今回は、「色絵 貼付梅樹文 ベク盃」の紹介です。
立面
貼付部分の拡大
裏面
生 産 地 : 肥前・有田
製作年代: 江戸時代中期
サ イ ズ : 口径;9.7cm 高さ;6.1cm(貼付を含む)・4.7cm(盃のみ) 底径;3.2cm
なお、この「色絵 貼付梅樹文 ベク盃」に似たものが、柴田コレクション総目録P.393:図3086に掲載されておりますので、次に、それを転載して紹介いたします。
また、この「色絵 貼付梅樹文 ベク盃」につきましては、かつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」の中でも既に紹介しておりますので、次に、そのかつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」の中で紹介しました紹介文を、再度掲載することをもって、この「色絵 貼付梅樹文 ベク盃」の紹介とさせていただきます。
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<古伊万里への誘い>
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*古伊万里ギャラリー173 伊万里色絵貼付梅樹文ベク盃 (平成24年8月1日登載)
この盃は、底の小さな穴を塞がないで液体を注いでも液体は底から漏れ出さないので、厳密には「ベク盃」とは言えないのかもしれないが、一応、「ベク盃」に区分しておく。
この盃によく似たものが、柴田コレクション総目録P.393・図3086(図録番号6-114)に載っている。この柴田コレクションのものは「色絵貼付梅鶯文小坏」(製作年代1710~1780年代)と表示されている。
柴田コレクションのものは、貼付られているものが「梅鶯文」であるが、この盃に貼付られているものは「梅樹文」のみで「鶯」が描かれていない。製作年代は、この盃も柴田コレクションのものも共に、1710~1780年代であろう。
写真ではよくわからないかもしれないが、貼付られている材料は実に細かな細工のものであり、繊細である。よくぞ、大きな欠損もなく残ってくれたものよと感謝している。
江戸時代中期 口径:9.7cm 高さ:6.1cm(貼付を含む);4.7cm(盃のみ) 高台径:3.2cm
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*古伊万里バカ日誌103 古伊万里との対話(ベク盃)(平成24年8月1日登載)(平成24年7月筆)
登場人物
主 人 (田舎の平凡なサラリーマン)
ベ ク (伊万里色絵貼付梅樹文ベク盃)
・・・・・プロローグ・・・・・
「梅雨」というと、シトシトと雨が降ることを言っていたが、最近では、熱帯地方の雨季みたいで、まとめて一気に降り、集中豪雨となって各地に被害をもたらすようになった。特に今年はひどいようで、九州地方に多大な被害をもたらしたようである。
その狂った「梅雨」もようやく明け、今度は酷暑の日々がめぐってきた。
主人は、その暑さにやられて頭の中まで狂ってしまったのか、押入れの中から、この時分にはおよそ縁遠い、「梅樹」が貼り付けられている古伊万里を引っ張り出してきて対話をはじめた。
主人: ちょっと前までは「梅雨」だった。今は、それも明けて酷暑の日々が続いているが、今時分は「梅雨明け」というくらいだから、「梅」に関するものは、あながち、季節はずれというわけでもないと思い、出てもらった(独善的だな~との陰の声あり!)。
ベク: なるほど。コジツケの感もありますが、ともかく出していただいてありがとうございます。この時分、押入れの中はジメジメしていて気分が悪いですから・・・・・。
主人: 悪い悪い。お前のことは、平成17年の6月26日の「オフ会」の際、東京の「平和島・全国古民具骨董祭り」で買ってきたんだが、それ以来、ず~っと押入れに入ってもらっているから、もう7年以上も押入れ暮らしが続いているわけだね。
ベク: そうですよ。押入れ暮らしは、特にこの時季は、ジメジメ・ムシムシで、嫌ですね。
ところで、今、「オフ会」の際に買ってきたと言いましたが、「オフ会」って何ですか?
主人: そうね、「オフ会」っていうのはね、パソコンのスイッチをオフにしての会合ということだね。以前は、ホームページを開設し、その中に掲示板を設け、その掲示板を通していろいろとコミュニケーションを図っていた。同じ趣味の仲間が集うので、話しは盛り上がり、いつしか、何時、何処に集まってお話ししあいましょうということになるわけだ。
平成17年6月26日の「オフ会」は、東京の「平和島・全国古民具骨董祭り」の開催日程に合わせて計画されたんだ。
当日、「平和島・全国古民具骨董祭り」が行われている東京流通センタービル内の所定の場所に集合し、そこで30分ほどお茶をしたあと、いったん解散して各人が骨董祭り会場を巡り、再度集って、昼食を共にしながら、今度は、戦利品などを見せ合って雑談にふけるという内容だった。同じ趣味仲間の集りなので、楽しいものだったね。
最近では、ホームページ上の掲示板という形態ではあまり盛り上がらず、ブログによるコミュニケーションという形態が多くなってきたかね。ブログの開設はホームページの開設よりも簡単で、容易に参加出来ることから流行り出したんだろうけど、その分、ブログでは、いろんな分野の趣味の方が集っているので、特定の分野に特化した趣味の繋がりという色彩が薄くなったのか、「オフ会」ということはあまり聞かなくなったな。その代りに、個人的にメールでやりとりをして会っているのだろうね。インターネット上でのコミュニケーションのあり方にもその変遷が感じられるよ。ネットの世界の変遷のテンポは早いね。
ベク: はい、わかりました。
ところで、また質問なんですが、私は「ベク盃」となっていますが、何故、「ベク盃」なんですか?
主人: お前には底に小さな穴があいているだろう。お酌を受ける時に指の腹でこの穴をふさがなければお酒が漏れてしまうし、飲み干してから穴をふさいでいた指を離して下に置かないと、またまた、お酒が漏れてしまって下に置けないよね。
そこで、何故、そのような形態の盃を「ベク盃」と言うかなんだけれど、漢字では「可盃」という字が当てられるようだね。その由来なんだけど、漢文では、例えば、「可何々」と書いて、「何々すべし」という表現になるし、「可行候」と書いて、「ゆくべくそうろう」という表現になるわけで、この「可(べく)」という文字は下に(文末に)くることがないわけだ。それで、下に来ることがない、つまり、下に置けないということで、このような盃のことを「可盃(ベク盃)」と呼ぶようになったらしい。
ベク: なるほど、そうでしたか。何かトンチ問答みたいですね。
主人: 種明かしはそんなところだ。
ところで、「ベク盃」の由来から、底に小さな穴があいてなくとも「ベク盃」と呼ばれるものがあるようだね。
ベク: どんな盃ですか。
主人: 一番単純なのは、逆円錐形に作られた盃さ。この形の盃だと、いったんお酌を受けたら、飲み干さない限り、底が尖っていて立たないから、お酒がこぼれてしまって下に置けないものね。
ベク: なるほど、なるほどです。「ベク盃」の由来からすればそのとおりですものね。
主人: ただ、お前の場合は、底に小さな穴があいているのだが、厳密には「ベク盃」とは言えないんじゃないかと思っているんだ。
ベク: どうしてですか?
主人: お前の場合は、ひっくり返して、底の小さな穴からお酒を入れるとすぐに漏れるんだが、正常に、底を下にしてお酒を入れた場合は、底の小さな穴を指で塞がなくともお酒は漏れないんだよ!
ベク: それじゃ、「ベク盃」の由来に反しますね。
主人: そうなんだ。
「さあさ、お立会い! 不思議な盃だよ! 底に穴があるのに水は漏れないよ! 目ん玉ひん剥いてよ~く見てなよ! 水を入れるよ! さあ、どうだ!!」
というような口上に使われるような盃なんだ。
でもね、底に小さな穴があいていて「ベク盃」のような形になっているのに、実は「ベク盃」ではない、などと、ややっこしいことになるからね。私は、一応、「ベク盃」ということにしておくことにしたよ。
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この品こそ、来るベク所へ、来るベクしてきた物ですね(^.^)
オヤジギャグはさておき、この梅の枝はどうやってくっつけてあるのでしょうか。力がかかる事はないでしょうが、それにしても長年よくもったものです。
わざわざこういう品をつくったのは、遊び心からなんでしょうね。故玩館の面白グッズコレクションに加えたいです(^.^)
酔っ払いは、こんな盃は、大歓迎なんです(笑)。
もっと呑みたいときは、下に置かなければいいんですからね。
もう沢山という時は、呑んだら、素早く裏返して置かなければなりません(^_^)
この種の盃は、酒の強い、鹿児島辺りに多いようです。
これは、盃本体と、中の樹木の部分を別々に作って貼付けたようですね。
それにしても、こんな繊細なものが無傷で残っていたことには驚きです!
よほど大切にされてきたのでしょうね。