苔の世界には、もう春が来ている。
鮮やかな青の世界、ミクロの世界である。
冬枯れの季節だけれど、やはり春が立ったのだと思い知らされるのだ。
苔が大好きな、ぼくも大好きなのだけれど・・・ある女性がいる。
その女は、開きかけた梅のようである。
匂い立つフェロモンが鼻孔を刺激する。
胸が痛むほどの、存在である。
雨上がりに、苔の様態を観察したのであった。
苔が濡れないように、護ってあげられない。
それは哀しいけれど、雨に濡れる・・・それが苔の宿命なのだ。
「冬枯れやものみな生きる石の上」
苔の上に野鳩が止まった。
啼くでもなく、ひたすらに苔の感触を楽しんでいる。
ビロードの感触が、懐かしいのだ。
母のお洒落着だったかもしれない。
荒 野人
鮮やかな青の世界、ミクロの世界である。
冬枯れの季節だけれど、やはり春が立ったのだと思い知らされるのだ。
苔が大好きな、ぼくも大好きなのだけれど・・・ある女性がいる。
その女は、開きかけた梅のようである。
匂い立つフェロモンが鼻孔を刺激する。
胸が痛むほどの、存在である。
雨上がりに、苔の様態を観察したのであった。
苔が濡れないように、護ってあげられない。
それは哀しいけれど、雨に濡れる・・・それが苔の宿命なのだ。
「冬枯れやものみな生きる石の上」
苔の上に野鳩が止まった。
啼くでもなく、ひたすらに苔の感触を楽しんでいる。
ビロードの感触が、懐かしいのだ。
母のお洒落着だったかもしれない。
荒 野人