きのう午後6時からNHKが中継で放送していた岸田総理の記者会見を視聴していた=写真=。淡々と語るその様子は分かりやすい説明で、「有事の価格高騰」に備えて、岸田氏が自らが本部長となり政府内に「物価・賃金・生活総合対策本部」を立ち上げるとの方針は、このところの物価上昇や景気動向に対応する迅速な対応だと思う。
ただ、納得がいかない点もあった。その一つは、新型コロナウイルスの感染症対策の司令塔機能を強化するため「内閣感染症危機管理庁」を設置するとの表明。さらに、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合し、アメリカのCDC(疾病対策センター)に相当する「日本版CDC」を創設すると説明した。正直言えば、「いまさら遅い。現状でよい。研究所とセンターに混乱をもたらすだけ」。そう思ったの自身だけだろうか。
もう一つ、少子化対策として「こども家庭庁」の設置法が成立し、300人規模の準備室を立ち上げる方針を示した。そして、出産費用を助成するため、現在は原則42万円が支給される「出産育児一時金」を「私の判断で大幅に増額する」と述べた。これは聞こえはよいが、現状の42万円はほとんどは「出産一時金」であり、病院に吸い取られている。岸田氏が増額した分は病院に「献上」することになりはしないか。むしろ、「出産」は保険適応、「育児」は幼稚園・保育園の経費無償化などと分けて支援した方が説得力がある。そのためのこども家庭庁ではないだろうか。
さらに会見では、記者からの質問に岸田氏が戸惑う場面もあった。ジャパン・タイムズの記者が「今回の参院選をひと言で表現すれば、なんという選挙ですか」「勝敗ラインは」と尋ねた。勝敗ラインについては「与党で過半数」とすんなり言葉として出てきた。ところが、選挙(22日公示、7月10日投開票)の日程は迫っているものの、総理の口からは選挙をひと言で表現する言葉がなかなか出てこない。争点として有権者に何を訴えたいのか。結局、明言は避けたカタチとなった。
道筋はすでにできているはずだ。岸田氏は会見で、6月下旬にドイツで開かれるG7サミットに出席し、その後、スペインで開かれるNATOの首脳会議に日本の総理として初めて出席する旨を明らかにした。ならば、この会議に出席して何を訴えるのか、その意義を語るべきではないのか。ロシアのウクライナ侵攻が象徴するように世界の、そして日本の安全保障環境も大きく変わってきた。参院選を機に、リアリティのある「アンポ」について国民と語るべきではないだろうか。
⇒16日(木)午後・金沢の天気 はれ
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます