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相棒CBR1000RR (SC59)でのツーリングや色々
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アパレルの貿易関連業務をかじった経験について。

2018年10月28日 | 繊維業界の転職
アパレル業界では基本的に海外生産である。
海外から製品を輸出して日本で輸入しなければならない。その貿易をハンドリングする人間、輸入手続きをする乙仲が必ず必要になる。
僕が関わった初めての貿易関連業務は、若い子向けのメンズカジュアルをやっていた時である。

当時メインで多くの型数を発注していた工場が有った。ブランド創業から付き合いのある公司で、韓国人の総経理がいた。その総経理は40代の男性で、元々は韓国で日本向けに製品を輸出する実姉の仕事を手伝っていた。韓国には製品市場という場所があり、世界各国からバイヤーが訪れて買い付けをする。SKU5枚ずつ、合計20枚とか超小ロットで買える。値段は詳しくないが、カットソーなら中国で同等の物を作るより1割-2割高くらいの感覚だったと記憶している。一から作る場合は必ず最低ロットとして在庫生地を使ったとしても100〜300枚は作らないといけない為、多少割高でも現地買い付けにアドバンテージが有った。
スタイル、量が多くなる場合は、韓国からEMSやDHLで日本に送ってもらう。
中国の総経理は、物流会社上がりで運送に詳しい。家族ぐるみでそんな仕事をやっていた。
しかし、日本の顧客と付き合いが長くなると、一から作ってスケールメリットを活かしたいという話になった。韓国市場の製品は中国で安く生産して在庫している。韓国でも作れるが、人件費の面から中国の方が割安だった。そこで中国で公司を作り、縫製工場と取り引きを始めたのが始まりだった。

その公司の輸出は必ずAIRだった。もちろんSHIPの方が安くなるが、リードタイムが全然異なる。AIRなら夕方出荷→深夜にフライト→▲→午前に佐川が集荷→夕方か翌朝到着。
翌日か、翌々日には客先であるこちらの事務所まで到着する。
SHIPの場合、海上だけで4日くらいかかり、到着まで1週間はかかる。さらに乙仲とのやり取り、輸入経費はこちら持ちである。
店頭の売れを見て1ヶ月で製品を作るような流れで物流に1週間もかけられない状況だった。

▲の部分で、中国か韓国系の会社を挟んでおり、輸出した製品価格をアンダーバリューして税関を通していたと思われる。実際は$10.00の単価を$2.00にするとか。または、安くLCLで相乗り出来るコンテナ手配が出来たとか。。裏技を使っていたことは明らかで、はっきりしない。
本来日本に輸入する時に払う関税は、日本側の負担である。しかし、1社かませることで、税金やチャージの支払いを全て中国側の操作で完結させてからデリバリー。こちらはドアツードアで非常に簡単だ。窓口経由で色々話たが、それより安く出来る運送経路は無かった。

ある日、社長が古巣で付き合いのあったメーカー社長がやってきた。そのメーカーの紹介で古巣が連れ立って使っていた安い中国メーカーの話が出る。
メーカー社長は中国で作ったデニム製品を見て、なんぼや?と聞く。¥3,000くらいですねと答える。こんなん$19.00か20.00で出来るで?と言う社長。。笑。$1.00が¥100以下の頃である。ほんとかな?と。
しばらくして安い中国メーカーとの取り引きを始めた。社長と先輩が中国に行って発注して帰ってきた。無地Tシャツで$6.00代、デニムは$15.00。やはりとんでもなく安かった。
インボイス上は他メーカーの半額である。

しばらくすると、もじこもん?ってところから電話がかかってきた。御社の名前が入った貨物が有りますと。
素人丸出しなのだが、企画部内の誰一人どこから電話がかかってきたのかすら分からなかった。
調べると、北九州の下関にある門司港の物流関係の会社だと分かった。そして、例の安いメーカーが出荷したと言うので、その荷物じゃないかと。
20代半ばのメンツが集まって、ホワイトボードに安いメーカーはこんな経路で出荷して船で運ばれたんじゃないかと、話し合った。

メーカーは工場に行って、現地フォワーダーに連絡、集荷して港まで出荷

フォワーダーが適当な船会社に連絡。
適当なコンテナにLCL、他社貨物に混載で詰め込む。

適当な船に乗せて出航。

船会社が提携している保税地区の倉庫へ。

デバン、コンテナの貨物を取り出し、各貨物のコンサイニーに連絡。

もじこもん、門司港〜という倉庫から電話がかかってきた。

ここまで分かったので、乙仲に連絡して輸入通関とデリバリーの依頼をすれば、貨物が到着する算段である。
よく覚えてないのだけど、乙仲をネットで探したと思う。今考えると対して差は出ないのだけど、相見積もとった。
その時に、関税を立て替えてもらえる、もらえないが問題になった。
メーカーとしては、輸入当月に製品が売れたら翌月には回収出来る。それで関税費用も支払いたい考えだ。

倉庫のもじこもんは乙仲も出来るが、関税の立て替えはしないと言う。送金後でなければ、デリバリーしない。
結局、関税立て替えOKな乙仲を見つけた。

ここで関税だけでなく、チャージの支払いが必要だと分かった。船会社から届いた明細を見ると、よく分からない3文字や2文字の英語、単価がずらりと並んでいた。日本サイドの船会社に電話で1つずつ具体的な内容を聞いた。すると、、工場に集荷に行った陸運送費から、輸出書類作成経費、コンテナ使用料、コンテナヤードハンドリング費用などなどの現地チャージだ。合計7万円くらい。運送料も込みだったかな。。忘れた。
さらに日本側でのコンテナ関連、使用料その他もいくらか。これは日本到着後のチャージ。

社長に聞くと、FOB なので現地チャージは中国側が払うべきだの一点張り。。
調べると、船の欄干を越えてから日本側費用負担となるFOBでも、現地チャージについてはどちらが払うか前もって取り決める必要があると分かった。
社長は現地で発注した時に、よしFOBだな!しか話してないわけだ。
何してんだあんたは、、笑。

結局、社長と中国メーカーで話した。
やはり中国は払うつもりが全く無い。かなりもめた。。
全て乙仲が立て替えてくれるというわけで、最終的に全て払った。
現地チャージ含めた運送料
日本側チャージ
乙仲には、翌月、輸入通関費用約3万円、下関からの運送費、関税、地方税、消費税を支払う。

この物流にかかった経費は、およそ製品単価の20%である。製品単価¥1,500なら原価¥1,800くらいになった。そもそも元が他の半額くらいに安いので、社長もまぁこのくらいだな!と。。

ちなみに前職で、商社の輸入代行では、17%で計算していた。基本は1コンテナを自社製品のみで満載するFCLである。計算より1-2%くらい割安に上がることが多かったので、16%くらいなのかなと。。

後で分かったことだけど、そもそも船のハンドリングをするフォワーダーは日本側で指定すべきである。揚げ地も下関ではなく、東京か横浜で安い船が有れば良い。下関から陸路で運ぶより安くなるかもしれない。船が出たら乙仲に輸出書類、輸入用内容説明、到着した辺りでチャージ費用の提出が必要である。
SHIPに関して何の取り決めも指定もしなかった為、中国側で全て適当にセッティングされて、、からのホワイトボードである。
なんとも、史上最悪な物流体験だった。

その後1年間、安いメーカーからの輸入量が劇的に増えた。そうなると、他の現地メーカーの発注量が減る。メインの韓国人総経理が日本にやってきた。なんでこんな少ないんだと。半分以下だ。キレまくって帰国した結果、そのメーカーのハンドリングがかなりやりにくくなった。今まで当たり前に出来たことが出来ないと言う。さらに見積もりも3割り増しだ。
もう1社、国内OEMメーカーで社長が現地工場管理している会社。発注がゼロになった。しかも、サンプルだけ作らせてからの発注ゼロだ。こちらも社長が日本に飛んできた。冷静に社長と話してはいたが。。その後聞いたら、工場のキャパを確保していた為、実質2億近い損失が出たと言う。。新規サンプル依頼も門前払い。
今考えると下請法に引っかかるんじゃないかな。。なぜか先輩が1人で現地に謝りに行った。
そのメーカーは、その時を境にマルイ系ブランドの顧客にシフトして、売り上げが倍増した。

乙仲とのやり取りが増えて、ある提案をされた。
中国現地に優秀なエージェントがいるので、一度彼と話してみてはどうかと。
話してみると、40代くらいの日本語が堪能な中国人だった。現地チャージの支払いとか、ちょっと御社損してますよと。
彼は上海エクスプレスというクーリエ会社とも契約していた。営業代理人として、メーカーと日本の顧客を結ぶブローカーみたいなことをやっており、使ってみないかと提案された。
これが普通のOCSみたいなAIRなんだけど、LCLコンテナSHIPに比べて非常に安かった。
FCLで1トン以上の物量からしたら、は?って感じかもしれないが、100kg〜200kgで、kgあたり¥290-¥300くらいだったと記憶している。
これは当時契約していたクーリエのOCS、流通王より安かった。
リードタイムも通常AIRとほとんど変わらないのに、SHIPより安い。
クーリエ同様に工場の軒先から日本の空港到着までは一貫して、一定料金でやってくれる。大手クーリエみたいにドアツードアではなく、日本側で乙仲会社が輸入通関とデリバリーをする。
毎回物量を計算して出荷日予定をメーカーと取り決めを連絡した。
インボイス価格と関税率から割と正確に、関税含めて輸入経費を算出できることもメーカーとしては利点だった。乙仲企業を通すのでアンダーバリューは出来ない。
クーリエで過去に製品をアンダーバリューして入れたことが有るけど、脱税調査で引っかかる。社長からもやめろと言われ続けた。

OCSで同じことも出来なくないだろうが、毎回値段交渉が必要だし、結局コスト高だったような覚えがある。

最近分かったことだけど、輸入に関してAEOという制度がある。国際物流の円滑化、セキュリティ確保の為にAEO認定事業者の税関手続きを緩和するものである。
通常は海外から貨物が到着後、検査、輸入申請、税金支払い後に輸入許可、デリバリー可能になる。
AEO認定事業者が輸入者、乙仲の場合は、到着前に輸入申請したら即輸入許可が出る。そして税金は翌月払い出来る。デバンしたら即デリバリー可能だ。
もしかしたら、関税を立て替えてくれた乙仲はAEO認定事業者だったかもしれない。
そして、前職の親会社の名刺にはAEO認定事業者とロゴ入りで印字されていた。商社はだいたい認定事業者らしい。

最後に書いたAEO含め勉強中である。
貿易はあらゆる業者が関わっており、知らないと土俵に立つのも難しいことがあると前職で知った。前職では貿易関連は完全に親会社がやっていたが、専門用語や流れを知っている前提で話をされるので、ところどころ理解が必要だった。
しかしながら、商社っていうのは業務範囲の切り分けがはっきりしており、人に任せられる環境である。知らなくてもいいことは大枠だけ掴めば詳しく知らなくてよい感じがあった。任せる人と上手くやり取り出来るかが重要だった。
もちろん僕みたいな経験の浅い人間からすると。その大枠が専門的に見えたのだが。。笑。