25時間目  日々を哲学する

著者 本木周一 小説、詩、音楽 映画、ドラマ、経済、日々を哲学する

中井貴一のよさ

2018年04月21日 | 映画
 中井貴一という役者はたいしたもんだ、とまた時代劇映画「柘榴坂の仇討ち」を見て思った。桜田騒動で主君を守れなかった主人公は、襲撃をかけた水戸藩士ら襲撃者の首を取ってこいという命令で、十三年めにとうとう最後の男を見つけることになる。仇討ち禁止令がでる。世の中は大きく変わっている。妻が飯屋や縫い仕事で、彼の生活を支えている。
 降りしきる雪の中でも花を咲かせる風景が出てくるしみじみとした映画であった。幾つかの名場面があった。
 中井貴一の武士の所作、表情の変化、歩き方と姿勢、納得のいく名演技だった。この平成の世には時代劇を演じられる俳優はこの人しかいないのではないか。
中井貴一は演技分野も幅が広い。コメディっぽいものを軽妙にこなすこともできれば、悪役を演じることもできる。とうに父親の佐田啓二を超えている。
 「サラメシ」の明るいナレーションもよい。高慢ちき風でもない。やがては老人役もするのだろう。岸恵子や草笛光子が超年齢となって年齢不詳の女優になったように、中井貴一もそうなるのではないかと思うくらい、年齢が止まっているような感がある。
 「愛しのエリー」が流れていた「不揃いの林檎たち」から、テレビ、映画と間断なく登場する。
 
 思えば、時代劇が映画公開されるのは珍しく、制作されて上演されるものは力作ばかりである。
「雨上がる」くらいの時期から、「山桜」「武士の一分」「花のあと」「川辺のほとり」「義士壬生伝」「秘伝 鳥刺し」「殿、利息でござる」くらいしか覚えていないがどれも秀作で心打たれるものばかりだった。