難を転ずる!とされる南天の赤い実が一つずつ落ちていく。
ぼくたちは、雪うさぎの目にこの南天の実を使ったものだった。
雪が降ると必ず作ったものは「雪だるま」だったけれど、雪うさぎも作ったものだった。
とりわけ雪が少なかった時などは、雪うさぎだけでも作った。
今は亡き母との楽しい共同作業だった。

南天の赤き実
母の温かい手が動くと
冷たい雪が
うさぎになっていく
不思議な気持ちで
ぼくはそのありさまを
じっと見つめていた
その幼なかかった日の思い出が
南天の赤き実は
想起させてくれるのだった
闘病の末に逝った母の冬の思い出は
雪うさぎだ
うさぎに命を吹き込むように
母の温かい手は
南天の赤き実を
スッと眼の位置に置いた
うさぎに命が吹き込まれた瞬間
母は雪うさぎの顔を
ぼくと妹に向けるのだった
南天の赤き実は
母を
僕たちから奪い
難を持ち込んだ
ぼくはいま
南天の赤き実に
こころを平らかにして臨むのだ
南天の赤き実よ
しかして
ぼくに平穏を与えたまえ
しかして
明日の美しき散華を与えよ
と

行きつけのカフェである。

にほんブログ村
荒野人
ぼくたちは、雪うさぎの目にこの南天の実を使ったものだった。
雪が降ると必ず作ったものは「雪だるま」だったけれど、雪うさぎも作ったものだった。
とりわけ雪が少なかった時などは、雪うさぎだけでも作った。
今は亡き母との楽しい共同作業だった。

南天の赤き実
母の温かい手が動くと
冷たい雪が
うさぎになっていく
不思議な気持ちで
ぼくはそのありさまを
じっと見つめていた
その幼なかかった日の思い出が
南天の赤き実は
想起させてくれるのだった
闘病の末に逝った母の冬の思い出は
雪うさぎだ
うさぎに命を吹き込むように
母の温かい手は
南天の赤き実を
スッと眼の位置に置いた
うさぎに命が吹き込まれた瞬間
母は雪うさぎの顔を
ぼくと妹に向けるのだった
南天の赤き実は
母を
僕たちから奪い
難を持ち込んだ
ぼくはいま
南天の赤き実に
こころを平らかにして臨むのだ
南天の赤き実よ
しかして
ぼくに平穏を与えたまえ
しかして
明日の美しき散華を与えよ
と

行きつけのカフェである。

にほんブログ村
荒野人