋の屁理屈をこね上げ、自分たちに都合のいいように論点をずらし、「やる」と決めたら憲法や法解釈のねじ曲げもへっちゃらで、何が何でも突き進む独裁。 結局、安倍の国葬も同じで、岸田は最大派閥「安倍派」の保守系を取り込みたい、政権の基盤を安定させたいという私利私欲で突っ走った。 もちろん最初から「やる」と勝手に決め、理由は後からどうとでもなると考えていたのだろう。 国葬で安倍を美化礼賛し、神格化する声が高まれば、政府の姿勢に反対を示す世論を封じ込められる上、これまで以上に好き勝手にできる。おそらく、岸田の思惑はそんなところだったろう。 だが、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)との癒着問題が浮上。算段が狂ったために慌てて、「民主主義を守り抜く」「弔問外交」といった詭弁でゴマカさざるを得なくなったのだ。 現職の総理大臣でも、参院選候補者でもない男が、テロとは異なる「個人的な恨み」を買って銃殺される事態となった根本的な原因は何だったのか。 今後、二度と同様の惨劇が起こらないようにするため、政権与党、公党として、どう取り組むべきなのか。岸田が本気で「民主主義を守る」と言うのであれば、今こそ与野党の垣根を越えて事件と向き合い、問題点をあぶりだし、改善策を打ち出すべきだろう。だが、政権にそんな姿勢はみじんも感じられない。 「アベ政治」を礼賛する「腐ったリンゴ」議員 松野官房長官は28日、衆参両院の議院運営委理事会にそれぞれ出席し、臨時国会を10月3日に召集すると伝達。7月の参院選後、初の本格論戦を迎えることになるが、例によって国葬と同様、ダラダラと詭弁を弄して乗り切る考えではないか。国民生活を苦しめる最大の元凶となっているアベノミクスという亡国の金融緩和策も続けるに違いないだろう。 絶望的な気分になるのは、そんな「アベ政治」を否定する声が自民党内からほとんど聞こえてこないということだ。 国葬に対しても、意地を見せたのは、安倍を「国賊」と呼んで欠席した村上元行革担当相ぐらい。あとは「腐ったリンゴ」の言葉ではないが、「安倍レガシーをしっかり継承していきたい」(萩生田)、「安倍氏は、その場で理解は得られなくても、後で『よく決断した』と言える判断を次々された」(甘利前幹事長)などと、いまだに言い放っているからクラクラしてしまう。 こんな調子じゃあ、国葬や旧統一教会の問題で岸田が追い込まれ、総理・総裁の座を降りたとしても、次の総裁もこれまた「アベ政治」を引き継ぐお気に入りを後継に選ぶのだろう。まさに国民にとっては、これまでの暴政が永遠に続くことになるわけで、もはや政権交代以外に政治と経済をまともに戻す手だてはないのではないか。 政治評論家の小林吉弥氏がこう言う。 「岸田政権は当初のもくろみが外れ、国葬強行によって世論から受ける逆風を強めることになりました。臨時国会では、国葬、旧統一教会、物価高、東京五輪汚職……など、野党が追及できる材料がこれまでにないほど、そろっている。まさに政権交代の絶好のチャンスと言っていいかもしれません。野党の本気度が問われています」 「検討する」と言うばかりで、霞が関官僚の間で「遣唐使」などと揶揄する声が出始めた岸田を首相の座から引きずり降ろし、今こそ「アベ政治」に終止符を打つべきだ。 |
今になって「アベノミクス」否定に方針転換すれば、最初の方針が間違っていたことになる。方針を打ち出した自民党は党の威信を守るため、坂道を転げ落ちていても誰も方針転換できない。日中戦争勃発以降の日本軍と瓜二つ、政権交代以外に政治と経済をまともに戻す手だてはない。 https://t.co/tpojxIaD4C
— 星見おじさん (@set_ten) September 29, 2022
そういえば国葬の弔辞では、岸田文雄よりも「友人代表」の菅義偉の弔辞がネットの一部では評判になっていたが、その内容は突っ込みどころ満載であった。
元毎日新聞で政治部副部長などを務めたジャーナリストの尾中 香尚里は、「嫌な予感が的中。菅前首相の国葬『弔辞』で飛び出した衝撃の言葉」と題する記事の中で、「情緒的な言葉の中に紛れ込んだ言葉にいちいち引っかかり、時にそら恐ろしいものさえ感じた」と表現していた。
そして最後はこう締めくくっていた。
「菅氏完全復活か!」とはしゃぐ一部報道を横目で見ながら、筆者は心底気持ちが萎えている、と。
まさに「案の定」、「涙の弔辞で国葬『政治利用』に成功。再登板を狙う菅義偉元首相“次の一手"」という記事が出ていた。
■国葬終わり、権力闘争の季節へ。菅前首相はどう動く? 反対の声が吹き荒れるなか、安倍晋三元首相の国葬が終わった。10月3日から始まる臨時国会は波乱含みだ。 国葬の強行はもちろんだが、統一教会との関係、円安、物価高と、野党が岸田政権を追及する材料には事欠かない。とりわけ統一教会との癒着は、自民党の生い立ちにもかかわる根深い問題だけに、対応を誤ると、岸田政権の命取りになりかねない。すでに内閣支持率は発足以来最低の水準に落ち込んでいる。 国葬まではと自重していた権力亡者たちの動きも、これから本格化するだろう。安倍氏の死で、党内最大派閥「清和会」(安倍派)から芯が抜け落ち、党内のパワーバランスに変化が兆しつつある。 もともと安倍派には、会長の後継をうかがう人間がウヨウヨしていたが、安倍氏が人材育成を怠ったせいか、傑出した存在がない。そのうえ下村博文・元文科相、萩生田光一・政調会長ら有力幹部に次々と統一教会との密接な関係をうかがわせる報道が相次ぎ、森喜朗氏がまとめ役にしゃしゃり出なければならない異常事態である。最大派閥の力の空白地帯こそが、これからの権力闘争の主戦場といえる。 そんななかで開かれる臨時国会に向け、野党に意外な動きがあった。なんと、立憲民主党と日本維新の会が“共闘"するというのだ。あれだけいがみ合ってきた両党が、この臨時国会で、しかも6項目についてという限定つきながらも、統一教会問題などで手を組み、力を合わせて岸田政権を追い込もうという姿勢だ。安倍・菅政権に対しては「ゆ党」とか「補完勢力」といわれた維新が、岸田政権には対決姿勢を鮮明にしたということになる。 この報を聞いて、なぜか筆者の頭に最初に浮かんだのが、菅義偉前首相の顔だ。周知の通り、維新は、松井一郎大阪市長をはじめとして、菅氏と格別に仲がいい。自民党との対決姿勢の裏に、菅氏がらみの政略が隠されているのではないのだろうか。 維新の創設者である松井氏と橋下徹氏は菅氏や安倍元首相と年末に会食するのが恒例になっていたが、今年は、安倍氏が亡くなった後の8月6日に東京都内の飲食店で3人、顔をそろえた。安倍氏を偲ぶとともに、今後について話し合ったとみられる。松井氏は政界引退を表明しているが、維新との関係を完全に断つとは思えない。橋下氏も、維新と縁が切れているわけではあるまい。 その一方で、維新は、リベラルのイメージがある岸田首相とは疎遠である。麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長ともソリが合わない。国民民主党の接近を与党が受け入れ、いわば「自公国」路線になっている現状にも不満がある。 立憲との連携には、そうした局面を打開し、当面の国会運営を有利に運びたいという思惑もあるだろう。 しかし、本音として維新が望んでいるのは、菅政権の復活ではないだろうか。 安倍氏の死後、菅氏もまた、不完全燃焼だった総理への返り咲きをひそかに狙っているフシがある。「何もしない」とレッテルをはられた岸田首相と対比し、ワクチン接種の推進や携帯電話料金の値下げなどで示した実行力が一部メディアで評価されたのも、菅氏の自信を深めている。 菅氏は無派閥を通してきたが、今夏の参院選後に25人規模の政策勉強会を発足させる予定だった。しかし、安倍元首相の死という厳粛な状況を考慮し見送った経緯がある。 その意味で、国葬は一つの区切りである。国葬が終わり、一定の期間を経て、勉強会が立ち上げられる可能性が高い。この勉強会には菅氏に近い小泉進次郎氏ら無派閥議員のほか、麻生派の河野太郎デジタル大臣が参加する。二階派や森山派からも馳せ参じる議員がいるだろう。 筆者の見るところ、菅氏は自身の再登板を前提に、流動化しつつある安倍派にも触手を伸ばし、一大勢力を作りたいと思っているに違いない。 言うまでもなく、岸田政権は麻生派、岸田派、茂木派の三派が党内主流を形成している。安倍派の弱体化は政権基盤を強めるチャンスでもあったが、保守派の取り込みに焦って安倍元首相の葬儀を国葬とした後に、次々と統一教会問題が噴出し、「黄金の3年」どころか、政局の成り行きによっては、解散総選挙もありうる事態に陥っている。 菅氏にとっては、不意に転がり込んできたチャンスである。うまくやれば、いったん手放した権力を奪回できるかもしれない。安倍路線を引き継げるのは自分だけと言って働きかけたら、安倍派から菅氏になびく議員も出てくるのではないだろうか。 もちろん、菅氏には敵も多く、党内の再編には老獪な力を必要とする。そのような場面では、二階氏の存在がモノを言うだろう。そもそも、有力派閥の領袖に話をつけ2020年9月に菅政権を誕生させたのは当時の幹事長、二階氏である。 その二階氏は幹事長退任後、表舞台から遠ざかっていたが、9月16日に行われたCS番組の収録で、久しぶりの“二階節"を吹かせ、存在感を示した。 安倍元首相の国葬について。「欠席する人は、後々、長く反省するだろう。世の中にあまり賢くないということを印象づけるだけだ。選挙で取り戻すのは大変だぞ」。相変わらず人を食った発言。なぜか自民党のセンセイがたは、この手の人物に弱い。 苦境に立つ岸田首相はどうするのか。このところ岸田首相の懐刀、木原誠二官房副長官あたりから「10月解散説」が囁かれているという。もちろん、支持率が下がっているだけに、総選挙となれば、かなり議席を減らすだろう。しかし、野党は弱体なうえに、準備不足だ。負けることはない。選挙で「みそぎ」をすませれば、支持率も上昇に転じるのでは。そういう甘い観測らしい。 ただし、統一教会との深い関係が明るみに出た萩生田氏、下村氏ら安倍派の面々や、後出し公表の連続で往生際の悪い山際大志郎経済再生担当大臣(麻生派)らは苦戦するだろう。安倍派や麻生派の反発を覚悟で岸田首相が解散を決断できるかについては、少なからず疑問が残る。 いずれにしても、2年後の24年9月には自民党総裁選が予定されている。支持率が低迷したままでは、岸田首相の再選は難しい。前述したように、菅氏が虎視眈々と復権を狙っているのだ。カギとなるのは、麻生副総裁がしっかりと岸田首相を支え続けるかどうかだ。 菅氏が勉強会を発足させる動きについて、麻生氏が警戒の目を光らせているのは想像に難くない。もともと、麻生氏と菅氏の仲は良くないとされていたが、勉強会の中心人物と見られる佐藤勉氏が、ほかの議員を連れて麻生派を離脱したことも不仲に拍車をかけていた。 だが、そこは大物どうし。菅氏と麻生氏は今年5月23日、二人だけで会食をするなど、いざという時のために人間関係をつないでいる。岸田氏が不利とみれば乗り換えることぐらい麻生氏にとっては朝飯前かもしれない。 このように書いてきて思うのは、自民党の深刻な人材難だ。そもそも、菅氏の返り咲きなど、想像もしたくない話である。 さりとて、他に誰がいるのか。林芳正外相は、ハニートラップ疑惑が気がかりだ。大王製紙の元会長・井川意高氏の下記ツイート(8月8日)で噂に火がついた。
今だから言います 4月4日に故安倍元総理と食事をご一緒したとき「林さんは中国のハニートラップにかかってるでしょうね」と仰ってた。 根拠もお話になっていた。 では、国民受けが良いとされてきた河野太郎氏や小泉進次郎氏はどうか。グループの拡大をはかる菅氏が彼らを押し立ててキングメーカーに徹するという見方もできよう。 しかし、河野氏を担ぐ場合、派閥のボスである麻生副総裁の感情や立場の問題があり、その調整が難しい。それに、河野氏はスタンドプレーのイメージが強いため、幅広く党内の支持を集められるかは疑問だ。とりわけ安倍派には“アンチ河野"が多い。小泉進次郎氏への期待も大きいが、安倍内閣で環境大臣に抜擢されて以降、歯切れのいい発言が影を潜め、伸び悩んでいる感がある。 長期政権のぬるま湯に浸かり、切磋琢磨を忘れて忖度がはびこった結果、新しいリーダーが生まれてこない。それが自民党の現実なのだ。 国葬で菅氏は、友人代表として、菅氏らしからぬ情のこもった弔辞を読み上げた党内の安倍シンパは涙なしに聞けなかっただろう。その意味で、菅氏は国葬の政治利用に成功したといえるかもしれない。 |
全国紙の社会部記者として13年間活動して政治ブログ「永田町異聞」を発信し続けている新恭らしい自民党の魑魅魍魎ぶりを解説していたのだが、「長期政権のぬるま湯に浸かり、切磋琢磨を忘れて忖度がはびこった結果、新しいリーダーが生まれて」来なかった自民党なので、相変わらず「森喜朗」や「二階俊博」の存在が目立つようになれば、カルト集団に汚染まみれになった自民党の今後の益々の凋落ぶりが期待されるのではないだろうか、とオジサンは思う。