自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★風力発電と里山景観をめぐる懸念の声~参院選まで7日

2022年07月03日 | ⇒トレンド探査

   能登で何かと話題になっているのが、風力発電の増設計画だ。ブレイド(羽根)の長さ34㍍の風車は風速3㍍で回りはじめ、風速13㍍/秒で最高出力1500KWが出る。風車1基の発電量は年間300万KW。これは一般家庭の1千世帯で使用する電力使用量に相当する。能登半島には同規模の風車が73基あり、ざっと7万3千世帯分となる。能登地区の9市町の世帯数は7万2千世帯(令和2年国勢調査速報集計)なので、風力発電でほぼ賄えていることになる。(※写真・上は能登半島の尖端、珠洲市に立地する風力発電=同市提供)

   岸田政権は2030年に温室効果ガスの46%削減、2050年までのカーボンニュートラルの実現を目指していて、風力発電の増設計画が全国で加速している。政府の方針を受けて、能登半島でも新たに7地域で12事業、171基が計画されている。能登半島で風が強く、海に面した細長い地形が大規模な風力発電の立地に適しているとされる。

   そこで議論が起きているのが、「今でも賄えているのに、これ以上の風力はなぜ必要なのか」といった問題提起だ。能登には風力のほか七尾市に火力発電所、現在は運転停止となっている志賀町には原子力発電所がある。電力エネルギーがなぜ能登に集中しなければならないのか、電力の地産地消に向けてそれぞれの地域が取り組むべきではないのか、と言った声を聞く。

   声の背景にあるのが景観と自然保護だ。環境省は先月14日、海岸線が中心だった能登半島国定公園(1968年指定)を内陸部の里山を含め広げる拡張候補地として選んだと発表している。候補地は2030年度をめどに決める。一方で、環境省の「国立・国定公園内における風力発電施設の審査に関する技術的ガイドライン」(2013年改定)では、「展望する場合の著しい妨げ」「眺望の対象に著しい支障」に該当するものの設置を認めていない。つまり、12事業171基の設置は国定公園が里山に拡張する前の、駆け込み需要ではないかと。

   能登半島は2011年6月に国連食糧農業機関により、世界農業遺産(GIAHS)「Noto's Satoyama and Satoumi(能登の里山里海)」が認定されている。その認定要件に景観がある。今後、さらに171基も増えると里山の景観に違和感が出て、GIAHSの認定要件を満たすのかという疑問の声もある。

   自然保護の声は、バードストライクを懸念している。石川県は環境省が進めている国の特別天然記念物のトキの本州などでの放鳥について、すでに名乗りを上げている。能登には本州最後の1羽のトキがいたこともあり、県はトキの放鳥を能登に誘致する方針だ。ところが、能登に風車が244基も林立することになれば、トキには住みよい場所と言えるのかどうか。同じく国の特別天然記念物のコウノトリのひな3羽が能登半島の中央に位置する志賀町の山中で生まれ、8月には巣立ちする。コウノトリが定着することになれば、やはり懸念されるのはバードストライクだろう。(※写真・下は豊岡市役所公式サイト「コウノトリと共に生きる豊岡」動画より)

   能登の里山里海をめぐる外部環境の動きは急だ。自身は政府が進めるカーボンニュートラルの推進に反対ではない。ただ、過大な投資には上記の地域の反発や懸念があることを無視してはならない。

⇒3日(日)午後・金沢の天気     あめ後くもり

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☆物価上昇と年金カットのダブルパンチ~参院選まで8日

2022年07月02日 | ⇒トレンド探査

   能登半島の尖端、珠洲市に住む知り合いから「ガソリンが1㍑180円を超えた」とメールが届いた。添付の写真を見ると、「182円」となっている=写真=。金沢市内もこのところじわりと高騰していて、自宅近くにある同じ系列のスタンドでは「173円」だ。この9円の差は、JR金沢駅から珠洲市の中心街までは走行距離にして130㌔くらいなので、その分、輸送コストが上乗せされているのだろう。車の運転をはじめて45年ほどになるが、ガソリン価格には敏感になるものだ。

   それにしても、政府が石油の元売り会社に「価格抑制補助金」を支給しているにも関わらずこの価格高騰だ。もともと、ガソリン価格は新型コロナウイルスの感染拡大で上昇傾向だった。それに、ロシアによるウクライナ侵攻が追い打ちをかけたかっこうだ。さらに、円安ドル高が進んでいて、135円(1日午後8時現在)。報道によると1998年10月以来の23年8カ月ぶりの「円安」水準だ。

   ガソリンの元となる原油は、ペットボトルや食品トレー、レジ袋などさまざまな製品に使われている。先日、利用しているクリーニング店で話を聞くと、クリーニング工場では石油系の溶剤が使われ、アイロンやプレス機で使う蒸気は重油ボイラーで。さらに、衣類を包むビニールカバーなど、さまざまなものに石油製品が使われていて、原油価格はクリーニング料金に直結している、という話だった。確かに、この店ではかつてワイシャツの料金(ハンガー)は1枚180円だったが、いまでは240円となっている。

   さらに、エネルギー価格の高騰に追い打ちをかけるようなニュースがあった。NHKニュースWeb版(1日付)によると、日本の大手商社も出資してロシア極東サハリンで進められている石油・天然ガスの開発プロジェクト「サハリン2」についてロシアのプーチン大統領は、事業主体をロシア企業に変更するよう命じる大統領令に署名した。ウクライナ侵攻を続けるロシアに対して制裁を強める日本側に揺さぶりをかける狙いもあるとみられる。サハリン2が産出するLNG(液化天然ガス)は、日本では都市ガスの原料や火力発電の燃料として使われている。

   ガソリンをはじめエネルギー価格が上がれば、いろいろと価格に波及する。直撃を受けているのは、高齢者のうち3割といわれる年金生活者だろう。全国消費者物価指数(総合)は去年9月から前年同月比で上昇に転じ、この4月にはプラス2.5%になった。この状況下で、今年度の年金額は前年度と比べて0.4%の減額となっている。年金生活者にとって、物価上昇と年金カットのダブルパンチだ。今月10日は参院選の投開票だ。おそらく、シニア世代は黙ってはいない。

⇒2日(土)午前・金沢の天気     はれ

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★セミの鳴き声なき夏本番 海岸のゴミから見えること

2022年06月30日 | ⇒トレンド探査

   梅雨が明け、夏本番となったとはいえ、何かが足らない、何だろうと考えて思い出した。セミの鳴き声が聞こえないのだ。ミンミンゼミなどの初鳴きは金沢だと梅雨が明ける7月の中・下旬ごろから聞こえ、夏本番を感じさせる。ところが、ことしは梅雨が平年より25日も早く明けた。土の中でまだ幼虫のセミも戸惑っているのではないか。「そんなに勝手に早く明けるなよ、夏の本番はオレたちが奏でるんだぞ」と。

   きのう、能登半島の千里浜(ちりはま)海岸で行われた清掃ボランティアに参加した=写真・上=。海岸は全長8㌔だが、うち6㌔が車での走行が可能で「千里浜なぎさドライブウェイ」と称されている。砂のきめの細かさと、適度に海水を含んで引き締まったビーチだ。波打ち際を乗用車やバスで走行できる海岸は世界で3ヵ所あり、アメリカ・フロリダ半島ののデイトナビーチ、ニュージーランド・北島のワイタレレビーチ、そして千里浜海岸だ。

   この海岸を守ろうと生命保険会社が毎年企画している活動で、それに参加させてもらった。能登地区の高校生たちも加わり、300人がゴミ袋とトングを持って、ゴミ集めに励んだ。金沢の日中の予想気温は34度で、気象庁からは石川県に「熱中症警戒アラート」が出ていた。現地に来てみると、浜風が心地よく吹いていて暑さをしのぐことができた。

   海岸清掃は午前10時に始まり11時30分まで。自身が集めたゴミはライターや空き瓶、ビニールの紐など実に多様だった。漁具のロープも拾った。事務局のまとめによると、ゴミのトータル量は426㌔に及んだ。中には、針つきの注射器=写真・中=が合計3本回収された。これまでニュースで報じられているように、ロシア製ではないだろうか。驚きだった。ペットボトルの中にはハングル文字や中国語で書かれたものもあった。海岸のゴミから見える日本海の環境問題を目の当たりにした。

   能登半島の沖合には北朝鮮の木造船などが流れ着く。大陸側に沿って南下するリマン海流が、朝鮮半島の沖で対馬海流と合流し日本海側の沿岸に流れてくる=写真・下=。とくに能登半島は突き出ているため、近隣国の漂着ゴミのたまり場になりやすい。かつて、大陸から流れ着いた漂流物の中には仏像などもあり、能登では「寄り神」として祀られている神社もある。現在では漂着物のほとんどが対岸の国からプラスチックごみや漁船から投棄された漁具類だ。

   データがある。石川県廃棄物対策課の調査(2017年2月27日-3月2日)で、県内の14の市町の海岸で合計962個のポリタンクを回収した。そのうちの57%に当たる549個にハングル文字が書かれ、373個は文字不明、27個は英語、10個は中国語、日本語は3個だった。ポリタンクや上記の注射器などの医療系廃棄物の不法投棄は国際問題だ。

   対岸国の不法投棄をどう解決すればよいのか。ヒントは地中海にある。「地中海の汚染防止条約」とも呼ばれるバルセロナ条約は21ヵ国とEUが締約国として1978年に発効している。日本海にも沿岸各国との汚染防止条約が必要ではないだろうか。ただ、ロシアや北朝鮮、中国といった一筋縄ではいかない国々が相手なので、そう簡単ではないだろう。日焼けでヒリヒリと痛みが走る両腕をさすりながら、そんなことを考えた。

⇒30日(木)夜・金沢の天気     はれ

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★能登が輝く祭りシーズン ウイズコロナで3年ぶり

2022年06月27日 | ⇒トレンド探査

   能登では夏から秋にかけて祭りのシーズンとなる。「盆や正月に帰らんでいい、祭りの日には帰って来いよ」。能登の集落を回っていてよく聞く言葉だ。能登の祭りは集落や、町内会での単位が多い。それだけ祭りに関わる密度が濃い。子どもたちが太鼓をたたき、鉦(かね)を鳴らす。大人やお年寄りが神輿やキリコと呼ばれる大きな奉灯を担ぐ。集落を挙げて、町内会を挙げての祭りだ。その祭りが新型コロナウイルスの感染拡大の影響で2020年と21年は軒並み中止だった。3年ぶりでようやく「復活」のめどがついたようだ。

   能登の祭りは派手でにぎやかだ。大学教員のときに、留学生たちを何度か能登の祭りに連れて行った。中国の留学生が「能登はアジアですね」と目を輝かせた。キリコは収穫を神様に感謝する祭礼用の奉灯を巨大化したもので、大きなものは高さ16㍍にもなる=写真=。輪島塗の本体を蒔(まき)絵で装飾した何基ものキリコが地区の神社に集う。集落によっては、若者たちがドテラと呼ばれる派手な衣装まとってキリコ担ぎに参加する。もともと女性の和服用の襦袢(じゅばん)を祭りのときに粋に羽織ったのがルーツとされ、花鳥風月の柄が入る。インドネシアの留学生は「少数民族も祭りのときには多彩でキラキラとした衣装を着ますよ」と。留学生たちは興味津々だった。

   ところで、3年ぶりに祭り再開とは言え、実施に当たってはコロナ対応にかなり気遣っているようだ。地元紙の記事によると、高さ15㍍のキリコを100人の若衆で担ぎ上げ、6基が街中を練る七尾市の石崎奉燈祭(8月6日)では練り歩く範囲を町中心部の広場に限定して実施するようだ。さらに祭りの2日前に関係者のPCR検査を、当日には抗原検査を実施して陰性の人のみ参加とする。そして、祭り当日の飲酒は禁止となる(今月26日付・北國新聞)。

   祭りに酒はつきものだが、大きなキリコを担ぎ上げる際には勢いをつけるために一升瓶を回し飲みしたりするので、禁止となるようだ。石崎奉燈祭は漁師町の若衆が中心なので、ノンアルコールで勢いはつくのかどうか。

   能登のキリコ祭りは2015年4月に、日本遺産「灯り舞う半島 能登 ~熱狂のキリコ祭り~」に認定され、全国から見学や参加希望の祭りファンが増えていた。また、祭りを開催する側もおそらくこれ以上の中止が続くと、伝統行事の祭礼の継承そのものが痛手となること判断したのだろう。冒頭の「盆や正月に帰らんでいい、祭りの日には帰って来いよ」の言葉が示すように、過疎化が進行する能登にあって、祭りの継続は集落にとって価値観の共有であり、持続可能な地域づくりに欠かせない祭礼イベントなのだ。

⇒27日(月)午前・金沢の天気    はれ時々くもり

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★「ラーメンをすすって感じる物価高」参院選始まる

2022年06月23日 | ⇒トレンド探査

   よく利用する主要地方「のと登里山海道」沿いの道の駅「高松」で先日、「あぶり豚のと塩麺」を食べた。能登の塩を使ったラーメンで、能登豚のあぶりチャーシューや海藻が入っていてお気に入りのメニューだ。自販機で食券を買い求めると、950円だった。2ヵ月前にも食べたが、それまでは880円だった。70円、率にして8%ほどの値上げ。麺の原料は小麦なのでその価格高騰の影響なのだろう。物価高を間近に感じた。

   参院選挙がきのう公示され、7月10日の投開票に向けて18日間の選挙戦の火ぶたを切った。その争点はどこにあるのか。先述した物価高への対策は選挙の論点になるだろう。ロシアによるウクライナへの侵攻で小麦だけでなく、ガソリンなど燃料の価格上昇が全体の物価を押し上げている。価格高とどう向き合うのか。それぞれの候補者は具体策を述べてほしい。

   2つ目が日本海側などの安全保障環境だ。報道によると、中国軍とロシア軍の爆撃機4機が日本海や東シナ海などで長距離にわたって共同飛行(5月24日)。そして、ロシアの駆逐艦5隻が日本海など列島を周回し、中国の駆逐艦3隻も日本列島に沿う形で航行するなど不気味な動きを繰り返している。北朝鮮のICBMの連続発射、さらに核実験と新たな核兵器開発も懸念される。隣国のこうしたハラスメンにどう対抗していくのか。外交政策を聞きたい。

   3つ目は少子化対策。総務省が発表した2021年の人口統計は過去最高の64万4000人の減少だった。EV大手テスラの経営者イーロン・マスク氏がツイッターで「Japan will eventually cease to exist.」(5月8日付)と書き込んで物議を醸した。出生率が死亡率を超える変化がない限り、日本はいずれ消滅する。世界の著名人も注視する日本の少子化現象、いよいよ「少子化は国難」との位置付けで対策を打つべきだが、はたして「こども家庭庁」の新設で済む話なのだろうか。

   きょう自宅近くにある金沢市総合体育館の前を車で通ると、立候補者ポスター掲示板にそれぞれのポスターが貼られていた=写真=。石川選挙区(改選定数1)には6人が立候補しているのに5枚しか貼ってない(午前10時現在)。まだ貼っていない候補者には、「この国難の参院選、なんと心得るのか、真剣にやれ」と言いたいのだが、落下傘候補のようだ。むしろ、このような選挙制度でよいのかと問いたい。

   紙面を読むと、立憲民主党の候補者の応援演説に来た地元選出の衆院議員が「岸田インフレ、黒田円安を抑えていこう」と呼び掛けたと掲載されているが、当てこすりのような言い回しだ。ならば、物価高と円安の対策について立憲民主党の具体案を提起してほしい。

⇒23日(木)夜・金沢の天気    はれ

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★小麦高騰、ならば米粉スイーツやパンはいかがか

2022年06月18日 | ⇒トレンド探査

   テレビでなどでよく見るウクライナの国旗の、あの青と黄のツートンカラーは上が青空で、下が麦畑をシンボル化したものと有名になった。ウクライナは小麦の生産国で、FAOの統計(FAOSTAT、2020年版)によると生産・輸出量ともに、EU、ロシア、アメリカ、カナダに次いで世界第5位の「小麦大国」でもある。そのウクライナがロシアによる侵攻で黒海が閉ざされ、小麦輸出ができなくなったことから、各国が小麦の買い占めに走り、世界の小麦価格が高騰している。

   農水省公式サイト「輸入小麦の政府売渡価格の改定について」によると、もともと去年夏の高温・乾燥でアメリカやカナダ産の小麦が不作だったのに加え、ロシアの輸出規制、ウクライナ侵攻で小麦の国際価格が上昇した。このため、農水省は輸入小麦の政府売渡価格を17.3%引き上げている(4月期)。パンやスイーツ、うどん・ラーメンなど麺の原料はほぼ100%が輸入小麦となっている。スイーツはアメリカ産、あの讃岐うどんもオーストラリア産に頼っている。

   この輸入小麦の政府売渡価格引き上げについて、金子農水大臣の記者会見(3月11日)が気になった。記者から「(小麦の)価格がちょっと上がった場合でも、お米で代替できるというようなお考えでしょうか」と質問された。これに対し、大臣は「米を食べてもらいたいという気持ちはあるけれども、やっぱり、パンの業界もあればいろんな業界の方もいらっしゃいますから、そういう方の立場を考えると、こういう厳しいときに、改めて、私どもで、いろいろと、米を、というのは、やっぱり控えなければいけないかなと私は思いますけど」と答えている(農水省公式サイト)。実に煮え切らない返答だった。

   むしろ、もっと米を活用すべきと答えてもよかったのではないだろうか。パテシエの辻口博啓氏を金沢大学の講義に招いて直接聞いた話だ。米粉を使ったスイーツが好評で、パンケーキやロール、バウムクーヘン、シフォン、タルトなど種類も豊富。当初、職人仲間から「スイーツは小麦粉でつくるもので、米粉は邪道だ」と言われた。それでも米粉のスイーツにこだわったのは、小麦アレルギーのためにスイーツを食べたくても食べれない人が大勢いることに気が付いたからだとの説明だった。

   小麦アレルギーの人たちのためにスイーツだけでなく、いまでは米粉によるパンや麺など多様な食材が開発されている。小麦の高騰をチャンスに、日本では余っている米の活用をこうした米粉食品の市場開拓へと広げてはどうだろうか。金子大臣にはそう答えてほしかった。いまからでも遅くはない。

(※写真は、米粉でつくるスイーツを紹介した単行本『辻口博啓のやさしい、お菓子』ソニーマガジンズ)」

⇒18日(土)夜・金沢の天気     くもり

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☆配膳ロボットが器用に立ち振る舞うファミレスの光景

2022年06月13日 | ⇒トレンド探査

   JR金沢駅近くにあるファミリーレストラン「ガスト」に久しぶりに入った。客席と厨房を行き来しているのは従業員ではなく、なんと、自走ロボットだ=写真=。従業員に尋ねると、ことし2月から2体が稼働しているそうだ。「料理配膳ロボット」と言い、「BellaBot」と体に書いてある。(※写真は配膳ロボットが料理を客席で渡し終えて厨房に帰るところ)

   配膳ロボットが料理を注文した客席の近くに到着すると料理が載っているトレイが青く光り、客はトレイから自分で料理を取り上げる。数秒たつと自動的に厨房に戻っていく。なるほどと思わせるのは、客が通路の床に置いている荷物を上手に避けている。おそらく、赤外線センサーや3Dカメラで感知し避ける機能が搭載されているのだろう。

   そして、通路で人とすれ違うときは止まって、「お先にどうぞ」などと言葉を発している。料理を受け取った客が「ありがとう」と言いながら頭の部分をなでると、モニターに映る顔が笑顔になり、「くすぐったいニャ」と発声する。ロボットの顔つきはネコをイメージしている。「ご注文ありがとうニャ」と少し高めの声でお礼を言い、なかなか愛嬌がある。

   ネットで「BellaBot」を検索すると、配膳ロボットは中国・深圳の「PUDU Robotics」社が開発したもの。重量は57㌔で充電時間は4.5時間。稼働時間は12時間、バッテリーを交換すれば24時間、365日のフル回転が可能。同じバージョンのロボットを最大20台、同じフロアに配置することができる。障害物は35㍉×50㍉×100㍉以上のものを感知する。1つのバッテリーで約400皿の料理を運ぶことができ、飲食店での高い回転率を誇る、とある。

   配膳ロボットの動きを眺めていてふと思った。客が席の机にあるタブレットで料理を注文し、それを運ぶのがロボットの役割だが、運びと同時にカード決済も行えるにようにしてはどうだろうか。配膳・決済ロボットになれば、ロボットの格が上がる。ひょっとして、そのような新型がまもなく登場するかもしれない。

   今回、店に入ったときはすでに昼食を終えていてドリンクバーを注文したので、コーヒーは自身が運んだ。なので、ロボットとは対面で話してはいない。このロボットはどこまで進化するのか、気になる光景だった。

⇒13日(月)午後・金沢の天気    はれ

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★コウノトリとトキが能登の空に舞う日

2022年06月12日 | ⇒トレンド探査

   前回のブログの続き。能登半島にコウノトリのつがいが3羽のひなを育てているという記事を読んで、兵庫県豊岡市のコウノトリにまつわる、ある物語を思い出した。

   江戸時代には日本のいたるところでいたとされるコウノトリが明治に鉄砲が解禁となり個体数は減少。太平洋戦争の時には営巣木であるマツが燃料として伐採され生息環境が狭まり、戦後はコメの生産量を上げるために農薬が使われ、その農薬に含まれる水銀の影響によって衰弱して死ぬという受難の歴史が続いた。1956年に国の特別天然記念物の指定を受けるも、1971年5月、豊岡で保護された野生最後の1羽が死んで国内の野生のコウノトリが絶滅した。

   その後、飼育されていたコウノトリの人工繁殖と野生復帰計画は豊岡市にある兵庫県立コウノトリの郷公園が中心となって担い、ロシア(旧ソ連)などから譲り受けて人工繁殖に取り組んだ。豊岡でのコウノトリの野生復帰が知られるようになったのは2005年9月、秋篠宮ご夫妻を招いての放鳥が行われたことだ。ある物語はここから始まる。

   カゴから飛び立った5羽のうち一羽が近くの田んぼに降りてエサをついばみ始めた。その田んぼでは有機農法で酒米をつくっていた。金沢市の酒蔵メーカー「福光屋」などが酒米農家に「農薬を使わないでつくってほしい」と依頼していた田んぼだった。秋篠宮ご夫妻の放鳥がきっかけで地元のJAなどが中心となってコウノトリにやさしい田んぼづくりが盛んになった。

   コウノトリが舞い降りる田んぼの米は「コウノトリ米」として付加価値がつき、ブランド化した。こうした、生き物と稲作が共生することで、コメの付加価値を高めることを「生き物ブランド米」と称されるが、豊岡はその成功事例となった。そして、豊岡にはコウノトリを見ようと毎年50万人が訪れ、エコツーリズムの拠点にもなった。

   さて、3羽のひなの誕生が能登にコウノトリが定着するきっかけとなるかどうか。能登の自治体では同じく国の特別天然記念物トキの野生放鳥の候補地として環境省に名乗りを上げている。8月上旬をめどに3ヵ所程度を選定し公表され、2026年度以降の放鳥となる(5月10日付・環境省公式サイト)。3ヵ所の一つに選ばれれば、将来コウノトリとトキが能登の空に舞う日が来るのではないか。世界農業遺産(GIAHS)でもある能登の里山に。夢のような光景だ。   

(※写真・上は豊岡市役所公式サイト「コウノトリと共に生きる豊岡」動画より、写真・下のトキは1957年に岩田秀男氏撮影、場所は輪島市三井町洲衛))

⇒12日(日)午後・金沢の天気    はれ

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☆トキより先にコウノトリがやって来た

2022年06月11日 | ⇒トレンド探査

   これは絶妙なタイミングと言えるかもしれない。きょうの各紙朝刊によると、能登半島の志賀町で営巣していた国特別天然記念物のコウノトリのつがいからひな3羽が誕生した=写真・上=。石川県内でのひなの誕生は1971年に日本で野生のコウノトリが絶滅して以来初めて。能登の自治体は同じく国の特別天然記念物トキの野生放鳥の候補地として環境省に名乗りを上げているので、コウノトリのひな誕生は追い風になりそうだ。

   記事によると、ひなを育てているつがいは足環のナンバーから、兵庫県豊岡市で生まれたオスと、福井県越前市生まれのメスと分かる。4月中旬に近隣住民が電柱の上に巣がつくられているの発見し、町役場がメスが卵を抱いている様子を定点カメラで確認した。5月下旬には親鳥がひなに餌を与え、3羽が巣から顔を出した。ひなが順調に育てば、8月上旬ごろに巣立つという。

   コウノトリは江戸時代までの身近に見られた鳥だった。留鳥として日本に定住するものがほとんどだった。明治以降、餌場となる湿地帯や巣をかけることのできる大きな木が少なくなったこと、農薬や化学肥料の使用によって餌となる水生生物が減ったことなどが災いし、1971年に野生のものが絶滅した。その後、人工繁殖・野生復帰計画は豊岡市にある兵庫県立コウノトリの郷公園が中心となって担い、中国や旧ソ連から譲り受けたコウノトリ(日本定着のものと同じDNA)を元に繁殖に取り組んだ。現在国内での野外個体数は244羽が生息する(5月31日付・兵庫県立コウノトリの郷公園公式サイト)。

   もう14年も前のことだが、能登半島の先端・珠洲市の水田にコウノトリ=写真・下=が飛来していると土地の人から連絡をもらい、観察にでかけた。3時間ほど待ったが見ることはできなかった。そのとき聞いた話だ。この水田地帯には多くのサギ類もエサをついばみにきている。羽を広げると幅2mにもなるコウノトリが優雅に舞い降りると、先にエサを漁っていたサギはサッと退く。そして、身じろぎもせず、コウノトリが採餌する様子を窺っているそうだ。ライオンがやってくると、さっと退くハイエナの群れを想像してしまった。堂々したその立ち姿は鳥の王者を感じさせる。(※写真は2008年6月・珠洲市で坂本好二氏撮影)

⇒11日(土)午後・金沢の天気      くもり

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★参院選が間近、有権者が戸惑うこと

2022年06月09日 | ⇒トレンド探査

   きょう金沢市内で、きたる参院選挙での候補者ポスターの掲示板が設置されているのを見かけた=写真=。選挙日程は閣議決定されていないが、今月22日に公示され、7月10日が投開票の見通しとメディア各社が報じている。掲示板が設置されているのに気が付いたのは金沢歌劇座のバス停の付近。きのう夕方通ったときはなかったので、設置作業はきょう始まったのだろう。選挙が動き始めた。

        ことし石川県内は選挙ラッシュだ。3月13日は県知事選と金沢市長選、そして同市議補選のいわゆる「トリプル選挙」、4月24日は参院石川選挙区の補欠選挙、5月22日は能登半島の先端で珠洲市長選が行われた。そしていよいよ国政選挙なのだが、参院選に対する有権者の関心度は高いだろうか、投票行動はどう動くのか。

   実は、4月24日の参院補選の投票率は惨たんたるものだった。参院比例区の自民党議員が選挙区補選に鞍替えで立候補し、立憲民主や共産など野党の新人3人を破って当選したが、投票率はこれまで最低の29.9%、大票田の金沢市では22.9%だった。先の知事選(3月13日)61.8%と比べると、その半数にも満たない。この投票率の低さをどう読むか。民意に潜む本音をあえて語れば、議会制民主主義は国家の基本なのだが、「はたして参院は必要なのか」と参院無用論の声もあるのではないだろうか。

   参院は「良識の府」と学校で教わるが、タレント議員の巣窟と化しているという違和感があるのではないだろうか。参院比例区で2001年から非拘束名簿式が採用されていて、候補者の氏名を書いても政党名を書いても、その政党の得票となるので、知名度のあるタレントや著名人を候補者に擁立するケースが目立つようになった。一方で、志を抱いたタレント議員の存在は政治を身近に感じさせてくれるという前向きの意見もある。

   もう一つ。これも学校で教わるが、「衆院の優越」だ。法律案が衆院で可決し、参院がこれと異なった議決をした場合、衆院において出席議員の3分の2以上で再び可決すれば法律となる。予算案も最終的に衆院の議決が国会の議決となる。だったら、国会は衆院一院制でよいのではないかと考えてしまう。ただ、衆院解散中は参院も同時閉会となるが、国に緊急事態が生じた場合は、内閣の求めにより参院の緊急集会が開かれ、国会の機能を果たすことになる。そろそろ、賛否を含めて参院の有り様について議論する時期に来ているのではないだろうか。

⇒9日(木)夜・金沢の天気    くもり   

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