Dr.K の日記

日々の出来事を中心に、時々、好きな古伊万里について語ります。

染付 梅花折枝文 葉形変形小皿

2021年12月07日 13時47分35秒 | 古伊万里

 今回は、「染付 梅花折枝文 葉形変形小皿」の紹介です。

 なお、この「染付 梅花折枝文 葉形変形小皿」につきましては、かつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」の中で、既に紹介しているところです。

 そこで、その際の紹介文を次に再度掲載することをもちまして、この「染付 梅花折枝文 葉形変形小皿」の紹介に代えさせていただきます。

 

 

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         <古伊万里への誘い>

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*古伊万里ギャラリー243  伊万里染付梅花折枝文葉形変形小皿   (平成30年8月1日登載) 

 

表面

 

 

裏面

 

 

側面

 

 

裏面の斜め上から見た面

 

 

 比較的に薄作りで厳しく作られており、高台も高く、いかにも江戸前期の古伊万里を思わせる。

 一つ前の「242 伊万里染付白菜文白菜形皿」(このブログでは、2021年11月26日に紹介した「染付 白菜文 白菜形皿」)も、比較的に薄作りで厳しく作られており、高台も高く作られてはいるが、どうも、江戸前期の古伊万里とするには、すんなりと「腹に入らない」のだ。何か違和感を覚えるのだ。

 しかし、この小皿は、それを感じさせない。江戸前期の古伊万里なんだな~と思わせるし、そう思わせる安心感さえ漂わせる。

 

生 産 地 : 肥前・有田

製作年代: 江戸時代前期

サ イ ズ : 長径14.8cm 短径13.4cm 高台長径8.9cm 高台短径7.5cm 最大高さ3.4cm

 

 

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*古伊万里バカ日誌171  古伊万里との対話(折枝梅文葉形皿)(平成30年8月1日登載)(平成30年7月筆)  

登場人物
  主  人 (田舎の平凡なご隠居さん)
  葉形皿  (伊万里染付梅花折枝文葉形変形小皿)

 

 

・・・・・プロローグ・・・・・

 主人は、前回は、生産地にも製作年代にも自信の持てない「伊万里染付白菜文白菜形皿」をアップしてしまい、内心、じくじたるものがあるようである。
 そこで、今回は、前回へのリベンジの意味も込め、生産地にも製作年代にも自信の持てるものをアップしたいと考えたようで、該当する古伊万里を押入れの中から引っ張り出してきては対話を始めた。

 

 


 

 

主人: 前回は、我が家にやってきた古伊万里の順番だったとはいえ、「伊万里染付白菜文白菜形皿」と対話をしたんだが、生産地や製作年代がどうもよく分からなかったので、ちょっと物足りない感じで終わってしまった。
 今回は、前回の「伊万里染付白菜文白菜形皿」(このブログでは、2021年11月26日に紹介した「染付 白菜文 白菜形皿」)よりは、生産地も製作年代もはっきりしているお前に出てもらった。

葉形皿: 私は、何時、何処で作られたんですか。

主人: お前は、江戸前期に有田で作られたものだろう。江戸前期の有田製の物はよく見かけるし見慣れてもいるので分かるんだよ。
 市場に出回っている江戸前期のお前のような手の物は、ほとんど鍋島藩の有田製となっているからね。もっとも、江戸前期に平戸藩の三川内で作られたお前と同じような手の物も、同じく江戸前期に大村藩の波佐見で作られたお前と同じような手の物も、有田製の物の中に混入されてしまっているのかもしれないけれど・・・・・。
 私としては、江戸時代に肥前地域一帯で作られた磁器を古伊万里と総称し、それをコレクションの対象としているので、お前のような物が、鍋島藩の有田で作られたものであろうが、平戸藩の三川内で作られたものであろうが、はたまた、大村藩の波佐見の地で作られたものであろうが、それ等は全て古伊万里であることには変りがないから、私としては矛盾がないがね。

葉形皿: 何か特徴的なことはあるんですか。

主人: 造形的に見ると、比較的に薄作りで鋭く、尖って作られた部分などに手を当てると、チクリと感じるほどだ。また、陽刻された部分など、まるで彫刻刀で削ったように、くっきりとしているね。
 高台も比較的に高く作られ、品格高く感じられるね。
 文様は、どちらかというと写実的で、直接に目に訴えてくるかな。
 それに、全体的に古格を感じさせるよ。

葉形皿: いろいろと良い所を並べ立てていただきありがとうございます。

主人: いやいや、良い所を並べ立てたわけではないぞ。特徴的なことを並べ立てただけだ。でも、その特徴的なことを並べ立てたことが、良い所を並べ立てたことにもなるわけだね。
 それだけ、お前のような手には、良い所が沢山あるということだね。だから、私は、お前のような手を好きになっちゃうんだよ。惚れちゃうんだよ。お前には、多少の窯疵やらニューが見られるんだが、惚れてしまうと、そんなものは問題にならなくなるんだよね。「アバタもエクボ」というやつで、窯疵やらニューやらが、かえって見所にさえ思えてきてしまうんだ。茶人が、茶碗のキズを欠点とせず、むしろ見所とするような心境かな。ハハハ・・・・・。

葉形皿: ますます嬉しくなりますね(^-^;

主人: そうだ、そうだ。調子コイダついでに、どんどん言っちゃおう。
 私は、完璧な工芸品には美は宿らないと思っているんだ。鑑賞陶磁器の世界では、えてして、完全無欠な完璧な工芸品こそ最高の美術品であり、最高の芸術品であると考える傾向にあるが、私はそうは思わないね。
 高い完成度で作られた物の中に、「神」が付けたような絶妙な欠点というか「印」(しるし)のようなものを宿すものこそ本当の美術品であり、芸術品であると思っているんだ。完全無欠で完璧な工芸品は、単なる飾り物だね。

葉形皿: ご主人は、今日は快気炎ですね!

主人: ハハハ・・・・・。この猛暑で脳もやられたかな・・・・・。

 

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染付 山水文 火入れ

2021年12月06日 11時40分31秒 | 古伊万里

 今回は、「染付 山水文 火入れ」の紹介です。

 これは、平成28年に(今から5年前に)、骨董市で買ったものです。

 これも、前回紹介しました「染付 梅花文 中皿(一対)」と同様、疵のあるものです(~_~;)

 かくて、我が家には、疵物、ガラクタの類いが集まってくるわけですね(><)

 

 

正面(仮定)

この器は、煙草盆に中に収められ、「火入れ」として使用されたものと思います。

これに銀火屋を設え、単独で、香炉として使用することも出来ますね(^-^*)

 

 

正面から左に約45度回転させた面

表面に鳥足ニューが見られます。しかし、幸いなことに、このニューは表面だけのようで、裏側にまでは達していないようです(^-^*)

 

 

正面から左に約90度回転させた面

 

 

正面から右に約90度回転させた面

 

 

正面の反対面

 

 

見込面

 

 

底面

 

 

生 産 地 : 肥前・有田

製作年代: 江戸時代後期

サ イ ズ : 口径;9.1cm 底径;4.8cm 高さ;6.8cm


染付 梅花文 中皿(一対)

2021年12月05日 14時08分44秒 | 古伊万里

 今回は、「染付 梅花文 中皿(一対)」の紹介です。

 

              中皿A                中皿B

 

 

 中皿Aを買ってから1ヶ月ほど経ってから、別な業者から中皿Bを買ったものです。

 また、上の画像からも分かりますように、良く見ますと、中皿Aと中皿Bの見込面に描かれた梅花文にはかなりの差違が認められますので、両者は同じではありません。従いまして、本来は「一対」とは言えませんが、よく似ていますので、一応、「一対」とさせていただきます(~_~;)

 

 

中皿Aの表面

口縁付近から中心部付近に至るまで(上の画像では、時計の針の2時半の方角から中心部付近に至るまで)、裏面に達するような大きな鳥足ニューが見られます。また、釉切れも見られます(上の画像の見込面の下方角)。

 

 

中皿Aの裏面

口縁付近から中心部付近に至るまで(上の画像では、時計の針の7時の方角から中心部付近に至るまで)、裏面に達するような大きな鳥足ニューが見られます。

 

 

中皿Bの表面

口縁から見込面をかすめ、更に口縁に至るまで(上の画像では、時計の針の2時半の方角から見込面に向かい、そこから下方に向かって時計の針の6時の方角の口縁に至るまで)の部分が割れていましたが、その部分は私が接着剤で貼付けて補修しました。また、釉切れも見られます(上の画像の見込面の左側の外側部分)。

 

 

中皿Bの裏面

口縁から見込面をかすめ、更に口縁に至るまで(上の画像では、時計の針の7時半の方角から高台内に向かい、そこから上方に向かって時計の針の11時の方角の口縁に至るまで)の部分が割れていましたが、その部分は私が接着剤で貼付けて補修しました。

 

 

 上に記しましたように両者には大きなニューや割れがあり、また、特別に上手というものでもなく、ごくごく平凡なものではありますが、高台内に描かれた「銘」から判断しましても、両者は、典型的な江戸中期の古伊万里に属するものと思われます。しかし、最近では、この手のものもなかなか市場に登場しなくなってきましたし、鑑賞するぶんには支障がありませんので購入に及んだものです。

 

生 産 地 : 肥前・有田

製作年代: 江戸時代中期

サ イ ズ : 中皿A・・・口径;19.5cm 底径;12.2cm

      中皿B・・・口径;19.5cm 底径;12.4cm


色絵 鶏(にわとり)文 輪花形小鉢

2021年12月03日 14時56分11秒 | 古伊万里

 今回は、「色絵 鶏(にわとり)文 輪花形小鉢」の紹介です。

 この「色絵 鶏(にわとり)文 輪花形小鉢」は、透けて見えるほどの薄造りであることから、有田の土とは違うのではないかとの疑問を抱いているところです。従いまして、有田産のものではないのではないかと思っているところです。平戸(三川内)系のものではないのかと思っているところです。また、製作年代も、江戸後期になるのではないかと思っているところです(~_~;)

 前回の「染付 福字文壺」に引き続き、いい加減な紹介になってしまい申し訳ありません。

 

 

正面(仮定)

反対面にも鶏文が描かれ、両者は向かい合い、睨み合っているように描かれています。

 

 

正面から右に約90度回転させた面

鶏と鶏の間には、草花や蝶が描かれています。

 

 

正面の反対面

 

 

正面から左に約90度回転させた面

 

 

見込面

底部に人物文が描かれています。

 

 

見込面底部の人物文の拡大

 

 

底面(その1)

正面側から見た底面

 

 

底面(その2)

正面の反対面側から見た底面

 

 

高台内の銘の拡大

銘:一重角福

 

生 産 地 : 肥前・平戸(三川内)?

製作年代: 江戸時代後期

サ イ ズ : 口径;11.5cm 高さ;5.8cm 底径;5.2cm

 

 

 なお、この「色絵 鶏(にわとり)文 輪花形小鉢」につきましても、かつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」の中で、既に紹介しているところです。

 つきましては、参考までに、その際の紹介文を次に再度掲載いたしますので、ご覧いただければ幸いです。ただ、その紹介文は、この「色絵 鶏(にわとり)文 輪花形小鉢」の生産地を有田と、製作年代を江戸中期として書かれていますことをお含みおきください。

 

 

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        <古伊万里への誘い>

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*古伊万里ギャラリー200  柿右衛門様式色絵鶏(にわとり)文輪花形小鉢 (平成27年1月1日登載)

 

 

 

 薄作りで上手であり、鶏(にわとり)が描かれているので、一瞬、中国の明・成化のチキンカップを連想させる。

 しかし、よく見ると、土は中国のものではないし、絵付けも和風である。

 柿右衛門様式の古伊万里ということになろう。

 ところで、この小鉢の高台の内側と外側には汚れがみられる。

 その汚れは、ゴシゴシと洗っても落ちないし、漂白剤に浸けても落ちない。

 おそらく、最初から、つまり窯の中にある時から付いた汚れなのであろう。広い意味で、「窯疵」というものであろうか。

 

   江戸時代中期    口径:11.5cm  高さ:5.8cm  高台径:5.2cm

 

 

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*古伊万里バカ日誌129  古伊万里との対話(鶏(にわとり)文の小鉢)(平成27年1月1日登載)(平成26年12月筆)

 

登場人物
  主 人 (田舎の平凡なサラリーマン)
  小 鉢 (柿右衛門様式色絵鶏(にわとり)文輪花形小鉢)

 

 

・・・・・プロローグ・・・・・

 今回の対話が、平成27年の元旦に当たること、また、主人のホームページに登場する古伊万里としては200点目に当たることから、主人は、いくらか華やかで、かつ、多少は記念すべき、インパクトのある古伊万里と対話をしようと考えたようである。
 そこで、「押入れ帳」をめくり、「何ぞ、気の利いた古伊万里はないかいな!」と捜し始めたが、なにせ、主人の所は貧庫ゆえ、そんな、気の利いた古伊万里は既に登場させてしまっていて見当たらない。
 主人は、途方に暮れたようではあるが、そこはズボラな主人のこと、「華やかで記念すべきものと対話をするというようなことは考えず、従来どおり、買ってきた順番に対話をしよう」 と気を取り直し、押入れから次の順番のものを引っ張り出し始めた。
 と、その時、「そうだ! 買ってきた順番に対話をしようなどと考えているからみつからないんだ! 先日買ってきたばかりの古伊万里があるではないか! あれなら、まぁ華やかだから、正月にふさわしいし、多少はインパクトもあり、200点目という節目の時に登場させるにもふさわしいだろう」とヒラメイタようである。ズボラな性格も、時にはプラスに作用することもあるようではある。
 それで、買ってきたばかりのため、まだ押入れにも入れずに身近に置いておいた古伊万里と対話をはじめた。

 

 


 

  

主人: お前は、先日、我が家に来たばかりだよね。我が家に来たばかりの古伊万里と対話をするのは珍しいんだよ。

小鉢: それは、それは、例外扱いをしていただきありがとうございます。(「他に気の利いた古伊万里が無かったからじゃないの!」と独白) 

主人: お前を買うに至った経緯は、つい先日の暮れの頃のことだから、よく覚えているよ。
 私は、お前を見た瞬間の第一印象では、お前を買うつもりはなかったんだ。私は、普通、第一印象でビビットきた物を買ってるんだが、それからすると、これまた、珍しいことなんだよね。
 最初見た時、お前は、朝日を浴び、直射日光をまともに受けて、古伊万里とは思えなかったんだ。
 透けて見えるほどに薄作りで、第一印象では中国物かなと思ったんだよ。中国の「明」の「成化時代」の「豆彩(闘彩)」の、いわゆる「チキンカップ」かなと思ったんだ。鶏(にわとり)が描かれているからね。勿論、本物の明成化の豆彩(闘彩)の「チキンカップ」は世界に数点しかないと言われているから、清朝あたりの写しかなとは思ったんだけれども・・・・・。
 清朝のものなら私のコレクションの対象外だから、それ以上見る必要もないんだが、何か気になったんだよね。
 それで、手に取って見てみると、土は中国物とは違うようだし、高台内に「角福」の銘があることがわかった。「中国物には、たしか、角福銘はなかったよな・・・・・」、「とすると中国物ではなさそうだな・・・・・」、「否、むしろ、角福銘は中国が本場だったよな~、やはり中国物なのかな~」、「いったい何処で作られたものだろうか・・・?」と一人ごちていた。
 そうしたら、店主が、「柿右衛門ですよ。名品ですよ。」とのたまわった。
 それを聞いて、私は、「まさか!」と思ったね。長いこと古伊万里のコレクションをしているので、中国物と古伊万里との違いくらい判別できると自負していたからね。店主がデタラメを言っているのかと思ったよ。

小鉢: それでどうしたんですか。

主人: 「ん?」、「柿右衛門?」、「古伊万里?」・・・・・。
 「本当かな・・・?」と思ったが、「そうか、光線の関係かな?」と思い直し、直射日光を避ける位置に持っていって改めて見直してみたら、正に柿右衛門に違いないことがわかり、即座に購入することにしたんだ。薄作りで、なかなかの上手の作であることがわかったからね。

小鉢: 光線の関係でそんなに違って見えるんですか。

主人: そうなんだね。私も初めて実感した。光線の関係で、物は良くも見えるし悪くも見えるんだね。極端な場合は、伊万里が中国物に見えたりもするわけだ。
 栗田美術館の故栗田館長さんは、光の魔術師と言われた方だった。陳列した古伊万里達の最高の姿を現出させるため、照明には気を使ったらしいね。今思うと、なるほどと思うね。照明とか光とかは、重要だね。

小鉢: 美術品にとって、照明は重要なんですね。

主人: そうだね。美術館によっては、電気代が嵩むので、節電のために照明を落すというようなところもあるようだが、それは問題だね。陳列品の最高の状態を現出させる観点から、明るくしたり暗くしたりすべきだね。

小鉢: ところで、今年は未(ひつじ)年ですよね。私が登場すべき年は2年後ではないですか。

主人: ははは、それはそうだ。干支から言ったら2年早いな。
 でもね、負け惜しみを言うようだけれど、私は、未(ひつじ)を描いた古伊万里というものは見たことがないね。未(ひつじ)を描いた古伊万里がないんなら、あとは、干支にとらわれることなく、何だったいいんじゃないかと思ったわけよ。
 その点、お前は、華やかだし、上手でもあるので、正月に登場させるにはふさわしいと考えたわけだね。

小鉢: 私が鶏(トリ)文なので、干支を先ドリさせたというところですか(笑)。

主人: う~ん。まいったね。オチが付いたところで、今日はこの辺で終りとするか。

 

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染付 福字文 壺

2021年12月02日 13時23分39秒 | 古伊万里

 今回は、「染付 福字文 壺」の紹介です。

 なお、この「染付 福字文 壺」につきましても、かつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」の中で既に紹介しているところですので、その時の紹介文を再度次に掲載することをもちまして、この「染付 福字文 壺」の紹介とさせていただきます。

 

 

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         <古伊万里への誘い>

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*古伊万里ギャラリー249  伊万里染付福字文壺         (平成31年2月1日登載)          

 

正面(仮定)

所々に鉄分が滲み出し、飛び青磁のようになっている。

 

 

正面から右に約120度回転させた面

 

 

正面から左に約120度回転させた面

口縁の内側には窯疵が見られる。

 

 

底面

 

 

 下手で粗雑な作りの壺である。日用品として作られたのであろう。骨董の分野では、いわゆる「生活骨董」というような部類に属するものだろうか。

 分厚い作りで、釉薬もどっぷりと掛けられ、一見、青磁染付のように見え、手取りも重い。

 ただ、胴に「福」の字が三つ描かれているところや、所々に鉄分が浮き出して飛び青磁のようになっているところが景色になっていて面白く、鑑賞にも耐え得るのではないかと思料している。

 なお、この壺の生産地については、有田産ではなさそうであるが、肥前地域内で作られたものであろうとは思っている。

 

生 産 地 : 肥前

製作年代: 江戸時代中期

サ イ ズ : 口径;5.9cm  胴径;11.0cm  高台径;7.5cm  高さ;11.5cm

 

 

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*古伊万里バカ日誌176  古伊万里との対話(福字文の壺)(平成31年2月1日登載)(平成31年1月筆)

   

登場人物
  主 人 (田舎の平凡なご隠居さん)
  小 壺 (伊万里染付福字文壺)

 

 

・・・・・プロローグ・・・・・

 主人は、今回は、通常どおり、主人の所にやってきた古伊万里の順番に従って対話をしようと考えたようで、それに該当する古伊万里を押入れから引っ張り出してきて対話を始めた。

 


 

主人: おおっ! 何か、ちょっと、訳の分からないものが登場してきたな(-_-;)  お前のことは、自信をもって、これぞ「古伊万里」として紹介できないところがあるね。

小壺: どんな所に自信がもてないんですか。

主人: まず、シャープさが足りないね。厚作りでドテッとしていて、形にも締りがないものね。一見、大陸ものではないかと思わせるよ。

小壺: でも、どうして「古伊万里」と判断したんですか。

主人: 長年「古伊万里」のコレクションをしている勘(カン)かな。素地を見ると、やはり、「古伊万里」だろうと思うわけだ。有田産にしては珍しいけれど、有田ではいろんな物を作っているから、こんな物も作っていたんではないかな~と思うわけだよ。それに、私は、有田産の磁器に限らず、肥前地域一帯で作られた磁器を「古伊万里」と総称しているので、たとえ、お前が有田で作られた磁器ではないとしても、「古伊万里」に属するんではないかと考えているんだ。

小壺: そうですか。「まぁまぁ古伊万里には違いないだろう」という程度のものなんですね。

主人: それはそうだよ。骨董なんてそんなもんだよ。百パーセント間違いない、なんてことはないよ。誰も作っているところを見ているわけではないんだからね・・・・・。
 だから、長年「古伊万里」のコレクションをやっていても、時には、間違うことがあるね。例えば「古伊万里ギャラリー225 伊万里銹釉染付窓抜鷺文大皿」(:このブログではこの大皿の紹介を省略します)なんだが、これなんか、現代作の物に特殊な塗料のようなものを塗って古色を出し、古い本物のように工作したのではないかと思うようになってきているよ。巧妙な工作を施されると判断を誤るね。もっとも、骨董では、そのような巧妙な工作も見抜く力も備えなければならないわけで、まだまだ修行が足りないと言われても仕方がないがね(><)

小壺: ところで、私は、「染付」となっていますが、「青磁染付」とはちがうんですか?

主人: そうなんだよね。お前には、そのこともあるんだよね。
 先程、「何か、ちょっと、訳の分からないものが登場してきたな」と言ったけど、実は、そのことも含めて言ったんだ。お前は、単なる染付ではなく、かなり青磁っぽい色をしているものね。「染付」というよりも「青磁染付」と言ってもいいくらいだものね。釉薬は、青磁のように分厚く、どっぷりと掛けられているしね。
 ただ、青磁は、素地に含まれる鉄分と釉薬に含まれる微粒な成分とが化学反応をおこした結果生まれるらしいので、素地は鉄分を含んだものが使われるから、焼き上がったものの素地は黒っぽくなることが多いんだよね。それで、よく、青磁では、「紫口鉄足」などと言われるんだ。古い青磁の特徴だね。
 でも、今では、鉄分を含まない白い素地に化学薬品を掛けて青磁を作ることが出来るようだね。その場合は、鮮やかな青磁色になるようだよ。それで、「紫口鉄足」かどうかは、古い青磁かどうかの判断の一つになるようだ。
 お前の場合は、素地は白っぽいが表面は鮮やかな青磁色ではないし、古さもあるから、最近になって化学薬品を使って作った青磁ではないことがわかるよね。それに、古い青磁の特徴の「紫口鉄足」でもないから、古い青磁でもないと言えると思うよ。以上、消去法から判断して、「青磁染付」ではなく、「染付」としたんだ。

小壺: でも、何故、青磁っぽいんでしょうか?

主人: それは、あまり良い材料を使っていないからだろうね。素地や釉薬には材質が悪かったので鉄分が含まれていたんだろう。その証拠に、所々に鉄分が浮き出ていて、飛び青磁みたいになっている所が見られるものね。
 また、丈夫な日用品を目的として作られたのか、少々乱雑に扱っても割れないように、素地も分厚く作られ、釉薬も分厚くどっぷりと掛けられているから、ちょっと見には青磁のように見えるんだろうね。

 

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