ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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★韓国の怪談(都市伝説) その2★ タルギャル鬼神(玉子お化け)の2タイプ

2011-07-23 16:52:58 | 韓国の文化・芸能・スポーツ関係の情報
 →1つ前の記事で紹介した「赤いマスクの女」だけでなく、韓国の怪談(都市伝説)については韓国の怪談」(KAWADE夢文庫)を読むまで全然知りませんでした。
 この本の冒頭に載っているのがタルギャル鬼神で、これは韓国では非常にポピュラーなお化けのようですね。タルギャル(달걀)は玉子のことで、日本のウィキにも「卵鬼神」という見出し語で紹介されていました。

 この本のタルギャル鬼神の怪談2つを要約すると次の通りです。
①大邱の中学校の女生徒が学校のトイレの一番奥の個室に入っていた。すると誰かがやって来て一番離れたトイレをノックし、中に誰もいないとわかると「あっ、いない」と言い、次のトイレに移ってまたドアをノックする。そこでもやはり「あっ、いない」と言って次へ。そしてついに女生徒の入っているトイレの前までやってくる。女生徒は一体誰がやってきたのだろうと思って、ドアの下の隙間からそっと覗いてみた。すると「あっ、いる」という声。隙間を通して女生徒とその不気味な者の目があったのである。恐怖のあまり女生徒は気絶してしまった。このトイレをノックする不気味な化け物がタルギャル鬼神であった。 
②ある時2人の生徒がトイレに入った。1人は用をすませたが、もう1人は出てこない。あまりに遅いので、待たされている方の生徒はトイレに戻ってもう1人の入っているトイレのドアを開けた。すると中でタルギャル鬼神が友だちを食べているではないか。驚いて声も出ない生徒にタルギャル鬼神は言う。「腹がいっぱいになったのでおまえは食わない。今見たことは絶対に秘密にしろ」。その生徒は、日が経つにつれてこの時のことを誰かに話したくてたまらなくなった。ある日、クラスの全員が運動場に出て、その生徒ともう1人の生徒が教室で留守番をすることがあった。その生徒は、結局話したいという欲望に負け、トイレでのことをもう1人の生徒に話してしまった。すると横の生徒の顔が急に魔物のような顔に変わり、うなるような声で叫んだ。「話すなと言ったのに!」。タルギャル鬼神に変化したその生徒は、約束を破った生徒を今度は食べてしまった。


 ・・・このタルギャル(玉子)鬼神、なぜ玉子かというと、体全体が玉子のように丸く、それに細い手足がついた形をしているからなんですね。トイレと密接不可分のようで、逆立ちで歩くため、上記のようにトイレの扉の下の隙間から覗くことができ、中の人を見ることができるということです。

      
  【このように倒立している状態で歩くのが特徴。韓国のトイレは下の隙間が広いのかな?】

 ところが、韓国のサイトをいくつか見てみると、タルギャル鬼神には、この体全体が玉子の形状というタイプの他に、<顔が玉子の形状>というもう1つのタルギャル鬼神のタイプがあるようなのです。
 たとえば、「朝鮮日報」は、今年5月9日に「ソウルに「タマゴお化け」出現」というニュースを伝えています。

   
     【雨の光化門十字路から、教保文庫店内に侵入したタルギャル鬼神たち。】

 これはホモルーデンス・カンパニーという身体劇の劇団が<ハイソウルフェスティバル2011>の一環として行った街頭パフォーマンスですが、写真のように目鼻口のない玉子型のような顔で、つまりは「のっぺらぼう」のことですね。

 先の記事でも紹介したウェブ漫画「学院奇異野談」の中にも「タルギャル鬼神」と題した1編がありました。(下の画像参照)
 しかし、この作品では、タルギャル鬼神の方が「なんでもっと怖がらないんだ!?」と焦っています。それに対して、「時代が変わったのさ」との宣告。果ては、恐怖効果を高めるため主人公の女学生チェ・ミリの筆で直接顔にあれこれ絵を描いてイメージ改善をはかるが・・・という展開に・・・。

      
   【「何・・・はぁ」「うわ、それだけ?! もうちょっと驚いてみろ!! 鬼神じゃないか?! 怖くないのか!!」】

  
 【「タルギャル鬼神、20世紀半ばに有名だった鬼神だな。夜中にいきなり出てきて人を驚かす・・・」  「しかし! 言っただろう、時代が変わったと!! 目鼻のない顔でただ街角に立っているだけで怖いという、そんな時代は過ぎ去ったんだよ!!」】

    
    【イメージ改善が必要と言われて顔を書いてもらうが・・・。】

        
  【3度書き直した結果がこの顔。これがオチではなく、さら物語は続きます・・・。】

※この漫画の作者のペンネームはケーランケーラン(계란계란)。ケーラン(계란)も玉子(鶏卵)のことで、これもタルギャル鬼神を念頭に置いての命名かもしれません。
「学院奇異野談」については、今年2月10日の漫画関係記事を書いた時に知った韓国のオタクサイトのエンハウィキで詳しい内容紹介が載っています。韓国語が読めて(or学習中)でヒマで物好きな方はのぞいてみて下さい。

 このテの都市伝説にも、当然ながらその時代・その社会のもろもろが反映されているようですね。
コメント
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