自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆猛暑一転、波立つ

2010年09月24日 | ⇒トピック往来

 先日までの猛暑が嘘のように一気に秋めいてきた。昨日は「夏じまい」の日だった。夏場で汚れた自家用車を洗った。ところどころに鳥のフンがついていた。家族から「むさくるしい」と言われ、6月以来の散髪に行った。ひと夏でこんなに伸びたのかと実感した。

 ところで、尖閣諸島で海上保安庁巡視船と中国漁船の衝突事件が起きて、外交が波立っている。中国の例の大人気ない「対日圧力」が続いた。中国側が招待した千人規模の日本青年上海万博訪問団の受け入れ延期や、日本向けのレアアース(希土類)の輸出を全面禁止など、思いつくまますべての約束事を棚上げ、禁止して圧力を強めているという感じだ。きょう24日になって、河北省で、ゼネコンの邦人社員4人が軍事管理区に無断で侵入し、軍事目標を違法にビデオ撮影したとして検挙されたというニュースが流れている。報復措置と見られている。そしてダメ押しは中国の温家宝首相が「日本側に、(船長を)即刻、無条件で解放することを強く促す。日本が独断専行するなら、中国は一歩、行動を進める。発生する一切の深刻な結果は、すべて日本側の責任だ」と非難していることだ。なんとなく北朝鮮の非難声明と似た論調に聞こえる。

 漁船の衝突でなぜ中国がこれほど過敏に反応するのか、なぜ中国側がいきり立っているのかと誰しもが思っている。理解できない。こうまでされると、この漁船には何か漁業以外の目的があったのではと推測してしまう。今思い出したが件、毒ギョーザ問題(08年)でも「日本側の捏造だ」と当初、中国政府がコメントを出していた。

 前原外務大臣は23日、ニューヨークでクリントン米国務長官と会談し、尖閣諸島沖の海上保安庁巡視船と中国漁船の衝突事件について、国内法に基づき刑事手続きを進める方針を説明した。これに対し、クリントン長官は尖閣諸島について「日米安全保障条約は明らかに適用される」と述べ、アメリカの対日防衛義務を定めた同条約第5条の適用対象になるとの見解を表明した。また、クリントン長官は衝突事件に関し「日中両国が対話によって、平和的に早期に問題を解決するよう望む」との期待を示した、と報じられている。尖閣諸島はどこの領土かを第三者によって外交的に確認し、その上で日本の国内法で処罰の手続きを進めるという中国側に対するメッセージだろう。日本側は、法にのっとり粛々と進めるという方法をとっている。

 さらにこんなことも考えてみる。もし、先の民主党代表選挙で小沢一郎氏が勝ち、総理大臣になっていたとすると、どんな手法をとるだろうか。そこで思い出してしまうのが、昨年12月に問題となった、宮内庁の「30日ルール」を官邸側が強引に破って、天皇と中国国家副主席との会見を設定した一件だ。民主党の幹事長だった小沢氏はこのとき、反対した宮内庁長官に対し「内閣が決めたことを一官僚が記者会見まで開いて言うものではない。言うのなら、辞めてから言うべきだ」と言ったのを覚えている。この小沢氏のスタンスなので、もし総理になっていれば、「人道に基づき、船長を中国に帰す」など言っていたかもしれない。小沢氏の強引な政治手法は、中国側のそれと少々似たところがある。

 問題はさらに根深い。前原外務大臣がかっこくよクリントン国務長官の言質を引き出したおかげで、「思いやり予算」(在日米軍駐留経費負担)は事業仕分けどころか、アメリカからの増額要求を飲まざるを得ないかもしれない。これはこれで問題なのである。「安上がり」のことを考えれば小沢流の超法規的措置なのかもしれない。小沢流か前原流か、外交は複雑である。

⇒24日(金)朝・金沢の天気  くもり
 

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