金沢の「雪すかし」、つまりスコップを持っての除雪にはちょっとした暗黙のルールのようなものがある。時間的には朝、それも学校の児童たちが登校する前の7時すぎごろ。ご近所の誰かが、スコップでジャラ、ジャラと始めるとそれが合図となる。別に当番がいるわけではないが、周囲の人たちがそれとなく家から出て来始める。「よう降りましたね」「冷え込みますね」とご近所が朝のあいさつを交わす。いつの間にかご近所が一斉に雪かきをしている=写真=。
雪をすかす範囲はその家の道路に面した間口部分となる。角の家の場合は横小路があるが、そこは手をつけなくてもよい。家の正面の間口部分の道路を除雪する。しかも、車道の部分はしなくてよい。登校の児童たちが歩く「歩道」部分でよい。すかした雪を家の前の側溝に落とし込み、積み上げていく。冬場の側溝は雪捨て場と化す。
暗黙のルールに従わなかったからと言って、罰則や制裁があるわけではない。雪は所詮溶けて消えるものだ。しかし、町内の細い市道でどこかの家が積雪を放置すれば、交通の往来に支障をきたし雪害となる。ご近所の人たちはその家の危機管理能力を見抜いてしまう。
雪すかしのご近所ルールはさて置くとして、最近ある懸念を抱いている。最近のスコップはさじ部がプラスチックなど樹脂製が多い。少し前までは鉄製やアルミ製だったが、今はスコップの軽量化とともにプラスチックが主流なのだ。雪をすかす路面はコンクリートやアスファルトなので、そこをスコップですかすとなるとプラスチック樹脂の方が摩耗する。その破片は側溝を通じて川に流れ、海に出て漂っている。日常の雪すかしが、意識しないうちに「マイクロプラスチック汚染」を増長しているのではないか、ということだ。
マイクロプラスチック汚染は、粉々に砕けたプラスチックが海に漂い、海中の有害物質を濃縮させる。とくに、油に溶けやすいPCB(ポリ塩化ビフェニール)などの有害物質を表面に吸着させる働きを持っているとされる。そのマイクロプラスチックを小魚が体内に取り込み、さらに小魚を食べる魚に有害物質が蓄積される。食物連鎖で最後に人が魚を獲って食べる。
ご近所で仲良く路上で雪すかしをするが、それが知らず知らずのうちにマイクロプラスチックを陸上で大量生産することになっているとすれば、それこそ不都合な真実ではある。そう考えると、樹脂製のスコップには製造段階でさじ部分の先端に金属を被せることを義務づけるなどの対策が必要なのではないだろうか。
⇒28日(月)朝・金沢の天気 くもり
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