10月31日、平壌の金日成総合大学の講義室で、モンゴルのエルベグドルジ大統領が平壌の金日成総合大学で注目すべき特別講演を行ったことは、11月16日の韓国の各メディアで報道され、また日本でも伝えられました。
その内容というのが、北朝鮮の体制や核問題について真っ向から批判するものでした。
私ヌルボ、この情報を知ったのが遅かったので今までブログには載せませんでしたが、その後北朝鮮での張成沢処刑事件等々が伝えられる中で、やはりこのエルベグドルジ大統領の講演の意義を再確認しよう、という意味で関係記事を整理する形でまとめてみました。
韓国メディアでこのニュースを詳しく伝えているのは「中央日報(日本語版)」(→コチラ)と「朝鮮日報(日本語版)」(→コチラかコチラ)です。
講演の具体的内容について北朝鮮のメディアは報道しませんでしたが、半月後の11月15日講演の動画と英語の講演内容全文がモンゴル大統領室のホームページで公開(英文)され、報道されるに至ったということです。
※大統領室によると、外国国家元首が金日成大で講演したのは初めてとのことです。
以下、主に「中央日報」と「朝鮮日報」の記事を照らし合わせ、エルベグドルジ大統領の発言を紹介します。
○「自由」の意義について
・全ての人は自由な暮らしを熱望し、これは永遠の力である。
・人々は自らに解決策を見いだすが、自由がない人々は外部に自分たちの苦痛の根源を探す。
・自由は、全ての個人が発展のチャンスを発見・実現できるようにするもので、これは人間社会を進歩と繁栄に導く。モンゴルは表現の自由、結社の自由を尊重し、法治主義を支持し、開放政策を追求する。
・モンゴル人は「いくら甘くても、他人の選択に従って生きるよりは、つらくても自分の思い通りに生きる方がまし」と言う。自由社会とは、達成すべき目標というより、生きていくための道だといえる。
・暴政は永遠には続かない。
○核問題について
・モンゴルは21年前に自ら非核地帯であることを宣言し、国連安保理の常任理事国5カ国は、モンゴルの非核国の地位を文書で認めた。
・モンゴルは政治・外交的そして経済的な方法で国家の安保を確保する道を選んだ。
○死刑制度
・2009年にモンゴルは死刑制度を廃止した。
・我々は死刑制度の完全な廃止を支持する。
・・・北朝鮮を訪れた人のほとんどは多かれ少なかれ「迎合的」な発言をするのが常ですが、大統領とはいえこのような歯に衣着せぬ講演をするとは実に気骨ある人です。
「朝鮮日報」等によると、彼は次のような経歴の人物です。
旧ソ連のリボフ軍事政治大学に留学しジャーナリズムを専攻。その後人民軍機関紙「赤い星」の記者を経て、1990年にモンゴル初の非政府系の新聞「アルドチラル(民主主義)」を創刊。同年共産党の独裁を終わらせたモンゴル民主化運動でリーダー役を務め、国会議員を4期務めた後、2009年5月にモンゴルの第5代大統領に選ばれ、今年6月に再選された。
次に、この講演の反応とその後について。
・質問はなかったが、教授や学生など聴衆は大統領が立ち去るまで拍手喝采した。
・北朝鮮はエルベグドルジ大統領の金日成大訪問を伝えたが、講演内容などは具体的に報道しなかった。
・大統領は北朝鮮の要求で「民主主義」「市場経済」という言葉は使わなかったという。(「自由」という言葉を禁じなかったのが北朝鮮当局の失敗だった、と見方があるのは当然ですね。)
・(韓国の)金日成大ソウル同門会長のキム・グァンジン国家安保戦略研究所研究委員は「驚くような内容であり、学生はその真意を看破しただろう」とし「北当局が収拾レベルで該当教授・学生に対し、外部に話すなと緘口令を敷いたはず」と話した。
・エルベグドルジ大統領は(名目上)第2人者の金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長と会見したが、金正恩第1書記とは首脳会談を行わなかった。(この講演内容が問題とされたのがその理由、との推定もある。)
さて、日本のメディアはとみると、「産経新聞」(→コチラ)と「東京新聞」(→コチラ)の<左右両端>両紙が報道。どちらも軽くしか書いてない感じ。
新聞ではありませんが、私ヌルボが興味深く読んだのが<現代コリア>(→コチラ)の記事。
北朝鮮批判の講演ということで単純に持ち上げたりせず、次のように冷静に記している部分にはとくに注目しました。
エルベクドルジ大統領は勇気ある人と言ってもいいかもしれない。ただ、これが北朝鮮に影響を及ぼすかとなると、ほとんど希望は持てない。また、北朝鮮が核を放棄する可能性はほとんどない。もし、北朝鮮の「改革・開放」への先導者にならんとしてのことなら、蛮勇の持ち主ということになるが。
おそらく、滞在中の大統領の日程を組み、演説を提案した当局者は強制労働所か。また、この日の聴衆だった教授や学生は演説批判の学習を強いられるに違いない。ただ、口コミの発達している北朝鮮のことだ。演説の内容が全く漏れないということはあり得ない。何らかの波紋が広がることを期待したい。
講演が行われたのが10月30日。そして張成沢の処刑が12月12日。少なくとも金正恩に対してはこの講演が歯止めにはならなかったというわけです。あーあ・・・。
その内容というのが、北朝鮮の体制や核問題について真っ向から批判するものでした。
私ヌルボ、この情報を知ったのが遅かったので今までブログには載せませんでしたが、その後北朝鮮での張成沢処刑事件等々が伝えられる中で、やはりこのエルベグドルジ大統領の講演の意義を再確認しよう、という意味で関係記事を整理する形でまとめてみました。
韓国メディアでこのニュースを詳しく伝えているのは「中央日報(日本語版)」(→コチラ)と「朝鮮日報(日本語版)」(→コチラかコチラ)です。
講演の具体的内容について北朝鮮のメディアは報道しませんでしたが、半月後の11月15日講演の動画と英語の講演内容全文がモンゴル大統領室のホームページで公開(英文)され、報道されるに至ったということです。
※大統領室によると、外国国家元首が金日成大で講演したのは初めてとのことです。
以下、主に「中央日報」と「朝鮮日報」の記事を照らし合わせ、エルベグドルジ大統領の発言を紹介します。
○「自由」の意義について
・全ての人は自由な暮らしを熱望し、これは永遠の力である。
・人々は自らに解決策を見いだすが、自由がない人々は外部に自分たちの苦痛の根源を探す。
・自由は、全ての個人が発展のチャンスを発見・実現できるようにするもので、これは人間社会を進歩と繁栄に導く。モンゴルは表現の自由、結社の自由を尊重し、法治主義を支持し、開放政策を追求する。
・モンゴル人は「いくら甘くても、他人の選択に従って生きるよりは、つらくても自分の思い通りに生きる方がまし」と言う。自由社会とは、達成すべき目標というより、生きていくための道だといえる。
・暴政は永遠には続かない。
○核問題について
・モンゴルは21年前に自ら非核地帯であることを宣言し、国連安保理の常任理事国5カ国は、モンゴルの非核国の地位を文書で認めた。
・モンゴルは政治・外交的そして経済的な方法で国家の安保を確保する道を選んだ。
○死刑制度
・2009年にモンゴルは死刑制度を廃止した。
・我々は死刑制度の完全な廃止を支持する。
・・・北朝鮮を訪れた人のほとんどは多かれ少なかれ「迎合的」な発言をするのが常ですが、大統領とはいえこのような歯に衣着せぬ講演をするとは実に気骨ある人です。
「朝鮮日報」等によると、彼は次のような経歴の人物です。
旧ソ連のリボフ軍事政治大学に留学しジャーナリズムを専攻。その後人民軍機関紙「赤い星」の記者を経て、1990年にモンゴル初の非政府系の新聞「アルドチラル(民主主義)」を創刊。同年共産党の独裁を終わらせたモンゴル民主化運動でリーダー役を務め、国会議員を4期務めた後、2009年5月にモンゴルの第5代大統領に選ばれ、今年6月に再選された。
次に、この講演の反応とその後について。
・質問はなかったが、教授や学生など聴衆は大統領が立ち去るまで拍手喝采した。
・北朝鮮はエルベグドルジ大統領の金日成大訪問を伝えたが、講演内容などは具体的に報道しなかった。
・大統領は北朝鮮の要求で「民主主義」「市場経済」という言葉は使わなかったという。(「自由」という言葉を禁じなかったのが北朝鮮当局の失敗だった、と見方があるのは当然ですね。)
・(韓国の)金日成大ソウル同門会長のキム・グァンジン国家安保戦略研究所研究委員は「驚くような内容であり、学生はその真意を看破しただろう」とし「北当局が収拾レベルで該当教授・学生に対し、外部に話すなと緘口令を敷いたはず」と話した。
・エルベグドルジ大統領は(名目上)第2人者の金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長と会見したが、金正恩第1書記とは首脳会談を行わなかった。(この講演内容が問題とされたのがその理由、との推定もある。)
さて、日本のメディアはとみると、「産経新聞」(→コチラ)と「東京新聞」(→コチラ)の<左右両端>両紙が報道。どちらも軽くしか書いてない感じ。
新聞ではありませんが、私ヌルボが興味深く読んだのが<現代コリア>(→コチラ)の記事。
北朝鮮批判の講演ということで単純に持ち上げたりせず、次のように冷静に記している部分にはとくに注目しました。
エルベクドルジ大統領は勇気ある人と言ってもいいかもしれない。ただ、これが北朝鮮に影響を及ぼすかとなると、ほとんど希望は持てない。また、北朝鮮が核を放棄する可能性はほとんどない。もし、北朝鮮の「改革・開放」への先導者にならんとしてのことなら、蛮勇の持ち主ということになるが。
おそらく、滞在中の大統領の日程を組み、演説を提案した当局者は強制労働所か。また、この日の聴衆だった教授や学生は演説批判の学習を強いられるに違いない。ただ、口コミの発達している北朝鮮のことだ。演説の内容が全く漏れないということはあり得ない。何らかの波紋が広がることを期待したい。
講演が行われたのが10月30日。そして張成沢の処刑が12月12日。少なくとも金正恩に対してはこの講演が歯止めにはならなかったというわけです。あーあ・・・。
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