あの大会マスコットまで五輪汚職の対象になっていたのか、憤りを通り越してあきれる。メディア各社の報道によると、受託収賄罪で起訴された大会組織委会元理事の高橋治之被告が、大会マスコット「ミライトワ」「ソメイティ」のぬいぐるみを製造・販売した会社「サン・アロー」に便宜を図った疑惑が浮上している。高橋容疑者の知人の会社を通じて現金計約800万円が提供された可能性がある(24日付・読売新聞Web版)。
五輪汚職事件をめぐっては、紳士服の大手「AOKIホールディングス」や大手出版社「KADOKAWA」などの名前が次々と報じられている。今回は、大会マスコットのぬいぐるみを手掛けた中小企業にまで贈賄疑惑が出てきた。どこまで汚職事件は拡大するのか、まさに「底なし沼」の様相だ。
「サン・アロー」の公式サイトをチェックする。この会社はなんと大正時代の1918年創業で老舗だ。最初はセルロイド玩具などを手掛けていたが、1970年代からはぬいぐるみの企画・販売を行い、テディベアシリーズなど 数々のヒット商品を生み出している。1990年代からは、アニメ映画のヒット作品をぬいぐるみにする販売戦略に。スタジオジブリと契約して、アニメ映画「となりのトトロ」や「魔女の宅急便」「千と千尋の神隠し」「天空の城ラピュタ」「崖の上のポニョ」などの商品を次々と発表。ぬいぐるのほか、絵本「こびとづかん」などの雑貨も。そして、1998年には 長野オリンピック公式ライセンス商品「SNOWLETS」を発売している。
オリンピックのマスコットは同社にとって、商品PR、販売ともに最高の戦略商品と位置付けたに違いない。「ミライトワ」「ソメイティ」の両マスコットのぬいぐるみについて、組織委から公式ライセンス商品の承認を受け、2018年7月から販売を開始していた。ところが、新型コロナウイルスによるパンデミックで1年延期、さらに競技場は無観客となった。競技場を訪れる人々の土産にと目論んでいた販売戦略に誤算が生じたであろうことは想像に難くない。
それにしても、今回の五輪汚職事件は世界に日本の不名誉をさらすことになった。報道によると、今月27日の安倍元総理の国葬には、IOCのバッハ会長も参列する予定という。来日した折、バッハ会長が誰に何を語るのか、注視したい。今回の汚職事件を受けて、IOCが日本に対してペナルティーを検討していると発言するかもしれない。
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