25時間目  日々を哲学する

著者 本木周一 小説、詩、音楽 映画、ドラマ、経済、日々を哲学する

探索はおもしろい

2014年12月22日 | 文学 思想
 朝起きると、ヨーグルトやコーヒーを飲みながらシューベルトの「ピアノ五重奏 鱒」を聴くことにしている。ウィーンフィルハーモニーの楽団員の演奏である。すると、澄みきった水の中で鱒が尾びれをくねらせて泳ぐシーンが浮かび、それを見るもののこころの静寂さやきらめきを感じ取ることができる。
 1曲を聴くのは1冊のよい小説を読んだり、詩を読む心持ちがする。それに何度でも聴くことができる。
 夜になると、ブラームスとかモーツアルトとかシューマンを聴く。テレビをつけっぱなしにするのをこの歳にしてやめた。寝る前に本を読む。そしていよいよ寝ようとするときにベートーベンの弦楽四重奏の各作品やショパンやリストを聞きながら眠る。
 今、これが一番気持ちがいい。
 クラシック音楽には知識が乏しいので、そんな解説書でも読んでみようと思ったが、やめた。自分で聴いて、自分で演奏家や指揮者の聴き比べをして、自分で考えたりしようと思ったのだ。

 極上の短編小説を紹介したい。村上春樹の「回転木馬のデッドヒート」にある「レーダーホーゼン」という短編と「レキシントンの幽霊」にある「トニー滝谷」である。「レーダーホーゼン」は夫から頼まれた「ドイツの半ズボン」のことで、苦労して探した挙句、夫に「離婚したい」と言って家に戻らない、という話である。「トニー滝谷」はようやくに愛する人ができ、その女もとても愛するのだが、服を見たら買ってしまう、この衝動だけはおさえられない、という話である。
 人間が、その脳やこころが突如として変わってしまう、奇妙にリアルに思える作品である。村上春樹長編小説特有の味の悪さやくどさ、パターンはない。

 僕は村上春樹作品は短編が優れていると考えている。これなら音楽のようになんどでも読んでしまう感じするらある。長編は「1Q84」が最高傑作である。そのヒントは「カンガルー日和」という短編集の「4月のある晴れた朝に100%の女の子に出会うことについて」にある。

 なにか知らないけれど、探索は面白い。