5年間使っていた旧アリオネ(現アリオネCX)の表皮が擦れてきたので、年末年始のセールを利用しアリオネR3を購入し約200km走行したのでインプレッションとして紹介する。とは言え、僕はショップ店員でもなんでもないので、直接サドルを試乗し比較したわけではない点はご留意いただきたい。
旧アリオネは、僕がロードバイクに乗り始めたときから使っている、お気に入りのサドルである。一時期、乗り心地の向上を目論んでアリアンテを1年間使っていたが、結局アリオネに戻した。これはアリオネとアリアンテの座面の形状に関係している。アリオネは座面がフラットなため、座る位置を変えることでポジションを調整し、長距離を走るのに向いている。アリアンテは座面が大きく窪んでいるため、踏み込んで高出力を出す際に腰が安定しやすく、僕は特に1時間程度のヒルクライムに向いていると思う。現状、僕がアリオネを使っているのは、座面の後ろに座ることで大臀筋やハムストリングを使って巡航をしたり、先端に座って(「刺さって」)大腿四頭筋を使ってアタックをかけたり、いろいろな筋肉の使い分けをしやすいからであり、短いヒルクライムならアリアンテを使う可能性が高いことも付言しておきたい。
アリオネに限らずフィジークのサドルの特徴が、i.c.sというサドル後端のテールライトやサドルバッグを差し込むアタッチメントであり、これがあるために僕はフィジークを好んでいる。i.c.sはなかなか優れもので、特にテールライトの納まり具合はシートポストに括りつけるタイプとは比べものにならない。サドルというロードバイクで一番高い位置にあるパーツに付いているので、目立って良いし、ロードバイクにまたがりながらでも点灯しやすい。テールライトとしては、ICS blink lightとICS cateye rapid 3があるが、僕は日の長い春~夏はコンパクトな前者を、日の短い秋~冬は光量の多い後者を使用している。なお、i.c.sのサドルバッグは容量が少なく、弱い金具で固定されているだけなので安定感がなく、何種類か使ったが全くオススメしない。いずれ紹介しようと思うが、サドルバッグはSCICON(シーコン)がオススメだ。
また、フィジークのサドルは、耐久性の高さについても定評がある。海外プロ選手が使用するサドルは、その乗り込みの量からすぐにヘタってダメになってしまうそうだが、フィジークのサドルは耐久性が高いため、シーズンでほとんど交換がないらしい。ただし、その代わり馴染みが出るまで時間がかかる。
今回、アリオネR3を購入するにあたって、比較対象にしたサドルは、同社のアリオネ・バーサス、ANTARES(アンタレス)、VOLTA(ボルタ)の3つ。旧アリオネの使用感に不満はなかったが、できれば座面の左右が広いものを選び、快適性を向上できればと考えていた。
アリオネ・バーサス。2015年に新型が発表されたが、市場にはまだ出回っていない? アリオネのパッドを増やし尿道の逃げる溝を作り、快適性を向上したモデルのはずだったが、ほとんど機能していないという評価が多く、それならいっそさらにパッドを増やしたアリオネ・Xバーサスを購入した方が良いという意見が多い。僕も、何年か前にテストサドルを借りて乗ったことがあったが、かえってすぐに尿道が痛くなってしまった覚えがある。新型は、ツールで使用しているプロ選手がいることもあり改善されているようだが、未だ売っているのを見たことがない。
アンタレス。今回のライバル候補。アリオネ、アリアンテと保有しているので、3つめの"A"にも興味があった。また、座面の左右が広めとのこと。本気でアリオネとアンタレスを何日か比較検討したが、結局セールの割引率がアリオネの方が高かったというサドル自体とは関係ない理由で落選。その他に、パッドが少ない、アリオネと先端部分の座面の左右の広さを比較しても数mmの違いがあるかないか、座面の前後がアリオネより短い。さらに、アリオネより表皮が擦れやすいという周辺情報あり。個人的な印象としては、ブリジストンアンカーの西薗選手が使っていることもあり、淡々としたストイックな走りをする選手に向いているのではないかと思っている。
ボルタ。今回の穴馬。人間工学的に設計されたアリオネ、アンタレス、アリアンテとは異なり、過去の名作サドルの再設計というコンセプトで作られた。BMCのフィリップ・ジルベールが使用しているということもあり、個人的にロマン度高し。座面が横に低い、骨盤を左右に振りやすいと、僕の走りにマッチした設計に思えたが上記のICSが非搭載のため、断念。ICSがないと、テールライトの設置位置に本当に困るのだ。
というわけで、もともと使っていたサドルのマイナーチェンジということもあり、安心感のあるアリオネR3を選択するに至った。
さて、アリオネR3を使い、約200km走行してみての感想だが、現状、かなり良い印象。サドル先端部が細い印象の旧アリオネより、安定感と快適性が高まった。この印象は、「馴染み」の出ていない表皮やパッドの硬さがかえって良い方向に影響している可能性があることを付言しておきたい。旧アリオネとアリオネR3の全体の形状は、重ね合わせても違いがわからないほど似ている。現に、サドル先端から5cm地点の横幅は両方とも3.6cmだった。しかし、サドルを前から見てみれば、旧アリオネは薄いかまぼこ型をしている一方、アリオネR3はやや厚い台形をしていて、横方向へのパッドの厚さが安定感と快適性に良い印象を与えているのではないかと思った。また、新旧の大きな違いとして、旧アリオネにあったスエード調の滑り止めがアリオネR3にはなくなっているが、座面のフラットなアリオネには滑り止めの必要がなく、むしろシームレスに座る位置を変えて、座面の前後の長さを活用できるようになったと思う。
ネガティブな点については強いて言えば、尿道に若干の痺れが発生したが、サドル自体の問題というよりシッティング中心のクライミングという走りやサドルの設置角度の問題という印象で、セッティングや走りを煮詰めていけば全てではないにせよ解消しそうだと考えている。
さて、新型アリオネは、大きくR1、R3、R5とグレードが分かれているが、R1はカーボンレールなので、信頼性等を犠牲にしても軽くしたい人向きである。R3とR5については、材質が違うのとカラー違い、R3のほうが20gほど軽いくらいの違いでほとんど差はないと言ってもいいと思う。僕がR3を選んだのも、割引率の関係でほとんど価額に差がなかったのでどうせなら上級グレードをという、サドル自体とは関係ない理由である。R3のツートンカラーは、RIS9のトップチューブのカラーと揃っていて見栄えがするが、輪行等のために白いサドルは汚れや傷が目立ちやすそうなので、失敗したかなと考えている。サドル、シートポスト、ハンドル、ステムについてはよほどデザイン上のこだわりがない限り、汚れや傷の目立たない黒を選ぶことをお勧めしたい。
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