新年早々のアンプ修理。今回は1000円でゲットしたYAMAHA AX-590。『のだめカンタービレ』のオーディオはヤマハ提供でしたが、僕はプリアンプの修理以外に音を聴いたことはありませんでした。その理由は、ヤマハはトランジスタ派で、MOS-FETは一部の高級機に一度使っただけでした→MX-10000。MOS派の僕の食指は動きません。
しかし、昔のヤマハというと、V-FETを採用したB-1というパワーアンプで有名です。東北大学の西澤教授が発明したV-FETは、真空管の三極管特性に似た静特性を有し、オーディオ用として最適とまで言われました。欠点は壊れやすいことですが、それはV-FETの特殊な構造にあります。
普通のトランジスタやFETは、ゲートに信号が入るとドレインから増幅された電流が流れます。例えれば、ニダー君が門を叩くとニダニダニダと増幅する感じです。けれど、V-FETの場合は、ニダー君が門を叩かない時に最大電流が流れるのです。普通のアンプは、バイアス回路が切れるとパワートランジスタやFETは守られるのですが、V-FETの場合は逆に大電流で石もスピーカーも死ぬのです。守るためには、電流を供給するドレインに音質悪化の原因となるヒューズを入れるしかありません。
このような欠点からV-FETはメーカーから嫌われ、日立が開発したMOS-FETにオーディオ用FETの座を明け渡しました。ヤマハは、エレクトーンにも使っていたV-FETの採用をやめ、普通のトランジスタを多用する平凡なメーカーに堕落したのです。昔のヤマハ製エレクトーンを持っている人は、その石を調べてみるとよいでしょう。石が生きていれば高額で売れるかもしれません。
さて、AX-590ですが、49800円の帝王として君臨したソニーのTA-F222ESJ(MOS-FET)が引退し、その穴を埋めるように登場したアンプです。しかし、同じ値段でも物量の差はいかんともしがたく、普通のトランジスタアンプということもあって人気もイマイチでした。中を開けて調べてみると、作りは非常に真面目で、コストの多くを回路面に注いでいると分かります。ツマミがプラスチックなので、それがマイナス。
肝心の音ですが、ジャンクの理由だったノイズ発生源のリレーを交換して完動の状態で試聴。何だか、曇天の春の隅田川で三分咲きの桜を見ながら桜餅を食べているような音です。僕の愛用するMOS-FETアンプは、シャープで繊細で切れがよく、岩清水のような透明さと鮮烈さに喩えられます。それでいて芳醇な面も持っているので、よく冷えた純米吟醸酒かも。
これがトランジスタの限界かなと思ってバイアス電流を調べてみると、見事にゼロミリアンペア(222ESJは熱くなる250ミリアンペア)。要するに、小音量ではヒートシンクが冷たいままのB級増幅アンプなのです。この手のアンプは、パワーを入れてガンガン鳴らすと目覚めてきます。実際、音量を上げると曇天は薄曇りに改善。三分咲の桜は五分まで開き、桜餅は口の中で溶ける干菓子に変身。能率の低いミカエルセブンには調度良いでしょう。
このアンプが発売された96年頃は、社会党の左翼政権で日本が混乱していた時代です。オーディオメーカーも国内生産に見切りをつけ始め、生き残りを模索していた時代です。今も生き残っているケンウッドは、このアンプの10年近くも前に、パワーICを使ったスカスカのアンプを出しています→KA880SD。
ケンウッドは商売が上手く、ローコストでそこそこの製品を作ることに長けていました。しかし、マニアから見ると中身がなく、僕も何も買ったことはありません。10年前の62000円のアンプが、10年後の49800円のアンプに中身で負けているのですよ。1990年代の半ば、ソニーが採算を度外視してアンプに注いだ情熱。専門誌の評価ではナジェか低かったんですよね。ヤマハとパイオニアは頑張った方でした。
エフライム工房 平御幸
しかし、昔のヤマハというと、V-FETを採用したB-1というパワーアンプで有名です。東北大学の西澤教授が発明したV-FETは、真空管の三極管特性に似た静特性を有し、オーディオ用として最適とまで言われました。欠点は壊れやすいことですが、それはV-FETの特殊な構造にあります。
普通のトランジスタやFETは、ゲートに信号が入るとドレインから増幅された電流が流れます。例えれば、ニダー君が門を叩くとニダニダニダと増幅する感じです。けれど、V-FETの場合は、ニダー君が門を叩かない時に最大電流が流れるのです。普通のアンプは、バイアス回路が切れるとパワートランジスタやFETは守られるのですが、V-FETの場合は逆に大電流で石もスピーカーも死ぬのです。守るためには、電流を供給するドレインに音質悪化の原因となるヒューズを入れるしかありません。
このような欠点からV-FETはメーカーから嫌われ、日立が開発したMOS-FETにオーディオ用FETの座を明け渡しました。ヤマハは、エレクトーンにも使っていたV-FETの採用をやめ、普通のトランジスタを多用する平凡なメーカーに堕落したのです。昔のヤマハ製エレクトーンを持っている人は、その石を調べてみるとよいでしょう。石が生きていれば高額で売れるかもしれません。
さて、AX-590ですが、49800円の帝王として君臨したソニーのTA-F222ESJ(MOS-FET)が引退し、その穴を埋めるように登場したアンプです。しかし、同じ値段でも物量の差はいかんともしがたく、普通のトランジスタアンプということもあって人気もイマイチでした。中を開けて調べてみると、作りは非常に真面目で、コストの多くを回路面に注いでいると分かります。ツマミがプラスチックなので、それがマイナス。
肝心の音ですが、ジャンクの理由だったノイズ発生源のリレーを交換して完動の状態で試聴。何だか、曇天の春の隅田川で三分咲きの桜を見ながら桜餅を食べているような音です。僕の愛用するMOS-FETアンプは、シャープで繊細で切れがよく、岩清水のような透明さと鮮烈さに喩えられます。それでいて芳醇な面も持っているので、よく冷えた純米吟醸酒かも。
これがトランジスタの限界かなと思ってバイアス電流を調べてみると、見事にゼロミリアンペア(222ESJは熱くなる250ミリアンペア)。要するに、小音量ではヒートシンクが冷たいままのB級増幅アンプなのです。この手のアンプは、パワーを入れてガンガン鳴らすと目覚めてきます。実際、音量を上げると曇天は薄曇りに改善。三分咲の桜は五分まで開き、桜餅は口の中で溶ける干菓子に変身。能率の低いミカエルセブンには調度良いでしょう。
このアンプが発売された96年頃は、社会党の左翼政権で日本が混乱していた時代です。オーディオメーカーも国内生産に見切りをつけ始め、生き残りを模索していた時代です。今も生き残っているケンウッドは、このアンプの10年近くも前に、パワーICを使ったスカスカのアンプを出しています→KA880SD。
ケンウッドは商売が上手く、ローコストでそこそこの製品を作ることに長けていました。しかし、マニアから見ると中身がなく、僕も何も買ったことはありません。10年前の62000円のアンプが、10年後の49800円のアンプに中身で負けているのですよ。1990年代の半ば、ソニーが採算を度外視してアンプに注いだ情熱。専門誌の評価ではナジェか低かったんですよね。ヤマハとパイオニアは頑張った方でした。
エフライム工房 平御幸
とても面白くて的確ですね。
今後使わせてくださいww
音量を帰ると化けるアンプもあるのですね。
うちのもかわるかなあ?
ほとんどA級領域で聴いているはずニダね