自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★五輪の後味

2012年08月13日 | ⇒メディア時評
 第30回の夏季オリンピック・ロンドン大会は日本時間の13日早朝からオリンピック・スタジアムで閉会式が行われている。「007」の映画のパラシュート降下の映像、「Mr.ビーン」のパロディーの映像で注目された開会式は、映像を使い安上がりだったが、簡素さを感じさせない、華やかな演出だった。運営では競技プールの水を水洗トイレに使うという「もったいない」の精神が貫徹されていた。見事だったのは、ホスト国として競技会場や選手村の運営、そしてテロ対策に気を配り、金メダルを29個も獲得し、堂々の世界3位(アメリカ、中国に続く)である。大会を通じてイギリスの底チカラをというものを感じた。経済危機で混乱するEUにあって今大会でイギリスの存在感を高めたのではないだろうか。

 ロンドンでのオリンピックは1908年、48年に続き同一都市で3度目だった。東京も2度目の2020年大会誘致向けて余念がないが、ハプニングも。IOC国際オリンピック委員会は、IOCの選手委員に立候補していた陸上男子ハンマー投げの室伏広治が、選挙活動規定に違反したとして、候補者から取り消したと発表した(11日)。室伏は立候補した21人中、選手間による投票数は1位、つまりほぼ当確だった。その違反とは、選手村のダイニングホールで選挙活動をしたとのこと。当選すれば、IOC委員もかねるため、東京五輪招致に向けての活動が期待されていただけに、JOC日本オリンピック委員会の落胆ぶりが目に浮かぶ。うがった見方をすれば、ダイニングホールでの名刺交換を「選挙活動だ」とIOCに指したライバルがいるということだ。後味が悪い。

 後味の悪さをもう一つ。日本と韓国戦となったサッカー男子3位決定戦の試合後に、勝った韓国の選手が竹島の領有権を主張する紙を掲げたとして、IOCが調査に入った。韓国の朴鍾佑選手が「独島は我々の領土」と韓国語で書かれた紙を頭上に掲げている写真を韓国メディアの掲載し発覚した。写真があるのだからこれは事実だ。オリンピック憲章は、施設や試合会場での政治的メッセージを含む宣伝活動を一切禁じている。この紙は、会場に応援に来た韓国サポーターが掲げていたものを試合終了後に朴選手が受け取ってスタジアムを走り回ったというから連携プレー、つまりどさくさ紛れの計画的な政治活動ということになる。

 日本領として残されることを決定したサンフランシスコ講和条約発効直前の1952年(昭和27年)1月18日、韓国の李承晩大統領が領土ラインを一方的に設定して竹島を占領した経緯がある。この騒動の発端となった、韓国の李明博大統領による竹島上陸問題。日本政府が領有権問題解決のため国際司法裁判所(ICJ)への提訴を検討すると表明したことに、韓国の与党・セヌリ党の洪日杓報道官が日本を「盗っ人たけだけしい」などと批判したとニュースになった。この言葉をそのままお返した方がよさそうだ。

 12日最終日にレスリング男子フリースタイル66㌔級で米満達弘選手が、前日にはボクシング男子ミドル級で村田諒大選手がそれぞれ金メダルを獲得して、日本選手団の金は7個となった。目標とした金15個以上には届かなかった。メダル総数は2004年アテネ大会を上回る史上最多の38個に達した。ここで前回のブログで書いた「金1個の放送権料」を修正する必要が出てきた。IOC国際オリンピック委員会に支払ったテレビ放映権料は日本コンソーシアム(NHKと民放)が3億5480万㌦(※バンクーバー冬季大会含む一括)、アメリカ(NBCテレビ1社)20億㌦(同)である。日本は金7個なので1個当たり約5000万㌦、アメリカは金46個なので1個当たり4300万㌦となる。「有終の金」2個、なんとか日本五輪に花を添えた。

⇒13日(月)朝・金沢の天気   あめ
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