今回は、「牡丹唐草文 金蒔絵 中皿」の紹介です。
この「牡丹唐草文 金蒔絵 中皿」につきましては、かつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」の中で、既に紹介しているところです。
つきましては、次に、その時の紹介文を再度掲載することをもちまして、この「牡丹唐草文 金蒔絵 中皿」の紹介とさせていただきます。
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<古伊万里への誘い>
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*古伊万里ギャラリー234 伊万里牡丹唐草文金蒔絵中皿 (平成29年11月1日登載)
表面
裏面
花の部分の拡大(花が開いた状態)
花の部分の拡大(花が蕾に近い状態)
花の部分の拡大(花が半開きの状態)
一見、「これ何?」と思うことだろう。表を見ると「漆器」に見えるし、裏を見れば「磁器」であることが分かるからである。
しかし、これが「磁器」であることを知っても、次に、「これはいったい何処で焼かれた焼物」と思うことであろう。
これを、古伊万里の白磁に漆の金蒔絵を施したものであることが分かる人は、古伊万里について、かなり明るい方である。
そう、伊万里では、いろんな物を作っていて、こんな物も作っているのである。
このような、磁器に漆を施したものは、輸出伊万里にたまに見られるが、この皿は、国内向けに作られたものであろうか?
しかも、国内向けでも、一般向けのものではなく、寺院からの特注品だったのだろうか?
私の、独断と偏見によるものではあるが・・・・・。
生 産 地 : 肥前・有田
製作年代: 江戸時代中期
サ イ ズ : 口径;22.8cm 底径;12.2cm
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*古伊万里バカ日誌162 古伊万里との対話(金蒔絵の皿)(平成29年11月1日登載)(平成29年10月筆)
登場人物
主 人 (田舎の平凡なご隠居さん)
蒔絵皿 (伊万里牡丹唐草文金蒔絵中皿)
・・・・・プロローグ・・・・・
主人は、今月も、主人のところにやってきた古伊万里の順番に従って対話をしようと思ったようで、それに該当する古伊万里を押入れの中から引っ張り出してきて対話をはじめた。
主人: お前のことは、或る古美術品交換会で競り落としたんだけれど、それは、「押入れ帳」の記載内容によると、平成25年の10月のことだったんだね。あれから、ちょうど4年なんだ。もっともっと前に競り落としてきたような気がしたが、まだ4年しか経っていなかったんだね。
蒔絵皿: 私は、一見、陶磁器にはみえませんね。漆器のお皿みたいですね。
主人: そうだよね。裏を見ないで、表だけを見ているぶんには、陶磁器には見えないね。漆器そのものだね。
そうそう、漆器に見えるといえば、お前を競り落とした際に、面白いことがあったな。
蒔絵皿: どんなことですか。
主人: お前を競り落とした直後、ある方が私の所に近寄ってきてこう言ったんだ。
「これ、何焼だか知ってるの?」ってね。
言葉としては簡単だが、その意味するところは、「何焼だか知っていて競り落としたのかい! 見たところ、何処で焼かれたものか分からないじゃないの。そんな物に結構な値段を出して競り落としているようじゃ、よほど目が見えないね! かわいそうに!」という内容のものだった。
その方は、長いこと骨董をやっていて、目利き自慢をする方で、口達者なんだ。
蒔絵皿: それで、その時、ご主人は黙っていたんですか。
主人: 私は、普段は、その場では、競り落とした物の評価をしたり、コメントをすることは差し控えているんだけれど、さすがに、その時は、ちょっと、むっとして、反論したよ。私だって、長い間、古伊万里のコレクションをしているのだし、古伊万里コレクターとしての沽券にもかかわるからね。それで、次のように言ってやった。
「何焼」かと言えば、本体は幕末くらいの伊万里焼ですね。幕末頃に焼かれた伊万里の白磁に漆の蒔絵を施したものでしょう。このような物は、美術館にも展示されていますし、本などにも載っていますよ。時代はそんなに古くはないですけど、今、現在、作るとしたら、とてもとても、さっき競り落としたような額などでは作れませんから、決して高く競り落としたとは思っていませんよ、とね。
蒔絵皿: そのように言ったら、その方はどんな態度をとったんですか。
主人: すごすごと退散していったね。痛快だった。
人を見くびったような発言はすべきではないね。逆に、自分の能力の無さをさらけだすことになるからね。
ところで、そこまでは良かったんだが、その後がいけなかった(><)
蒔絵皿: その後に何かあったんですか。
主人: そうなんだ。その後、お前を傷付けてしまったんだ(><)
蒔絵皿: どんな傷を付けたんですか? 見たところ、傷らしいものが見当たりませんが・・・・・。
主人: それはね、漆の部分を擦ってしまって、一部に色剥げを生じさせてしまったんだ(><) 申し訳ない(><)
私は、古伊万里を買ってくると、すぐに洗ったりしてきれいにするクセがあるんだよ。汚れがそれほどでもない場合は、水に漬けて、スポンジタワシでゴシゴシ洗う程度だけれど、汚れが酷い時は漂白剤に漬けてから洗っているんだ。
お前の場合は、それほど酷い汚れではなかったので、いつものとおり、気楽に、水に漬けてスポンジタワシでゴシゴシ洗い始めたんだ。ところが、暫くして、異常に気付いたんだ! 「あれっ! 変だな! 漆の部分の色が薄くなってる(><)」って・・・・・。それで、あわてて作業を中止した。
でもね、時すでに遅し、というやつだね(><) 最初の漆の色の状態を良く見ていなかったから、正確にはどのくらいの色剥げを生じさせてしまったのかは分からないが、たぶん、少なくとも、口縁の金色の部分の色剥げは私が生じさせてしまったのだと思う(><) また、それ以外の色の薄くなっている部分もそうだと思う(><)
陶磁器の場合は、色絵は、焼付けて作られているわけなので、水に漬けてスポンジタワシでゴシゴシ洗った程度で色落ちなどするわけがないから、お前の場合も、それと同じと思い込んでしまい、ゴシゴシとやってしまったのが悪かった。不用意だった(><)
しかしね~、言い訳がましくなるが、漆だって、お碗など、水に漬けてゴシゴシ洗うよね。それだって、色落ちしないよね。
蒔絵皿: それなのに、どうして色落ちしたんですか?
主人: たぶん、漆の部分が経年劣化していたんだと思う。お前の場合は、保管状態も悪かったため、経年劣化もより進行していたんだろうね。
しかし、こんなことを体験し、こんなに漆の部分が経年劣化しているのであれば、お前は、私が思っていたよりも古いのではないかと思うようになったんだ。
先程も言ったように、お前は、競り落とした時点では、幕末の頃に作られたものだろうと思ったわけではあるが、こんなに漆の経年劣化が酷いのであれば、もっと前に作られたのではないだろうか、江戸中期ぐらいはあるのではないかと思うようになったんだ。
まっ、保管状況の如何によって漆の経年劣化の状況も変わるのではあろうけれど、少なくとも幕末よりは古いんじゃないかと思うようにはなってきたよ。
蒔絵皿: 怪我の功名というやつでしょうか。
主人: そうかもしれないね(^-^; お前が、そう言ってくれると、私の心の傷も少しは癒されるよ。
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白磁に漆を塗ったり、文様を描いたりするものが、伊万里ではたまに見かけます。
そんなに多くは見かけないですから、特注品だったのかもしれませんよね(^_^)
陶磁器の上からワザワザ漆で仕上げ~かなり凝り性の人からの注文品ですね。
これが伊万里と分かる人は少ないだろうと思います。
私も、以前、1点、白磁に漆を施してある伊万里を手に入れていましたので分かったようなものです(~_~;)
好奇心が強いというか、野次馬根性が強いものですから、ついつい、珍しいものに手を出してしまいます(~_~;)
伊万里にはいろんなものがありますね。
ワタシは一度も出会ったことのないタイプの品です
漆器は英語でJapanと表記するほど、日本を代表する工芸ですから
そういった意味では極めて日本的な伊万里ということになるでしょうか。
さすがにドクターさんのコレクションは奥が深いですね!。
手間がかかり、コストが高くなってしまうためか、殆どないですね。
珍しいかと思います。
お寺関係で使われたのかなと思いましたのは、私の独断と偏見です(~_~;)
文様からみて、そのように感じたわけです。
信憑性はありません(~_~;)
磁器に漆ですか。
そんなことも出来るのですね。
ただただ驚嘆です。
お寺関係で使われていたのですか。
お手数をおかけしてしまったようで、恐縮です。
いろいろと、漆のことについて教えていただきありがとうございます(^_^)
また、密陀絵というものを初めて知りました。
ちょとネットで調べてみましたら、近世になって、漆器の装飾に盛んに用いられようになったのですね。
密陀絵の可能性が高いかもしれませんね。
ありがとうございます(^-^*)
まず、漆の劣化です。漆は非常に劣化しにくいのが普通です。紫外線には弱いですが、この皿が長い間紫外線にさらされていたとは考えがたいです。それから、木の収縮が激しい環境下では、漆部は伸縮しませんから結果として剥がれが多くなります。しかし、磁器では起こりえません。
どうもこの皿の劣化部は、地の黒漆ではなく、絵付けの部分で起こっているような気がします。
色絵部をよく見てみると、通常に漆絵ではないような気がします。では何かというと、密陀絵(みつだえ、みだえ)ではないだろうかと思います。顔料を油で溶いた古いタイプの絵付けです。漆絵のような色艶はありません。
これは、ますます期待が高まりそうです(^.^)
実は、私としては、漆に見識のある遅生さんの厳しいご指摘を覚悟していました。
栗田美術館にも、磁器に漆を塗った輸出伊万里が何点か所蔵されているんです。
それらは、この皿のように全面的に漆が塗られているものではなく、また、明らかに里帰り伊万里と分かるものですから、江戸中期であることが分かるわけです。
その点、このようなものは類例を見ませんから、製作年代が分かりかねますね(~_~;)
裏面しか見えませんので、なかなか時代判定が難しいですね(><)
もっとごしごし擦って下の磁器面を出せばわかるのかもしれませんが、この場合は、ちょっとその勇気が湧きません(笑)。
実際の所、参りました、と言わざるをえません(^^;
幕末以降、磁器に漆塗りの陶磁器がポツポツと作られましたが、この品はその一群に入らないかもしれません。
つまり、時代がもっと遡る。
これは、伊万里の歴史を塗り替えるかも知れませんね。
それを証明するには、もう少しごしごし擦って、下の磁器面を出す必要がある?(^.^)