25時間目  日々を哲学する

著者 本木周一 小説、詩、音楽 映画、ドラマ、経済、日々を哲学する

高倉健 あ・うん

2014年12月11日 | 映画
高倉健の追悼番組で「あ・うん」を見た。涙がでてきてしょうがなかった。「遥かなる山の呼び声」は追われる身だったし、「幸せの黄色いハンカチ」は刑務所から出所してきた男であった。「あ・うん」の役は軍需景気で浮き沈みはあるものの金回りのよい会社社長役である。坂東英二が演ずる男とは戦友で、とても気が合う。この話のミソは坂東英二役の男が相当に鈍感だということである。鈍感でなければ20年も付き合えないはずだ。高倉健役の門倉は坂東英二の奥さん(富司純子)のことが内心で好きである。そしてあるときにこれ以上彼らの家を訪れるととりかえしのつかないことになってしまうと嘘の演技をして友人をけなし、絶交を言い渡される。
 
 見所がいくつかある。それは降旗康男監督はどのカットで富司純子と高倉健が魅力的に見えるかを知り尽くしていることである。高倉健のオールバックのヘアスタイルもよく似合った。帽子もよ似合う。富司純子の演技のうまさ、綺麗さにも驚かされた。
 次に、スリの三木のり平がでてくる。屋台で高倉健の告白話を聞いているときの演技のうまさは素晴らしいものだ。これは一見に値する。
 次に脚本の良さがある、原作の向田邦子でしか書けないと思わせるセリフがでてくる。「あたし、お酒を飲むと足のウラが痒くなるんです」と言って、それでもすすまれたコップ酒を飲むところがある。ここでは一杯いただいたほうがいいんだ、というのが「脚のウラが痒くなる」ということで、その気持ちが何倍にもなって伝わってくる。そんなセリフが随所にあらわれる。

 昭和12年。いよいよ中国に進出していき、軍国主義が色濃くなる頃である。富田靖子が18歳の役ででてくる。思いを寄せる帝大の学生は軍隊に招集され、おそらく最前線に行かされるだろう。

 僕の高倉健の作品のベスト5はこのようになる。

  1位 遥かなる山の呼び声
  2位 あ・うん
  3位 幸せの黄色いハンカチ
  4位 君よ、憤怒の河を渉れ
  5位 単騎、千里を走る