平御幸(Miyuki.Taira)の鳥瞰図

古代史において夥しい新事実を公開する平御幸(Miyuki.Taira)が、独自の視点を日常に向けたものを書いています。

平御幸のデッサン講座~第3回 遠近法

2012-06-21 09:54:31 | Weblog
 遠近法とは、いくつかある透視図法の総合的な呼称です。パースと言ったほうが馴染みがあるかもしれません。幾何形体は例外なく透視図法で正しくなければならず、お皿やティーカップなどの工業製品でも、その支配下にあります。

 従って、幾何形体を描かせてみれば、作者の工学的なセンスが露呈します。デッサンは、観察力における工学的な頭の働きと比例するのです。僕は小学校後半の愛読書が『自動車工学(おそらく)』でしたから、デッサンの勉強をするようになっても形で苦労したことはありません。

 僕が創りだした名言に、「作るものの立場で見ろ」というものがあります。工業製品でも何でも、自分が作る側で見ることで、観察力が何倍もアップするのです。どんなに複雑な工業製品でも、必ず設計図があり、その設計図を引いた技術者がいるのです。その技術者の苦労に比べれば、出来上がったものを観察して描くなど大したことではありません。

 透視図法については独自の勉強するしかなく、ここでは補助的なアドバイスに留めます。とは言っても、極めて大事なことですが。

 透視図法で大事なのは、比例関係や角度を測る方法です。デッサンの場合は、自転車のスポークを利用した測り棒を使いますが、これが正しく使える人は数%です。大半の人は、何を描くにも測り棒を床に垂直にして使います。

 しかし、この方法が有効なのは、モチーフが目の高さにあるときだけです。石膏の大半は目より高いところにあり、静物画の場合は目より下になります。この状態でも律儀に床に垂直にしている生徒は夥しいほど。これで天井にあるものを測らせたら、測り棒の直径しか見えません。

 測り棒の正しい使い方は、モチーフと目との間を結んだラインを直角に切ること。手首は固定したまま腕を伸ばし、肩の軸回転だけで測り棒を上下させます。また、同じ事は、構図を決める時に使われる、十字を描いたフレームにも当てはまります。このフレームを、先と同じように床に垂直にして静物を眺めている生徒は、構図の最初の段階で失敗しているのです。

 さて、遠近法には空気遠近法というものもあり、遠景をぼかすことで距離感が表現できます。予備校では、これを静物の花でも使い、遠くの花はぼかして、近くの花は克明に描くなどします。しかし、僕はこの技法に疑問を持ったので、独自の仮想逆パースを考案しました。

 逆パースとは、源氏物語絵巻などに代表される、日本独自の空間表現です。名前のように、遠くに行くほど広がるのです。西洋のパースは奥に行くほどが狭くなりますから、立体感を表現する利点とは別に、心理的に圧迫された感じが否めません。絵を観る人は、絵画の外から眺めるだけです。対して逆パースは、絵を眺める人は、自分も絵の中の空間に引き込まれるのです。だから心理的に自由な遊びが出てくるのです。

 この逆パースを工夫し、僕は遠くにあるものをぼかさず、極めて克明に描くことにしました。ただ、手前のものと差別しないと空間が感じられないので、僕は絶対的な位置関係という技法で対処しました。

 絶対的な位置関係とは、自分の目からの距離を感じさせる技法です。花が目から1mの位置にあれば、絵を見た人が同じ1mとして感じられる表現。口で言うのは簡単ですが、実際に描く場合には相当な力量が必要となります。この表現方法で遠くの花を描いた場合、ぼかさなくとも遠くにあることが感じられます。従って、絵を観る人が遠くの花を見る時は、手前の花よりも先にある空間に誘われるのです。逆パースと心理的に同じです。

 僕は、このような技法を誰にも話しませんでした。話して理解できるレベルの人は空気遠近法で満足していましたから。だから、僕の絵を見た時に何かが違うという感覚には陥ったと思います。

     エフライム工房 平御幸
コメント (2)
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