自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★名残惜しむ「さいはて」のアート 美術の尖端を歩く~下~

2021年11月06日 | ⇒ドキュメント回廊

   「奥能登国際芸術祭2020+」はきのう5日で63日間の会期を終了した。芸術祭実行委員会のまとめによると、来場者は4万8973人(速報値)だった。新型コロナウイルスのパンデミックで開催が1年延期され、さらに石川県にはまん延防止等重点措置が出され、開会の9月4日から30日までは原則として屋外の作品のみの公開だった。さらに、9月16日には震度5弱の地震に見舞われた。幸い人や作品へ影響はなかったものの多難な幕開けだった。後半の10月以降は屋内外の作品が公開され、24日までの会期が11月5日まで延長となった。

    アートもSDGsも「ごちゃまぜ」 風通しのよさが地域を創る

   芸術祭のほかに珠洲市は、SDGsの取り組みにも熱心だ。内閣府が認定する「SDGs未来都市」に名乗りを上げ、2018年6月に採択された。同市の提案「能登の尖端“未来都市”への挑戦」はSDGsが社会課題の解決目標として掲げる「誰一人取り残さない」という考え方をベースとしている。少子高齢化が進み、地域の課題が顕著になる中、同市ではこの考え方こそが丁寧な地域づくり、そして地方創生に必要であると賛同して、内閣府に応募した。

   採択された後、同市は「能登SDGsラボ」を開設した。市民や企業の参加を得て、経済・社会・環境の3つの側面の課題を解決しながら、統合的な取り組みで相乗効果と好循環を生み出す工夫を重ねるというもの。簡単に言えば、経済・社会・環境をミックス(=ごちゃまぜ)しながら手厚い地域づくりをしていく。そのために、金沢大学、国連大学サスティナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわ・オペレーティングユニット(OUIK)、石川県立大学、石川県産業創出支援機構(ISICO)、地元の経済界や環境団体(NPOなど)、地域づくり団体などがラボに参画している。

   こうしたごちゃまぜの風通しのよさは行政や地域の経済人、それに地域の人々と触れることで感じることができる。ことし6月に東証一部上場の「アステナHD」が本社機能の一部を同市に移転したものその雰囲気を経営者が察知したことがきっかだった。そして、社会動態も好転している。今年度の上半期(4-9月)は転入が131人、転出が120人と転入がプラスに転じた。多くが若い移住者だ。

   芸術祭実行委員長である珠洲市長の泉谷満寿裕氏は「芸術祭は『さいはて』の珠洲から人の時代を流れを変える運動であり、芸術祭とともに新たな動きを産み出していきたい」ときのうの閉会式で述べていた。能登半島の尖端のこうした動きこそアートだと感じている。(※写真は『私たちの乗りもの(アース・スタンピング・マシーン)』フェルナンド・フォグリ氏=ウルグアイ)

⇒6日(土)夜・金沢の天気     はれ

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