自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★ワンセグとNHK

2009年06月06日 | ⇒メディア時評

  金沢大学で「マスメディアと現代を読み解く」というメディア論の講義を担当している。先日の授業で、「地上デジタル放送の問題点」をテーマに2011年7月24日のアナログ波停止、それに伴う「地デジ難民」の発生、ワンセグ放送などメリットとデメリットを織り交ぜて話し、最後に学生に感想文を書いてもらった。この日の出席は145人だったが、10人余りがNHKのワンセグ放送の受信契約について記していた。その内容に驚いた。「NHKの集金人(※NHKと業務委託契約を結んだ「地域スタッフ」)がアパートにやってきて、テレビはないと応えると、パソコンのTV線は、ケータイのワンセグはとしつこく聞かれました」(理系の1年女子)、「一人暮らしは受信料を払うべきでしょうか。実家の自分の部屋にテレビを持つのとの同じことだから払う必要はないのでは」(理系の1年男子)と、NHKの受信契約のストームに学生たちが戸惑っている様子が浮かび上がってきた。

  ワンセグの受信契約についてNHKのホームページで確認すると、「ワンセグ受信機も受信契約の対象です。ただし、ご家庭ですでに受信契約をいただいている場合には、新たにワンセグの受信機を購入されたとしても、改めて受信契約をしていただく必要はありません」と記載されている。問題は、一人暮らしの学生の場合である。そこで、視聴者コールセンターに電話(5月11日)をして、①学生は勉強をするために大学にきているので、受信料契約は親元がしていれば、親と同一生計である学生は契約する必要がないのではないか②携帯電話(ワンセグ付き)の購入の際、受信契約の説明が何もないのもおかしい、携帯所持後に受信契約を云々するのでは誰も納得しないーとの2点を、学生たちの声を代弁するつもりで問うてみた。すると、電話口の男性氏は「ワンセグの受信契約の対象になります。いろいろご事情はあるかと思いますが、別居の学生さんの場合は家族割引(2ヵ月で1345円)がありますのでご利用ください」と、要約すればこのような言葉を繰り返した。

  放送法第32条では、「受信設備を設置した者は、(日本放送)協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」とあり、地域スタッフはこの部分を全面的に押し出して、一人暮らしの学生に契約を迫っているようだ。中には、「受信機の設置と携帯は違う、納得できない」と拒み、地域スッタフを追い返したという猛者もいるが、年上の大人が法律をかさに着て迫れば、新入生などは渋々と契約に応じる。電話の翌日(5月12日)の授業で、地域スタッフの訪問を受け、ワンセグの受信契約に応じた学生に挙手してもらったところ、20人ほどの手が上がった。「学生が狙いうちされている」と私は直感した。NHK資料(平成19年6月)によれば、契約対象4704万件のうち、契約しているものの不払いと、未契約が計1384万件にも上り、契約対象の29%を占める。つまり3件に1件が払っていない計算だ。一般家庭の未契約と不払いはそれぞれに「払えない」「払わない」「契約しない」の主張がはっきりしているので、地域スタッフにとってはここを説得してもなかなか成績が上がらない。ところが、学生ならば攻めやすいということだろう。

  私は学生たちに不払いを奨励しているのではない。契約は納得して応じるべきで、決してうやむやのうちにハンコを押してはならない、後悔する契約はしてはならないと説明しているのである。地域スタッフから「経営の安定がNHKの放送の自由度を高める」といった本来されるべき説明は受けていないようだ。いきなり「ワンセグ付いたケータイ持っているか」では、学生は納得しない。それより何より、親元と同一生計にある一人暮らしの学生に関しては、ワンセグ、一般受信機を含めて受信料を取るべきではないと考える。


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