25時間目  日々を哲学する

著者 本木周一 小説、詩、音楽 映画、ドラマ、経済、日々を哲学する

ぼくの同級生の妹

2018年04月11日 | 日記
 中学時代に仲良く遊んでいた同級生には7つ下の妹がいた。この同級生の親は「クロ猫ドン」というバーをやっていた。中学時代、その同級生の男親に、2回スキーに連れていってもらった思い出がある。7つ下の娘はスキーにいくことはなかったが、日頃同級生の部屋には大きなステレオがあり、歌謡曲を聞きながら、ゴロゴロとして、たぶんふざけたり、たわいのない話をしていたときに妹が入ってくるのだった。その時の印象は明るく、陽気で、物を見る大きな目の焦点が合わないが、そこが可愛いらしかった。
 人に誘われてスナックに入ると、その娘がママさんとなって、カウンターの内側にいた。あら、とぼくの名前もおぼえていてくれた。38歳くらいに見える。上は天然のパーマらしく西洋人形のようにしていた。
 誘ってくれた人は「この方は全国尾鷲節コンクールの優勝者やで」と聞いてびっくりした。話をしていると、小さい頃から三味線、舞踊などの習い事をやってきたらしい。カラオケで尾鷲節やら伊勢音頭などを聞かせてもらった。彼女は人が変わるようにその民謡の世界に入って行った。こんな上手い歌手の歌はめったに聞けるもんじゃない、と思ったのだった。
 ぼくは歌謡曲しか歌えないが、客が歌っている時には彼女は身体をスイングさせて聞く。ボーッとしているわけではない。なんだか体が自然とswingしているようだ。それがぎこちなくするのではない。日本人はアメリカやブラジルやジャマイカの人のように体を揺らすことはめったにないから、この女性はどこで身に付けてたにだろう、と思う。そしてこちら側も体が揺れてくるのだ。
 娘には芸事をとあの親は思ったのだろう。人生はいろいろで、個人の歴史もなだらかな線ではない。あの頃からどんな人生をたどったのかは知らない。
 客との距離の取り方もよいものであった。上手言うわけでもなく、慣れたかのように笑顔で客に対応している。
 久しぶりに夜の世界で宝物のようなものを発見したと思った。しかも山崎も、竹鶴も、オールドパーも置いてあった。
 ぼくの同級生の兄貴も元気である、ということだった。