自在コラム

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★「暖冬」予報も タイヤ交換と雪吊り施す北陸人の心構え

2023年10月28日 | ⇒トピック往来

          そろそろ晩秋なのだが、この時季の冷え込みというものが感じられない。金沢地方気象台がきのう発表した北陸地方の向こう3ヵ月間の長期予報によると、来月11月から来年1月にかけては平年よりも気温が高くなり、暖冬になる見通しとのこと。

   南米ペルー沖の海面の水温が平年より高くなるエルニーニョ現象が冬にかけても続くことで、日本付近に流れ込む寒気の影響が小さく、冬型の気圧配置が現れにくくなる。このため、雪ではなく雨として降る日が多くなるとの予想だ。ただ、経験則で言えば、これまで暖冬は何度もあったが、一時的に強烈な寒波が来て大雪になったこともある。暖冬の予報があったとしても、大雪への備えは例年通りというのが北陸に住む者の心構えだ。

   たとえば、暖冬が予想されていても自家用車のタイヤをスタッドレスに交換する。そして、家々では庭木の雪吊りの備えを怠らない。北陸特有の水分を含んだ重い雪から樹木を守るためだ。たとえ期間は短くとも、冬将軍は必ずやってくる。関西や関東の友人たちとのメールのやり取りで雪吊りの写真を送ると、「予報で北陸は暖冬なのだから、わざわざ雪つりをする必要はあるのか」と返信があったりする。理にかなってはいるが、北陸の冬はそう単純ではない。鮮明に覚えているのは、2007年2月の大雪。1月は金沢は「雪なし暖冬」で観測史上の新記録だった。ところが、2月1日からシンシンと雪が降り始め、金沢市内で50㌢にもなった。冬将軍は突然やってくるのだ。

   そして、26年も前の1997年の冬の話。当時、テレビ局で番組を担当していた。テレビ朝日の「ニュースステーション」でピアニスト羽田健太郎氏(2007年逝去)のピアノ中継が金沢・東の茶屋街であった。江戸時代の花町の雰囲気を残す古民家の土間でのピアノ演奏。この年も暖冬だったが、番組中に雪がしんしんと降ってきて、ピアノ中継のラストカットは、和傘を差した芸妓さんが足元を気にしながら雪化粧した通りを楚々と歩くという、まるで映画のようなシーンだった。

   雪は雨と違って、ロケーションを一変させる劇的な演出効果がある。それを北陸人は地味な感覚で、「備えあれば憂いなし」の心構えとしている。で、暖冬予報であってもタイヤを替え、庭木の雪吊りをする。

⇒28日(土)夜・金沢の天気    あめ


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