前回のブログで「プラットフォーマー」であるIT大手「グーグル」とフランスのメディアとの確執について述べた。昨年のアメリカ大統領選をめぐっても大統領とプラットフォーマーとの確執が続いた。
2020年5月、ツイッター社は当時のトランプ大統領が、カリフォルニア州知事が進める大統領選挙(11月)の郵便投票が不正につながると主張した投稿について、誤った情報や事実の裏付けのない主張と判断し、「Get the facts about mail-in ballots」とタグ付けしてファクトチェックの警告を発した。これに対しトランプ大統領は「ソーシャルメディアプラットフォームが共和党の見解を全面的に封じ込めている。これら企業を厳しく規制もしくは閉鎖する」とツイートした(2020年5月27日付・ロイター通信Web版日本語)。
同じ5月にミネソタ州ミネアポリスで、アフリカ系アメリカ人の男性が警察官に首を押さえつけられて死亡する事件が起き、抗議活動が広がった。トランプ大統領がツイートした内容のうち、「略奪が始まれば(軍による)射撃も始まる」との部分が個人または集団に向けた暴力をほのめかす脅迫に当たるとツイッター社は判断し、大統領のツイッターを非表示とした。削除ではなく、「表示」をクリックすれば読める。すかざす、大統領はツイートで「“Regulate Twitter if they are going to start regulating free speech.”」(言論の自由を規制するなら、ツイッターを規制する)と同社を牽制した。
アメリカでは、SNS各社は通信品位法(CDA:the Communications Decency Act )230条に基づき、ユーザーの違法な投稿をそのまま掲載したとしても責任は問われない。だからといって、ヘイトスピーチなどを野放しにしておくわけにはいかないというのがSNS各社のスタンスだ。それがピークに達したのが、ことし1月、大統領選に敗れたトランプ氏の支持者らによるアメリカ連邦議事堂への襲撃事件だった。トランプ氏が暴徒を「愛国者だ」などとメッセージを投稿したことから、ツイッターやフェイスブック、グーグルなど各社は公共の安全が懸念されるとしてトランプ氏のアカウントを相次ぎ凍結した。
そして半年後、トランプ氏とプラットフォーマーとの確執は再び火を噴く。BBCニュースWeb版(7月7日付)によると、トランプ氏は自分は検閲の被害者だとして、グーグル、ツイッター、フェイスブックの3社ならびに各社の最高経営責任者(CEO)を提訴した=写真=。同氏は今回の訴訟について「シャドー・バニング(ソーシャルメディアの運営側が望ましくないと判断したアカウントを公の目に触れにくくする措置)や黙らせる行為、ブラックリスト化や追放、削除といった行為の停止を求める」と述べ、ソーシャルメディア企業と民主党を激しく非難。さらに、「この国の歴史上、これほど責任を免除され守られた人はいない」と批判し、「通信品位法」230条の改正を訴えた。
そもそも、ソーシャルメディアを政治の舞台で活用したのは、ある意味でトランプ氏だった。2017年1月の大統領就任前からゼネラル・モーターズ社やロッキード社などに対し、ツイッターで雇用創出のために自国で製造を行えと攻撃的な「つぶやき」を連発した。ホワイトハウスでの記者会見ではなく、140文字で大統領の方針を発信するという前代未聞のやり方だった。政治家が競ってツイッターなどソーシャルメディアの活用を始めたのは、トランプ氏が先導したとも言える。
前回のブログで書いたフランスにおける著作権指令とグーグルとの交渉問題、そして、トランプ氏が訴える「通信品位法」230条の改正と巨大IT企業への提訴。デジタル時代の「あだ花」なのか、あるいは「転換点」になるのか。
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