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相棒CBR1000RR (SC59)でのツーリングや色々
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有名IPを使うライセンシーアパレルメーカーの末路。

2018年10月06日 | 繊維業界の転職
最近は繊維業界の就活(転職)に勤しむ管理人の思うことを言いたい放題に書いていくスタイル。最近このブログの方向性がよく分からなくなってきた。
多分、ヘッドフォン、ライカ、ニコンFM2のキーワードでここに辿り着く方が多いと思うけど、トップページはそういった方々の期待を全力で裏切っていく感じだと思われる。カテゴリーから見て頂ければ幸いだと思うけど、最近は各カテゴリが増えることもなく。。なんとかしたい。
とは言っても、このブログもいつのまにか開設から1700日を超えている。たしか総PV数は35万程だったと思う。ほとんどほったらかしだが、Amazonのアフィリエイト報酬は累計約1万円である。
もう少し人の役に立てるようなサイトにしたい。

そういえば就活をしていると、前に働いた会社の取引先の求人が出てくることがある。
先日とある求人サイトで小さいアパレルOEMメーカーの会社が求人を出していた。なんか聞き覚えがあるような気がして調べたら、若い子向けのメンズアパレルにいた時にお付き合いのあった会社、のOBが立ち上げた会社だった。

お付き合いのあった会社は業界でも特殊な会社。アメリカのウォルトディズニー社とライセンス契約を結んでいた。アパレルメーカーとサブライセンス契約でキャラクター商品をOEM生産するという業務形態。ライセンスの代理店とでも言うのだろうか。
僕も詳しくは知らないが、若い子向けのカジュアルなんかでは、シェアが相当高かったんじゃないだろうか。多分、90年代にチビTEEが流行った辺りから00年代のディズニーTシャツは、全てその会社の社名が入っていると思う。
会社自体は20代〜30代が20人前後の小さいメーカーだった。社長さんは40代後半くらいだっただろうか。

前にいた会社でも、やはりそのメーカーでディズニーTシャツを作った。
デザイナーが自社のブランドに合わせてオリジナルでミッキー の絵を描く。それを代理店に渡すと、アメリカまで送り、ウォルトディズニー社?のイラストレーターが赤ペンを入れる。目の位置はこうやってバランスを取るようにとか、この構図だと足のサイズが小さいとか、ポージングのバランス修正だとか。かなり厳しい。
修正して再チェックを3回くらい繰り返したら、ようやくOKが出る。
その後、イラストをスキャナーで読み込み、イラストレーターでパス化していく。手書きの線の強弱は、イラレの線では表現出来ない為、全て塗りになるよう処理する。これも地味に時間がかかる。デザイナーは2週間くらいずっとやってたような。
その後は自社生産してたかな。僕が中国にデータ送って発注。サンプルチェックも代理店に提出した。量産は代理店とディズニー社の社名入り下げ札と織りネームを支給してもらう。
輸入する時に、とある問題が出た。
税関に輸入申告する乙仲に、評価額について突っ込まれた。検査が入った時に、ディズニーという他社のIPを使っていることが分かる。それは代理店を示す下げ札が付いてるので、ライセンス使用は問題無い。しかし、輸出インボイスの製品申告価格に、ロイヤリティーがいくら含まれているのか、税関に突っ込まれることがあるから、提出してほしいと言われた。
これには代理店が難色を示した。
代理店が通常輸入依頼している乙仲は、そんなこと聞かないと言う。
僕がやり取りしていた乙仲は聞いてくる。問題になりますよと。
代理店は、ディズニーと契約しているロイヤリティー金額については、こちらに開示していないのだ。あくまで代理店が自社のマージンを入れて、各メーカーから回収している為である。
現場の僕からしたら、そもそも社長同士で取り決めた代理店のロイヤリティーすら知らない。

結局、輸入の細かいことなど知る筈も無い社長は上手くやれって感じだし、上司にも促されて僕が直接代理店の上の人と話したけど、代理店が使ってる乙仲を使ってくれの一点張り。
ラチがあかないので、急遽その乙仲に依頼し直した。代理店が言うように、書類だけでスラスラと進み、輸入完了である。
考えてみれば、その乙仲は代理店とディズニーのロイヤリティーを把握していた筈だ。だから話が早かったんだろう。

当時の会社の社長からすると、代理店の社長はかなりの大御所らしく、来社する度になんか緊張した。どうも昔は取引するのもかなりハードルが高いとかなんとか、、
やはり90年代に相当儲かったらしい。渋谷109のブーム前からフライングで儲かり続けていたのだと思われる。ディズニーキャラクターが入るアパレルをやってないブランドを探す方が難しかった。
何かで聞いたのだけど、その会社の飲み会のビンゴ景品?ベンツのキーが5個並んだとかなんとか、、。
それが、2010年を超えたくらいだろうか、頻繁に代理店の社長が来社するようになった。サブライセンスもその頃。新年会も合同でやった。部長さんが戦国武将の手下みたいに付き従ってたのが印象的だった。

それからしばらくして、代理店が破産、廃業していたことが分かった。
元代理店の社長は奥さんの出身地、ASEANの何処へ。それでもたまに来社していた。車はかつてのベンツから日産NOTEに。
元社長は社長に、滞在してる国で雑貨をOEM生産しないかと営業をかけていた。
商魂たくましい人だ。
最初はレザーバッグ4型くらい、次はサンダルと帽子?、最後もサンダル。
僕はこの対ASEAN取引の輸入手配をやった。
ASEANの国際的な取り決めで、輸入関税がゼロ、または軽減されるのである。
元社長は細かいやり取りをやらないので、現地と英語メールのやり取りである。特恵関税の申請に必要な原産地証明書の原本を送れとか、BLをメールしろとか、辞書引きながら色々やり取りした。

ASEAN生産で一つ大失敗した。
超大手小売の企画部?に社長の専門学校時代の先輩がいるらしく、ODMすることになった。
メンズのサンダルである。
中国の有り生地をありったけ集めて、製品サンプル持参して商談、決まった。
サンプルチェックも特に問題無く、自社販売分も含めて発注。2000足くらいだっただろうか。
中国の主要協力メーカーから中国有り生地をDHLでフィリピンへ送り込む3国間貿易。コストの試算を社長に提出したり、やたら面倒だった記憶がある。
生産が上がって、納前を取り寄せてチェック、問題無し、、と思ったら、サイズがおかしい。
全サイズ、1サイズ上のサイズで上がっている。
理由は同時に生産した自社販売分だ。
ODM分は自社分と比べて、1サイズ小さい指示だったのが原因だった。指示書を全部見返したが、明確な記載が無い、どうも上司が口頭で元社長に説明するよう頼んだらしい。
元社長はすっとぼけて、え、そうだった?みたいな反応。終わった。
僕は元から客先には出なかった上、サンプルチェックもやってないから、蚊帳の外から覗いてるスタイル。
社長と上司で先方に謝りに行った。
帰ってきたら、見たことないくらい社長の目線が下がり狼狽している。めっちゃくちゃ怒られたわ、、、と一言。すいません、その後笑いが止まりませんでしたわ笑。
結局、サイズ表記の付け直しと、最低限可能な作り直し対応。中国の有り生地なので、生地が無いものは作れない。その確認とコストの再計算は僕の仕事である。超絶面倒だった。何回も予想生産数から箱詰め量、箱数、送料、関税額まで含めて計算した。
ちなみにその客先会社とは、前職の百貨店向け製品でもODMがあった。全然ブランド違うけど。しかし減産には厳しかった。作り直しやペナルティも経験した。
多分、僕が知らされてないかなりのペナルティがあったと思われる。

話がそれたけども、そんなサブライセンス製品の取引をしていた元代理店の、生産管理と部長が立ち上げた会社の求人だった。
ASEAN生産やり始めには既に起業して、元社長経由で雑貨を作っていた。

しかしディズニーのライセンスで儲けていた会社がいきなり破産したのは何が理由だったのか、仮説しか出ない。
1 本国からライセンス契約を打ち切られた。
2 競合他社に客先を取られた。
3 需要が少なくなった。

僕は、2と3の可能性が高いと思われる。
2010年代になって、普通な洋服が流行り始め、渋谷109系は次々に廃業していった。ディズニーのキャラクターがプリントされていても、もはや珍しくもなんともなく、むしろ無地が欲しい客が増えた。主要な雑誌も廃刊した。少ないマスを競合に取られたのかもしれない。そしてロイヤリティー額のノルマがあったのかもしれない。

僕がいたメンズ109のブランドメーカーも一部メーカーへの支払いが出来ないまま2017年に廃業、社長は夜逃げしたと聞いている。億単位の銀行借入金は払ったのか不明。
僕は先に2016年に退職していた。

一つの求人記事からなんか色々と思い出した次第である。