自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★いまそこにある危機「線状降水帯」とSDGs

2022年06月01日 | ⇒トレンド探査

   季節は移ろい、6月の梅雨の時節に。梅雨はしっとり雨が降るという印象だったが、近年は「激しい雨」のイメージだ。積乱雲がどんどんと列ををなして留まって、激しい雨を降らせる。この「線状降水帯」という言葉を自身が意識したのは2017年8月、北陸で1時間に80㍉の猛烈な雨をもたらしたころからだ。

   気象庁はこれまで線状降水帯が「発生」した場合に「顕著な大雨に関する情報」を発表していたが、きょう1日からは、線状降水帯が発生する「可能性が高まった」場合、予測の段階で発生の半日前から6時間前に気象情報を発表することにした(気象庁公式サイト・31日付ニュースリリース)。全国の大学など研究機関と連携して、メカニズム解明に向けた高密度な集中観測や、スーパーコンピュータ「富岳」を活用したリアルタイムシミュレーション実験を実施するという。

   さらに、今月30日からは地図上に5段階で色分けして表示する「キキクル(危険度分布)」で、5色を警戒レベルの色と統一して、紫は「レベル4の全員避難」、黒は「レベル5で災害切迫」。紫は早めの避難行動の呼びかけになる。しっとり梅雨もいつの間にか怖くなったなものだ。

   先述のように、気象庁が大学など研究機関が連携して集中観測を行ったり、早めの避難行動の呼びかけを行う背景には、国連が掲げるSDGs(持続可能な17の開発目標)の13番の目標「気候変動に具体的な対策を」があるのだろう。天気情報をテレビで視聴する側とすると、警戒レベルの気象情報が出ていないからまだ安心だと認識してしまう。実際に情報が出たときは大気の状態が不安定で、非常に危険な状態にあるケースもままある。

   線状降水帯による豪雨の被害は毎年のように起きている。「いまそこにある危機」を集中観測やスーパーコンピュータで大胆に切り込んで予知する。一歩も二歩も踏み込んだ気象情報に期待したい。

⇒1日(水)夜・金沢の天気    くもり

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☆カーボンニュートラルな能登の光景

2022年05月29日 | ⇒トレンド探査

   能登半島で見る印象的な風景は、山の峰に並ぶ風力発電、山裾や田んぼ、畑の一角に広がる太陽光発電ではないだろうか。脱炭素の世界的な潮流を受け、日本も2030年に温室効果ガスの46%削減、2050年までのカーボンニュートラルの実現を表明している(2021年4月・気候サミット)。日本が排出する二酸化炭素の4割が電力関連で、再生可能エネルギーに置き換える動きが全国的に活発だ。

   能登半島全体では74基、うち半島尖端の珠洲市には30基の大型風車がある。経営主体は日本風力開発株式会社(東京)、2007年から順次稼働している。発電規模が45MW(㍋㍗)にもなる国内でも有数の風力発電地域だ。発電所を管理する会社のスタッフの案内で現地を訪れたことがある。ブレイド(羽根)の長さは34㍍で、1500KW(㌔㍗)の発電ができる。風速3㍍でブレイドが回りはじめ、風速13㍍/秒で最高出力1500KWが出る。風速が25㍍/秒を超えると自動停止する仕組みなっている。羽根が風に向かうのをアップウインドー、その反対をダウンウインドーと呼ぶ。1500KWの風車1基の発電量は年間300万KW。これは一般家庭の1千世帯で使用する電力使用量に相当という。(※写真・上は能登半島の先端・珠洲市の山地にある風力発電)

   なぜ能登半島に立地したのか。「風力発電で重要なのは風況」と現地のスタッフが説明してくれた。中でも一番の要素は平均風速が大きいことで、6㍍/秒を超えることがの目安になる。能登半島の沿岸部、特に北側と西側は年間の平均風速が6㍍/秒を超え、一部には平均8㍍/秒の強風が吹く場所もあり、風力発電には最適の立地条件なのだ。いいことづくめではない。能登で怖いのは冬の雷。「ギリシアなどと並んで能登の雷は手ごわいと国際的にも有名ですよ」と。そのため、ブレイドの材質は鉄製ではなく、FRP(繊維強化プラスチック)にしているが、それでも落雷のリスクはあるという。

   バイオマス発電所もある。珠洲市に隣接する輪島市の山中にある。発電所を運営するのは株式会社「輪島バイオマス発電所」。スギやアテ(能登ヒバ)が植林された里山に囲まれている。木質バイオマス発電は、間伐材などの木材を熱分解してできる水素などのガスでタービンエンジンを駆動させる。石炭など化石燃料を使った火力発電より二酸化炭素の排出量が少ない。もともと二酸化炭素を吸湿して樹木は成長するのでカーボンニュートラルだ。発電量は2000KWで24時間稼働するので年間発電量は1万6000MW、これは一般家庭の2500世帯分に相当する。エンジンを駆動させるために必要な木材は一日66㌧、年間2万4千㌧の間伐材が必要となる。(※写真・中は輪島市三井町にある輪島バイオマス発電所の施設)

   創業者から会社設立に至った経緯をうかがったことがある。「能登の里山を再生するために、間伐材をどうしたら有効利用できるかを考えていたら、バイオマス発電が浮かんだ。そこから夢も膨らみ、地産地消のエネルギーで地域の活性化に貢献したいと思い、会社をつくったのです」。森林維持には欠かせない間材で生じた木材のうち丸太材やパルブ材などに利用されるのは70%程度に過ぎない。残りの端材や曲がり杉は、利用されずに林地残材という形で山の中にそのまま残されているのが現状。これではもったいない。カスケード利用(多段的利用)しない手はない(同社公式サイト)。里山のもったいない精神から発想された再エネなのだ。

   能登半島では農地のほかに山間部でも大規模なメガソーラー(1000kW)が相次いで稼働している。耕作放棄地など活用したのだろう。気になることもある。川沿いの平野部に設置されている太陽光パネルだ。これが、集中豪雨による冠水や水没で損壊したり、設備が流されるということにはならないだろうか。太陽光パネルは実は危険だ。損傷し放置された太陽光パネルに日が当たると発電し、感電や火災につながる可能性がある。(※写真・下は珠洲市にあるソーラー発電施設)

   きょうの新聞各紙は、環境省は使用済みの太陽光パネルのリサイクルを義務化する検討に入ったと伝えている。太陽光パネルの寿命は長くて30年だ。普及が進んでいる能登地区の近未来の課題でもある。

⇒29日(日)夜・金沢の天気    はれ

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★能登半島・輪島から「SDGs観光」の発信を

2022年05月22日 | ⇒トレンド探査

   内閣府は国連のSDGs(持続可能な開発目標)に沿ったまちづくりに取り組む自治体を「SDGs未来都市」として選定している。ことし新たに能登半島の輪島市や新潟県佐渡市など30自治体が選ばれた。選定は2018年に始まり、今回含め154の自治体が選ばれている(内閣府地方創生推進事務局公式サイト「2022年度SDGs未来都市及び自治体SDGsモデル事業の選定について」)。

   輪島市のテーマは「“あい”の風が育む『能登の里山里海』・『観光』・『輪島塗』 ~三位一体の持続可能な発展を目指して~ 」。「“あい”の風」とは日本海沿岸で冬の季節風が終わり、沖から吹いてくる夏のそよ風を言う。ところによっては「あえの風」とも言う。キーワードに世界農業遺産「能登の里山里海」、観光、輪島塗の3つを入れている。ちなみに佐渡市のテーマは「人が豊かにトキと暮らす黄金の里山・里海文化、佐渡 ~ローカルSDGs佐渡島、自立・分散型社会のモデル地域を目指して~」。トキと佐渡金山がキーワードになっている。

   輪島市の提案書を読もうと思い、市役所公式サイトにアクセスしたがまだアップはされていなかった。後日、内閣府の公式サイトで一括して掲載されるようだ。多様な地域の特性をSDGsの視点で見直し、「誰一人取り残さない」「持続可能な社会づくり」に活かしていこうというまさに地方創生の実現に向けた取り組みだ。

   輪島の朝市や千枚田、海女漁を見ればSDGsが体現された地域であることが理解できる。朝市はもともと農村や漁村のおばさんたちが農作物や魚介類を持ち寄って物々交換したことがルーツとされる。作り、採ったものが余った場合、廃棄するのではなく、物々交換という取引で豊かさを共有する場だった。「もったいない精神」と言えるかもしれない。同時に、SDGs目標12「つくる責任つかう責任」である。

   そして、海女漁はまさにSDGs目標14「海の豊かさを守ろう」だ。現在200人いる海女さんたちのルーツは1569年、福岡県玄海町鐘崎から船で渡って来た13人の男女だったと伝えられている(1649年「海士又兵衛文書」)。24種もの魚介類を採ることで生業(なりわい)を立てているだけに資源管理には厳しいルールがある。アワビ漁については、貝殻10㌢以下の小さなものは採らない、漁期は7月から9月の3ヵ月、時間は午前9時から午後1時、酸素ボンベは使わず素潜り。こうした厳格な自主規制で450年余り経ったいまでもアワビを採り続けている。

   千枚田では自然災害と向き合ってき人々のSDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」の精神が見えてくる。1684年、この地区では大きな地滑りがあり、棚田があった山が崩れた。「大ぬけ」といまでも地元では伝えられる。いまで言う深層崩壊だ。その崩れた跡を200年かけて棚田として再生した。まさにレジリエンスだ。それだけでない、いまも地滑りを警戒して、千枚田の真ん中を走る国道249号の土台に発砲スチロールを使用するなど傾斜地に圧力をかけないようにと工夫をしている。

   持続可能な人々の営みというのは、その歴史を検証すことで見えて来る。輪島市には今回のSDGs未来都市の認定で、「SDGs観光」という新たな情報発信をしてほしいものだ。

⇒22日(日)午前・金沢の天気    はれ

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☆イギリスに受信料廃止の風は吹くのか

2022年05月20日 | ⇒トレンド探査

   NHK受信料制度の見直しにつながる動きになるかもしれない。イギリスの「デジタル・文化・メディア・スポーツ省(DCMS)」が4月28日に発表した放送政策全般を見直す年次報告書(白書)『Up Next The Government’s vision for the broadcasting sector』が注目されている。その中にはことし100年の歴史を刻む公共放送BBCの改革の方針が述べられている。そのホワイトペーパーがDCMS公式サイトにアップされているのでチェックした=写真、人物はナディーン・ドリスDCMS担当相=。

   前置きで「The UK’s creative economy is a global success story, and our public service broadcasters (PSBs) are the beating heart of that success. (イギリスのクリエイティブな経済は世界的なサクセス・ストーリーであり、公共放送局はその成功の脈動する心臓に相当する)」と評価しながらも、改革は避けられないとそのポイントを上げている。

   直面するのはネット環境だ。イギリスの視聴者の「メディア消費」のあり様が大きく変化していることを数値を紹介している。イギリスでは79%の世帯がネットに接続されたテレビを所有している。このため、放送局の番組を視聴する時間の割合は2017年の74%から2020年の61%に減少。逆に有料制の動画サービスの視聴時間における割合は2017年の6%から2020年の19%に増加している。さらに、コンテンツのグローバル化問題を指摘している。アメリカ発の動画配信サービス「ネットフリック」などはイギリスの放送業者よりもはるかに大きな予算でコンセンツ制作を展開している。

   このような時代の変化にも関わらず、国民は世帯当たり年間で159ポンド(およそ2万5000円)の受信料(ライセンス料)をBBCに払い続けている。国民の間では不公平感が募っている。また、ライセンス料の支払いを拒んだ場合は刑事裁判がある。件数は示されていないが、2019年に支払いを拒否して有罪判決を受けた人々の74%は女性だったと白書で記載されている。イギリスでは、テレビを見たい視聴者は近くの郵便局で1年間有効の受信許可証を購入する。この許可証がなければ、電気屋でテレビそのものが買えないシステムだ。ネット時代で、この受信許可モデルは不公平感を増長するだけではないだろうか。

   BBCの放送事業の認可であるロイヤルチャーター(女王の特許状)は2027年にいったん切れる。それまではライセンス料の徴収は継続する。白書では、「BBCの受信料制度について見直しを進める」、さらに「BBCの商業部門の限度額(広告枠)を2倍以上に増やす」などと記載されてはいるが、具体案はない。「We will set out more details in the coming months.」と数か月後に詳細を提示すると述べている。

   ジョンソン首相は、BBCの受信料の廃止と視聴する分だけ金を払う有料放送型の課金制(サブスクリプション)への移行を公約として掲げてきた。一方で、受信料が廃止されることで、収入が不安定になり報道の質の高さや公共性が失われるという懸念もある。公共放送の経営と安定、視聴者の不公平感の解消、次なるメディアのコンテンツのあり様、さまざまな課題が凝縮されている。そして他人ごとではない。

⇒20日(金)午後・金沢の天気    くもり

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☆能登の風力発電とトキの放鳥を考える

2022年04月03日 | ⇒トレンド探査

     前回のブログの続き。では、再生可能エネルギーはどこまで可能なのか、問題点を含めて考える。たとえば風力発電だ。石川県内には既存の風力発電は74基で、能登地方に73基が集中している。能登半島は風の通りよく、面積の7割が低い山と丘陵地であることから、大規模な風力発電の立地に適しているとされる。

   能登半島の尖端、珠洲市には30基の風車がある。2008年から稼働し、発電規模が45MW(㍋㍗)にもなる有数の風力発電の地だ。発電所を管理する株式会社「イオスエンジニアリング&サービス」の許可を得て、見学させてもらったことがある。ブレードの長さは34㍍で、1500KWの発電ができる。風速3㍍でブレイドが回りはじめ、風速13㍍/秒で最高出力1500KWが出る。風速が25㍍/秒を超えると自動停止する仕組みになっている。風車1基の発電量は年間300万KW。これは一般家庭の8百から1千世帯で使用する電力使用量に相当する。(※写真・上は珠洲市提供)

   カーボンニュートラルの政府方針を受けて、東北や北海道で風力発電所の建設ラッシュが続く。能登半島でもさらに12事業、170基の建設が計画されているという。ここで気がかりになってきたことがある。バードストライク問題だ。

   国の特別天然記念物のトキについて、環境省は野生復帰の取り組みを進めている新潟県佐渡市以外でも定着させるため、2026年度以降に本州でも放鳥を行うことを決めた(2021年6月13日付・NHKニュースWeb版)。 これにさっそく名乗りを上げたのが、石川県だ。ことし2月1日の県議会本会議で当時の谷本知事は「能登地域は放鳥にふさわしい」と述べ、関係市町や団体などと受け入れの協議を始める意向を示した(2月3日付・毎日新聞Web版)。

   能登半島は本州最後の1羽のトキが生息した場所。オスのトキで、能登では「能里(のり)」の愛称があった。1970年1月に捕獲され、佐渡のトキ保護センターに送られた。佐渡にはメスの「キン」がいて、人工繁殖が期待されたが、能里は翌1971年に死んでしまう。環境省は1999年から同じ遺伝子配列である中国産のトキで人工繁殖を始め、2008年9月から放鳥を行っている。石川県は全国に先駆けて2010年に分散飼育を受け入れ、増殖事業に協力してきた。県が能登での放鳥に名乗りを上げた背景にはこうした思い入れがある。

   佐渡では野生のトキが480羽余り生息しているが、1500KWクラスの風力発電はなく、これまでバードストライクの事例は報告されていない。しかし、能登半島で今後、現在の73基に加えてさらに170基が稼働し、トキが放鳥されるとバードストライクの懸念は高まるのではないか。再生可能エネルギーの切り札としての風力発電、そして生態系の再生のシンボルとしてのトキの共生は可能なのか。日本野鳥の会は事業会社にバードストライクについて調査し公表するよう求めている。(※写真・下のトキは1957年に岩田秀男氏撮影、場所は輪島市三井町洲衛)

⇒3日(日)夜・金沢の天気      くもり

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★「誰一人取り残さない」SDGs的な選挙活動の現場

2022年03月11日 | ⇒トレンド探査

   金沢市長選の個人演説会に誘われ、昨夜、市内のある集落を訪ねた。場所は中山間地、いわゆる里山だ。乗用車のナビを使って、曲がりくねった山道を走行する。午後7時からの演説会に間に合うように出かけたが、すっかり周囲は暗くなっていた。ぎりぎりに到着した。会場は市北部にある加賀朝日町の公民館。廃校になった小学校校舎だ。地域の人たち20人余りが集まっていた。

   個人演説会を開いたのは、永井三岐子候補。テーマは「公共交通について考えよう」だった。なぜ山間地の集落でこのテーマなのか。この地域の唯一の公共交通であるJRバスが7月から廃線となることが決まっている。そこで、永井候補はこの地域課題をテーマに住民との意見交換を求めて演説会を開いた。「公共交通は都市の装置です。民間企業の資金やアイデアを求めるのも一つのアイデア」と事例を紹介した。「チョイソコ」は愛知県豊明市でトヨタ系の民間会社が運営しているオンデマンドによるバス運行のシステム。通院や買い物の移動に困る高齢者を救いたいと同市が民間企業と連携している。

   地元の人からも声が上がった。「バスに乗っても乗客は多い時で3人くらい。空気を運んでいるようなものでバス会社には申し訳という気持ちもある」と廃線についてはやむを得ないと話した。また、「バスの本数が少なくなるほど、利用する人が減ってきた」 「中山間地にまだ新しい家が空き家になっている。これをどうにかしたい」 「里山には環境や教育、観光など、その特色を活かした活用がある。どう工夫すればよいか」 など、バス問題だけでなく地域の活性化など意見は多岐に及んだ。

   確かにバスの問題は地域課題の一つであって、その根底には過疎化・人口減少の問題がある。それにしても思ったことは、これは永井候補にとって失礼な言い方かもしれないが、選挙運動期間も残り2日と限られているのに、10数世帯しかない小さな集落でなぜ時間を費やすのか。市内の中心街でもっと人を集めて、訴えた方が遊説効果があるのではないか、と。

   そう考えているうちに、これは本人の根っからのポリシ-なのかもしれないと思い浮かんだ。永井候補は金沢にある国連大学研究所の事務局長だった。SDGsの実践を掲げてきた。今回の選挙でも、公約に「SDGsファンドを創設し、課題解決ビジネスを興す」と掲げている。SDGsの原則は「誰一人取り残さない」だ。小さな集落の課題こそ放ってはおけないと考えたのだろうか。とすれば、まさにSDGsを実践した選挙活動なのかもしれない。

⇒11日(金)夜・金沢の天気     はれ

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★「除菌スタッフ」を横目に「ブースター接種」

2022年03月09日 | ⇒トレンド探査

   新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。きょうの紙面を見ると、北陸3県で千人を上回る新たな感染者が報じられている。進学や就職など人の動きが活発になるこの時季、そして今月13日に知事選と金沢市長選の投票がある石川県は大丈夫かと、ふと思ったりする。

   ようやくワクチンの3回目の接種を受けることができた。7日午後に予約した病院に行く。検温をして受付窓口へ。接種会場に行き、指定された番号のイスに着席した。順番待ちは30人くらいはいただろうか。そこで、見慣れない光景を見た。「除菌スタッフ」と書かれた作業着の5人が左手にスプレー、右手に布巾を持って、手すりやイス、机、カウンターで小まめに作業をしていた=写真=。「除菌スタッフ」という言葉は初めてだった。

   この病院で去年6月と7月にワクチンを2回接種したが、「除菌スタッフ」は見たことがなかった。思い当たるのは、先月25日付の報道で、この病院で感染者22人が出てクラスターとなったこと。おそらく、その対応策なのかと思ったりもした。とにかくていねいに徹底的に除菌するプロ集団のように思えた。

   順番が回って来た。小型ワゴンを押しながら女性看護師2人が近づいてきた。1回目、2回目と同様に接種を受ける側は座ったままで、看護師が会場を移動して接種する。接種後は15分間、イスに座って経過観察。用紙には「気分が悪くなってきた。座っているのがしんどい」「息切れがする。咳が出る」「じんましんや皮膚のかゆみがでてきた」などの体調の変化や自覚症状を感じた場合にはスタッフに告げてくださいとある。

   接種案内にはこの病院が扱っているワクチンはファイザー製とモデルナ製とあった。そこで、接種してくれた看護師が横を通ったので聞いた。「先ほど打っていただいたワクチンはファイザーですか」と。すると、「ファイザーは在庫がなくなり、モデルナです」との返事だった。1回目と2回目はファイザー製だったので、ちょっと嫌な副反応の予感がした。

   特に自覚症状はなかったので帰宅した。しばらくすると、1回目と2回目のときにはなかった副反応が出てきた。接種した左腕の付け根の当たりに痛みを感じるようになった。さらに倦怠感が出てきた。熱はないが、全身にだるさがある。翌日も同様だった。市内に所用があったので、念のため乗用車を使わずタクシーで出かけた。3日目のきょうようやく平常に戻った。

  ネットで調べると、ファイザー製ワクチンを2回打った人のうち、3回目にモデルナ製を交互接種した人の方が、3回ともファイザー製を打った人より抗体価の上昇率が高いと厚生労働省副反応検討部会で報告されている。接種後の副反応はモデルナ製の方が多く出る傾向も判明した(2月19日付・東京新聞Web版)。3回目接種は「ブースター接種」とも言われる。ブースターは「増幅器」のこと。副反応が出た分、抗体値がぐんと増幅してほしいものだ。

⇒9日(水)夜・金沢の天気    はれ

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☆重くのしかかる雪、そして「五輪のスタック現象」

2022年02月22日 | ⇒トレンド探査

   きょうは「2022年2月22日」、まさに2のぞろ目の日。朝起きると、自宅周辺は積雪が32㌢ほどになっている。昨夜9時ごろの積雪10㌢ほどだったので、ひと晩で20㌢余り積もった。庭の五葉松の枝にも雪がずっしりと積もっている=写真=。雪吊りを施しておいてよかったと思う。金沢地方気象台は大雪警報が出ている金沢市に「顕著な大雪に関する気象情報」を発表した。今夜にかけてさらに積雪が見込まれる。

   この気象情報が出され、市内でよく目にするのが道路でのスタック(立ち往生)だ。スタッドレスタイヤを装着していても、わだちにはまり、車の底が雪上に乗り上げて立ち往生する。車の「最低地上高」、つまり地上面から自動車の最も低い所までの垂直距離は道路運送車両保安基準で9㌢以上と定められている。積雪10㌢ほどであれば問題なく走れるが、積雪30㌢となるとスタックによる交通障害が発生する確率はかなり高くなる。

  前書きが長くなった。きのうのブログでIOCは公的な国際組織ではなく、非政府組織 (NGO) の非営利団体 (NPO)なので、国連機関に所管を委ねる方向で検討すべきではないだろうか、と述べた。けさ届いた「月刊ニューメディア」編集部ゼネラルエディターの吉井勇氏からメールマガジンは、オリンピックそのものの開催意義について疑問を呈している。以下その要約。

   東京の夏に続いて北京の冬と、アジアで連続した2つの五輪。ある新聞で、偉業ではなく「異形」という形容を使っている。そんな感じ(漢字)がピッタリだった。東京五輪は、都民や国民に数兆円の赤字を残している。これは開催都市が負担するのか、開催国が責任を持つのかという問題を残しながら、日本国民の負債となっている。負債だけが残され立ち往生、まさにオリンピックのスタック現象ではないか。開催したIOCはスポーツの民間団体で、本来そこが第一義的に負担すべき負債だと思う。ところが、「招致」というマジックで開催国や都市に責任がすり替えられている。

   こうした議論もなく、札幌に再び冬季大会を、という動きがある。1972年の札幌五輪は巨額の税金を使って日の丸飛行隊を応援した。この赤字開催の見通しを見て、アメリカのデンバーでは76年開催が決っていたものの、住民投票では反対多数で開催を否決した。そこで、オーストリアのインスブルックに急きょ開催が決まった。また、2024年のパリ開催は決まっているが、立候補を表明していたドイツのハンブルグやローマ、ブタペストでは住民の反対が強く撤退したのだ。28年のロス、32年のブリスベンも競争相手の都市がなくすんなりと決まったように思われているが、他の都市は住民の反対で立候補に至らなかったというのが実情だ。世紀の祭典は世界各地で「ノー」が突き付けられている。

   こうした報道が日本で少ないのは、メディアの立ち位置も関係している。オリンピックがあれば、NHKと民放が「ジャパン・コンソーシアム」を組んで放送する。新聞社も東京大会のケースだが、朝日、毎日、読売など大手6紙が協賛社として名を連ねている。では、今後メディアは札幌五輪の再誘致にどのように向き合うのか。

⇒22日(火)午前・金沢の天気     ゆき

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☆春を待つ花のいとおしさ

2022年02月13日 | ⇒トレンド探査

   北陸に大雪をもたらすJPCZ(日本海寒帯気団収束帯)は気象ニュースにもよく取り上げられていて、このブログでもよく使う言葉になった。シベリアから寒気団が日本海に向かって流れてくる際に朝鮮半島北部の白頭山によって、いったん二分されるが、その風下で再び合流し、雪雲が発達しやすい収束帯(ライン)となって北陸地方などになだれ込んでくる。

   そして、最近よく関東地方に大雪をもたらすとして気象ニュースでよく使われているのが「南岸低気圧」だ。これまで日本列島南岸を発達しながら東に進んで関東地方などに雨を降らせると聞いていたが、雪も降らせている。予報では今夜から次第に雨が雪に変わり、あす14日朝までに東京都心でも2㌢から5㌢の積雪が予想されている(13日付・ウエザーニュースWeb版)。

   北陸はこのところ気温が7度まで上がり、雪解けが進んでいる。自宅近くの川も水かさが増している。冬から春にかけての季語で、桃花水(とうかすい)という言葉がある。氷や雪が解けることで増す川の水のことを言う。

   自宅庭にはロウバイとスイセンの花があったので、床の間を飾ってみた。掛け軸は桃花水からイメージして、「桃花笑春風」(とうかしゅんぷうにえむ)を選んだ。唐代の詩人・崔護の漢詩の一部「桃花依旧笑春風」が元の書である。うららかな春風に揺られて咲く桃の花は、まるで微笑んでいるようだ。無心に咲く、花の美しさよ(淡交社『茶席の禅語大辞典』より)。

    16日から17日にかけて日本海側にはマイナス40℃以下の強烈な寒気が流れ込んで、北陸など局地的に大雪となる恐れがあるという(同)。床の間をじっと眺めていると、桃花もロウバイもスイセンも春を待つ花のように見えていとおしい。

⇒13日(日)夜・金沢の天気     くもり

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★立春寒波 ひたすら待つ「三寒四温」と「ぼんぼら風」

2022年02月05日 | ⇒トレンド探査

   「立春寒波」がやって来た。金沢地方気象台は北陸の上空5000㍍にマイナス36度以下の強い寒気が流れ込み、金沢などの平野部でも大雪となるおそれがあるとニュースで伝えている。きょう5日午後6時までに降る雪の量は多いところで加賀地方の平野部で20㌢、山沿いで60㌢、能登地方は平野部と山沿いともに30㌢と予想されている。発達した雪雲が同じ地域に流れ込み続けた場合は、6日にかけて警報級の大雪になる見通し、とか。発表を聞いただけで震える。

    けさ午前7時ごろの積雪は自宅周囲で5㌢ほど。これからが本番なのだろう。庭を眺めるとロウバイの黄色い花にうっすらと雪がかぶっていた=写真・上=。ロウバイは大寒から立春の時節に咲く。ロウバイの木に近づこうとすると、雪面から野鳥が1羽、驚いたように飛び立っていった。よく見えなかったが、目のふちが黒っぽく、尾羽が長めだったので、セキレイではなかったか。

   雪と花と鳥のイメージで何気なく思い出したのが、4年前、石川県立美術館(金沢市出羽町)で開催されていた伊藤若冲の特別展の『雪中雄鶏図』だった=写真・中、図録より=。竹や残菊に雪が積もる様子、そして雄のニワトリが餌を探して雪面をくちばしで突く絵は妙にリアリティと存在感があった。

   そして、この降雪で自宅周辺はまるで水墨画のような世界となった=写真・下=。金沢には古くから「一里一尺」という言葉がある。金沢地方気象台が発表する積雪量は、海側に近いところにある同気象台での観測であり、山側にある自宅周辺とでは積雪の数値が異なる。山側へ一里(4㌔)行けば、雪は一尺(30㌢)多くなる。

   今回の立春寒波はJPCZ(日本海寒帯気団収束帯)と呼ばれる発達した列状の雲だ。今後雪はさらに深まるだろう。この時季、北陸人はひたすら寒さに耐えながら春の気配が日に日に高まる「三寒四温」を待つ。そして、春一番の南風が吹くと、加賀や能登では「ぼんぼら風が吹く」と言って気持ちが踊り出すくらいにうれしくなる。「ぼんぼら」は生暖かいという意味だ。そして、新型コロナウイルス感染もきのう県内は551人と猛威が止まない。三寒四温のように徐々に治まってほしいと願うばかりだ。

⇒5日(土)午後・金沢の天気      ゆき

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