中国共産党の党大会閉幕式(今月22日)で前国家主席の胡錦濤氏が腕をつかまれた状態で途中退席する衝撃のニュースが流れた。その後、国営通信「新華社」(電子版)は23日までに「体調が優れなかった」ためだと説明した(23日付・共同通信Web版)。BBCニュースWeb版(25日付)をチェックすると、「Hu Jintao: Fresh China congress footage deepens mystery over exit」(意訳:新たな映像で深まる胡錦濤氏退席の謎)の見出しで、退席する以前の動画が掲載されている。
この動画を見ると、体調不良による退席ではなく、連れ出しであることが分かる。習近平国家主席の横に座っていた胡錦濤氏が机の前に置かれていた赤いファイル書類に手を伸ばそうとすると、胡氏の左隣に座っていた人物が見せないようにファイル書類を押さえている様子が確認できる。胡氏が再度そのファイルに再度手を伸ばすと、今度は取り上げた。その後、習氏が別の人物に指示し、胡氏が抱えられるようにして退席した。
この「退席事件」の直前には、党幹部の人事が行われ、胡氏に近いとされていた李克強首相ら幹部2人が引退させられている。BBCは識者の談話として、「There would be a chilling effect on the officials watching what was happening on the stage」(意訳:閉幕のステージ上で何が起こっているのか見ていた党幹部には相当な萎縮効果があったはず)と伝えている。
党内外のすべての「敵」を排除した習氏の勝利はいわば、これまでの「一党独裁」から「一人独裁」に入ったようなものだ。習氏の政治手法は、バランスを取らない「オール・オア・ナッシング」のようにも思える。たとえば、「ゼロコロナ」はその典型的な事例かもしれない。ごくわずかな感染対策のために、多くの正常な社会活動を犠牲にする。胡錦濤氏に近い人物を排除し、トップ24人の政治局委員を身内で固めたことで、結果として女性の政治局委員は1人もいなくなった。
今後、台湾問題を含めた政治と外交や、政治と経済、とくに貧困対策と経済成長などバランス感覚が問われる課題に向かうだろう。そのときも、妥協を許さないオール・オア・ナッシングだとしたら。
⇒26日(水)夜・金沢の天気 はれ
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