僕は繊維業界に入って今年で14年目になる。
大して有名なブランドも製品もやってないけど、あらゆるブランドに目を通した経験も有り、それなりに生産部隊の経験も長い。人づてに色々と企業の裏側を見聞きすることも多い。
この会社は凄いな、かっこいいなと思うことも有れば、あの会社は無いわ、、ってこともある。多くは無いけど。そんな事例を1つ書いてみようと思う。
とある大手小売企業である。
飲食やアパレル、インテリアなど業態が幅広く、どれも世間からの評価は高い。
僕が以前勤めていた会社から距離が近く、個人的に好きな店も有るので昼休憩時間とかによく足を運んだ。
若い子向けのアパレルにいた時である。
当時20代半ばのA君がその企業に販売員として転職した。やっぱり20代〜40代まで幅広く、根強く流行していて憧れのブランドだ。本人の強い希望があったのだと思う。
神奈川の店舗に配属になって、朝が早いと聞いていた。
3ヶ月くらい経った時、A君が事務所に遊びにきた。5年以上勤めていた為、社員とも仲が良く、ちょくちょくそんな感じで来て飲みに行くこともあった。
しかし、3ヶ月ぶりにA君を見てやや言葉を失う。
明らかに痩せていて、目が虚ろだ。
話を聴くと、いつからか社内異動があった。彼の異動先は、本社だったか忘れたけど、商品を各店舗に配給する為の管理部門みたいな部署だった。今まで販売員として好きなブランドの服を着て、売り場で活躍していたが、今は狭い部屋で40代の女性1名と2人で日々パソコンに向かう仕事をしていると聞いた。一瞬理解が出来なかった。
なぜそんなことになっているのか。
慣れないパソコン操作、気性の激しい40代女性。当然モチベーションは地に落ちていた。
給与も低かった。渋谷系メンズの営業時代と比べても数万円下がった。聞くと中小企業の新入社員レベル。彼のスキルには到底見合わない金額だ。彼は高卒で働いている。22で社会人になる4大卒と比べたら、4年もキャリアが長い。これはメンズの会社でもアドバンテージが有った。
絶句した。。
毎日辞めたいと思っていると言う。
彼は若い割には長い販売員経験と端正なルックスを活かして狭い門をくぐり抜け、憧れのブランドに採用された。そのブランドは採用率が低い。ちょっと信じがたいが、別のOBで、数年かけてチャレンジを繰り返し採用された人もいた。
せっかく手にした切符を捨てたくないという思いがひしひしと伝わってきた。売り場に戻る日を夢見て耐える日々だという。
彼はルックスも良く、スタイルも良い。最初はゴリゴリの渋谷系のスタイルだったが、社内でワーク、ストリート系に造詣が深い社員に触発されて、大きく変わった。茶髪のロン毛から黒髪で2ブロックショート・ヒゲに。白Teeにブルーデニムが似合う。とても同じ人間とは思えないくらい、かっこよくなった。
チャラチャラしていたのは最初だけで、年齢に見合わないほど敬語や気遣いが出来る好青年だ。どちらかといえば硬派で男からも印象が良いタイプ。
僕は最初期に一度衝突したこともあるが、その後の関係性は良かった。彼と仕事をするのは楽しかった。
そんな彼が、見る影も無く痩せて落ち込んでいる姿を見た時、小売大手企業に怒りを覚えた。
話を聞くと彼がいるのは退職強要部屋としか思えない。明らかに悪意極まるパワハラである。
世の中では支持を集めて、業界ではリーダーシップをとる有力企業だ。経営陣がラフな格好してメディアに出たり、有力バイヤーが東コレにも関わったりしている。その影では、販売員の扱いがひどい、給与が低過ぎる。A君のような若いやる気のある人間を潰すようなことをしている。
本当に酷い話だ。
しばらくして、彼はようやく転職を決意した。
販売員の長い経験を活かし、代理販売員会社に採用されたらしい。当時レディースの有名ブランドで活躍していた。自分より若い社員のマネジメントも任されているらしく、給与は渋谷系メンズ営業の時よりはるかに跳ね上がったという。
それを聞いて本当に安心した。
現況を話す彼は、体型も元に戻り自信に満ちて頼もしく見えた。
それから僕はメンズの会社を退職して、会社自体も無くなって彼とは会ってない。
順調にキャリアを積んでいるのではないかな。
小売企業の販売員というのは、最も重要な資産だと思う。しかし、実際に高待遇されているのは、一部の経営陣と企画、MD、バイヤーである。SPA化すると、生産部隊よりもそれらの旗艦組織の力が強いとも聞く。感性や数字を扱う彼らが高待遇なのは構わないが、販売員の負担が大きいことに見て見ぬふりをしている気がしてならない。
彼らはコストではない。資産である。会社やブランドを代表して顧客に接して、会社の業績に直結する重要な仕事をしている。
企業評価サイトで小売各社の評価見ても、必ず販売員や中途の本社勤務から、組織の歪さ、キャリアアップが見えない、給与が低いという言葉が並ぶ。
僕が書いた事案は稀なのか、日常茶飯事なのか、実態は分からない。僕は大手小売に勤めた経験が無いから。しかし、少なくとも僕がA君の件を通じて感じた怒りはこの先消えることは無いと思う。
大して有名なブランドも製品もやってないけど、あらゆるブランドに目を通した経験も有り、それなりに生産部隊の経験も長い。人づてに色々と企業の裏側を見聞きすることも多い。
この会社は凄いな、かっこいいなと思うことも有れば、あの会社は無いわ、、ってこともある。多くは無いけど。そんな事例を1つ書いてみようと思う。
とある大手小売企業である。
飲食やアパレル、インテリアなど業態が幅広く、どれも世間からの評価は高い。
僕が以前勤めていた会社から距離が近く、個人的に好きな店も有るので昼休憩時間とかによく足を運んだ。
若い子向けのアパレルにいた時である。
当時20代半ばのA君がその企業に販売員として転職した。やっぱり20代〜40代まで幅広く、根強く流行していて憧れのブランドだ。本人の強い希望があったのだと思う。
神奈川の店舗に配属になって、朝が早いと聞いていた。
3ヶ月くらい経った時、A君が事務所に遊びにきた。5年以上勤めていた為、社員とも仲が良く、ちょくちょくそんな感じで来て飲みに行くこともあった。
しかし、3ヶ月ぶりにA君を見てやや言葉を失う。
明らかに痩せていて、目が虚ろだ。
話を聴くと、いつからか社内異動があった。彼の異動先は、本社だったか忘れたけど、商品を各店舗に配給する為の管理部門みたいな部署だった。今まで販売員として好きなブランドの服を着て、売り場で活躍していたが、今は狭い部屋で40代の女性1名と2人で日々パソコンに向かう仕事をしていると聞いた。一瞬理解が出来なかった。
なぜそんなことになっているのか。
慣れないパソコン操作、気性の激しい40代女性。当然モチベーションは地に落ちていた。
給与も低かった。渋谷系メンズの営業時代と比べても数万円下がった。聞くと中小企業の新入社員レベル。彼のスキルには到底見合わない金額だ。彼は高卒で働いている。22で社会人になる4大卒と比べたら、4年もキャリアが長い。これはメンズの会社でもアドバンテージが有った。
絶句した。。
毎日辞めたいと思っていると言う。
彼は若い割には長い販売員経験と端正なルックスを活かして狭い門をくぐり抜け、憧れのブランドに採用された。そのブランドは採用率が低い。ちょっと信じがたいが、別のOBで、数年かけてチャレンジを繰り返し採用された人もいた。
せっかく手にした切符を捨てたくないという思いがひしひしと伝わってきた。売り場に戻る日を夢見て耐える日々だという。
彼はルックスも良く、スタイルも良い。最初はゴリゴリの渋谷系のスタイルだったが、社内でワーク、ストリート系に造詣が深い社員に触発されて、大きく変わった。茶髪のロン毛から黒髪で2ブロックショート・ヒゲに。白Teeにブルーデニムが似合う。とても同じ人間とは思えないくらい、かっこよくなった。
チャラチャラしていたのは最初だけで、年齢に見合わないほど敬語や気遣いが出来る好青年だ。どちらかといえば硬派で男からも印象が良いタイプ。
僕は最初期に一度衝突したこともあるが、その後の関係性は良かった。彼と仕事をするのは楽しかった。
そんな彼が、見る影も無く痩せて落ち込んでいる姿を見た時、小売大手企業に怒りを覚えた。
話を聞くと彼がいるのは退職強要部屋としか思えない。明らかに悪意極まるパワハラである。
世の中では支持を集めて、業界ではリーダーシップをとる有力企業だ。経営陣がラフな格好してメディアに出たり、有力バイヤーが東コレにも関わったりしている。その影では、販売員の扱いがひどい、給与が低過ぎる。A君のような若いやる気のある人間を潰すようなことをしている。
本当に酷い話だ。
しばらくして、彼はようやく転職を決意した。
販売員の長い経験を活かし、代理販売員会社に採用されたらしい。当時レディースの有名ブランドで活躍していた。自分より若い社員のマネジメントも任されているらしく、給与は渋谷系メンズ営業の時よりはるかに跳ね上がったという。
それを聞いて本当に安心した。
現況を話す彼は、体型も元に戻り自信に満ちて頼もしく見えた。
それから僕はメンズの会社を退職して、会社自体も無くなって彼とは会ってない。
順調にキャリアを積んでいるのではないかな。
小売企業の販売員というのは、最も重要な資産だと思う。しかし、実際に高待遇されているのは、一部の経営陣と企画、MD、バイヤーである。SPA化すると、生産部隊よりもそれらの旗艦組織の力が強いとも聞く。感性や数字を扱う彼らが高待遇なのは構わないが、販売員の負担が大きいことに見て見ぬふりをしている気がしてならない。
彼らはコストではない。資産である。会社やブランドを代表して顧客に接して、会社の業績に直結する重要な仕事をしている。
企業評価サイトで小売各社の評価見ても、必ず販売員や中途の本社勤務から、組織の歪さ、キャリアアップが見えない、給与が低いという言葉が並ぶ。
僕が書いた事案は稀なのか、日常茶飯事なのか、実態は分からない。僕は大手小売に勤めた経験が無いから。しかし、少なくとも僕がA君の件を通じて感じた怒りはこの先消えることは無いと思う。