エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

南天の赤き実

2010年01月06日 | 日記
難を転ずる!とされる南天の赤い実が一つずつ落ちていく。

ぼくたちは、雪うさぎの目にこの南天の実を使ったものだった。
雪が降ると必ず作ったものは「雪だるま」だったけれど、雪うさぎも作ったものだった。
とりわけ雪が少なかった時などは、雪うさぎだけでも作った。
今は亡き母との楽しい共同作業だった。





      南天の赤き実


   母の温かい手が動くと
   冷たい雪が
   うさぎになっていく

   不思議な気持ちで
   ぼくはそのありさまを
   じっと見つめていた
   その幼なかかった日の思い出が
   南天の赤き実は
   想起させてくれるのだった

   闘病の末に逝った母の冬の思い出は
   雪うさぎだ

   うさぎに命を吹き込むように
   母の温かい手は
   南天の赤き実を
   スッと眼の位置に置いた

   うさぎに命が吹き込まれた瞬間
   母は雪うさぎの顔を
   ぼくと妹に向けるのだった

   南天の赤き実は
   母を
   僕たちから奪い
   難を持ち込んだ

   ぼくはいま
   南天の赤き実に
   こころを平らかにして臨むのだ

   南天の赤き実よ
   しかして
   ぼくに平穏を与えたまえ

   しかして
   明日の美しき散華を与えよ
   と




行きつけのカフェである。



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白いハイビスカスに恋をした

2010年01月06日 | 旅行
白いハイビスカスはこのウッド・デッキに咲いているのである。
花弁が白いのは当然だけれど、蕊までくっきりと白いのだ。

ぼくは思わず膝を折り写真を撮った。
撮って詩を捧げたのである。





      白いハイビスカス


   白いハイビスカスが密やかに咲いている
   夜目にも鮮やかな花よ
   ああ
   嘆息するしかない心揺さぶられる
   白いハイビスカス
   ぼくはきみのその白き花弁の透明な感性に
   魅せられ
   やがて虜となってしまったのだった
   ぼくを捉えて離さない
   きみの妖しき気配と吐息よ

   白いハイビスカスの両頬を
   そっとおし包み
   おさえ
   引き寄せてしまいたい
   引き寄せて
   ぼくは
   静かに深くきみに口づけるのだ
   きみの甘やかな熱い唇を
   甘噛みして
   きみのこれからの航跡を奪うのだ

   ああ
   ぼくは
   白きハイビスカスに恋をしてしまった
   その結果がどう出ようとも
   ぼくは怯(ひる)まない
   怖(お)じ気づかない
   そう
   白きハイビスカスとの
   新たな生命を育むための時間の
   その営みにこそ
   ぼくはエールを交換するのだ

   ああ
   きみの豊かな抱擁に酔い痴れてしまおう
   全てを投げうって
   束(つか)の間かもしれない
   痺れるような忘我を
   あらゆる心象風景の一枚一枚の片隅に
   刻印するのだ
   それはめくり絵のように
   ぼくの脳裏を支配するに違いないのだ

   ぼくは回帰する
   還っていく
   あなたは何億光年の彼方から回帰せよ
   ブラックホールから回帰して
   そしてあなたは
   女になっていくのだ

   ぼくは瞳孔が開くほど眩しく
   眼を瞑(つむ)ってしまう
   瞑想(めいそう)ではない
   物理的な行為であるのだ
   あなたの眩(まぶ)しい肢体に憧れてしまい
   あなたの甘やかな吐息と
   熱い唇よ
   その透き通った肌よ
   男を惑わすその白き容姿を
   どうしたら隠せるのだろう

   ああ
   ぼくをそうまでしていたぶるのはやめよ
   新たな世紀が始まるまでの
   何億光年という刹那(せつな)





このハイビスカスの乙女のような可憐さに膝を折りたい。
その、たおやかな肢体を抱きしめ、汗ばんだ額に口づける許しを請いたいものである。





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