激しい情熱のある人がいる。冷たい情熱をもった人もいる。情熱そのものがない人もいる。限りなく優しい人がいる。限りなく意地悪い人もいる。どんよりと曇った空をしたような人もいる。青空のような爽やかな人もいる。堅い意思の塊のような人もいる。愚かな人もいる。平気で嘘をつく人もいる。人にちゃらちゃらとおべっかを使う人もいる。いつも疑ってかかる人もいる。話の裏を読もうとする人もいる。善人ぶった悪人もいる。悪人ぶった善人もいる。ぼんやりとした人がいる。楽天的にしか物事を考えられない人もいる。十年先を考えない人もいる。ネガティブにしか考えられない人もいる。黙りこくった人がいる。明るくおしゃべりする人がいる。噂話が大好きな人がいる。ひとりでは寂しい人がいる。性欲の強い人がいる。悪口をいう人がいる。他人を褒めることを惜しまない人がいる。
人はいろいろだ。こっちとあっち。その間には見えない境界線がある。その線はどこにでもある。君と僕の間に。スナックのカウンターのように、あっちとこっち。それが「側」ともい言うし、「立場」とも言う。異界と異界が綿々とつながってこの世はできている。
さらにもっと複雑なのは、個人の世界は身体だけであるが、この身体の中の脳というところの入れ子のようになって異界が存在している。