いま有権者が政治に求めているのは、周囲との調整を念入りにする政治判断より、捨て身のスピード感で動く政治決断ではないだろうか。今月24日に世界平和統一家庭連合(旧「統一教会」)と深い関係性が指摘されていた山際経済再生担当大臣が辞任した。旧統一教会との関係が国会で何度も追及され、さらに教団本部の総裁と一緒に映っている証拠写真を突きつけられても、山際氏は「資料がない」「記憶が定かではない」などと繰り返していた。
今国会での目玉の施策が29兆円にも及ぶ「総合経済対策」。取りまとめ役は経済再生担当大臣、つまり山際氏だった。なぜ岸田総理は山際大臣の更迭の決断を早々に下さないのかと、批判の矛先は総理に向っていた。そして、山際氏は総合経済対策の閣議決定(28日)前になって辞することになり、決断の遅さとタイミングの悪さが如実に表れた。
きょうの旧統一教会関連のニュースは、旧統一教会側がTBSラジオと日本テレビ、また、番組に出演した弁護士とジャーナリストに対して合わせて3300万円の賠償と謝罪放送を求め訴えを東京地裁に起こした(27日付・NHKニュースWeb版)。教団側は先月29日にも読売テレビとTBSの2社、そしてコメンテーターの弁護士3人に計6600万円の損害賠償を求める訴訟を同地裁に起こしている。
いわゆる「スラップ訴訟」ではないか。端的に言えば、メディアや出演者の言論を萎縮させることを目的とした民事訴訟と言える。アメリカでの概念で、「Strategic Lawsuit Against Public Participation」の頭文字をとり「SLAPP(スラップ)」。直訳すれば、「市民参加を妨害するための戦略的民事訴訟」となる。
別の見方をすれば、宗教法人法に基づく「質問権」の行使が動き始め、教団の解散命令の請求にまで至るのか注目が集まる中で、教団内部では相当な混乱が起きていることは想像に難くない。その動揺を収めるため、あえて裁判を起こして、内部の統制をはかると同時に、質問権へのけん制をもくろんでいるのではないだろうか。
いずれにせよ旧統一教会の本質が出たようで、問題視されている霊感商法や高額寄付についての反省の色がまったくない。ニュースを見た視聴者の多くはそう感じたのではないだろうか。
(※写真は、参院代表質問に答える岸田総理=今月7日のNHK総合)
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