自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆北に「アダムの創造」は実現するのか

2018年10月19日 | ⇒メディア時評

    12年前の2006年1月にローマを用務で訪れた。当時、金沢大学が国際貢献と位置づけていた教会壁画の修復プロジェクトの現状を取材するのが目的だった。カトリックの総本山であるサン・ピエトロ大聖堂なども見学した。ローマの街を歩くと、面白い広告があった=写真=。バイクのレンタルの屋外広告だ。指先を軽くタッチする、映画「ET」のモデルにもなったといわれるあの名画、ミケランジェロのフレスコ壁画『アダムの創造』がモチーフなのだ。名画のモチーフが広告デザインとして普通に街中で使われていて、カトリックの総本山・バチカン市国を抱えるローマらしい光景だと思った。

   『アダムの創造』は、神がアダムを最初の人類として息を吹き込んだという、旧約聖書の「創世記」より創造の物語を描いたとされる。神とアダムの手が触れそうになっている様子は、慈しみのシンボルとされるが、その光景をイメージさせるニュースがあった。けさのNHKニュースによると、韓国の文在寅大統領がきのう(18日)ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王と会談し、北朝鮮の金正恩委員長からの訪朝の要請を伝え、法王も前向きな姿勢を示したと韓国大統領府の発表を伝えている。

   ニュースをさらに引用すると、文大統領は9月19日の南北首脳会談の際、金委員長がフランシスコ法王の訪朝を歓迎する考えを示していたことを踏まえ、「金委員長が招待状を送ってもよいか」と質問した。これに対し、フランシスコ法王は「文大統領の言葉でも十分だが、公式な招待状を送ることが望ましい」と応じた。そのうえで、「招待状が来れば必ず返事をするし、行くこともできる」と述べて、訪朝に前向きな姿勢を示したという。一方、ローマ法王庁も会談後に声明を出し、朝鮮半島の平和と発展につなげる取り組みを高く評価するとしたが、訪朝についての言及はなかった。一方で、北朝鮮では信仰の自由が侵害されていると指摘していて、法王の訪朝が実現するかどうかは不透明と伝えている。

   このニュースを視聴して不可解に思ったのは、なぜ文大統領がわざわざこのメッセージを伝えにバチカンに行ったのか。金委員長からそのような伝言を託されたとしても、文大統領は「信仰の自由をまず解禁しなさい」と金委員長に諭すのが先ではないのか。あるいは、金委員長は2001年までの4年間、スイスに留学した経験があるので、カトリック教にはそれなりに理解があるのかもしれない。フランシスコ法王の訪朝を契機に信仰の自由を解禁すると世界にアピールする「サプライズ」があるのかもしれない。

   もしそうならば、フランシスコ法王と会うときには、金委員長は自らの「懺悔」「告白」「悔い改め」を述べることが必要ではないのか。それがなければ、信仰の自由を解禁を宣言したとしても、トランプ大統領と非核化の約束したもののいっこうに進展しない状況の同じ轍を踏むのではないかと世界は読んでしまう。

   金委員長がフランシスコ法王から祝福される「アダムの創造」が実現するのか、あるいは単なる「広告」か「パロディ」か。このニュースの続報が楽しみだ。

⇒19日(金)朝・金沢の天気    はれ


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ★トランプ大統領の「漂着ゴミ... | トップ | ★ウォッチドッグジャーナル »

コメントを投稿

⇒メディア時評」カテゴリの最新記事