エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

三椏(みつまた)

2015年02月19日 | ポエム
三椏は、お札に入っている材料となる。
三椏の樹皮が、である。

三椏は、木の枝分かれの部位が冷害無く三つに別れる事から「ミツマタ」と言われるのである。
花が可愛いから、と云うのでいまでは里で目にする。
観用植物になっているのだ。



けれど、本来は山の上や斜面で良く育つ植物である。
寒暖の差が大きいほど、三椏の樹皮は商品価値が上がる。
良く締まった、肌理細かな樹皮が良い和紙を担保する。







「三椏の伸びのびとする枝分かれ」







皮を剥かれた枝は、生け花の素材となる。
その白さと枝分かれが、造形美を演出するのである。

ぼくたちは、和紙と云うと楮(こうぞ)を連想する。
その樹皮の繊維が、和紙らしさを醸し出すからである。

三椏は、樹皮の繊維は見えない。
つるつるとした紙質の感じを与える。
繊維が見えない分、紙としては強いのだ。

日本のお札に、三椏が入っているのは本当だけれど、含有量としては微小である。
現在の技術で、三椏が殆ど入っていなくても充分に和紙の風合いを出せるのである。

余談だけれど「模造紙」は、何の模造でしょうか?
お札を作っている、かつては印刷局だった局の紙の「模造紙」なのである。




      荒 野人