能登の世界農業遺産「能登の里山里海」が認定されて10年周年を記念する国際会議(11月25-27日)が七尾市和倉温泉の旅館「あえの風」で開催されている。FAOの駐日事務所ほか、政府関係者や農業従事者ら200人余り、そして、ペルーとセネガル、ブルキナファソの3ゕ国の駐日大使も訪れ、会場はにぎやかな雰囲気だ。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大に配慮して、FAOのローマ本部のスタッフや海外のGIAHSサイトの担当者はオンライン(通訳付き)での参加となった。
セネガル大使は「私もノト出身です」と
冒頭で3人の大使があいさつした=写真=。セネガルの大使の話には驚いた。「私もノト出身です。日本のノトに興味がここに来ました」と。会場が一瞬、「えっ」という雰囲気に包まれた。スマホで調べると、確かにセネガルの西の方にティエス州ノト市がある。スペルも「Noto」と書く。さらに検索すると、JICA公式ホームページに「地域は海沿いのため一年を通して気候が良く、また地下水が豊富にあるため、玉ねぎやジャガイモ、キャベツの野菜栽培に非常に適した地域であり、セネガルの80%の野菜生産量を担っている」と説明があった。イタリアのコレシカ島にも「Noto」というワイン用のブドウ栽培の産地がある。日本、イタリア、セネガルの「Noto」で姉妹都市が結べないだろうか、そんなことがひらめいた。
本題に入る。この国際会議では、経済、社会の2つのテーマに分かれて分科会が開かれ、世界各国のサイトの代表や研究者ら12人が取り組みの成果や課題を発表した。発言の中で注目されたのは、やはり開催地である能登のGIAHS認定10年は成果はどのように評価されているのか、ということだった。
注目された発表の一つが、能登半島の尖端にある珠洲市の取り組みだった。同市の企画財政課長が述べた。同市で少子高齢化や転出が進み人口減少が進んでいるものの、ことし2021年上半期(4-9月)は転入が131人、転出が120人で転入が転出を初めて上回った。この社会動態の変化の要因として、GIAHSとSDGsを両立させた取り組みを目指し、海洋ゴミや廃校をアートに昇華させた国際芸術祭、企業や大学と連携して自然環境を活かしたビジネス人材の養成など、過疎地をイノベーションの場として活用することに共感する人々が増えている、と述べた。「人口減少が進む能登は日本の地域課題のトップランナーだ。能登で課題解決を探りたい、実践したいという若者や企業が珠洲に集まってきた」と。
そして、GIAHSツーリズムという変化をビジネスチャンスに受け止めていると話したのは能登町の一般社団法人「春蘭の里」の代表理事だった。2011年に能登がGIAHS認定され、「Noto」が世界に浸透するとヨーロッパなどからインバウンド観光客が増えてきた。新型コロナウイルスによるパンデミックの前の2019年ごろまでは年間1万人の宿泊客のうち、2000人余りがインバウンド客という年もあった。地域の46の民宿に分散して泊まり、春は山菜、秋にはキノコをインバウンドの人たちといっしょに採取して、夕ご飯に料理として出して喜ばれた。言語の問題は、自動通訳機「ポケトーク」を地域の人たちで共有することで乗り越えている。コロナ後のGIAHSツーリズムを前向きに述べていた。
石川県の谷本正憲知事は基調講演の中で、「能登にはさまざまハンディがあるものの、それをメリットに切り替える工夫をしてきた。世界農業遺産の認定が地域の魅力を掘り起こすきっかけになった」と能登におけるGIAHS効果をまとめて話していた。
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