元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

メンタルヘルスマネジメントとは?(その12)<過重労働による自殺の責任>

2012-03-15 07:22:13 | 社会保険労務士
   「安全配慮義務」による責任!!<「自殺対策強調月間」に思う>

 3月は、例年、自殺者数のもっとも多い月となっており、「自殺対策強化月間」になっています。今、宮崎県県立図書館のフロアーにて、コーナーを設けてゲートキーパーのビデオ放映とパネル展示等を行っています。自殺者は、1998年以来、ずっと3万人を超え、昨年でも、3万513人で、3万人超が連続で14年になっています。「自殺実態白書」によると、自殺者の理由では、平均で4つ以上あるという統計が出ており、その理由は、複雑に絡み合って1つの要因だけではないこととになりますが、裁判になると、その理由の一つに「仕事」があると、より企業側の責任が問われる可能性があることが指摘されています。

 まず、企業側の責任がある、なしに関わらず、法的に厳格なことは抜きに、簡単にいえば、その自殺が業務上に関連するものが原因ならば、労災保険法に基づいた保険給付として、遺族に遺族補償年金が支払われることになります。ただし、労働基準監督署の認定が必要になります。どんな場合かというと、例えば、長時間労働により、うつ状態になり、自殺した場合などです。私が直接かかわったものではありませんが、こういった案件に関係したことがあることからいえば、そんなに稀なケースではなく、どこでも起こり得る案件だといえます。

 労災の遺族補償年金額は、平均賃金を基礎にその一定率を掛けた額にとどまるため、その死亡した従業員の将来稼ぐであろう生涯賃金(「逸失利益」という)には及ばないので、労災が認められれば、企業に過失が認められることが前提にはなりますが、実務的には、従業員側から、後述の「安全配慮義務」違反に基ずく損害賠償請求が出されることが多くなることになります。その場合には、「逸失利益」に基づく多額の企業の負担が求められることになります。平成12年の最高裁判所の「電通事件」では、過重労働でうつ病になり、自殺に追い込まれたとして、1億2600万円の損害賠償額の合意に至りました。

 このように、仕事が原因の自殺の場合は、企業に多大な負担をしいることになり、企業側としては、そのリスク管理に努めなければならないことになります。さらに、このため、企業自身はもちろんのこと、管理監督者は、部下の管理をしている以上、裁判の相手方には、管理監督者も対象になるということを踏まえていなければなりません。

 安全配慮義務は「業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して従業員の心身の健康を損なうことがないようの注意すること」であり、常日頃から、その従業員に接し、その健康状態を把握し、かつ、作業内容や作業量を調整しうる立場にある管理監督者の果たす役割は、重要であり、その責任を果たさなかった場合には、その責任を問われる立場にあるということなのでしょう。
 

 参考 メンタルヘルスマネジメント2種テキスト(大阪商議所)
    宮崎県立図書館掲示の「自殺対策強調月間」のパネル等


   #####<いつも読んでいただきありがとうございます。>####




  
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