今回は内外のミステリーとホラーを中心とした29冊です。
☆印はとくに推奨。×印は品切れまたは絶版中の本(多すぎる!) △は絶版・品切れでも単行本なら出ている本。
238 | ドイル | バスカヴィル家の犬 | 新潮文庫 | 238~257=推理。 238・239は古典的名作。238は子供の頃読んで、怖くて夜トイレに行けなかった。もちろんホームズ物では短編集にも傑作がたくさん。「まだらの紐」なんかもゾォーッとしたなあ。 239は密室もの。 240・241は諸ベストテンで常にトップにあげられる本格物の最高傑作。 240は心底ゾクッとする恐さ、すごさ! 241は同じ趣向の「悪魔の子守唄」(横溝正史.角川)がある。 242はサスペンスの最高峰。手に汗を握る。 243も古典の大家の代表作。<推理>と<怪奇>の接点。なお、<推理>と<SF>の接点にはアシモフ「鋼鉄都市」(早川)がある。 244もスゴイ!としかいいようがない。これでは紹介にならないがしょうがない。 245はユニークな歴史推理。 246は競馬シリーズの代表作。作者は元騎手で当然詳しい。 247、こんな<人質>作戦、こんな身代金の回収法があったか。アイディアの妙! 248は、40数年にわたって起きた殺人事件をめぐる大河警察小説。 249、教養豊かな年配紳士たちが食事をしながら交わす洒落た会話だけで進行する推理アンソロジー。展開やトリックがやたら派手な昨今、かえって新鮮味を感じさせる。 250はペダンチック(衒学的)な異色の大作。 251も同様。凝りに凝っていて、誰が殺されたのかもよくわからないほど。 252は“おどろおどろし”く“まがまがしい”、横溝正史の代表作。往年の名作はクライなあ。現代は赤川次郎等どうしようもなく明るく軽いのに・・・・。 253、その点社会派推理は(当然だが)リアリティが感じられる。「砂の器」等々、清張はどれも読みごたえがある。 254は謎の浮世絵師写楽の正体を探る。説得力もあるし推理としても興奮する。 255の作者は奇術の達人。この作品も道具立てにトリックに、まさに奇術そのもの。 256、こういうほのぼのと温かいミステリーもあるんだなあ。健康的かつ知的な女子大生主人公にも好感がもてる。 257は「レディ・ジョーカー」(毎日新聞社)の高村薫と並ぶ社会派推理作家がカード社会のもたらす悲劇をテーマにした迫真の大作。 258~263=怪奇幻想小説の古典るラヴクラフト(創元)等々今は恐い物ブーム。とくにキングに代表される<ニュー・ホラー>は大量に出回っている。たしかに息をもつがせず読ませるが、展開が<派手>すぎるような気がする。クーンツ「ファントム」(早川)などその典型だが、夢中になる人は多いだろう。その点ここにあげたものは怖さ以外に重要な<+α>がある。 258は有名。文句なしの傑作。 259は「黒猫」「黄金虫」等々の傑作短編の数々。 260中の「アウル・クリーク橋の一事件」は息をのむほどの衝撃の結末。 261はジェイコブズ「猿の手」等の短編名作の集成。 日本では262、名前はポーの真似だが、中身は独特の隠微な魅力に満ちている。乱歩といえば僕も少年時代、明智小五郎や少年探偵団に夢中になったなあ。(だが、なぜ怪人二十面相はあんなに高笑いをするのだろう? 「ワッハッハッハ、明智君、まただまされたね!」) 263は最近の代表的ホラーとして話題になり、映画化された。 264=痛快無比! 19世紀のイギリス。読者は列車強盗の成功を祈りつつ読んでいる自分に気がつく。クライトンはあの「ジュラシック・パーク」の作者でもある。 265・266=極限状況の人間。 265はアンデス山中に不時着した飛行機の、上にさらされた乗客たち。すると<聖餐>(聖なる食べ物)とは何のことか、わかりま、す、ね? 新潮文庫にも同内容の「生存者」(リード)がある。最近「生きてこそ」のタイトルで映画化。 266は江戸時代の鳥島への漂流者の物語。野上弥生子「海神丸」(岩波)も漂流を描いた名作。春名徹「世界を見てしまった男たち」(ちくま)は、江戸時代の漂流者の辛苦や異郷体験の史実を探る。感銘深いエピソードが多い。 |
239 | ルルー | 黄色い部屋の秘密 | 創元推理文庫 | |
☆ 240 | クイーン | Yの悲劇 | 早川文庫 | |
241 | クリスティ | そして誰もいなくなった | 早川文庫 | |
☆ 242 | アイリッシュ | 幻の女 | 早川文庫 | |
243 | カー | 火刑法廷 | 早川文庫 | |
☆ 244 | レヴィン | 死の接吻 | 早川文庫 | |
245 | テイ | 時の娘 | 早川文庫 | |
246 | フランシス | 興奮 | 早川文庫 | |
247 | ジェサップ | 摩天楼の身代金 | 文春文庫 | |
248 | ウッズ | 警察署長 | 早川文庫 | |
249 | アシモフ | 黒後家蜘蛛の会 | 創元推理文庫 | |
250 | 中井英夫 | 虚無への供物 | 講談社文庫 | |
× 251 | 竹本健治 | 匣(はこ)の中の失楽 | 講談社文庫 | |
252 | 横溝正史 | 獄門島 | 角川文庫 | |
253 | 松本清張 | 点と線 | 新潮文庫 | |
254 | 高橋克彦 | 写楽殺人事件 | 講談社文庫 | |
255 | 泡坂妻夫 | 11枚のとらんぷ | 創元推理文庫 | |
256 | 北村薫 | 空飛ぶ馬 | 創元推理文庫 | |
☆ 257 | 宮部みゆき | 火車 | 新潮文庫 | |
258 | ストーカー | 吸血鬼ドラキュラ | 創元推理文庫 | |
259 | ポー | 黒猫・黄金虫 | 新潮文庫 | |
260 | ビアス | いのちの半ばに | 岩波文庫 | |
261 | 怪奇小説傑作選 | 創元推理文庫 | ||
262 | 江戸川乱歩 | 江戸川乱歩傑作選 | 新潮文庫 | |
263 | 鈴木光司 | リング | 角川ホラー文庫 | |
264 | クライトン | 大列車強盗 | 早川文庫 | |
× 265 | ブレア | アンデスの聖餐 | 早川文庫 | |
266 | 吉村昭 | 漂流 | 新潮文庫 |
前回に続いて「定番」の作品が並んでいます。
これ以外にも何かあったような・・・。あら、スタンウッド「エヴァ・ライカーの記憶」(創元推理文庫)が入ってない! 改定版出した時に落としてしまったのかな?
稲見一良「ダック・コール」(早川文庫)が入っていない理由もわからず。
この数年話題の日本のミステリーをほとんど読んでいないのに気づきました。今年中に主だったものを風呂場で読むことにします。
10月26日「毎日新聞」掲載の第67回読書世論調査によると、風呂場で本を読む人は4%(男性2%・女性5%)いるそうです。女性は20人に1人とは意外に多いなー。ホントかな?
なお、トイレで本を読む人は11%(男性15%・女性7%)で、やっぱり多いですね。
※リストの下の絵は私ヌルボが図書担当だった時に<図書室の手引き>(リーフレット)に描いたものです。
今回は私が読んだことのあるのは12点。ルルーやクイーン、アイリッシュなどの有名作も恥かしながら読んでいません。
色々書きたいこともありますが、長くなるので少しだけ。
フランシス「興奮」は、全部読んだ訳ではありませんが、私もシリーズの中の最高傑作ではないかと思っています。あれだけコンスタントにクオリティの高い作品を書いた力量はすごいものですよね。
ビアスは筒井康隆が映画「ふくろうの河」の思い出とともに朝日新聞に書いていましたね(このコラムは読書好きには堪らない読み物でした)。「ふくろうの河」はDVDに高値がついていて未だに見られていないのですが、何とか見てみたいものです。
http://book.asahi.com/hyoryu/TKY201004060253.html
以下では和訳も読めます。芥川の「藪の中」の元ネタだという「月明かりの道」もありますし、他にもグリーンやらちーヴァーやらの短篇がそこそこ載せられています。訳のあとのコメントもなかなか鋭いものが多いです。
http://f59.aaacafe.ne.jp/~walkinon/owlcreek.html
「黒後家蜘蛛の会」はむかしラジオ・ドラマがあって非常に面白かったので、CDにでもしてくれないかなと思っていますが、残念ながらないようです。
「怪人二十面相」にも40年ほど前にニッポン放送で藤岡琢也さんの語りが印象的なラジオ・ドラマがあって、当時まだ5~6歳くらいだった私は怖いもの見たさ(聞きたさ)でよく聞いていたものです。
乱歩(&三島)はもうすぐ「黒蜥蜴」の井上梅次の映画版がDVDになりますね。美輪明宏や三島が出た深作欣二版もDVD化してほしいものです。
昔は他にも安部公房が書いたラジオ・ドラマなど面白いものが結構あったのですが、もう放送局にも残っていないですかね~。発売してもペイしないでしょうけれども。
読書関係のリンク先2つの記事はどちらもおもしろくて、いろいろ読みふけってしまいました。
筒井康隆が「アウル・クリーク橋・・・」以外にも、サバチニ「スカラムーシュ」、オールディス「地球の長い午後」、生島治郎「黄土の奔流」等を取り上げているのは「わが意を得たり」という思いがしました。
昔のラジオやテレビの番組で印象に残っているドラマは私はそんなに多くはありませんが、1967年東芝日曜劇場で放映された寺山修司脚本の「子守唄由来」はできることならもう1度見てみたいものです。二木てるみが出ていたなー・・・と思ったら、横浜情報文化センターの放送ライブラリーで見られるとか!?
また、もしやと思い動画検索してみたら、ニコニコ動画に「黒後家蜘蛛の会」がありました。 →
http://www.nicovideo.jp/watch/sm6939311
安部公房「人魚伝」も。 →
http://www.nicozon.net/watch/sm7448289
筒井康隆(&山下洋輔)の「バブリング創世記」のLPは持っていますが、それ自体の動画はアップされていないようです。
その探索中、「バリケードの中のジャズ 山下洋輔トリオ」というのがありました。
http://nicoviewer.net/sm22016319
他にもいろいろありそうですが、こういう動画を探しているとキリがありませんね。
ご紹介ありがとうございました!
筒井康隆の愛読書と結構重なっていらっしゃるとのこと。さすがですね~。先ほども書きましたが、深さだけでなく幅広い分野を渉猟されていらっしゃるのには脱帽です。
「子守唄由来」、錚々たるキャストですね。以前コメントされていた「赤ひげ」に出てからわずか2年後ですが(あれが1965年というのはちょっと驚きました。白黒であることもあって、もっと古いと思っていましたので)、このドラマでは子役から女役へと移行する頃でしょうか。見てみたいものです。