センター試験の韓国語に今回も挑戦してみました。この数年、点数はほとんど変わらずで、今回も同様。ということは、毎年難しくなっているということですね。(汗笑)
※問題・解答は、朝日のサイト→コチラなどからダウンロードできます。
例年この時期になると、本ブログのセンター試験関係記事のヒット数が増えます。
そしてネット上に飛び交う声から判断すると、アクセスしてきた方の中の相当数が「センター試験・韓国語の難易度は適切なのか?」という疑問をお持ちのように思われます。
この問題も含めて、本ブログでは過去3回関係記事を載せてきました。次の3つです。
○2009年11月16日<★修能の「日本語」の試験★ 出題内容と難易度>
○2010年1月21日<センター試験韓国語の平均点148点。 難易度はかなり高いが・・・>
○2011年1月17日<修能の「日本語」-正解がわからないぞ~ センター試験の「韓国語」-むずかしいぞ~>
上記の2つ目と3つ目の記事のタイトルだけでも私ヌルボはセンター試験の韓国語の難易度はかなり高いと思っています。
しかし、「簡単すぎるのではないか?」という疑問が出てくる理由もわからないではありません。
たとえば、2009~11年の外国語各科目の平均点を見ると、他の言語に比べ高い数値になっています。とくに2009年はダントツの高得点で、英語より52点も高くなっていて、これはヌルボのモノサシに照らしても高過ぎといわざるをえないレベルです。
2011年
[英語] 受験者数519,538 平均点122,78
[ドイツ語] 受験者数132 平均点142,17
[フランス語]受験者数151 平均点142,38
[中国語] 受験者数 392 平均点134,14
[韓国語] 受験者数163 平均点149,89
2010年
[英語] 受験者数512,451 平均点118,14
[ドイツ語] 受験者数124 平均点150,12
[フランス語]受験者数165 平均点134,81
[中国語] 受験者数364 平均点138,03
[韓国語] 受験者数163 平均点149,97
2009年
[英語] 受験者数500,297 平均点115,02
[ドイツ語] 受験者数106 平均点153,54
[フランス語]受験者数149 平均点138,97
[中国語] 受験者数409 平均点137,57
[韓国語] 受験者数136 平均点167,76
そして今年。一昨日(1月18日)平成24年度大学入試センター試験(本試験)平均点等一覧(中間集計)が大学入試センターから公表されました。
[英語] 受験者数207,256 平均点126.47
[ドイツ語] 受験者数77 平均点152.44
[フランス語]受験者数87 平均点122.86
[中国語] 受験者数223 平均点154.48
[韓国語] 受験者数89 平均点148.18
今回について言えば、英語より22点高いとはいえ、中国語、ドイツ語より下で、大学入試センターの韓国語問題作成部会としてはホッとしているのではないでしょうか?
しかし、これまでの韓国語の平均点の高さは「問題が簡単だから」ではないのです。いや、正確に言うと、「むずかしい問題でも高い点を取ってしまうほどのレベルの高い受験者が多い」ということです。
先日、<教えて!goo>の中にこの件についてのQ&Aがあるのをみつけ、その内容に驚きました。「センター試験の英語以外の外国語の難易度」についての質問に対し、seyoungという人が次のように回答しているのです。
「韓国語を解いてみました。はっきりいって簡単すぎです。下手したら英語を必死になって勉強するよりも楽なんじゃないか!?って思うぐらいです。レベルはハングル検定3級ぐらいだと思います。一年ぐらいちょっちょっと勉強すれば高得点間違いないですね。ちなみに私は発音を一問間違えただけで196点でした。」
たしかに、日本人が韓国語をゼロから学ぶとすると、英語だと3年くらいかかるレベルに約1年で到達できるというのは事実かもしれません。漢字語の熟語も多くは共通しているし、何よりも文法の大枠が同じで、日本語をほぼそのまま頭から韓国語に置きかえていけばいいわけですから・・・。しかし、だからといって試験はそんなにラクに点が取れるようにはなっていません。
seyoungさんも記しているように、センター試験の韓国語は、ハングル検定の準2級~3級レベルの問題が中心になっています。
では、その受験者の平均点はどのくらいか? ハングル能力検定協会のサイトを見ればわかります。→コチラ。
そこに昨年(2011年)秋季の第37回1次試験の受験者数や平均点・最高点数等の表があります。
この表からわかるように、準2級と3級の受験者平均点は約60点。200点満点に換算すると約120点。これがセンター試験韓国語と同レベルだとすると、英語と同じ難易度ということになります。
また受験者数にも注目して下さい。3級の下の4級、5級にもっと多くの人たちが受験しているのです。3級・準2級受験レベルに達する以前の段階でこれだけの人たちが頑張っているのです。
「一年ぐらいちょっちょっと勉強すれば高得点間違いない」という見解は、「私は発音を一問間違えただけで196点でした」というほどの秀才であり、また(おそらく)在日という韓国語学習に恵まれた環境にある方でなければ言えない言葉だと思います。
私ヌルボもかつては「右の耳から左の耳に抜けるような」とか「十を聞いて一を知る」などと形容されたような才能の持ち主ですが、準2級合格まではテキスト代をつぎ込み時間を費やし、それはもう自分なりに苦労をしたものでした、うるうる・・・。それを「一年ぐらいちょっちょっと勉強すれば・・・」と言えちゃう人がいるとは、およよよよ・・・。
※最初はこの回答が信じられず、seyoungさんの名前でいろいろ検索した結果、<教えて!goo>で他の韓国語関係の質問に対しては、きちんとした回答をしている方だということを確認しました。「延世大学・高麗大学・梨花女子大学の3つの語学堂に通った」というのも並みの方ではないですね。
さて、「韓国語の平均点が高過ぎる!」という声は当然関係者に届いています。いや、その対策に苦慮していると言った方がいいでしょう。
大学入試センターでは、センター試験の改善のため、毎年<高等学校教科担当教員の意見・評価>と、<問題作成部会の見解>を含む「試験問題評価委員会報告書」を公表してきました。これも大学入試センターのサイトで見ることができます。
毎年のように<高等学校教科担当教員の意見・評価>で指摘されていることは、「現行のセンター試験「韓国語」が「高等学校における学習到達度を測定する」機能を果たしてない」ということ。高校の「韓国語」の授業でゼロから学び始めた生徒にとっては問題が難しすぎるということです。
問題作成部会としては、それは重々承知のこと。見解の中で次のように述べています。
受験者の点数が極めて高得点に分布している主たる原因は、問題が易しすぎるためではなく、受験者の属性、すなわち、受験者の大半が「純粋に高等学校で韓国語を学習した」者ではなく、韓国語母語話者や帰国子女もしくは民族学校で韓国語を習得した者であり、極めて韓国語能力の高い者であることにあると考えられるので、高等学校教科担当教員からの批判は、至極当然と言わざるを得ず、平均点の不均衡を是正する方向で作題しようとしてきた従来の作成部会の方針は根本的に再考する必要があろう。
・・・つまり、「高校の先生のおっしゃることはわかるが、ふつうの日本の学校で韓国語を学んだ生徒を基準に問題を作成するとさらに平均点が上がってしまい、他言語とのバランスがとれなくなる」というわけです。
英語の問題でも、受験者が英語圏からの帰国子女だけを抽出して平均点を算定すると、当然高い数値になるでしょう。そしてそういう受験生たちは難易度を上げてもやはり相当の高得点を取るのではないでしょうか? (以前知り合ったあるアメリカからの帰国子女は、考える時も「えーと・・・」ではなく自然に「Er・・・」と言っていた。問題を難しくしても、こういう人にはムダ。)
この件について、平均点が高い云々は、難易度の問題というよりどんな人が受験しているか、ということに大きく規定されているということです。
・・・ということで、「韓国語はもっと難しくすべきだ!」という意見の方へ。もう十分に難しすぎるのです、困ったことに・・・。
※2009年11月16日の記事にも書きましたが、センター試験の韓国語の問題を見た韓国人学生が、「修学能力試験(韓国版センター試験)の[第二外国語中の]日本語より明らかに高レベル」とのコメントをつけていました。
ですから、今後検討するとしたら、問題の難易度よりも制度自体のことでしょうね。たとえば昨年(2011年)の<高等学校教科担当教員の意見・評価>にあるように、「現行の5言語を第一外国語として残すかどうかも含め、詳細な検討結果の提示が待たれるところである」とか・・・。
ところでですねー、昨年(2011年)の報告書中の<高等学校教科担当教員の意見・評価>を読むと興味深いことが書かれているのですよ。
2011年の問題を見ると、「韓国語母語者及び民族学校経験者をターゲットにした「特殊」な問題が出題されたと思われる」というのがそれ。
ふつうに問題を難しくするのではなく、高得点でも当たり前の韓国語母語者及び民族学校経験者がとくに間違えやすい問題が作られたというのです。
えっ、そんな問題があるのか!?と疑問に思う人も多いでしょう。たとえて言えば、日本人が間違えやすい日本語の問題、というようなものですから・・・。うーむ、なんなんだ?
もう字数がいっぱいなので、この先は<つづき>ということにします。
[2015年1月19日の追記]
2013年のセンター試験韓国語については→コチラと→コチラの記事で書きました。
センター試験の韓国語は(たぶん)「問題作成の工夫」が功を奏して、2013年・2014年とも英語以外の4外国語中平均点は最低になっています。それも平均点第3位の科目とは約5点という差をつけてです。
したがって、平均点だけをとって「韓国語は簡単」というのは明らかな間違いになりました。
しかし、記事中でも書いたように「問題解決」ということではなく、韓国語の母語話者やハイレベルの韓国語教育を受けてきた受験生にとっては問題の難易度とは関係なく高得点はとれるでしょう。(他の外国語も同じなんですけどね。)
[2015年1月19日のおまけ]
日本人が間違えやすい日本語の問題を作ってみました。たぶん外国人の日本語学習者の方が正答率が高いのでは?
問1.A~Dの単語中の「ん」の発音が他の3つと異なるものはどれか?
A.あんない(案内) B.かんどう(感動) C.はんたい(反対) D.かんこう(観光)
正解→D(これだけng。他の3つはn。)
問2. A~Eの中で長さ(拍)が他の4つと異なるものは?
A.交通 B.共同 C.動物 D.証拠 E.教員
正解→D(これだけ3拍。他の4つは4拍。) コ・オ・ツ・ウ、キョ・オ・ド・オ、ド・オ・ブ・ツ、ショ・オ・コ、キョ・オ・イ・ン
[2016年1月18日の追記]
2016年度の韓国語の問題をやってみました。2015年度については→コチラの記事で書いたように「問題を解く楽しさがぜ~んぜんない」それどころか「怒りさえ覚えた」と書きました。今回も感想は全く同じ。いや、もっとひどくなっているかも・・・。韓国語はゼロから始めた人でも3年間学習すれば旅行会話はたいていは大丈夫で、日常会話もなんとかOKというレベルには到達できると思いますが、そういう人でもこのセンター試験韓国語で5割とるのはむずかしいかも・・・。7割以上得点できる人はすごいと思います。以前に比べると、発音や単語の意味を問うような問題では初級レベルで出てくるような単語は皆無に近い感じ。
これでは、英語ではなく韓国語で受験しようという受験生は韓国語の母語話者か、英語が全然ダメな民族学校の生徒くらいになるかも・・・。民族学校の生徒の受験生でも、「こんなに韓国語が難しいのなら英語で受験しよう」と思う人はけっこういるのではないでしょうか?
この記事を最初に書いた時は見出しの通り「難しいのか? 簡単なのか? これは難しいぞ・・・」だったのが、今ははっきりと「センター試験の韓国語は難しい」というレベルになっています。やはり他でも書いたように、試験問題の内容をいじくるのではなく、英語と第二外国語を分けるとか、枠組み自体を変えないとダメでしょうね。
[2018年1月15日の追記]
今回も例年通り問題をダウンロードして挑戦してみました。
いつものことながら、解く前から25ページにもなる分量にうんざりします。英語の問題も31ページあって、長文の読解も多いので、うんざりのレベルは同じようなものかもしれませんが・・・。
そして答え合わせをしたらほぼ例年通り。私ヌルボの実力はかろうじて上級(?)といったレベルかと思いますが、いつも160点に届くか否かといったあたり。この先韓国で長期間生活でもしないかぎりこの試験ではどんなにがんばっても180点は取れないでしょう。
さて、再度いわゆる「在日特権」について。昨年2月<在日コリアンの8割は韓国語(朝鮮語)ができない。民族意識が強くない人も多数(推定)>という記事を書きました。→コチラ。
在日も世代交代が進んだ今、そのほとんどは母語が日本語で、家族同士が話す言葉も日本語です。このセンター試験で高得点を取る受験生は小学生の時からずっと民族学校で朝鮮語を学んできたごく一部の在日の生徒か、あるいは韓国で暮らした経験のあるニューカマー等、在日韓国・朝鮮人の中でもごくごく一握りの人たちではないでしょうか? 大多数の在日が広く享受できるような「特権」だとしたら、受験者数がこんな少ないはずはありません。在日の受験生のほとんどは英語を当然のように受験しているのです。
※問題・解答は、朝日のサイト→コチラなどからダウンロードできます。
例年この時期になると、本ブログのセンター試験関係記事のヒット数が増えます。
そしてネット上に飛び交う声から判断すると、アクセスしてきた方の中の相当数が「センター試験・韓国語の難易度は適切なのか?」という疑問をお持ちのように思われます。
この問題も含めて、本ブログでは過去3回関係記事を載せてきました。次の3つです。
○2009年11月16日<★修能の「日本語」の試験★ 出題内容と難易度>
○2010年1月21日<センター試験韓国語の平均点148点。 難易度はかなり高いが・・・>
○2011年1月17日<修能の「日本語」-正解がわからないぞ~ センター試験の「韓国語」-むずかしいぞ~>
上記の2つ目と3つ目の記事のタイトルだけでも私ヌルボはセンター試験の韓国語の難易度はかなり高いと思っています。
しかし、「簡単すぎるのではないか?」という疑問が出てくる理由もわからないではありません。
たとえば、2009~11年の外国語各科目の平均点を見ると、他の言語に比べ高い数値になっています。とくに2009年はダントツの高得点で、英語より52点も高くなっていて、これはヌルボのモノサシに照らしても高過ぎといわざるをえないレベルです。
2011年
[英語] 受験者数519,538 平均点122,78
[ドイツ語] 受験者数132 平均点142,17
[フランス語]受験者数151 平均点142,38
[中国語] 受験者数 392 平均点134,14
[韓国語] 受験者数163 平均点149,89
2010年
[英語] 受験者数512,451 平均点118,14
[ドイツ語] 受験者数124 平均点150,12
[フランス語]受験者数165 平均点134,81
[中国語] 受験者数364 平均点138,03
[韓国語] 受験者数163 平均点149,97
2009年
[英語] 受験者数500,297 平均点115,02
[ドイツ語] 受験者数106 平均点153,54
[フランス語]受験者数149 平均点138,97
[中国語] 受験者数409 平均点137,57
[韓国語] 受験者数136 平均点167,76
そして今年。一昨日(1月18日)平成24年度大学入試センター試験(本試験)平均点等一覧(中間集計)が大学入試センターから公表されました。
[英語] 受験者数207,256 平均点126.47
[ドイツ語] 受験者数77 平均点152.44
[フランス語]受験者数87 平均点122.86
[中国語] 受験者数223 平均点154.48
[韓国語] 受験者数89 平均点148.18
今回について言えば、英語より22点高いとはいえ、中国語、ドイツ語より下で、大学入試センターの韓国語問題作成部会としてはホッとしているのではないでしょうか?
しかし、これまでの韓国語の平均点の高さは「問題が簡単だから」ではないのです。いや、正確に言うと、「むずかしい問題でも高い点を取ってしまうほどのレベルの高い受験者が多い」ということです。
先日、<教えて!goo>の中にこの件についてのQ&Aがあるのをみつけ、その内容に驚きました。「センター試験の英語以外の外国語の難易度」についての質問に対し、seyoungという人が次のように回答しているのです。
「韓国語を解いてみました。はっきりいって簡単すぎです。下手したら英語を必死になって勉強するよりも楽なんじゃないか!?って思うぐらいです。レベルはハングル検定3級ぐらいだと思います。一年ぐらいちょっちょっと勉強すれば高得点間違いないですね。ちなみに私は発音を一問間違えただけで196点でした。」
たしかに、日本人が韓国語をゼロから学ぶとすると、英語だと3年くらいかかるレベルに約1年で到達できるというのは事実かもしれません。漢字語の熟語も多くは共通しているし、何よりも文法の大枠が同じで、日本語をほぼそのまま頭から韓国語に置きかえていけばいいわけですから・・・。しかし、だからといって試験はそんなにラクに点が取れるようにはなっていません。
seyoungさんも記しているように、センター試験の韓国語は、ハングル検定の準2級~3級レベルの問題が中心になっています。
では、その受験者の平均点はどのくらいか? ハングル能力検定協会のサイトを見ればわかります。→コチラ。
そこに昨年(2011年)秋季の第37回1次試験の受験者数や平均点・最高点数等の表があります。
この表からわかるように、準2級と3級の受験者平均点は約60点。200点満点に換算すると約120点。これがセンター試験韓国語と同レベルだとすると、英語と同じ難易度ということになります。
また受験者数にも注目して下さい。3級の下の4級、5級にもっと多くの人たちが受験しているのです。3級・準2級受験レベルに達する以前の段階でこれだけの人たちが頑張っているのです。
「一年ぐらいちょっちょっと勉強すれば高得点間違いない」という見解は、「私は発音を一問間違えただけで196点でした」というほどの秀才であり、また(おそらく)在日という韓国語学習に恵まれた環境にある方でなければ言えない言葉だと思います。
私ヌルボもかつては「右の耳から左の耳に抜けるような」とか「十を聞いて一を知る」などと形容されたような才能の持ち主ですが、準2級合格まではテキスト代をつぎ込み時間を費やし、それはもう自分なりに苦労をしたものでした、うるうる・・・。それを「一年ぐらいちょっちょっと勉強すれば・・・」と言えちゃう人がいるとは、およよよよ・・・。
※最初はこの回答が信じられず、seyoungさんの名前でいろいろ検索した結果、<教えて!goo>で他の韓国語関係の質問に対しては、きちんとした回答をしている方だということを確認しました。「延世大学・高麗大学・梨花女子大学の3つの語学堂に通った」というのも並みの方ではないですね。
さて、「韓国語の平均点が高過ぎる!」という声は当然関係者に届いています。いや、その対策に苦慮していると言った方がいいでしょう。
大学入試センターでは、センター試験の改善のため、毎年<高等学校教科担当教員の意見・評価>と、<問題作成部会の見解>を含む「試験問題評価委員会報告書」を公表してきました。これも大学入試センターのサイトで見ることができます。
毎年のように<高等学校教科担当教員の意見・評価>で指摘されていることは、「現行のセンター試験「韓国語」が「高等学校における学習到達度を測定する」機能を果たしてない」ということ。高校の「韓国語」の授業でゼロから学び始めた生徒にとっては問題が難しすぎるということです。
問題作成部会としては、それは重々承知のこと。見解の中で次のように述べています。
受験者の点数が極めて高得点に分布している主たる原因は、問題が易しすぎるためではなく、受験者の属性、すなわち、受験者の大半が「純粋に高等学校で韓国語を学習した」者ではなく、韓国語母語話者や帰国子女もしくは民族学校で韓国語を習得した者であり、極めて韓国語能力の高い者であることにあると考えられるので、高等学校教科担当教員からの批判は、至極当然と言わざるを得ず、平均点の不均衡を是正する方向で作題しようとしてきた従来の作成部会の方針は根本的に再考する必要があろう。
・・・つまり、「高校の先生のおっしゃることはわかるが、ふつうの日本の学校で韓国語を学んだ生徒を基準に問題を作成するとさらに平均点が上がってしまい、他言語とのバランスがとれなくなる」というわけです。
英語の問題でも、受験者が英語圏からの帰国子女だけを抽出して平均点を算定すると、当然高い数値になるでしょう。そしてそういう受験生たちは難易度を上げてもやはり相当の高得点を取るのではないでしょうか? (以前知り合ったあるアメリカからの帰国子女は、考える時も「えーと・・・」ではなく自然に「Er・・・」と言っていた。問題を難しくしても、こういう人にはムダ。)
この件について、平均点が高い云々は、難易度の問題というよりどんな人が受験しているか、ということに大きく規定されているということです。
・・・ということで、「韓国語はもっと難しくすべきだ!」という意見の方へ。もう十分に難しすぎるのです、困ったことに・・・。
※2009年11月16日の記事にも書きましたが、センター試験の韓国語の問題を見た韓国人学生が、「修学能力試験(韓国版センター試験)の[第二外国語中の]日本語より明らかに高レベル」とのコメントをつけていました。
ですから、今後検討するとしたら、問題の難易度よりも制度自体のことでしょうね。たとえば昨年(2011年)の<高等学校教科担当教員の意見・評価>にあるように、「現行の5言語を第一外国語として残すかどうかも含め、詳細な検討結果の提示が待たれるところである」とか・・・。
ところでですねー、昨年(2011年)の報告書中の<高等学校教科担当教員の意見・評価>を読むと興味深いことが書かれているのですよ。
2011年の問題を見ると、「韓国語母語者及び民族学校経験者をターゲットにした「特殊」な問題が出題されたと思われる」というのがそれ。
ふつうに問題を難しくするのではなく、高得点でも当たり前の韓国語母語者及び民族学校経験者がとくに間違えやすい問題が作られたというのです。
えっ、そんな問題があるのか!?と疑問に思う人も多いでしょう。たとえて言えば、日本人が間違えやすい日本語の問題、というようなものですから・・・。うーむ、なんなんだ?
もう字数がいっぱいなので、この先は<つづき>ということにします。
[2015年1月19日の追記]
2013年のセンター試験韓国語については→コチラと→コチラの記事で書きました。
センター試験の韓国語は(たぶん)「問題作成の工夫」が功を奏して、2013年・2014年とも英語以外の4外国語中平均点は最低になっています。それも平均点第3位の科目とは約5点という差をつけてです。
したがって、平均点だけをとって「韓国語は簡単」というのは明らかな間違いになりました。
しかし、記事中でも書いたように「問題解決」ということではなく、韓国語の母語話者やハイレベルの韓国語教育を受けてきた受験生にとっては問題の難易度とは関係なく高得点はとれるでしょう。(他の外国語も同じなんですけどね。)
[2015年1月19日のおまけ]
日本人が間違えやすい日本語の問題を作ってみました。たぶん外国人の日本語学習者の方が正答率が高いのでは?
問1.A~Dの単語中の「ん」の発音が他の3つと異なるものはどれか?
A.あんない(案内) B.かんどう(感動) C.はんたい(反対) D.かんこう(観光)
正解→D(これだけng。他の3つはn。)
問2. A~Eの中で長さ(拍)が他の4つと異なるものは?
A.交通 B.共同 C.動物 D.証拠 E.教員
正解→D(これだけ3拍。他の4つは4拍。) コ・オ・ツ・ウ、キョ・オ・ド・オ、ド・オ・ブ・ツ、ショ・オ・コ、キョ・オ・イ・ン
[2016年1月18日の追記]
2016年度の韓国語の問題をやってみました。2015年度については→コチラの記事で書いたように「問題を解く楽しさがぜ~んぜんない」それどころか「怒りさえ覚えた」と書きました。今回も感想は全く同じ。いや、もっとひどくなっているかも・・・。韓国語はゼロから始めた人でも3年間学習すれば旅行会話はたいていは大丈夫で、日常会話もなんとかOKというレベルには到達できると思いますが、そういう人でもこのセンター試験韓国語で5割とるのはむずかしいかも・・・。7割以上得点できる人はすごいと思います。以前に比べると、発音や単語の意味を問うような問題では初級レベルで出てくるような単語は皆無に近い感じ。
これでは、英語ではなく韓国語で受験しようという受験生は韓国語の母語話者か、英語が全然ダメな民族学校の生徒くらいになるかも・・・。民族学校の生徒の受験生でも、「こんなに韓国語が難しいのなら英語で受験しよう」と思う人はけっこういるのではないでしょうか?
この記事を最初に書いた時は見出しの通り「難しいのか? 簡単なのか? これは難しいぞ・・・」だったのが、今ははっきりと「センター試験の韓国語は難しい」というレベルになっています。やはり他でも書いたように、試験問題の内容をいじくるのではなく、英語と第二外国語を分けるとか、枠組み自体を変えないとダメでしょうね。
[2018年1月15日の追記]
今回も例年通り問題をダウンロードして挑戦してみました。
いつものことながら、解く前から25ページにもなる分量にうんざりします。英語の問題も31ページあって、長文の読解も多いので、うんざりのレベルは同じようなものかもしれませんが・・・。
そして答え合わせをしたらほぼ例年通り。私ヌルボの実力はかろうじて上級(?)といったレベルかと思いますが、いつも160点に届くか否かといったあたり。この先韓国で長期間生活でもしないかぎりこの試験ではどんなにがんばっても180点は取れないでしょう。
さて、再度いわゆる「在日特権」について。昨年2月<在日コリアンの8割は韓国語(朝鮮語)ができない。民族意識が強くない人も多数(推定)>という記事を書きました。→コチラ。
在日も世代交代が進んだ今、そのほとんどは母語が日本語で、家族同士が話す言葉も日本語です。このセンター試験で高得点を取る受験生は小学生の時からずっと民族学校で朝鮮語を学んできたごく一部の在日の生徒か、あるいは韓国で暮らした経験のあるニューカマー等、在日韓国・朝鮮人の中でもごくごく一握りの人たちではないでしょうか? 大多数の在日が広く享受できるような「特権」だとしたら、受験者数がこんな少ないはずはありません。在日の受験生のほとんどは英語を当然のように受験しているのです。
やはり英語以外は第二外国語とかの別枠を設けて任意選択制にするのが妥当なところではないでしょうか?
家族内でも日頃朝鮮語を話すレベルの在日(ごくごくわずか)とまでいかなくとも、小学校から民族学校に通っている在日の中で、さらに英語より高得点がとれそうなほどがんばって朝鮮語を勉強した受験生でないと受けられないと思います。
まあそれでも「一部の」在日朝鮮人に対する優遇とはいえるかもしれませんけどねー。在日朝鮮人「一般」に対する優遇というには無理がありそうに思います。
アメリカで言う所の黒人が大学に入学し易い・・・
ただ、それを「平等」というのはいかがなものでしょうか? 同じ帰国子女でも、英語圏から帰国した受験生と、他の国からの帰国生徒では前者が圧倒的に有利だし、在日韓国・朝鮮人と在日アメリカ人と比較すると、前者の優遇に非を唱える人はいても後者はとくに問題視されません。
英語が実質的に世界共通語となっているので、英語を母語とする人たちがこうした入試制度でも有利になっていることは「疑問の余地もないほど当たり前」ということなのでしょうね。
結論としては、英語だけにすればいいと思います。大学には二次試験があります。ドイツ語とかフランス語とかの能力を問いたければ、二次の科目に。
国際言語でないハングルの突然の登場で混乱していますが、センターは英語だけにすれば、明らかに公平です。
ちなみに韓国語は145.32点で、ソウル一市民さんが「かなり簡単」と評していらっしゃったフランス語は最高で162.82点でした。
この記事の冒頭で、冗談ぽく「点数はほとんど変わらずで、今回も同様。ということは、毎年難しくなっているということですね」と書きましたが、もしかしたら当たっているかも!・・・と半分くらい(?)思うようになりました。(笑)
私はずいぶん忘れてしまいましたが、少なくとも発音問題は韓国語よりもずいぶん簡単だなと思いました。他もたしかにひねり問題はないようですね。
一方、韓国語中級の中から上の間ほど(TOPIK4級なら受かるか?くらい)の私には、韓国語の問題は最初からかなり難しいです(時間がないのと心の準備が出来ない?のとで、まだ全部やっていないのですが、最後までこの難しさだとすると50%も正解できないのではないかと…)。
仏語と比べても、このレヴェルで平均点が高いというのは、やはり受験者のレヴェルが相当高いのでしょうね(単に私のレヴェルが低すぎるのかも知れませんが…)。
紹介して下さってありがとうございます。
Facebookの方もホントに興味深いネタ満載ですね。お忙しいことと拝察しますが、さらに情報発信の場を広げられたのはオドロキです。
ただ、レベルが高いので、肝心の韓国語で進歩のない私としてはため息をつくばかりです。
今回のセンター試験もやってみましたが、とくに前半はあちこち間違えてしまってトホホの結果でした。
ハングル検定準2級レベルの人でも150点とるのは容易ではないかもしれません。あいかわらず難しいです・・・。
たとえばアメリカ育ちの帰国子女(国籍は日本人)の場合、英語が当然高得点を取ることができるわけで、それは「不公平」とは思われないのでしょうか?
あるいは、家庭でもふつうに韓国語を話している在日韓国人が日本国籍を取得した場合はどうでしょうか?
逆に、韓国籍の在日であっても「母国語」の韓国語が全然できない人もたくさんいます。「母語」はもちろん日本語で、国籍以外は日本人と同じです。
「在日韓国人が不当に有利だ!」と問題にする人は、「在日スペイン人(or日系南米人等)は不当に有利だ!」ということは問題にしないのでしょうか? 後者が「不当ではない」なら、なぜ前者は「不当」と言えるのでしょうか?
いろんなケースがあって、とても一筋縄ではいかないと思います。
外国語ではないのですから。